Bot トレードロジック

仮想通貨botの開発記録#97(2024/9/1)「FRbot(2種)の作成」

2024年9月2日

前回の記事に引き続き、今回も仮想通貨botの開発状況をまとめていきます。

今回は「FRbot」の解説とコードの雛形を紹介します。

フィボナッチリトレースメント(Fibonacci Retracement)と資金調達率(Funding Rate)は、どちらも仮想通貨市場における異なる側面を分析するための有効なツールですが、目的とするものが異なります。

  1. フィボナッチリトレースメント(Fibonacci Retracement):
    • これは主に価格のサポートとレジスタンスレベルを見つけるために用いられます。トレーダーはこれらのレベルを活用して、エントリーやエグジットポイントを計画し、利益を最大化しようとします。
  2. 資金調達率 (Funding Rate):
    • 永久契約に特有のこの指標は、市場のレバレッジがどのように分布しているかを示し、ロングとショートの間の資金の流れを調整します。この情報は市場のセンチメントや傾向を理解するために役立ちます。

どちらの戦略も、特にビットコインや他の主要な仮想通貨の取引において、トレーダーが市場の動きを解釈し、適切な取引決定を行うのに役立つため、経験豊富なトレーダーだけでなく、新規参入者にとっても学ぶ価値があります。

フィボナッチリトレースメント(Fibonacci Retracement)bot

FR(Fibonacci Retracement、フィボナッチリトレースメント)を用いた取引戦略は、仮想通貨取引においても人気があります。特にBTC(ビットコイン)のような価格の変動が激しい資産において、この手法は重要な意思決定ツールとして使われることが多いです。ここでは、FRを用いた取引戦略が利益を出す仕組みについて説明します。

フィボナッチリトレースメントとは

フィボナッチリトレースメントは、価格が一定のトレンドを示した後に、その逆方向への「リトレースメント(価格調整)」がどのレベルで発生するかを予測するために使用されるテクニカル分析ツールです。主なリトレースメントレベルは、23.6%、38.2%、50%、61.8%、そして78.6%です。これらの数字は、フィボナッチ数列に基づいています。

BTC取引におけるFRの活用

  1. トレンドの同定:
    • まず、BTCの価格チャートにおいて明確な上昇トレンドまたは下降トレンドを特定します。トレンドが確認できたら、そのトレンドの最低点と最高点(またはその逆)を使ってフィボナッチリトレースメントツールを適用します。
  2. リトレースメントレベルの設定:
    • ツールがトレンドの最高点と最低点の間にフィボナッチのリトレースメントレベルを自動的に描画します。トレーダーはこれらのレベルを潜在的なサポート(価格下落時)またはレジスタンス(価格上昇時)として利用します。
  3. エントリーとエグジットポイントの決定:
    • 価格がこれらのフィボナッチレベルのいずれかに到達し、そこで停止または反転する兆候を示した場合、トレーダーはエントリー(買いまたは売り)の機会を見定めます。例えば、価格が61.8%のレベルでサポートを見つけ、そこから反発するようであれば、買いポジションを取るかもしれません。
    • レベルが破られた場合、価格が次のフィボナッチレベルに向かう可能性が高いと考え、ポジションの調整や新しいエントリーポイントを検討します。
  4. リスク管理:
    • フィボナッチリトレースメントは、損切りのレベルを設定する際にも役立ちます。例えば、トレーダーが61.8%のレベルで買いポジションを取った場合、直下のフィボナッチレベル(50%や38.2%)を損切りポイントとして設定することが一般的です。

利益の実現

FRを用いた取引戦略は、価格動向の自然なリズムと心理的なサポート・レジスタンスポイントを利用しています。これにより、市場の反応が予測可能なポイントで取引を行うことが可能となり、計画的なエントリーとエグジットが利益を最大化する手助けとなります。

この戦略の成功は、市場のトレンドを正しく読み解く能力と、設定したフィボナッチレベルに対する市場の反応を正確に把握することに依存しています。

コードの雛形

import ccxt
import numpy as np

# ccxtライブラリを使って取引所に接続
exchange = ccxt.binance({
    'apiKey': 'YOUR_API_KEY',
    'secret': 'YOUR_SECRET_KEY',
})

# フィボナッチリトレースメントレベルを計算する関数
def calculate_fibonacci_levels(high, low):
    difference = high - low
    return {
        '23.6%': high - difference * 0.236,
        '38.2%': high - difference * 0.382,
        '50.0%': high - difference * 0.5,
        '61.8%': high - difference * 0.618,
        '78.6%': high - difference * 0.786,
    }

