Bot 機械学習・データサイエンス

開発記録#120(2024/10/30)【MLbot開発】「A3CとLSTM」

前回の記事に引き続き、今回も仮想通貨botの開発状況をまとめていきます。

今回は「A3C(Asynchronous Advantage Actor-Critic)とLSTM」を組み合わせたMLbotのプロトタイプを作ってみました。

Yodaka

学習の一環としてA3Cの解説プログラムの雛形の解説をまとめました。

解決したかったこと

・A3Cについて理解する

・A3C×LSTMの優位性を理解する

・A3C×LSTMの問題点を挙げて、解決方法を調べる

・プログラムの雛形を作成し、コードの面からの理解を深める

・MLbot作りの引き出しを増やす

A3Cとは

A3C(Asynchronous Advantage Actor-Critic)は、強化学習の分野で用いられる先進的なアルゴリズムの一つです。このアルゴリズムは、複数のエージェントが並列に学習を進めることで、学習の効率と効果を向上させることが特徴です。以下に、A3Cアルゴリズムの主要な概念とメカニズムを解説します。

コンセプト

A3Cは「アクター・クリティック」アプローチを拡張したものです。アクター・クリティックアプローチでは、ポリシー(行動を決定する戦略)をアクターが提供し、その行動の価値を評価するのがクリティックです。A3Cでは、この構造に「アドバンテージ」関数を使用して、学習プロセスを最適化します。

アドバンテージ関数

アドバンテージ関数は、特定の行動が平均的な行動よりどれだけ良いかを示します。具体的には、行動価値関数 Q(s,a)Q(s, a)Q(s,a) から状態価値関数 V(s)V(s)V(s) を引いた値 A(s,a)=Q(s,a)−V(s)A(s, a) = Q(s, a) - V(s)A(s,a)=Q(s,a)−V(s) を用います。この差分によって、どの行動が現在のポリシーにとって「平均以上」であるかが明確になります。

非同期性

A3Cの「非同期」は、複数のエージェントが独立してそれぞれの環境で学習を進めることを意味します。各エージェントは独自のエピソードを進行させ、独立した経験を元に勾配(学習の方向性とステップサイズ)を計算します。この勾配は中央のニューラルネットワークに定期的に送られ、共有パラメータが更新されます。これにより、各エージェントは最新の学習成果を利用しつつ、環境の異なる側面を探索できるため、効率的かつ効果的な学習が可能になります。

実装の流れ

  1. 初期化: 共有パラメータと各エージェントのローカルコピーを初期化します。
  2. エピソード実行: 各エージェントは独立した環境でエピソードを実行し、状態遷移と報酬を記録します。
  3. 勾配の計算と適用: 各エージェントは終了時に得られた経験から勾配を計算し、共有パラメータに非同期で適用します。
  4. パラメータの更新: 共有パラメータは各エージェントからの勾配によって更新され、すべてのエージェントが新しいパラメータを利用して次のエピソードに進みます。

利点と欠点

利点:

  • 効率的な学習: 非同期性により、多様な経験から同時に学習でき、収束が速くなります。
  • スケーラビリティ: 複数のエージェントが利用可能な計算リソースを最大限に活用できます。

欠点:

  • 非同期更新の複雑さ: 複数のエージェントが同時にパラメータを更新するため、競合が発生しやすくなります。
  • チューニングの難しさ: ハイパーパラメータの選択やアルゴリズムのチューニングが難しい場合があります。

A3Cはその性能の高さから、多くの現実世界の問題、特にロボティクスやゲームなどの分野で広く使用されています。

メリット・デメリット

A3C(Asynchronous Advantage Actor-Critic)は、強化学習の一形式であり、特に複雑な環境下での意思決定問題に対して効果的です。以下に、A3Cの主なメリットとデメリットを挙げます。

メリット

  1. 非同期処理による効率的な学習:
    • A3Cでは、複数のエージェントが独立して同時に学習を行うため、データの多様性を活用し、学習プロセスを加速します。これにより、収束までの時間が短縮される可能性があります。
  2. スケーラビリティ:
    • エージェントが独立して操作を行うため、計算リソースを効果的に利用し、大規模なアプリケーションやデータセットに対応可能です。
  3. 探索の効率化:
    • 各エージェントが異なる探索ポリシーを持つことで、環境の様々な側面を広範囲にわたって探索でき、より堅牢なポリシーを導き出すことが可能です。
  4. 安定した学習:
    • アクターとクリティックが分離しているため、ポリシーの探索(アクター)と価値評価(クリティック)が同時に行われ、学習プロセスが安定します。

