【記:2025/12/17】
こんにちは、よだかです。
久しぶりの公開記事です。
前回の公開記事からナンバリングが飛んでいるのは、記事を自分専用の非公開記事にしてむやみにアウトプットしない方が開発が捗ることに気づいたからです。
で、この記事は公開しても問題ないと判断したので、晒します。
現在、専業の仮想通貨botterとして活動し始めてから、9ヶ月目に突入しています。
ここまでいろいろなbotを作ってきましたが、最近になって、自分に決定的に足りていない認識がはっきりしてきました。
それは、「PnLは唯一の真実である」という事実に、本気で向き合い切れていないということです。
市場は、理由や過程を一切説明してくれません。
どれだけ考えても、どれだけ理解が進んでも、増えないものは増えない。
その現実を、まだどこかで軽視していた気がしています。
正直、エッジでもなんでもない内容です。
ただし、守れなければbotterとしては確実に死ぬ話でもあります。
理解ばかりが進んで金は増えない、という状態をここで断ち切るために、
自分自身への確認として、あらためてまとめておこうと思います。
1. PnLは神であり、王であり、唯一の事実である
👉 「PnLに変換されない知性は、botterにとってはノイズ」
まず最初に、前提をはっきりさせておきます。
仮想通貨botterにとって、
PnLは「重要な指標の一つ」ではありません。
評価軸でも、参考情報でもありません。
PnLは、神であり、王であり、唯一の事実です。
これを極端だと感じるのであれば、
その感覚こそが、いまの自分に決定的に足りていないものだと思っています。
市場は、何も説明してくれません。
- なぜ勝ったのか
- なぜ負けたのか
- このロジックは正しかったのか
- 将来はどうなるのか
そうした問いに対して、市場は一切答えません。
市場が提示する一次情報は、常に一つだけです。
増えたか、減ったか。
それ以外はすべて、人間側の解釈にすぎません。
botを作っていると、どうしても「正しさ」に寄りかかりたくなります。
- このロジックは理にかなっている
- 構造的には優位なはずだ
- 期待値はプラスのはずだ
- 今はたまたま悪いだけだ
こうした思考は自然ですし、自分自身も何度もそう考えてきました。
ただし、ここで一つ、冷静に認めなければならないことがあります。
「正しいはず」は、PnLを1円も増やしません。
PnLがプラスであるという事実は、
どんな理屈よりも強いです。
逆に言えば、
- ロジックがどれだけ美しくても
- 設計がどれだけ洗練されていても
- 自分の中で強い納得感があっても
PnLがマイナスである限り、それは負けです。
ここに例外はありません。
怖いのは、「PnLは大事だ」と頭では理解している状態です。
自分も、まさにその状態にいました。
- PnLは見ている
- DDも確認している
- 勝っているか負けているかは把握している
それでもどこかで、
- 理解が進んでいるから問題ない
- まだ検証段階だから仕方ない
- 今は仕込み期間だ
そうした言い訳を、無意識のうちに許していました。
しかしそれは、向き合っているつもりになって、
一次情報から目を逸らしていただけだったのだと思います。
PnLは、感情を考慮しません。
- 努力しているか
- 真剣に取り組んでいるか
- 勉強しているか
- 昨日より理解が深まったか
そういったものは、一切評価されません。
評価されるのは、
口座残高の増減という事実だけです。
この冷酷さから目を背けた瞬間、
botterではなくなります。
だからこそ、問いは常に単純でなければなりません。
- このbotは、増やしたか
- 今日のPnLは、プラスかマイナスか
- このロジックは、金を生んだか
それ以外の問いは、すべて二次的なものです。
順番を間違えてはいけません。
PnLを神として扱う、というのは、
「金だけを見ろ」という話ではありません。
そうではなく、
PnL以外のあらゆる評価軸を、二次情報に落とす
という覚悟の話です。
理解も、構造も、思想も、仮説も、
すべてはPnLに照らされたときにのみ、価値を持ちます。
この前提に立たなければ、
次の議論には進めません。
仮説を殺すことも、
ロジックを捨てることも、
将来、勝ち始めたものを守ることも、
そもそも判断できません。
PnLという王座を空席にしたまま、
他の話をしても意味はありません。
ここまで読んで、不快感を覚えたとしても、
