前回の記事に引き続き、今回も仮想通貨botの開発状況をまとめていきます。

今回も論文ベースのbot開発アイデアをまとめてみました。
Improved Round-by-round Soundness IOPs via Reed-Muller Codeshttps://t.co/RI3aW14paB
— よだか(夜鷹/yodaka) (@yodakablog) April 5, 2025
論文要約
論文のタイトルは「Improved Round-by-round Soundness IOPs via Reed-Muller Codes」というもので、Reed-Muller符号を用いたインタラクティブなオラクル証明(IOP)について述べられています。この研究では、セキュリティパラメータとクエリ数のバランスを取りながら、ラウンドごとのサウンドネスを改善する新しいアプローチを提案しています。具体的には、低サウンドネス領域での線対点テストを利用しており、これが改善の主な源泉となっています。
本研究では、R1CS(Rank-One-Constraint-Satisfaction)というNP完全問題に対するIOPを導入し、特に多変量Reed-Muller符号を活用しています。このアプローチにより、Reed-Solomon符号を用いた既存のIOPよりもクエリ数とラウンド数を削減しています。
また、この論文ではIOPの構築において重要な「側条件」の取り扱いについても詳細に説明しており、Reed-Muller符号による新たな検証方法を提示しています。これにより、各IOP構築で必要とされるクエリの複雑さが低減され、効率的な証明プロセスが可能となっています。
用語解説
1. Reed-Muller符号とは何か?
Reed-Muller符号は、エラー訂正能力を持つ数学的な符号の一種です。この符号は、データが伝送中に誤りが発生した場合に、元のデータを復元するのに使われます。つまり、データの安全性を高めるための技術です。
2. インタラクティブなオラクル証明(IOP)とは何か?
インタラクティブなオラクル証明(IOP)は、複雑な計算や命題が正しいかどうかを証明する方法の一つです。証明者(プルーバー)と検証者(バリデーター)が対話することで、証明者は命題が真であることを検証者に納得させます。この過程では、検証者が証明者から追加情報を要求することができ、証明者はその要求に応じて情報を提供します。
3. NP完全問題とR1CS(Rank-One-Constraint-Satisfaction)
NP完全問題は、すべてのNP問題が多項式時間でこれに帰着可能であるという特性を持つ計算の問題です。R1CSは、NP完全クラスに属する問題の一つで、特定の形式の方程式が解を持つかどうかを判定する問題です。具体的には、与えられた制約(方程式)を満たす変数の組み合わせが存在するかを調べます。
4. 論文の主な貢献
この論文の主な貢献は、Reed-Muller符号を用いた新しいIOPを提案し、クエリの複雑性(検証者が問い合わせる必要のある情報の量)とラウンド数(対話の回数)を削減したことです。これにより、より効率的に問題の正しさを証明できるようになります。
5. 「側条件」の取り扱い
論文ではIOPの構築において「側条件」という概念を取り入れています。これは、証明の過程で特定の条件を満たす必要がある場合に用いられる技術です。側条件を効果的に管理することで、より少ないクエリで正確な証明が可能になります。

このように、Reed-Muller符号を活用して効率的なIOPを構築することは、セキュリティやデータ整合性を確保する上で重要な技術的進歩を示しています。
bot開発のアプローチ
論文の内容を踏まえると、効率的かつセキュアな取引が可能になるかもしれません。以下、論文から展開可能なアプローチと、その根拠となる論文の部分を説明します。
アプローチ1: 高い信頼性を持つ取引検証システムの構築
アプローチの説明: Reed-Muller符号を利用したインタラクティブなオラクル証明(IOP)の技術を応用して、取引の正当性を高速に検証するシステムを開発します。特に、仮想通貨取引において不正または誤ったトランザクションを効率的に検出し、拒否する仕組みを導入することが考えられます。
論文からの展開: 論文のセクション1で紹介された「ラウンドごとのサウンドネスを持つIOP」は、各取引が有効であることを段階的に確認し、取引の正当性を一貫して保証する手法として応用できます。これにより、各取引の正当性が保証され、トランザクションプール内の不正な取引を迅速に識別することが可能になります。
アプローチ2: 側条件を利用した高度な取引ルールの導入
アプローチの説明: 側条件を用いたIOPの枠組みを応用して、特定の取引ルールや条件を満たすかどうかを検証する仕組みを開発します。例えば、特定の価格範囲内での取引や特定の時間窓内での取引量の制限など、複雑な取引ルールを設定し、それらが遵守されているかをリアルタイムでチェックすることが可能です。
論文からの展開: 論文の中で解説されている「側条件の取り扱い」は、取引条件やルールが取引ごとにどのように適用されているかを検証するための強力なツールとして利用できます。これにより、特定の取引条件下でのみ許可されるトランザクションを効率的にフィルタリングすることができます。
アプローチ3: セキュリティパラメータの最適化
アプローチの説明: 取引のセキュリティを強化するために、論文で説明されているセキュリティパラメータを最適化するアプローチを取り入れます。これにより、取引プロセス全体のセキュリティを向上させることができるだけでなく、システム全体のパフォーマンスを保ちながらセキュリティを確保することが可能になります。
論文からの展開: 論文の技術的な詳細部分で説明されているセキュリティパラメータの調整は、仮想通貨取引のセキュリティレベルを向上させるために重要です。特に、取引時のクエリの複雑さやラウンド数の最適化を通じて、効率的かつ安全な取引システムを実現することができます。
これらのアプローチは、仮想通貨の自動取引botにおいて、トランザクションの効率とセキュリティを同時に向上させるための有効な手段となるでしょう。
まとめ1
仮想通貨の自動取引botを開発するための主要なアプローチを以下に簡潔にまとめます。
- 高い信頼性を持つ取引検証システムの構築:
- Reed-Muller符号を用いたインタラクティブなオラクル証明(IOP)を応用して、取引の正当性を高速に検証します。この方法で不正または誤ったトランザクションを効率的に検出し、拒否するシステムを構築します。