デメリット

  1. 非同期更新による競合と不安定性:
    • 複数のエージェントが非同期にモデルのパラメータを更新するため、エージェント間での勾配の競合が発生しやすく、これが学習の不安定性を引き起こすことがあります。
  2. リアルタイム性の問題:
    • リアルタイム環境での適用には限界があり、エージェントが同時に異なる状態を経験することで、学習されたポリシーが最新の状態に即していない可能性があります。
  3. 複雑性とリソース要求:
    • A3Cは実装が比較的複雑で、複数のエージェントを効果的に管理するためには高度なプログラミングスキルと計算リソースが要求されます。
  4. ハイパーパラメータの調整:
    • A3Cのパフォーマンスはハイパーパラメータの選択に非常に敏感であり、これらのパラメータの最適化には多くの試行錯誤が必要です。

これらのメリットとデメリットを理解し、プロジェクトの要件に合わせて適切な調整を行うことで、A3Cを用いた強化学習システムを成功させることが可能です。

アプローチの優位性

A3C(Asynchronous Advantage Actor-Critic)とLSTM(Long Short-Term Memory)を組み合わせたアプローチは、仮想通貨の価格予測と自動取引において多くの優位性を提供することができます。以下に、この組み合わせの主な利点を挙げます:

1. 時系列データの効果的な処理

LSTMは時系列データに特化したリカレントニューラルネットワークであり、長期的な依存関係を学習する能力があります。仮想通貨市場の価格変動には時間に依存するパターンが多く存在するため、LSTMはこれらのパターンを捉え、より精度の高い予測を行うことができます。

2. 効率的な学習プロセス

A3Cは複数のエージェントが非同期で学習を進めるため、データの多様性を活用しながら効率的に学習を行うことが可能です。各エージェントが異なる市場状況を探索することで、全体としてより堅牢な取引戦略を構築できます。

3. スケーラビリティとリアルタイム性

非同期の特性により、A3Cはスケールアップが容易であり、多数のエージェントを同時に運用することが可能です。これにより、リアルタイムでの大量データ処理が実現し、市場の急激な変動に迅速に対応することができます。

4. 柔軟性と適応性

A3CとLSTMの組み合わせにより、モデルは学習した経験から直接ポリシーを導出するため、未知の市場条件やノイズの多いデータに対しても適応しやすくなります。これは、自動取引システムが不確実性の高い仮想通貨市場において持続的なパフォーマンスを発揮するために重要です。

5. リスク分散とポートフォリオ管理

複数のエージェントが異なる戦略を学習することにより、全体の取引リスクを分散させることが可能です。さらに、市場の異なる側面に対応することでポートフォリオ全体のリスク管理が向上します。

このアプローチを実装する際には、モデルの複雑性や計算コスト、実際の取引環境への適用可能性など、様々な要因を慎重に検討する必要があります。ただし、上記の利点を活かすことで、非常に競争力のある自動取引システムを構築することが可能です。

アプローチの問題点と解決法

A3CとLSTMを組み合わせたアプローチは、多くの利点を提供する一方で、いくつかの問題点も抱えています。以下に主要な問題点とそれらを解決するための方法を示します。

1. 計算資源の大量消費

問題点: A3Cは多数のエージェントが並列して学習を行うため、計算資源(CPUやGPU)を大量に消費します。また、LSTMは複雑なリカレントネットワークであり、特に長い時系列データを扱う場合、トレーニングと推論の時間が長くなりがちです。

解決策:

  • モデルの単純化: LSTM層の数や隠れ層のユニット数を減らすことで計算負荷を軽減します。
  • 効率的なアーキテクチャの採用: より計算効率の良いGRUなどの代替リカレントネットワークを検討します。
  • 並列処理の最適化: より効率的な並列計算フレームワークやハードウェアアクセラレーション(GPU利用)を積極的に使用します。