それは自然な反応だと思います。
自分自身も、この内容を真正面から書くのは、
正直あまり気持ちのいいものではありません。
それでも書いたのは、
ここから先に進むために、
この前提を曖昧なままにしたくなかったからです。
2. 「正しいか?」ではなく「増えたか?」で殴り続けろ
botを作っていると、
どうしても「正しいかどうか」を考えたくなります。
- このロジックは理にかなっているか
- 市場構造と整合しているか
- 期待値は本当にプラスか
- 理論的に破綻していないか
こうした問い自体は、間違っていません。
むしろ、botを作る人間としては自然な思考です。
ただし、ここで明確に線を引かなければならないことがあります。
市場は、「正しいかどうか」を一切評価しません。
市場が評価する問いは、常に一つだけです。
増えたか。
それだけです。
- 正しいが増えていない
- 理解は深まったが増えていない
- 構造的には優位だが増えていない
これらはすべて、市場から見れば同じ状態です。
増えていない=評価されていない。
botterとして一番危険なのは、
「正しさ」を判断軸の最上位に置いてしまうことです。
この状態に入ると、次のような思考が自然に出てきます。
- まだサンプルが足りない
- もう少し時間をかければ結果が出る
- 今は相場環境が悪い
- ロジック自体は間違っていない
自分自身も、何度もこの思考に足を取られてきました。
しかし、その判断は、すべて「二次情報」側の言い分です。
一次情報は、もっと単純です。
- 口座残高は増えたか
- 減ったか
それだけです。
理由も背景も解釈も、
すべてはその後に付け足される説明にすぎません。
一次情報を無視したまま、
二次情報で状況を正当化し始めた瞬間、
botterとしては危険な状態に入っています。
「増えたか?」という問いは、残酷です。
- 努力を評価しない
- 理解度を考慮しない
- 苦労を汲み取らない
ただ、事実だけを突きつけてきます。
だからこそ、無意識に
「正しいか?」という問いに逃げます。
その方が、精神的に楽だからです。
ですが、botterが本当に向き合うべき問いは、
常にこちらです。
このbotは、今日、増やしたか
このロジックは、金を生んだか
それ以外の問いは、
すべてこの問いの後にしか立ててはいけません。
順番を間違えると、
判断軸は簡単に歪みます。
「増えたか?」という問いは、
答えが常に二つしかありません。
増えた
増えていない
そして、それぞれに取れる行動も、ほぼ決まっています。
増えた → 継続
増えていない → 疑う/殺す
問いと行動が、一対一で対応しています。
一方で、「正しいか?」という問いは違います。
この問いは一見すると二値に見えますが、
実際の運用では、ほとんどの場合こう扱われます。
正しい(と思える) → 継続
正しい(と思える) → 改善
正しい(と思える) → もう少し様子見
「正しくない」とは、なかなか判定されません。
つまり、「正しいか?」を最上位に置いた瞬間、
行動のほとんどが延命方向に倒れます。
- やめない理由になる
- 触る理由になる
- 判断を先送りする理由になる
この構造に入った時点で、
仮説は殺されなくなります。
要するに、その仮説が間違っているかどうかを判断する基準そのものが壊れ、
しかも、その壊れたことに気づけなくなります。
これが、私が一番避けたい状態です。
一方で、「増えたか?」を最上位に置くと、
延命はほぼ不可能です。
増えていない、という一次情報は、
言い訳を許さないからです。
botterにとって、「正しさ」は目的ではありません。
PnLを生んだ結果として、後から付与される称号です。
順番が逆になった瞬間、
正しいはずだから続ける
正しいはずだから改良する
という、最も危険な自己納得ループに入ります。
だから、自分に対しては常に、
少し乱暴なくらいでちょうどいいと思っています。
- 正しいか? → どうでもいい
- 増えたか? → それがすべて
この問いを、
毎日、毎回、何度でも自分に突きつける。
一次情報で、自分自身を殴り続ける。
それができていない状態こそが、
自分に今、最も足りていない姿勢だと感じています。
この姿勢を持たない限り、
次の話には進めません。
なぜなら、「正しいか?」を優先する限り、
仮説は殺せないからです。
次は、
「仮説を立てる力より、仮説を殺す力が重要である」
という話を書いていきます。