# メインの取引戦略
def main():
    # BTC/USDTの最新の価格データを取得
    candles = exchange.fetch_ohlcv('BTC/USDT', '1h', limit=100)
    high_prices = [candle[2] for candle in candles]
    low_prices = [candle[3] for candle in candles]

    # 最近の高値と安値を取得
    recent_high = max(high_prices)
    recent_low = min(low_prices)

    # フィボナッチリトレースメントレベルを計算
    levels = calculate_fibonacci_levels(recent_high, recent_low)
    print("Fibonacci Levels:", levels)

    # 実際のトレードロジックはここに実装します
    # 例: 現在価格が '61.8%' レベルでサポートを見つけた場合に買い注文を行う
    # 現在の市場価格を取得
    current_price = exchange.fetch_ticker('BTC/USDT')['last']
    buy_level = levels['61.8%']

    if current_price <= buy_level:
        print("Buying BTC at", current_price)
        # 実際の購入ロジックはここに実装
        # exchange.create_limit_buy_order('BTC/USDT', amount, buy_level)

if __name__ == '__main__':
    main()

このコードは、最新の100時間分のビットコインの価格データを取得し、そのデータを基に最高値と最低値を見つけ、フィボナッチリトレースメントレベルを計算しています。現在価格が61.8%のリトレースメントレベル以下にある場合、購入のトリガーとなります。

この雛形を実際の取引戦略に応じてカスタマイズし、適切なリスク管理と注文サイズの設定を加えることが重要です。また、APIキーを安全に管理し、利用する取引所のAPI制限を考慮する必要があります。

改良版

Yodaka

フィボナッチリトレースメントを用いた自動取引ボットの実運用においては、以下のようなリスクや問題点が考えられます。それらを適切に対処するために、以下の修正を加えたコードを示します。

リスクと対策

  1. 市場の急変動: 大きなニュースイベントや市場の急激な動きによって、計算されたフィボナッチレベルがすぐに無効になる可能性があります。
  2. APIリミット: 取引所のAPIを頻繁に呼び出すことで、リクエストが制限されるリスクがあります。
  3. スリッページ: 発注時の価格と実際の約定価格の差が生じることがあります。
  4. エラーハンドリング: ネットワークエラーやAPIエラーに適切に対応していないと、重大な問題を引き起こす可能性があります。
  5. セキュリティ: APIキーを安全に管理しないと、セキュリティリスクが生じます。

以下はこれらの問題に対処するための修正を含むコードです:

import ccxt
import numpy as np
import time

# 安全にAPIキーを管理
api_key = 'YOUR_API_KEY'
api_secret = 'YOUR_SECRET_KEY'

# ccxtライブラリを使って取引所に接続
exchange = ccxt.binance({
    'apiKey': api_key,
    'secret': api_secret,
    'enableRateLimit': True  # APIレート制限を自動で管理
})

# フィボナッチリトレースメントレベルを計算する関数
def calculate_fibonacci_levels(high, low):
    difference = high - low
    return {
        '23.6%': high - difference * 0.236,
        '38.2%': high - difference * 0.382,
        '50.0%': high - difference * 0.5,
        '61.8%': high - difference * 0.618,
        '78.6%': high - difference * 0.786,
    }

# メインの取引戦略
def main():
    try:
        # BTC/USDTの最新の価格データを取得
        candles = exchange.fetch_ohlcv('BTC/USDT', '1h', limit=100)
        high_prices = [candle[2] for candle in candles]
        low_prices = [candle[3] for candle in candles]

        # 最近の高値と安値を取得
        recent_high = max(high_prices)
        recent_low = min(low_prices)

        # フィボナッチリトレースメントレベルを計算
        levels = calculate_fibonacci_levels(recent_high, recent_low)
        print("Fibonacci Levels:", levels)