2. 非同期更新による学習の不安定性

問題点: 複数のエージェントが同時にモデルのパラメータを更新することで、学習が不安定になる場合があります。これは、一部のエージェントが古いポリシーに基づいて行動し、その結果が新しいポリシーに影響を与える「非同期性のジレンマ」によるものです。

解決策:

  • 同期手法の導入: A3Cの代わりにA2C(Advantage Actor-Critic)などの同期バージョンを利用して、すべてのエージェントが一斉に更新するようにします。
  • より頻繁なパラメータ同期: 更新間隔を短くしてエージェント間のポリシー差異を小さく保ちます。

3. 過学習と一般化の問題

問題点: LSTMが特に複雑な時系列パターンを学習する能力が高いため、訓練データに過剰に適合しやすく、未知の市場状況に対して適切に反応できない場合があります。

解決策:

  • データの拡張: トレーニングデータにノイズを加えたり、異なる市場条件をシミュレートすることで、モデルの汎用性を高めます。
  • 正則化技術の適用: ドロップアウトやL2正則化を使用して過学習を抑制します。
  • アンサンブル学習の導入: 複数のモデルを組み合わせることで、個々のモデルの過学習の影響を緩和します。

4. 実世界適用時のハードル

問題点: 実際の市場データはノイズが多く、また予期せぬ市場の変動が頻繁に発生します。これにより、理想的な環境で訓練されたモデルが実際の取引で期待通りのパフォーマンスを発揮しない可能性があります。

解決策:

  • リアルタイムデータの統合: モデルを定期的に最新の市場データで再訓練することで、常に最新の市場動向を反映させます。
  • シミュレーション環境での厳格なテスト: 実市場投入前に多様な市場シナリオを用いたシミュレーションを行い、モデルの堅牢性を確認します。

これらの問題点と解決策を踏まえつつ、適切な調整と改善を行うことで、A3CとLSTMを組み合わせた自動取引システムの実用性を高めることができます。

アプローチへの批判的な検討

A3C(Asynchronous Advantage Actor-Critic)とLSTM(Long Short-Term Memory)を組み合わせるアプローチは、仮想通貨の価格予測と自動取引の分野において革新的な可能性を持っていますが、数学的および論理的な観点からいくつかの潜在的な問題点が考えられます。以下に、このアプローチの批判的な検討を行います。

1. 時系列データの非定常性

問題: 仮想通貨市場は非常にボラタイル(価格変動が激しい)であり、その統計的特性が時間とともに変化する可能性があります(非定常)。LSTMは定常的なデータに対しては効果的ですが、非定常データに対してはその性能が低下する可能性があります。

検討点: 非定常データを扱う場合、データの前処理段階で差分取りや対数変換などを行うことで、データの定常性を改善する方法があります。しかし、これらの手法が仮想通貨の予測精度に与える影響を事前に評価する必要があります。

2. 探索と利用のトレードオフ

問題: A3Cアルゴリズムは複数のエージェントが非同期に探索を行うため、"探索"(新しい戦略を試す)と"利用"(既知の最良の戦略を用いる)の間のバランスを適切に取ることが難しいです。特に、非同期更新が原因で古い情報に基づいて行動が決定されることがあります。

検討点: 探索と利用のバランスを最適化するためには、探索率の調整や、エポックごとにポリシーを更新する同期手法の採用を検討することが有効です。さらに、報酬の設計を工夫することで、エージェントがより効率的な学習を行えるようにすることも考えられます。

3. 勾配の消失問題

問題: LSTMは長期的な依存関係を学習する能力がありますが、深いネットワーク構造においては勾配の消失や爆発の問題が生じやすくなります。これは、学習過程で重要な情報が失われることを意味し、モデルの収束や性能に悪影響を及ぼす可能性があります。

検討点: 勾配のクリッピングや、より安定した最適化アルゴリズム(例えばAdamやRMSprop)の使用により、この問題を緩和することが可能です。また、層の深さを調整することでネットワークの複雑性をコントロールする方法も考えられます。

4. モデルの複雑性と過適応

問題: A3CとLSTMを組み合わせたモデルは、非常に複雑になる可能性があります。これにより、訓練データに過剰に適応してしまい、新しいデータや未知の市場条件に対する汎用性が低下する恐れがあります。