ここまでの前提を受け入れたとき、
なぜ仮説に情を持つことが致命傷になるのかが、
自然と見えてくるはずです。
3. 仮説を立てる力より、仮説を殺す力が重要
ここまで書いてきて、
自分の中で一つ、明確になっている課題があります。
それは、
自分は仮説を立てる力に比べて、仮説を殺す力が明らかに弱い
という事実です。
これは能力の話ではありません。
姿勢の問題です。
仮説を立てること自体は、正直それほど難しくありません。
- 市場構造をこう解釈すれば説明がつく
- この指標とこの条件を組み合わせれば機能しそうだ
- この歪みを拾えれば優位性があるはずだ
こうした仮説は、考えればいくらでも出てきますし、
自分はむしろ、そちら側は得意な方だと思っています。
問題は、その後です。
仮説が「仮説のまま」存在し続けてしまう。
- 少しPnLが悪くても
- サンプルが少ないと言い聞かせ
- 理解が進んでいることを理由に
- 「まだ早い」と判断を先送りする
ここで、はっきり言います。
これは検証ではありません。延命です。
仮説は、立てた瞬間から「消耗品」であるべきです。
にもかかわらず、自分はどこかで
仮説に対して妙な扱いをしていました。
- 自分で考えた
- 自分なりに納得している
- 学びがあった
そうした理由で、
仮説を殺す判断を鈍らせていたと思います。
ここで、PnLという前提に立ち返ります。
PnLを神として据えた瞬間、
仮説の扱い方は一つに定まります。
- 仮説は
- PnLを生むか
- PnLを生まないか
それだけです。
それ以外の評価軸は、
すべて二次情報です。
仮説を殺せない一番の理由は、
「正しさ」にしがみついてしまうことです。
- 構造的には正しい
- 説明はつく
- 理論的に破綻していない
ですが、ここでも順番を間違えてはいけません。
正しくても、増えていなければ意味はありません。
自分が一番危険だと感じているのは、
次の状態です。
- 仮説はある
- botは動いている
- しかし、PnLは伸びていない
このとき、
- 仮説を疑うのではなく
- 市場環境やタイミングを疑い
- さらに別の仮説を上に積み始める
この動きは、一見すると前進に見えます。
ですが実際には、
殺すべき仮説を抱えたまま、負債を増やしているだけです。
仮説を殺す、というのは
感情的にはかなりきつい行為です。
- 時間を使った
- 考え抜いた
- 実装した
- 学びがあった
それでも、PnLが出ていないなら、
それは失敗した仮説です。
ここで情を挟んだ瞬間、
判断は必ず遅れます。
仮説を殺す力が弱いと、
次のような状態に陥ります。
- botが増え続ける
- ロジックが複雑化する
- 何が効いているのか分からなくなる
- それでも「理解は深まっている」と感じてしまう
この状態は、
金が増えないまま、知的満足だけが積み上がる
最も危険なゾーンです。
自分は、確実にここに足を突っ込んでいました。
だからこそ、
これからは仮説に対して、
意識的に冷酷でいるべきだと思っています。
- 仮説は守らない
- 仮説に期待しない
- 仮説に物語を与えない
PnLを生まなければ、殺す。
理由はそれだけで十分です。
仮説を殺すという行為は、
後ろ向きな判断ではありません。
むしろ、
- 次の仮説を立てる余地を作る
- 資金を守る
- 判断軸を澄ませる
ための、前向きな行為です。
仮説を立てる力は、もう足りている。
足りていないのは、仮説を殺す覚悟と速度。
これを変えない限り、
どれだけ新しいロジックを作っても、
結果は変わらないと思っています。
次は、
「仮説を殺さない者は、静かに資金を失う」
という話に進みます。
仮説を殺せないことは、
派手な失敗にはなりません。
だからこそ、
一番気づきにくく、
一番長く資金を削り続けます。
この章も、
自分自身への戒めとして書いていきます。
4. 仮説を殺さない者は、静かに資金を失う
仮説を殺さない、という行為は、
派手な失敗にはなりません。
ここが一番厄介なところです。
大きく負けるわけでもなく、
一瞬で口座が吹き飛ぶわけでもない。
それでも、確実に資金は減っていきます。
静かに、気づかないうちに。
自分が一番危険だと感じているのは、
次のような状態です。
- botは動いている
- 致命的なバグはない
- 口座もまだ残っている
- ただし、PnLは伸びていない
この状態は、一見すると「安定している」ように見えます。
