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開発記録#123(2024/11/10)【DeFi bot開発】「清算とアトミックアービトラージ」

2024年11月10日

前回の記事に引き続き、今回も仮想通貨botの開発状況をまとめていきます。

今回は「清算botにアトミックアービトラージを組み合わせる」ことについてまとめました。

Yodaka

清算bot開発の備忘録です。

関連
仮想通貨botの開発記録#67(2024/3/30)「清算Botの開発①」

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アトミックアービトラージとは

DeFi(分散型金融)の文脈でのアトミックアービトラージは、ブロックチェーン上で複数の取引が単一のトランザクション内で実行されるアービトラージ戦略を指します。これは「アトミック」という言葉が使われる理由で、全ての取引が一つのトランザクション内で完結するため、途中で取引が失敗するリスクがありません。もしトランザクションの一部が失敗した場合、全ての取引がロールバックされるため、部分的に成功することはありません。

アトミックアービトラージは特に、価格差を利用して異なるDeFiプラットフォーム間で資産を売買する際に有用です。例えば、あるプラットフォームで暗号通貨を低価格で購入し、別のプラットフォームで高価格で同時に売却することが可能です。このプロセスはスマートコントラクトを通じて自動化され、高速で実行されるため、効率的なアービトラージ機会を提供します。

これにより、市場の効率性が向上し、異なるプラットフォーム間の価格差が縮小することが期待されます。アトミックアービトラージはDeFiが提供する透明性とプログラム可能性を活用した戦略の一例です。

清算とアトミックアービトラージを組み合わせた戦略は、DeFiの市場で効果的に利益を上げることができる複合戦略です。

清算とアトミックアービトラージを組み合わせた戦略

ステップ1: 監視と機会の同定

  • 複数のDeFiプラットフォームをリアルタイムで監視し、特に清算可能なポジション(過剰担保が不足しているポジション)を探します。
  • 同時に、これらのプラットフォームで価格差が存在するトークンを探します。価格差が大きい場所はアービトラージの機会が存在する可能性が高いです。

ステップ2: アトミックトランザクションの設計

  • スマートコントラクトを用いて、清算とアービトラージを一つのトランザクションで実行できるよう設計します。
  • 例えば、あるプラットフォームで過剰担保が不足しているポジションを清算し、得た資産を即座に別のプラットフォームで高値で売却するロジックを組み込みます。

ステップ3: エクスキューション

  • スマートコントラクトが清算可能なポジションを自動的に識別し、関連するアービトラージ取引と合わせて即座に実行します。
  • トランザクションはアトミックであるため、全ての処理が成功するか、一つでも失敗すれば全体がロールバックされます。

ステップ4: リスク管理

  • ガス料金や取引手数料を考慮に入れ、期待収益がこれらのコストを上回るか評価します。
  • スライページ(取引による市場価格の変動)やトランザクションの遅延リスクを最小化するための対策を講じます。

技術的な実装

  • イベントリスナーを使ってブロックチェーン上の特定のイベント(担保率の変動など)を監視する。
  • クロスチェーン機能を有効にして異なるブロックチェーン間でのアトミックトランザクションを実現するために、ブリッジやラップトークンを利用します。

この戦略は高い技術力と市場への洞察が必要ですが、DeFiの市場の非効率性を利用して利益を出す有効な方法の一つです。プラットフォーム間の価格差を利用した清算とアトミックアービトラージは、自動化とスマートコントラクトの機能を活用することで最大限の効果を発揮します。

優位性

清算とアトミックアービトラージを組み合わせた取引戦略は、DeFi(分散型金融)環境において特に強力な利益機会を提供することができます。ここでは、この組み合わせがもたらす主な優位性について説明します。

1. リスクの最小化

アトミックアービトラージを利用することで、取引のリスクを最小限に抑えることができます。アトミックトランザクションは「全てまたは無し」の性質を持ち、関連するすべての操作が単一のトランザクション内で完了するため、部分的な失敗がありません。これにより、市場の変動や他の不確実な要素による影響を受けることなく、確実に利益を獲得することが可能になります。

2. 効率的な資本利用

清算とアトミックアービトラージを組み合わせることで、清算された資産を即座に別の市場で売却し、価格差利益を得ることができます。これにより、通常の取引では発生しがちな資金の閉塞や時間の浪費を避け、より効率的に資本を回転させることができます。

3. 市場効率の改善

この戦略は市場の効率性を高める効果もあります。異なるプラットフォーム間での価格差を利用することで、市場全体の価格の均一性が向上し、過剰なスプレッドやアービトラージ機会が減少することで、より健全な市場環境を促進します。