検討点: 正則化技術(L1正則化、L2正則化、ドロップアウトなど)を用いて過適応を防ぐ方法があります。また、交差検証などの手法を用いてモデルの汎用性を確認し、適切なモデルの複雑性を決定することが重要です。

これらの問題点と検討点を理解し、適切な対策を講じることで、A3CとLSTMを組み合わせた仮想通貨の価格予測アルゴリズムの有効性を最大限に引き出すことが可能です。

個人レベルできること

個人開発者がA3CとLSTMを組み合わせた仮想通貨の価格予測モデルを実装する際に直面する可能性のある問題に対処するための具体的な対策を以下に提示します。これらの対策は、リソースが限られている場合にも実行可能な方法を中心に構成しています。

1. 時系列データの非定常性への対処

  • データの前処理:
    • データの差分を取ることで非定常性を除去する(例: 価格データの対数差分を取る)。
    • データのスケーリングや正規化を行い、LSTMの学習効率を向上させる。
  • データ拡張:
    • データセットにノイズを加えることで、モデルの汎用性を高める。
    • 異なる時間枠のデータを組み合わせてトレーニングすることで、多様な市場条件に対応する。

2. 探索と利用のバランス

  • ε-greedy戦略の採用:
    • 探索確率εを徐々に減少させることで、初期は探索を優先し、徐々に利用を優先するバランスを取る。
  • 報酬関数の調整:
    • 長期的な報酬を重視する設計にすることで、短期的な利益に偏らない戦略を学習させる。

3. 勾配の消失問題の解決

  • 勾配クリッピングの実装:
    • バックプロパゲーション時に勾配の絶対値が一定の閾値を超えないように制限する。
  • 適切な活性化関数の選択:
    • 勾配の消失を防ぐために、ReLUやその派生形(例:Leaky ReLU)を使用する。

4. モデルの複雑性と過適応の防止

  • 正則化手法の適用:
    • L1、L2正則化やドロップアウトをネットワークに組み込むことで、過学習を抑制する。
  • モデルの単純化:
    • モデルの層数やパラメータを削減して、必要最小限の複雑さに保つ。
  • 交差検証:
    • 複数のデータセットを使ってモデルを評価し、未見のデータに対する汎用性を確認する。

5. 実装とデバッグ

  • 段階的な実装:
    • モデルの各部分を個別に実装し、小さな単位でテストすることで、問題の早期発見と修正を行う。
  • プロファイリングと最適化:
    • 実行時間やメモリ使用量をプロファイリングし、ボトルネックを特定して最適化する。

これらの対策を適用することで、個人開発者も効果的にA3CとLSTMを組み合わせた仮想通貨の価格予測モデルを開発し、維持することができます。実際の取引においても、これらの対策がリスクを管理し、予期せぬ問題に対応する助けとなるでしょう。

プログラムの雛形

このコードはTensorFlowを使った深層強化学習モデルを使用して、Binanceでビットコイン(BTC/USDT)の自動取引を行うためのものです。

import os
import numpy as np
import tensorflow as tf
from tensorflow.keras.models import Model
from tensorflow.keras.layers import Input, Dense, LSTM
from tensorflow.keras.optimizers import Adam
import ccxt
import matplotlib.pyplot as plt

# APIキーとシークレットを環境変数から取得
api_key = os.getenv('BINANCE_API_KEY')
api_secret = os.getenv('BINANCE_API_SECRET')

binance = ccxt.binance({
    'apiKey': api_key,
    'secret': api_secret,
})

def fetch_binance_data(symbol, timeframe='1m', limit=500):
    try:
        bars = binance.fetch_ohlcv(symbol, timeframe, limit=limit)
        return np.array(bars)
    except Exception as e:
        print(f"Error fetching data: {e}")
        return None

def create_model(input_shape, action_space):
    inputs = Input(shape=input_shape)
    x = LSTM(64, return_sequences=True)(inputs)
    x = LSTM(64)(x)
    action_output = Dense(action_space, activation='softmax')(x)
    value_output = Dense(1, activation='linear')(x)
    
