現在、MMbot開発にコミットしていることの合理性とその根拠及び今後の方針と不確実性・リスクについて詳細をまとめておく。
1. 「MM botから始める」合理性と論理的根拠
観点 | 根拠 |
---|---|
学習効率ROI | 秒単位で取引→PDCAサイクルが高速。板取得・非同期I/O・約定監視など“全戦略の共通基礎”を一気に経験できる。 |
資本効率 | 小口でもポジション時間が短く在庫リスク限定。手数料リベート込みで日利0.05〜0.15 %程度を狙えるため“学習用実弾”として適量。 |
心理負荷の管理 | 大損が出にくく、損失ストレスが小さい。集中力を開発と検証に振り向けやすい。 |
将来拡張のハブ | WebSocket/スプレッド計測/自動キャンセルは、FR裁定・ペアトレ・HFTフロントランにもそのまま流用できる。 |
2. 並行して進めると良い“次段階”戦略
フェーズ | 戦略 | 目的 |
---|---|---|
Low-Freq 裁定 | Funding-Rate Δニュートラル (現物+Perp 両建て) | デルタ0でキャリー獲得。MMで得た在庫を活用しやすい。 |
Mid-Freq 裁定 | 同一所ペアトレード / イベントドリブン (上場直後乖離など) | 統計モデルと自動ヘッジの練習台。 |
High-Freq 拡張 | L2フロントランMM / クロス所アービトラージ | レイテンシ最適化と複数口座管理を実戦で学ぶ。 |
On-chain サイド | DEX清算ボット / Flash-MEV 模擬実装 | Year 2 以降の高ROIチャネルを試験的に探る。 |
3. 並列プロトタイピングでマイルストーン圧縮(1 年間Ver.)
四半期 | 主タスク | 並列ミニスプリント | 完了指標 (Exit) |
---|---|---|---|
Q1 | MM bot v1.0(BTC/ETH) ──基本ロジック/ログ/エラー復旧 | FR監視ダッシュボード原型 | 取引1,000回・想定外ロス0 |
Q2 | MM bot v2.0(複数アルト・自動サイズ調整) | FR Δニュートラル試行(極小ロット) | 累積約定3,000・在庫Δ±0.5 %以内 |
Q3 | FR裁定ミニポートフォリオ(片道≤0.5 %滑り) | ペアトレ/Event-Driven PoC | 月利>2 % or 年換算>20 % |
Q4 | レイテンシ最適化(バイナリWS・DPDK検証) | DEX清算シミュレータ・Flashbots送信実験 | MM/FR両戦略の同時稼働+失敗MTTR<24h |
ポイント
- 本線(MM→FR)と実験線(ペアトレ/MEV)を毎Q 10–20 %の工数で並列運転し、“逃げ道”を常備。
- 卒業条件を KPI で定量化し、達成次第 次戦略へ即シフト。
4. 無視できない不確実性・リスク一覧
リスクカテゴリ | 詳細 | 緩和アイデア |
---|---|---|
市場構造変化 | ①大手MMの寡占でスプレッド急縮小 ②FR低下でキャリー消滅 | ・ROIが閾値を割ったら即「ペアトレ or MEV」へ資本再配置 ・半年ごとに収益曲線レビュー |
技術ロックイン | 低レイテンシ偏重で統計・オンチェーン系が疎か | ・月1回の異分野スプリント (MLモデル、Solidity監査など) |
資本効率 | MMは拘束証拠金が意外に膨らみ“時給”が下落 | ・ポジション上限を総資本の20 %以内に設定し、残額はFR裁定へ |
規制・取引所リスク | オフショアPerp規制、KYC強化、所停止 | ・二重口座+複数所フォールバック ・国内/DEXを含むバックアップ経路を用意 |
心理的停滞 | 微益が続き飽き/集中力低下 | ・週次ではなく月次PnLでモニタリングし“ノイズ”の感情影響を削減 ・公開開発ログで外圧を活用 |
インフラ障害の連鎖 | 取引所ダウン+ローカル障害同時発生 | ・クラウド側に冗長Botコピー+自動フェイルオーバー ・UPS・LTEバックアップ回線 |
最終指針
- MM botは“学習効率ROI”が最強。ただし収益の本命と過信しない。
- 並列プロトタイピングで常に“次の高ROI戦略”を仕込み、スプレッド/FRが縮んだら即スイッチできる体制を 1 年目で完成させる。
- KPIと卒業基準を数値で管理し、「達成=次フェーズ移行」をルール化して“沼化”を防止。
- 上表のリスクを月次レビューで再評価し、資本・工数を動的に再配分する。
この設計なら、「安全に基礎を固めつつチャンスを逃さない」バランスを 12 か月で実装可能。