4. 高速実行とオートメーション

スマートコントラクトを利用した自動化された取引ロジックは、市場でのアービトラージ機会を非常に迅速に把握し実行することを可能にします。この高速性は、特にデジタル資産市場のように急激に変動する市場条件下で大きなアドバンテージとなります。

5. 透明性とセキュリティ

ブロックチェーン技術により、全てのトランザクションは透明かつ不変のレコードとして保存されます。これにより、取引の信頼性が向上し、不正行為や誤りが起こりにくくなります。また、スマートコントラクトは事前にプログラムされた条件に基づいて自動的に実行されるため、人的ミスからも保護されます。

これらの優位性により、清算とアトミックアービトラージの組み合わせは、デジタル資産市場において強力な戦略となる可能性があります。特に、高い市場の変動性と不確実性の中で安定した収益を目指すトレーダーや投資家にとって魅力的です。

問題点と対策

清算とアトミックアービトラージを組み合わせた取引戦略には多くの利点がありますが、いくつかの問題点も存在します。以下にその主な問題点と対策を挙げます。

1. 高いガス料金

問題点

イーサリアムネットワークのようなブロックチェーン上でアトミックトランザクションを行う際、多数の計算が必要とされるため、ガス料金が非常に高くなることがあります。特にネットワークが混雑しているとき、取引コストが利益を上回ることがあります。

対策

  • ガス料金の最適化: スマートコントラクトの関数を最適化して、必要なガス量を減らします。
  • オフピーク時間の利用: ネットワークの混雑が少ない時間帯にトランザクションを実行する。
  • フラッシュボットの利用: トランザクションをプールすることで、ガス料金を節約する。

2. スリッページのリスク

問題点

アトミックアービトラージは複数の取引を含むため、取引が実行されるまでの間に市場価格が変動する可能性があります。このような価格のずれが生じると、期待した利益が得られない場合があります。

対策

  • 価格オラクルの利用: 実行前に最新の市場価格を確認し、予期せぬ価格変動に対処します。
  • 限定価格注文の設定: スリッページを最小限に抑えるために、最大許容スリッページを設定します。

3. スマートコントラクトのバグや脆弱性

問題点

スマートコントラクトはソフトウェアであり、バグや脆弱性が存在する可能性があります。これが原因で資金が失われるリスクがあります。

対策

  • 徹底的なテストと監査: スマートコントラクトを本番環境にデプロイする前に、複数のテストネットで広範囲にわたるテストを行い、第三者によるセキュリティ監査を受ける。
  • バグ報奨金プログラムの設置: コミュニティからのフィードバックを奨励し、潜在的なバグを早期に発見します。

4. 法的および規制の問題

問題点

特定の地域や国では、アトミックアービトラージや清算のような取引戦略が法的に制限されている場合があります。これに違反すると法的なリスクや罰則が課されることがあります。

対策

  • 法的アドバイスの取得: 取引を行う前に、適用される法律や規制を理解し、法的なアドバイスを受ける。
  • 遵法性の維持: 最新の規制動向を常に監視し、遵守するよう努めます。

これらの問題点と対策を理解し適切に対応することで、清算とアトミックアービトラージを組み合わせた取引戦略のリスクを管理し、その利点を最大限に活用することが可能です。

基本構造

イーサリアムのスマートコントラクトとのインタラクションには、Pythonライブラリのweb3.pyが適しています。ここでは、簡単な例として、イーサリアムのネットワーク上でスマートコントラクトの関数を呼び出すスクリプトを書いてみましょう。

まず、必要なライブラリをインストールし、初期設定を行います。以下のコードは、ローカルまたはリモートのイーサリアムノードに接続し、スマートコントラクトからデータを読み取る基本的な流れを示しています。

from web3 import Web3

# 接続先のノード指定(ここではInfuraを使用)
infura_url = 'https://mainnet.infura.io/v3/your_project_id'
web3 = Web3(Web3.HTTPProvider(infura_url))

# イーサリアムの接続確認
print("Is connected:", web3.isConnected())

# スマートコントラクトのアドレスとABI
contract_address = '0xコントラクトアドレス'
contract_abi = [
    # コントラクトのABIをここにコピー
]

# スマートコントラクトのインスタンスを作成
contract = web3.eth.contract(address=contract_address, abi=contract_abi)

# コントラクトからデータを読み取る(読み取り専用の関数を呼ぶ場合)
result = contract.functions.yourFunctionName().call()
print("Function result:", result)

# トランザクションを送信する(書き込みが必要な関数を呼ぶ場合)
tx_hash = contract.functions.yourFunctionName(arg1, arg2).transact({'from': web3.eth.accounts[0]})
print("Transaction hash:", tx_hash.hex())