少なくとも、危機感は薄れます。
ですが実態は違います。
これは「何も起きていない」のではなく、
「資金が静かに削られている」状態です。
仮説を殺さないと、
負けは必ず「分散」されます。
- 少しずつの損失
- 少しずつの機会損失
- 少しずつの判断遅れ
その一つ一つは小さい。
だからこそ、判断が先送りされます。
自分も、この「小ささ」に何度も騙されました。
仮説を殺さない状態では、
次のような思考が自然に出てきます。
- もう少し様子を見てもいい
- ここで止めるのは早すぎる
- 完全に否定する材料はまだない
この思考自体は、冷静に見えます。
ですが、PnLという前提に立つと話は変わります。
「完全に否定できない」は、
「採用し続ける理由」にはなりません。
仮説は、
「正しいかどうか」で生かしてはいけません。
- 正しそう
- 説明がつく
- 納得感がある
こうした要素は、
仮説を延命させる理由にはなりますが、
資金を守る理由にはなりません。
資金を守る基準は、常に一つです。
PnLを生んでいるか。
仮説を殺さない状態が続くと、
構造は必ず歪みます。
- botの数が増える
- ロジックが重なっていく
- どれが効いているのか分からなくなる
それでも、
「全体として見れば学びはある」
という感覚だけは残ります。
これは、非常に危険です。
学びがあることと、資金が増えることは、
何の関係もありません。
自分が恐れているのは、
一度の大きな失敗ではありません。
むしろ、
- 仮説を殺さない
- 判断を先送りする
- 資金が少しずつ減る
- それでも「まだ大丈夫」と感じる
このループに入ることです。
この状態に入ると、
退場するまでの道のりは、驚くほど滑らかになります。
仮説を殺す、という行為は、
資金を増やすための直接的な手段ではありません。
ですが、
- 無駄な損失を止める
- 判断軸を澄ませる
- 次の仮説に資源を回す
ための、絶対に必要な行為です。
これができない限り、
PnLは決して積み上がりません。
だからこそ、
仮説を殺さない者は、
派手に負ける前に、静かに負けていきます。
自分は、この「静かな負け」に、
すでに何度も足を踏み入れてきました。
その自覚があるからこそ、
今はこの章を書いています。
仮説を殺す判断は、
後悔を伴うこともあります。
- もう少し続けていれば
- 別の条件なら
- 相場が違えば
そう思うこともあります。
それでも、
殺さなかった仮説が資金を奪い続けるよりは、
遥かに健全です。
次は、
「勝っている期間を固定・保護するという発想が弱い」
という話に進みます。
まだ十分に勝てていない。
だからこそ、
勝ち始めた瞬間に自分がやりがちな失敗を、
先に言語化しておきたいと思っています。
ここまでの話はすべて、
その前提になります。
5. 「勝っている期間を守れ」は早すぎるが、「守る発想がない」のは事実
正直に言えば、
「勝っている期間を守れ」という話をするには、
私はまだ十分に勝てていません。
だから、この言葉をそのまま自分に当てはめるのは、
少し早すぎるとも感じています。
ただし、それとは別に、
もっと根の深い問題があるとも思っています。
それは、
そもそも「守る」という発想自体が、自分の中で弱い
という点です。
これまでの自分の行動を振り返ると、
判断の重心は常にこちら側にありました。
- どう改善するか
- どう拡張するか
- どう精緻化するか
- どう新しい仮説を足すか
つまり、「前に進む」ことばかりを考えていたということです。
一方で、
- 今の状態を壊さずに維持する
- 触らないという判断をする
- 何もしないことを選ぶ
こうした選択肢は、
ほとんど意識に上っていませんでした。
この癖は、
勝てていない段階ではあまり問題になりません。
むしろ、
- 試行錯誤している
- まだ探索フェーズにいる
という理由で、正当化されやすい。
ですが、ここで一つ、
はっきりしておかなければならないことがあります。
この癖は、勝ち始めた瞬間に致命傷になります。
勝ち始めたときに、
自分がやりそうな行動は、だいたい想像がつきます。
- もっと良くできるはずだと思う
- 条件を少し変えてみたくなる
- 別の仮説を重ねたくなる
- 「今なら耐えられる」と感じる
これらはすべて、
改善や進化のように見えます。
ですが実態は、
勝っている構造を、自分の手で壊しにいく動きです。
ここで重要なのは、
「守れ」という教訓そのものではありません。