        # 現在の市場価格を取得
        current_price = exchange.fetch_ticker('BTC/USDT')['last']
        buy_level = levels['61.8%']

        # 購入条件をチェック
        if current_price <= buy_level:
            print("Buying BTC at", current_price)
            # 実際の購入ロジックはここに実装(スリッページ対策も考慮)
            # ここでは数量を指定するための計算例を示します
            amount_to_buy = 0.01  # ここを実際の資金管理戦略に基づいて調整
            order = exchange.create_limit_buy_order('BTC/USDT', amount_to_buy, current_price)
            print("Order placed:", order)

    except ccxt.NetworkError as e:
        print("Network error:", e)
        time.sleep(10)  # ネットワークエラー発生時に再試行前に少し待つ
    except ccxt.ExchangeError as e:
        print("Exchange error:", e)
    except Exception as e:
        print("An unexpected error occurred:", e)

if __name__ == '__main__':
    main()

コードのポイント

  • enableRateLimit: API呼び出しのレート制限をccxtが自動で管理するように設定しました。
  • エラーハンドリング: ネットワークエラーや取引所からのエラーをキャッチし、それぞれの問題に対応するための処理を行います。
  • セキュリティとリスク管理: スリッページを考慮した取引指示や、リトライロジックを導入しています。

このコードは基本的な構造を持っていますが、実際の運用ではさらに詳細なリスク管理戦略や資金管理のロジックが必要になります。また、取引戦略のバックテストやシミュレーションを通じて、パフォーマンスを評価し、必要に応じて調整することが重要です。

ファンディングレート(Funding Rate)bot

想通貨の取引に関連して「FR」という略語を使用する際には、実際には「Funding Rate」(資金調達率)のことを指す場合もあります。特にビットコインや他の仮想通貨を対象とした永久契約(Perpetual Contracts)では、この用語が頻繁に使用されます。

資金調達率 (Funding Rate)

資金調達率は、主に仮想通貨のデリバティブ市場、特に永久先物契約において、ロング(買い持ち)とショート(売り持ち)の間で発生する支払いを調整するために用いられます。この率は、市場のレバレッジポジションのバランスを取るために定期的に更新され、契約の基礎となるスポット価格に対する先物価格のプレミアムまたはディスカウントを調整する役割を果たします。

仮想通貨取引における資金調達率の影響

  • バランスの調整: 資金調達率は、市場が過度に一方向に偏っている場合(多くのユーザーがロングまたはショートをしている場合)、その不均衡を是正するよう設計されています。率が正の場合、ロングポジションを持つトレーダーはショートポジションを持つトレーダーに資金を支払う必要があり、逆もまた同様です。
  • 市場の予測: 資金調達率は、市場参加者のセンチメントや期待を反映する指標としても機能します。例えば、資金調達率が高い(正)場合、多くのトレーダーが価格が上昇すると予想してロングに賭けていることを示しています。

資金調達率を取引戦略に活用することにより、市場のセンチメントを理解し、潜在的な価格変動に先んじて対応することが可能です。また、これを利用して、過剰なレバレッジを避けるためのタイミングを見定めたり、リスク管理の一環として利用することもできます。

コードの雛形

のボットは、特に仮想通貨デリバティブ市場において活用される永久契約の資金調達率を利用して取引判断を行います。以下の例では、ccxtライブラリを使って資金調達率を取得し、その情報を基に買いまたは売りのポジションを取る基本的なロジックを示します。

import ccxt
import time

# ccxtライブラリを使って取引所に接続
exchange = ccxt.binance({
    'apiKey': 'YOUR_API_KEY',
    'secret': 'YOUR_SECRET_KEY',
    'enableRateLimit': True  # APIレート制限を自動で管理
})

# 資金調達率に基づいて取引判断を行う関数
def funding_rate_based_trading():
    # マーケットの情報を取得
    market_data = exchange.load_markets()
    symbol = 'BTC/USDT:USDT'  # デリバティブ市場のシンボルを指定

    if symbol in market_data:
        ticker = exchange.fetch_ticker(symbol)
        funding_rate = ticker['info']['lastFundingRate']  # 資金調達率を取得
        print(f"Current Funding Rate for {symbol}: {funding_rate}")

        # 資金調達率が正で高い場合、多くのトレーダーがロングを取っていると見なす
        if float(funding_rate) > 0.01:  # 資金調達率のしきい値は調整可能
            print("High funding rate, considering to go short.")
            # ショートポジションを開くロジックをここに実装
        elif float(funding_rate) < -0.01:  # 資金調達率が負で低い場合
            print("Low funding rate, considering to go long.")
            # ロングポジションを開くロジックをここに実装
        else:
            print("Funding rate is neutral. No action recommended at this time.")

    else:
        print(f"Market data for {symbol} not available.")