# トランザクションのレシートを待つ
tx_receipt = web3.eth.wait_for_transaction_receipt(tx_hash)
print("Transaction receipt:", tx_receipt)

このスクリプトでは以下のことを行います:

  1. Infuraを通じてイーサリアムのメインネットに接続。
  2. スマートコントラクトのABIとアドレスを使って、コントラクトのインスタンスを作成。
  3. コントラクトの関数を呼び出し、結果を取得またはトランザクションを送信。

スマートコントラクトのABIアドレスは、コントラクトがデプロイされた後に得られるもので、それらを適切に設定する必要があります。また、トランザクションを送信する際は、適切なアカウントで認証されていることを確認し、ガスリミットやガスプライスも適切に設定することが重要です。

プログラムのプロトタイプ

import os
import asyncio
from web3 import Web3
import aiohttp

# 接続先のノード指定(Ropsten Testnetを使用)
infura_url = 'https://goerli.infura.io/v3/your_actual_project_id'
web3 = Web3(Web3.HTTPProvider(infura_url))

# AaveスマートコントラクトのアドレスとABI(適宜更新が必要)
aave_address = '0xアドレス'
aave_abi = [...]  # AaveのABI

# Aaveコントラクトのインスタンス化
aave = web3.eth.contract(address=aave_address, abi=aave_abi)

async def fetch_data(session, url):
    async with session.get(url) as response:
        return await response.json()

async def monitor_positions_and_opportunities():
    async with aiohttp.ClientSession() as session:
        # 清算可能ポジションの検出
        positions = await get_liquidatable_positions(aave, session)
        
        # アービトラージ機会の検出
        arbitrage_opportunities = await find_arbitrage_opportunities(session)

        # 機会が見つかった場合にアトミックトランザクションを実行
        if positions and arbitrage_opportunities:
            await execute_atomic_arbitrage(positions, arbitrage_opportunities)

async def get_liquidatable_positions(aave_contract, session):
    # 清算可能なポジションを返す
    # APIまたはスマートコントラクト関数呼び出しにより実装
    # 例: await fetch_data(session, 'API_URL')
    pass

async def find_arbitrage_opportunities(session):
    # 価格差を調査するロジック
    # 他のDeFiプラットフォームとの比較など
    # 例: await fetch_data(session, 'API_URL')
    pass

async def execute_atomic_arbitrage(positions, opportunities):
    # 清算とアービトラージを組み合わせたトランザクションを構築
    for position in positions:
        for opportunity in opportunities:
            # アトミックトランザクションの実行
            transaction = aave.functions.liquidateAndTrade(position, opportunity).buildTransaction({
                'from': web3.eth.accounts[0],
                'gas': calculate_gas(),
                'gasPrice': calculate_gas_price()
            })
            signed_tx = web3.eth.account.signTransaction(transaction, private_key='your_private_key')
            web3.eth.sendRawTransaction(signed_tx.rawTransaction)

def calculate_gas():
    # 適切なガス量の計算
    return 200000  # 例

def calculate_gas_price():
    # 現在のガス価格に基づく適切なガス価格の計算
    return web3.toWei('20', 'gwei')

# メイン関数
async def main():
    await monitor_positions_and_opportunities()

# 非同期イベントループの実行
if __name__ == "__main__":
    asyncio.run(main())

このコードは、イーサリアムネットワーク上のAaveというDeFi(分散型金融)プラットフォームで、清算可能なポジションとアービトラージ機会をリアルタイムで監視し、見つかった機会を利用してアトミック(一括)トランザクションを実行する自動化されたプログラムです。コードを部分ごとに分けて解説します。

モジュールのインポート

import os
import asyncio
from web3 import Web3
import aiohttp
  • os: オペレーティングシステムとのやりとりを可能にするモジュール。
  • asyncio: Pythonで非同期プログラミングを行うためのライブラリ。タスクを同時に並行実行できるようにすることで、効率的なプログラム動作が可能になります。
  • Web3: イーサリアムブロックチェーンとのやりとりを可能にするためのPythonライブラリ。
  • aiohttp: 非同期HTTPクライアント/サーバーのためのライブラリ。

接続とスマートコントラクトの設定

infura_url = 'https://goerli.infura.io/v3/your_actual_project_id'
web3 = Web3(Web3.HTTPProvider(infura_url))
aave_address = '0xアドレス'
aave_abi = [...]  # AaveのABI
aave = web3.eth.contract(address=aave_address, abi=aave_abi)
  • この部分は、Infuraというサービスを通じてイーサリアムのネットワークに接続します。ここで使われているinfura_urlは、ネットワークへの接続情報(Goerli Testnet)を含んでいます。
  • aave_addressaave_abi: AaveプラットフォームのスマートコントラクトアドレスとABI(Application Binary Interface、スマートコントラクトとやり取りするためのインターフェース)を設定します。
  • aaveオブジェクトを初期化して、スマートコントラクトとのやりとりを可能にします。