重要なのは、
守るという選択肢が、判断テーブルに存在しているかどうか
です。
今の私には、
その選択肢がほとんどありません。
- 改善する
- 変える
- 足す
この三択しかない状態は、
明らかに危険です。
勝っている期間を守る、というのは、
何もしないことではありません。
- あえて触らないと決める
- 数字だけを見続ける
- 変更を禁止する
こうした判断は、
強い意志がないとできません。
そしてその意志は、
事前に言語化されていなければ発動しない
ということも分かっています。
だからこそ、
まだ十分に勝てていない今の段階で、
この話を書いています。
- 勝ってから考えるのでは遅い
- 勝った瞬間、人は最も判断を誤る
自分は、そのタイプだと分かっているからです。
「勝っている期間を守れ」という言葉は、
結果だけを切り取れば正論です。
ですが、私にとって本当に必要なのは、
「勝ったときに、何もしないという判断を下せるか」
この一点です。
そのためには、
今のうちから、
- 守るという概念に慣れておく
- 改善=正義という思い込みを疑う
- 触らないことを戦略として認識する
必要があります。
この章は、
未来の自分へのメモです。
勝ち始めたとき、
一番危険なのは市場ではありません。
自分自身です。
その事実を忘れないために、
ここに書いておきます。
次は、
「勝ち始めた瞬間にやるべきことは『触らない』こと」
という話に進みます。
ここまでの流れを受けて、
より具体的に、
「何をしないべきか」を整理していきます。
6. 勝ち始めた瞬間にやるべきことは「触らない」こと
勝ち始めた瞬間、人は安心します。
そして同時に、判断を誤りやすくなります。
私にとって、
この「勝ち始めた瞬間」は最も危険な局面です。
なぜなら、
私は「改善できる」「もっと良くできる」という衝動が一番強く出るタイプ
だからです。
勝ち始めたときに出てくる思考は、だいたい決まっています。
- この条件、少し緩めたらもっと取れるのでは
- ここに別のフィルタを足したら安定するのでは
- 今なら多少の変更にも耐えられるのでは
これらはすべて、
一見すると合理的で、前向きな判断に見えます。
ですが、結果として何が起きるかは明白です。
勝っている構造を、自分の手で壊す。
ここで重要なのは、
「触らない」という判断が、
怠惰でも停滞でもないという点です。
むしろ、
触らないことは、最も難易度の高い判断です。
- 何かしたくなる衝動に耐える
- 成果が出ているときほど、手を引く
- 数字だけを見続けて、余計な解釈をしない
これらは、
意志の力だけではまず続きません。
だからこそ、
「触らない」は気合や我慢でやるものではなく、
事前に決めたルールとして固定する必要があります。
- 一定期間はコードを変更しない
- 勝っている間はパラメータを触らない
- 新しい仮説は別枠で検証する
こうした制約を、
勝つ前から用意しておかなければ意味がありません。
勝っているbotは、
研究対象ではありません。
資産です。
資産に対してやるべきことは、
改善ではなく、保全です。
- 壊れないようにする
- 想定外が起きたときに止まるようにする
- 状態を観測する
それだけで十分です。
ここで一つ、
自分に対してはっきり言っておきます。
勝っているときに触りたくなる衝動は、
成長欲ではなく、自己満足です。
この衝動に従った結果、
これまで何度も、
私は自分のbotを壊してきました。
「触らない」という判断は、
未来への投資でもあります。
- 勝っている状態を記録できる
- そのPnLが偶然かどうかを切り分けられる
- 後から冷静に分析できる
触ってしまえば、
その履歴はすべて混ざります。
勝ち始めたときに本当にやるべきことは、
新しい仮説を足すことではありません。
- ログを見る
- 数字を見る
- 状態が維持されているかを確認する
それだけです。
何かを変えたくなったら、
それは「変えるべきサイン」ではなく、
触ってはいけないサインだと考えています。
この章で書いていることは、
今の自分にとってはまだ仮定の話です。
ですが、
勝ってから考えるのでは確実に遅い。
勝ち始めた瞬間、
人は一番冷静ではいられないからです。
「触らない」という選択肢を、
今のうちから判断テーブルに入れておく。
それだけで、
未来の自分が犯すミスを、
いくつか確実に潰せると思っています。
次は、
「リスクは取るな。リスクに対処できる仕組みを作れ」