- 側条件を利用した高度な取引ルールの導入:
- 側条件を用いたIOPの枠組みを活用し、特定の取引ルールや条件を満たすかどうかを検証する仕組みを導入します。これにより、複雑な取引ルールを設定し、リアルタイムでその遵守をチェックできます。
- セキュリティパラメータの最適化:
- 論文で解説されたセキュリティパラメータを用いて、取引プロセス全体のセキュリティを強化します。この最適化により、高いセキュリティを維持しつつシステムのパフォーマンスも保持します。
これらのアプローチは、効率とセキュリティのバランスを取りながら、信頼性の高い自動取引botを開発するための基盤を提供します。
コード例
以下は、仮想通貨自動取引botにおける各アイデアを実装するための基本的なPythonコード例です。これらは実際のトレーディング環境には適用できる準備が整っているわけではなく、概念の理解と実験的な実装を目的としています。
1. 高い信頼性を持つ取引検証システムの構築
この例では、偽の取引データを生成し、特定の基準を満たすかどうかをチェックする簡単な関数を定義します。
import random def is_valid_transaction(transaction): """取引の正当性をチェックするシンプルな関数""" # ここでは、取引額が最小値と最大値の範囲内にあるかどうかをチェックします。 min_amount, max_amount = 10, 10000 return min_amount <= transaction['amount'] <= max_amount # 偽の取引データを生成 transaction = { 'amount': random.randint(0, 15000), 'from': 'user123', 'to': 'vendor456' } # 取引の検証 if is_valid_transaction(transaction): print("Valid transaction") else: print("Invalid transaction")
2. 側条件を利用した高度な取引ルールの導入
取引が特定のルールや条件を満たしているかを検証する関数を定義します。
def check_trade_rules(transaction, rules): """取引が定義されたルールを満たしているかを検証する関数""" for rule in rules: if not rule(transaction): return False return True # ルールの定義 def rule_amount_range(transaction): return 100 <= transaction['amount'] <= 5000 def rule_time_window(transaction): # 取引が許可される時間帯を仮定します(例:午前9時から午後5時) return 9 <= transaction['time'] <= 17 # 取引データ transaction = { 'amount': 450, 'time': 14, 'from': 'user123', 'to': 'vendor456' } # ルールのリスト rules = [rule_amount_range, rule_time_window] # 取引ルールの検証 if check_trade_rules(transaction, rules): print("Transaction meets all rules") else: print("Transaction violates rules")
3. セキュリティパラメータの最適化
以下は、取引データの検証においてセキュリティパラメータを動的に調整する例です。
def verify_transaction(transaction, security_level): """セキュリティレベルに基づいて取引を検証する関数""" if security_level == 'high': # 高セキュリティでは、より厳格なチェックが必要 return transaction['amount'] > 100 and transaction['is_encrypted'] else: # 低セキュリティでは、基本的なチェックのみ return transaction['amount'] > 100 # 取引データ transaction = { 'amount': 150, 'is_encrypted': True, 'from': 'user123', 'to': 'vendor456' } # 取引の検証(高セキュリティレベル) if verify_transaction(transaction, 'high'): print("Transaction verified under high security") else: print("Transaction failed under high security")
これらのコードは基本的なフレームワークを提供し、具体的な取引ロジックやセキュリティ要件に応じて拡張・カスタマイズが可能です。
実践的なコード例
それぞれの例を実践的なケースに対応するように拡張・改善するために、以下のように修正してみましょう。
1. 高い信頼性を持つ取引検証システムの構築
取引データに関するより複雑な検証を行い、ログを記録して異常を検出する機能を追加します。
import logging def is_valid_transaction(transaction): """取引の正当性を詳細にチェックする関数""" min_amount, max_amount = 10, 10000 if not (min_amount <= transaction['amount'] <= max_amount): logging.warning(f"Transaction amount {transaction['amount']} is out of bounds.") return False if not transaction['from'] or not transaction['to']: logging.warning("Transaction must include 'from' and 'to' fields.") return False return True # ロギングを設定 logging.basicConfig(level=logging.INFO) # 偽の取引データを生成 transaction = { 'amount': 5000, 'from': 'user123', 'to': 'vendor456' } # 取引の検証 if is_valid_transaction(transaction): logging.info("Valid transaction") else: logging.info("Invalid transaction")