# メインループ
def main():
    while True:
        funding_rate_based_trading()
        time.sleep(3600)  # 1時間ごとにループ(頻度は調整可能)

if __name__ == '__main__':
    main()

コードのポイント

  • 資金調達率の取得と評価: 資金調達率を取得し、その値に基づいて市場が過度に一方向に偏っているかどうかを評価します。
  • ポジション取り: 資金調達率が極端に高いまたは低い場合、それぞれショートポジションまたはロングポジションを検討します。
  • ループ実行: 特定の間隔で市場の状況をチェックし続けます。

このコードは基本的なフレームワークを提供しますが、実際の取引ではより詳細なリスク管理戦略、注文サイズの計算、スリッページ対策などを追加する必要があります。また、市場の動向や資金調達率の変動に応じて適宜調整することが重要です。

改良版

資金調達率(Funding Rate)を基にした自動取引ボットの実運用におけるリスクや問題点に対処するための改善版コードです。

リスクと対策

  1. 市場の不確実性と急変: 資金調達率が急激に変動する可能性があります。
  2. APIのレート制限: 高頻度でAPIを叩くと、アクセス制限を受けるリスクがあります。
  3. エラーハンドリングの不足: APIからの応答にエラーが含まれている場合、適切に対応できないとシステムが停止する可能性があります。
  4. 資金管理の欠如: 一度に大量の資金をリスクに晒すことは避けるべきです。
import ccxt
import time

# APIキーの安全な管理
api_key = 'YOUR_API_KEY'
api_secret = 'YOUR_SECRET_KEY'

# ccxtを使って取引所に接続、レート制限の有効化
exchange = ccxt.binance({
    'apiKey': api_key,
    'secret': api_secret,
    'enableRateLimit': True
})

# 資金調達率を基に取引する関数
def funding_rate_based_trading():
    try:
        symbol = 'BTC/USDT:USDT'  # デリバティブ市場のシンボル
        ticker = exchange.fetch_ticker(symbol)
        funding_rate = float(ticker['info']['lastFundingRate'])
        print(f"Current Funding Rate for {symbol}: {funding_rate}")

        # 資金調達率に基づく取引判断
        if funding_rate > 0.01:
            print("High funding rate, considering to go short.")
            # ここにショートポジションを開くロジックを実装
        elif funding_rate < -0.01:
            print("Low funding rate, considering to go long.")
            # ここにロングポジションを開くロジックを実装
        else:
            print("Funding rate is neutral. No action recommended at this time.")
    except ccxt.NetworkError as e:
        print(f"Network error occurred: {e}")
        time.sleep(10)  # 短い休止後再試行
    except ccxt.ExchangeError as e:
        print(f"Exchange error occurred: {e}")
    except Exception as e:
        print(f"An unexpected error occurred: {e}")

# 定期的に市場をチェックするメインループ
def main():
    while True:
        funding_rate_based_trading()
        time.sleep(3600)  # 1時間ごとに実行

if __name__ == '__main__':
    main()

コードのポイント

  • エラーハンドリングの強化: ccxtのNetworkErrorやExchangeErrorをキャッチし、それぞれ適切に対応しています。これにより、一時的なネットワーク問題や取引所の問題に対してロバストな対応が可能になります。
  • 運用の安定性を考慮: システムの安定運用のため、エラー発生時には一定時間スリープし、その後再試行します。
  • リアルタイムの市場データ利用: リアルタイムの市場データに基づく動的な判断を行い、市場の変動に応じて柔軟に対応します。

このコードは、基本的な構造を提供していますが、実際の運用ではさらに詳細なリスク管理戦略や資金管理、ポジションサイズの計算が必要です。また、市場の動向や資金調達率の詳細な分析を通じて、戦略を適宜調整することが重要です。

まとめ

今回はFRbotの雛形を2種類作ってみました。

Yodaka

戦略の幅が広がるのは良いことです。

今後もこの調子で開発の状況を発信していきます。

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