という話に進みます。
ここまで書いてきた
PnL・仮説・判断姿勢を、
実際の運用に落とすための章です。
7. リスクは取るな。リスクに対処できる仕組みを作れ
botterとしてやっていく以上、
リスクをゼロにすることはできません。
ですが、
リスクを取ること自体を目的にする必要はありません。
むしろ自分は、
その発想こそが一番危険だと思っています。
自分が目指すべきなのは、
- リスクを取ること
ではなく - リスクを感じたときに、確実に対処できる状態を作ること
です。
この二つは、似ているようでまったく別物です。
リスクを取る、という言葉には、
どこか前向きな響きがあります。
- 攻めている
- 挑戦している
- 成長している
ですが、bot運用において、
この感覚はあまり役に立ちません。
市場は、
挑戦しているかどうかを評価しないからです。
自分がやるべきなのは、
リスクが顕在化したときに、
口座や判断が壊れない構造を先に用意することです。
具体的には、次のような話です。
吹き飛んでもいい資金しか、口座に入れない
これは精神論ではありません。
設計の話です。
- bot用の口座には
→ 吹き飛んでも生活や判断に影響しない資金しか入れない - これを破った瞬間、
→ すべての判断が歪み始める
恐怖を感じる資金でbotを回すと、
ロジック検証ではなく、
感情を守るための行動が始まります。
それは検証でも運用でもありません。
最大損失は「止める前」に削る
最大損失ガードというと、
「一定額で停止する」
という話になりがちです。
ですが、自分はそれだけでは弱いと思っています。
必要なのは、少なくとも次の段階です。
- 損失が浅いうちに、サイズを落とす
- 異常を感じたら、クールダウンを入れる
- それでもダメなら、初めて止める
いきなり止めるのではなく、
削る → 冷やす → 止める
という順番を作る。
止めてしまうと、
検証も観測も止まってしまうからです。
金が絡むバグは、存在してはいけない
どれだけロジックが良くても、
実装が壊れていれば意味がありません。
自分の中では、ここは明確に線を引いています。
- 注文
- 建玉
- 残高
- 約定
- 例外時の状態遷移
金が絡む部分のバグは、ゼロでなければならない。
この状態に到達していないなら、
その時点で検証以前です。
リスク対処の仕組みがない状態でbotを動かすと、
次のようなことが起きます。
- リスクを感じる
- 不安になる
- 判断が揺らぐ
- ロジックをいじる
- 状態が悪化する
これは、
市場に負けているのではありません。
仕組みが足りていないだけです。
リスクに対処できる仕組みがあれば、
状況は大きく変わります。
- 想定外が起きても、損失は限定される
- 判断を感情に委ねずに済む
- ロジックの評価に集中できる
この状態に入って初めて、
純粋にロジックの良し悪しを検証できる
と思っています。
ここで大事なのは、
「安全に運用する」ことではありません。
殴り殴られ続けられる状態を作ることです。
- 一度殴られて終わりではなく
- 何度殴られても立っていられる
- そしてその間、自分も絶えず殴り続ける
この前提がなければ、
PnLは積み上がりません。
リスクは、避けるものではありません。
取るものでもありません。
リスクは、管理するものです。
そして管理とは、
感情ではなく、
仕組みで行うものです。
この章で書いたことは、
どれも地味で、面白みに欠けます。
ですが、
これができていない状態での努力は、
ほぼすべて空回りします。
自分は、そのことを何度も身をもって体験してきました。
次は、
「実装に躓いている時点で、検証以前」
という話を書いていきます。
ここまでの
PnL・仮説・判断姿勢・リスク管理を、
実装レベルでどう支えるか、
自分なりに整理していきます。
8. 実装に躓いている時点で、検証以前
ここまで、
PnL・判断姿勢・仮説・リスクについて書いてきました。
ですが、それらすべては、
実装が成立しているという前提の上にしか存在しません。
この前提が崩れている状態で、
検証という言葉を使うべきではないと、今ははっきり思っています。
実装に躓いている、というのは、
単にコードが汚いとか、書き方が下手だという話ではありません。
ここで言っているのは、
金が絡む処理が、安定して動いていない状態のことです。
- 注文が想定通りに出ない
- 約定処理が曖昧