2. 側条件を利用した高度な取引ルールの導入
取引のルールをより具体的に定義し、実際の取引条件に基づいた例を展開します。
def check_trade_rules(transaction, rules): """取引が定義されたルールを満たしているかを検証する関数""" for rule in rules: if not rule(transaction): return False, rule.__name__ return True, None def rule_amount_range(transaction): return 100 <= transaction['amount'] <= 5000 def rule_time_window(transaction): return 9 <= transaction['time'] <= 17 def rule_currency(transaction): return transaction['currency'] == 'BTC' transaction = { 'amount': 300, 'time': 16, 'currency': 'BTC', 'from': 'user123', 'to': 'vendor456' } rules = [rule_amount_range, rule_time_window, rule_currency] valid, failed_rule = check_trade_rules(transaction, rules) if valid: print("Transaction meets all rules") else: print(f"Transaction violates {failed_rule}")
3. セキュリティパラメータの最適化
取引のセキュリティレベルに基づいて動的に検証条件を変更し、トレーダーが設定をカスタマイズできるようにします。
def verify_transaction(transaction, security_settings): """取引のセキュリティレベルに基づいて動的に検証する関数""" if security_settings['level'] == 'high': return transaction['amount'] > security_settings['min_amount'] and transaction['is_encrypted'] return transaction['amount'] > security_settings['min_amount'] transaction = { 'amount': 200, 'is_encrypted': True, 'from': 'user123', 'to': 'vendor456' } security_settings = { 'level': 'high', 'min_amount': 150 } if verify_transaction(transaction, security_settings): print("Transaction verified under specified security settings") else: print("Transaction failed under specified security settings")
これらの修正を通じて、各機能は実際の取引環境に近い形で動作するようになり、実践的なシナリオでの使用に適したものとなります。
まとめ2:次へのステップ
今回は「Reed-Muller符号の活用」をベースにbot開発のアプローチをまとめてみました。これらのアプローチをベースにしてテスト運用を繰り返しながら、実践で使えるプログラムとして取り入れていきます。
今回の記事でまとめたことは、bot全体から見ると部分的なアプローチです。具体的には、特に重要なポイントとして以下のエリアに適用すると効果的だと思われます。
1. 取引実行前の検証とセキュリティフィルター
自動取引botは、市場データを解析して取引シグナルを生成しますが、実際に取引命令を出す前に、取引が適切であるかどうかを確認する必要があります。ここで提案された「高い信頼性を持つ取引検証システム」を導入することで、不正確または不正な取引を事前にフィルタリングし、エラーや損失のリスクを最小限に抑えることができます。
2. 取引ルールエンジン
取引条件や取引ルールを適用する部分に「側条件を利用した高度な取引ルールの導入」を組み込むことで、特定の条件下でのみトレードを実行するように制御することが可能です。これにより、市場の特定の状況に最適化された戦略を実行することができ、効率的なリスク管理が行えます。
3. システム設定とセキュリティ管理
取引botの設定やセキュリティ管理部分に「セキュリティパラメータの最適化」を組み込むことで、システムのセキュリティを柔軟に調整し、市場状況やリスク許容度に応じて取引保護のレベルを変更することが可能です。これにより、セキュリティブリーチや不測の市場変動から資産を守るための追加措置を講じることができます。
具体的な組み込み方
- 取引シグナルの生成: 市場データと取引ルールをもとに、取引シグナルを生成します。この段階で、取引条件の検証と側条件を組み込み、適切なシグナルかどうかを判断します。
- リスク評価モジュール: 取引実行前にリスクを評価するモジュールに、取引の検証ロジックを組み込みます。この段階でセキュリティパラメータに基づく検証を行い、リスク管理を強化します。
- オーダーマネジメント: 取引命令を実行する前に最終的なチェックを行い、すべての取引ルールとセキュリティ要件が満たされていることを確認します。ここで側条件とセキュリティ設定の適用を確認します。
これらのアプローチを適切に組み込むことで、自動取引botはより精度高く、安全に市場で稼働することが可能となるはずです。
今後もこの調子でbot開発の状況を発信していきます。