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仮想通貨botの開発記録#91(2024/8/24)「マーケットマイクロストラクチャー研究」

2024年8月24日

前回の記事に引き続き、今回も仮想通貨botの開発状況をまとめていきます。

今回は「マーケットマイクロストラクチャー 株価形成・投資家行動のパズル」を読んだ備忘録です。

Yodaka

高頻度bot開発のヒントになると感じた部分や雑感をまとめました。

マーケットマイクロストラクチャーとは?

マーケットマイクロストラクチャー(Market Microstructure)は、金融市場における取引のプロセスやメカニズム、そしてこれらのプロセスが価格形成にどのように影響を与えるかを研究する分野です。具体的には、取引方法注文の種類取引コスト情報の流れ流動性マーケットメイカーの役割価格発見プロセスなどを分析します。

Yodaka

これらの要素の理解を深めてbot開発に活用したいと考えている方は、本書を読むことをお勧めします。

主な要素

  1. 取引メカニズム:
    • 取引がどのように行われるか、例えばオークション形式、ディーラーマーケット、オーダードリブンマーケットなど、異なる市場構造が取引の仕組みに影響を与えます。
  2. 注文の種類:
    • 市場参加者が使用する注文の種類(マーケット注文、リミット注文、ストップ注文など)が、価格形成や市場の流動性にどのように影響するかを研究します。
  3. 取引コスト:
    • ブローカーの手数料、スプレッド、価格インパクト、機会コストなど、取引に関連するコストを分析します。これらのコストは投資家の利益に直接影響を与えるため、重要な要素です。
  4. 流動性:
    • 流動性とは、市場での売買のしやすさを示す概念で、価格の安定性や市場の健全性に影響を与えます。流動性の高さは、市場が効率的に機能するために必要です。
  5. マーケットメイカー:
    • マーケットメイカーは、特定の銘柄について常に買いと売りの価格を提示し、市場に流動性を提供する役割を持っています。彼らの活動が市場にどのような影響を与えるかも重要な研究テーマです。
  6. 価格発見プロセス:
    • 市場価格がどのように形成されるか、特に情報が市場にどのように伝わり、それが価格にどのように反映されるかを分析します。価格発見プロセスは、市場の効率性と投資家の行動に深く関わっています。

マーケットマイクロストラクチャーの応用

マーケットマイクロストラクチャーの研究は、トレーダー、投資家、規制当局にとって非常に重要です。例えば、トレーダーは取引コストを最小化し、流動性を最大化するためにこの知識を活用します。また、規制当局は、市場の健全性を維持するために市場構造を理解し、必要な規制を設ける際の指針とします。

さらに、アルゴリズム取引や高頻度取引(HFT)など、近年の金融市場の技術的進化にも深く関わっており、これらの取引手法が市場に与える影響もマーケットマイクロストラクチャーの研究の一環として分析されます。

まとめ

マーケットマイクロストラクチャーは、金融市場における取引の仕組みやメカニズムを深く理解するための学問分野です。市場の効率性、流動性、価格発見のプロセスに関する洞察を提供し、市場参加者がより良い意思決定を行うための基盤となります。

概要&メモ

本書は「価格形成のメカニズムと市場参加者関係性」を分析をまとめた本です。市場参加者の振る舞いが価格の形成にどんな影響を与えるのか、そして価格形成のメカニズムが市場参加者の振る舞いにどのような影響を及ぼすのかを限定的なケースごとに解説しています。

市場参加者の分類市場を形成する諸要素の定義付けと特定の条件下での振る舞いその根拠などを紹介し、それぞれの課題点や合理的な解決方法の提案を時系列で発展的に紹介しているため、研究全体の流れと現在までの歴史の積み上げをざっくりと掴むことができました。

Yodaka

様々な先行研究を参考にしているため、研究の歴史を掴み市場分析の土台を作りたいと考えている方には特にお勧めの本です。

かなり骨太な内容でしたが、強い高頻度botをさらに強くするためのヒントも発見できました。

また、様々な先行研究を比較して論じるという本書の流れが先人の研究を凝縮して自分なりの有効な指標を見出す思考過程を磨くきっかけ作りになったという意味でも良著です。

ただ、bot作りをしてみたい人が最初に読む本ではないと思います。専門用語が容赦なく出てきて解説も少ないし数式もそこそこ多いため、それらの意味をその都度調べないとあっという間に内容が分からなくなります。

私は意味が分からない部分はChatGPTに解説させながら大枠を理解しつつ、"非情報トレーダーの振る舞い"”市場の存続性と安定性”の章だけを熟読した。

正直、高頻度botを作るだけなら「金融市場の高頻度データ分析」を読む方がbotを組むために手を動かすモチベは上がります。この本も安くはないですが、現代の市場により適応した内容であるためbot開発に直接応用が効きます。

bot開発に使えそうなこと

とは言え、開発の土台に関しての学びが多かったことも事実です。

これらを一つずつもっと丁寧に行なって強いbot作りに繋げていきます。

・新情報の発生は取引市場において価値の過程から抽出が行われる可能性を高める
→その抽出を拾い切るbotを作る(技術的な問題なので改善可能)

・取引制度は各々独自のルール体系を持っている
→各取引所の取引制度を調べ上げて比較検討する
→その市場に最も相応しい戦略を探る(継続)

・その市場が現在どのフェーズ(発展段階)にあるのかを分析・定義する
①理論上の安定性を定義する
②その安定性を導く要素を定義する
③現実の市場でその安定性を崩す可能性が高いものを見出す
④トレードの指標として使ったりテスト運用に回したりする
⑤予測と結果の乖離を見て有効なものを残す

雑感

学者タイプの私にとっては分析の視点は多い方が良いのですが、それで手が動かなくなってしまっては本末転倒です。

そのため、理論のインプットは程々にしておくか、完全にインプット漬けの期間を設けて体系的に理解し切るまで情報を浴びまくるようにした方が良いと思いました。結局、中途半端が一番良くないです。

まとめ

今回は「マーケットマイクロストラクチャー 株価形成・投資家行動のパズル」を読んで、開発に活かせる部分をまとめました。

Yodaka

今後もこの調子で開発の状況をまとめていきます。

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