- 建玉や残高が信用できない
- 例外時に状態が壊れる
このどれか一つでも残っているなら、
そのbotは未完成です。
この状態でやりがちなのが、
次のような自己正当化です。
- ロジック自体は問題ない
- 実装は後から詰めればいい
- 今は概念検証の段階だ
ですが、ここははっきり言います。
実装が壊れている状態で出たPnLは、
ロジックの結果ではありません。
それは、
ノイズか、偶然か、運です。
自分が何度もやってきた失敗は、
「実装の不安定さ」と「ロジックの評価」を
同じテーブルで扱ってしまったことです。
- 負けたのはロジックが悪いのか
- それとも実装のせいなのか
この切り分けができない状態は、
検証ではなく、混乱です。
検証とは、
変数をできるだけ減らす行為です。
- ロジック以外は、信頼できる
- 実装は、何が起きても壊れない
- 状態は常に観測できる
この条件が揃って、
初めて「このロジックはダメだった」と言えます。
実装が弱い状態でbotを動かすと、
次のような悪循環に入ります。
- 想定外が起きる
- 原因が分からない
- ロジックを疑う
- 条件を変える
- 状態がさらに不安定になる
これは、
市場と戦っているのではありません。
自分の未完成な実装と戦っているだけです。
ここで大事なのは、
「実装に時間をかけろ」という話ではありません。
重要なのは、
どこまでを「検証に進んでいい状態」と定義するか
です。
自分の中では、最低限、次の条件が必要です。
- 金が絡む処理にバグがない
- 想定外の入力や例外でも状態が壊れない
- ログと数値が信用できる
これを満たしていないなら、
そのbotは検証フェーズにいません。
実装に躓いている状態で、
「検証が進まない」と感じるのは当然です。
それは能力不足ではありません。
順番を間違えているだけです。
- 先に実装を固める
- 次にbotを安定稼働させる
- その上でロジックを評価する
この順番を守らない限り、
PnLの議論はすべて空回りします。
ここで一つ、自分に対して言っておきます。
実装で躓いている時点で、
ロジックを語る資格はない。
これは厳しい言い方ですが、
botterとしては必要な線引きだと思っています。
実装が固まっていれば、
PnLが悪くても、判断は楽になります。
- このロジックはダメだった
- だから殺す
そう言い切れるからです。
逆に、
実装が怪しい状態では、
どんな結果も信用できません。
この章は、
自分自身への戒めとして書いています。
検証が進まないと感じたとき、
ロジックや市場を疑う前に、
必ず実装を疑う。
それを忘れないために、
ここに残しておきます。
9. 市場を殴り続けられるbotterだけが生き残る
botterとしてやっていく以上、
市場に殴られることは避けられません。
これは覚悟の問題ではなく、
構造上の事実です。
どんなロジックでも、
どんな優位性でも、
負ける局面は必ずあります。
「botterは殴られてナンボ」
この言葉自体は、
間違っていないと思っています。
ですが、私にとって本当に重要なのは、
その後半です。
botterの本質は、市場を殴り続けることです。
ですが、戦場に立つ限りはこちらも無傷で済むということはありません。
市場を殴り続けるためには、
殴られても立ち続けられる設計が不可欠です。
一度殴られること自体は、
それほど難しくありません。
- ロジックを作る
- 市場に出す
- 結果を見る
ここまでは、多くの人ができます。
問題はその先です。
- 殴られても立ち続けられるか
- 殴られた状態で判断を誤らないか
- 殴られている最中に、感情で手を動かさないか
ここで差がつきます。
私が怖いと感じているのは、
「大きく殴られること」ではありません。
むしろ、
- 小さく殴られ続ける
- それに慣れてしまう
- 判断が鈍る
- 気づいたときには資金が減っている
このパターンです。
殴られているのに、
殴られている自覚が薄れていく。
これは、非常に危険です。
殴られ続けられる状態とは、
ただ耐えることではありません。
殴られながらも、こちらが殴り返し続けられる状態、
つまり「攻撃主体であり続けられる状態」
のことだと思っています。
- botが止まらない
- 判断が感情に支配されない
- 一次情報を見続けられる
- 仮説を殺し続けられる
この状態が維持できて、
初めて「殴られている意味」が生まれます。
殴られ続けられない状態での挑戦は、