メインロジック(非同期関数)

async def main():
    await monitor_positions_and_opportunities()

if __name__ == "__main__":
    asyncio.run(main())
  • main()関数はプログラムのエントリーポイント(始点)で、monitor_positions_and_opportunities()関数を非同期で実行します。
  • asyncio.run(main())はプログラムが非同期で実行されることを開始するコマンドです。

監視とアトミックトランザクション実行

async def monitor_positions_and_opportunities():
    async with aiohttp.ClientSession() as session:
        positions = await get_liquidatable_positions(aave, session)
        arbitrage_opportunities = await find_arbitrage_opportunities(session)
        if positions and arbitrage_opportunities:
            await execute_atomic_arbitrage(positions, arbitrage_opportunities)
  • この非同期関数はaiohttpを使って外部APIからデータを取得し、清算可能なポジションとアービトラージの機会を検出し、存在する場合はアトミックトランザクションを実行します。

ヘルパー関数

async def get_liquidatable_positions(aave_contract, session):
    pass

async def find_arbitrage_opportunities(session):
    pass

async def execute_atomic_arbitrage(positions, opportunities):
    # 清算とアービトラージのためのトランザクションを実行するロジック
    pass
  • これらの関数は、それぞれ清算可能なポジションの取得、アービトラージ機会の検索、そしてアトミックトランザクションの実行を担当します。具体的な実装がpassとして省略されているので、実際のAPI URLやロジックに応じて実装を追加する必要があります。

このコードは、特にDeFi環境で自動化された取引やリスク管理戦略を実行するための基盤を提供します。プログラムの非同期性は効率的なリソース管理を可能にし、複数のタスクをほぼ同時に実行することができます。

改善案

提案されたコードに対して数学的・論理的な観点からの改善点をいくつか挙げ、それぞれに対して実行可能な改善策を提案します。このコードは非常に基本的な形で提供されており、リアルタイムでの運用を考慮するといくつかの改善が必要です。

1. エラーハンドリングとロバストネスの向上

問題点

  • 現在のコードでは、外部APIへのリクエスト失敗やスマートコントラクトとのインタラクション時のエラーが適切に処理されていません。これにより、一時的なネットワークエラーやデータ問題でプログラムが停止するリスクがあります。

改善策

  • try-except ブロックを使用して例外を捕捉し、エラー情報をログに記録する。また、一定回数の再試行ロジックを実装して、一時的な問題に対処します。
async def fetch_data(session, url):
    try:
        async with session.get(url) as response:
            response.raise_for_status()  # HTTPエラーをチェック
            return await response.json()
    except Exception as e:
        print(f"Failed to fetch data: {e}")
        return None  # or retry logic

2. リアルタイムデータの処理効率

問題点

  • リアルタイムで複数のデータソースから情報を取得して処理する場合、各関数のレスポンスタイムがプログラム全体のパフォーマンスに大きく影響します。

改善策

  • asyncio.gatherを使用して、複数の非同期タスクを並行して実行し、全体のレスポンスタイムを短縮します。
async def monitor_positions_and_opportunities():
    async with aiohttp.ClientSession() as session:
        positions_future = get_liquidatable_positions(aave, session)
        opportunities_future = find_arbitrage_opportunities(session)
        positions, arbitrage_opportunities = await asyncio.gather(positions_future, opportunities_future)
        
        if positions and arbitrage_opportunities:
            await execute_atomic_arbitrage(positions, arbitrage_opportunities)

3. スマートコントラクトインタラクションの最適化

問題点

  • 現在のコードでは、トランザクションを構築する際のガス価格が固定値です。イーサリアムネットワークのガス価格は変動するため、常に最適なガス価格を使用しているとは限りません。

改善策

  • ネットワークの現在のガス価格を取得して動的にガス価格を設定する。
def calculate_gas_price():
    current_gas_price = web3.eth.gasPrice  # ネットワークから直接取得
    return current_gas_price

これらの改善策は、特にリソースが限られた個人開発者にも実行可能で、プログラムの効率と耐障害性を大幅に向上させることができると考えられます。また、開発プロセスにおいてこれらの改善を段階的に実施し、テストを行うことが重要です。

まとめ

今回は「清算とアトミックアービトラージを組み合わせること」についてまとめました。

Yodaka

勉強することが膨大にあるように感じますが、一つ一つ丁寧に理解していきます。

今後もこの調子で開発の状況を発信していきます。

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