ただの消耗です。
- 一度殴られて終わる
- 退場する
- 検証が途切れる
これでは、
どれだけ良い仮説を持っていても、
PnLに辿り着く前に終わります。
だからこそ、
ここまで書いてきたことは、
すべて「退場せず、判断を壊さず、市場を殴り殴られ続けられる状態を作る」
という一点に収束します。
- PnLを唯一の真実として扱う
- 一次情報で殴り続ける
- 仮説を殺す
- 勝ち始めたら触らない
- リスクに対処できる仕組みを作る
- 実装を固める
これらはすべて、
殴り殴られ続けるための準備です。
botterとしての実績は、
一発の大勝ちで評価されるものではありません。
- 生き残り
- 立ち続け
- 殴り続け
- 殴られ続け
- 殴り返し続けた
その結果として、
PnLが積み上がるだけです。
自分が目指しているのは、
華やかな勝ち方ではありません。
- 派手に当てること
- 一発で証明すること
そういったものには、
最初から興味がありません。
何度殴られても立っていられること。
その間、自分も殴り続けられること。
それだけが、
botterとして意味のある状態だと思っています。
この章は、
気合を入れるための言葉ではありません。
判断を誤らないための、
確認事項です。
市場を殴れているか。
殴られても立ち続けられる設計か。
そして、その両方が今も成立しているか。
これを見失った瞬間、
botterとしては終わりです。
最後に、
「結論:botterは、作ったbotが全て」
ということを書いて締めます。
ここまで書いてきた内容を、
逃げ場のない形でまとめます。
10. 結論:botterは、作ったbotが全て
ここまで、
PnL、判断姿勢、仮説、リスク、実装、殴り続けることについて書いてきました。
そして最後に、
どうしても曖昧にしたくない結論があります。
それは、
botterは、作ったbotが全てである
ということです。
発言も、思想も、
理解も、努力も、苦労も、
自分がbotterであることを保証するものではありません。
botterとして確実に信じて良いのは、
動いていたbotと、そのPnL履歴だけです。
それ以外は、
すべて後付けの説明にすぎません。
どれだけ考えたか。
どれだけ学んだか。
どれだけ悩んだか。
それらはすべて、
botが金を生んだときにだけ意味を持ちます。
金を生んでいないなら、
それはbotterとしての成果ではありません。
botterという立場は、
思想家でも評論家でもありません。
botterとしてやるべきことは、
市場に対して結果だけを差し出すことだけです。
だからこそ、
- 正しいかどうか
- 理解が深まったかどうか
- 納得できているかどうか
といった問いは、
すべて二次的なものになります。
botの利益(=口座の残高)が増えないのであれば、
どれだけ自分の中で説明がついていても、
それは「負け」です。
逆に、
botの利益(=口座の残高)が増えているのであれば、
どれだけ説明が拙くても、
それは「勝ち」です。
この単純さから、
目を逸らしてはいけません。
botterとして生きる、というのは、
この冷酷さを引き受けることだと思っています。
- 評価は市場が下す
- 判決は毎日更新される
- 弁明の余地はない
だからこそ、
PnL以外の価値基準を、
自分の中から徹底的に排除する必要があります。
ここまで書いてきた内容は、
誰かに教えるためのものではありません。
未来の自分が、迷ったときに読み返すためのものです。
- なぜPnLを最優先にするのか
- なぜ仮説を殺すのか
- なぜ触らない判断が必要なのか
- なぜ実装を軽視してはいけないのか
その答えを、
毎回ゼロから考え直さないために、
ここに残しています。
botterは、
語ったことで評価されるものではありません。
動かしたbotだけが評価される。
そして評価とは、
PnLという形でしか返ってきません。
だから、最後にもう一度だけ書いておきます。
botterは、作ったbotが全てです。
それ以外は、
すべて途中経過であり、言い訳であり、ノイズです。
自分は、この前提から逃げないために、
この文章を書きました。
動いているbotのPnL履歴だけが、botterの実績です。
これからも、
語る前に動かし、
納得する前にPnLを見て、
殴られながら殴り続けていきます。
それが、
自分が選んだbotterという生き方だからです。