    model = Model(inputs=inputs, outputs=[action_output, value_output])
    model.compile(optimizer=Adam(learning_rate=0.001), loss=['categorical_crossentropy', 'mse'])
    
    return model

def decide_trade_action(model, state):
    state = np.expand_dims(state, axis=0)
    action_prob, value = model.predict(state)
    action = np.argmax(action_prob[0])
    return action, value[0][0]

def execute_trade(action, amount):
    try:
        if action == 1:
            order = binance.create_market_buy_order('BTC/USDT', amount)
        elif action == 2:
            order = binance.create_market_sell_order('BTC/USDT', amount)
        else:
            print("No action taken.")
            return None
        return order
    except Exception as e:
        print(f"Error executing trade: {e}")
        return None

class TradingEnvironment:
    def __init__(self, data):
        self.data = data
        self.current_step = 0
        self.done = False

    def reset(self):
        self.current_step = 0
        self.done = False
        return self.data[self.current_step, 1:5]

    def step(self, action):
        self.current_step += 1
        if self.current_step >= len(self.data):
            self.done = True
            return None, 0, self.done

        next_state = self.data[self.current_step, 1:5]
        reward = self.calculate_reward(action)
        return next_state, reward, self.done

    def calculate_reward(self, action):
        if action == 1:  # Buy
            return self.data[self.current_step, 3] - self.data[self.current_step - 1, 3]
        elif action == 2:  # Sell
            return self.data[self.current_step - 1, 3] - self.data[self.current_step, 3]
        else:
            return 0

def train_and_trade(model, episodes):
    data = fetch_binance_data('BTC/USDT')
    if data is None:
        return

    env = TradingEnvironment(data)
    rewards_history = []

    for episode in range(episodes):
        state = env.reset()
        total_reward = 0
        while not env.done:
            action, value = decide_trade_action(model, state)
            next_state, reward, done = env.step(action)
            if next_state is None:
                break
            
            # Calculate advantage
            _, next_value = decide_trade_action(model, next_state)
            advantage = reward + (0.99 * next_value) - value
            
            # Update model
            model.fit(state.reshape((1, *state.shape)), [action, advantage], verbose=0)
            
            state = next_state
            total_reward += reward
        
        rewards_history.append(total_reward)
        print(f"Episode {episode + 1}: Total Reward: {total_reward}")

    # Plotting the rewards
    plt.plot(rewards_history)
    plt.title('Episode Rewards Over Time')
    plt.xlabel('Episode')
    plt.ylabel('Total Reward')
    plt.show()

input_shape = (500, 4)
action_space = 3

model = create_model(input_shape, action_space)
Yodaka

以下は、コードの主要な部分とその機能についての解説です。

セットアップとライブラリのインポート

  • 必要なライブラリ: TensorFlow, NumPy, ccxt(仮想通貨取引所へのインターフェースを提供するライブラリ), matplotlib(データの可視化用)。
  • APIキーの設定: 環境変数からBinanceのAPIキーとシークレットを取得し、Binance APIにアクセスするための設定を行います。

データ取得関数 fetch_binance_data

  • 目的: 指定されたシンボル(例えばBTC/USDT)について、指定された時間枠でOHLCVデータ(Open, High, Low, Close, Volume)を取得します。
  • 処理: ccxtライブラリを通じてBinanceからデータを取得し、NumPy配列に変換して返します。

LSTMモデルの構築関数 create_model

  • モデルの構造: 入力層、LSTM層(2層)、出力層(行動の確率分布と価値評価の2種類の出力)。
  • 構成: TensorFlowとKerasを使用して、アクター-クリティックネットワークを構築します。このネットワークは行動の選択とその行動の価値を評価するために用いられます。

取引判断関数 decide_trade_action

  • 機能: モデルを使用して現在の状態から最適な行動を決定し、その行動の価値(予測されるリターン)を計算します。

取引実行関数 execute_trade

  • 機能: 決定された行動に基づいてBinanceで実際の取引命令(買い注文または売り注文)を出します。

トレーディング環境クラス TradingEnvironment

  • 目的: 取引シミュレーション環境を提供します。エージェントが行動を選択し、その行動に対する報酬を計算し、次の状態へと進めることができます。
  • 報酬計算: 買った場合と売った場合の価格の差を報酬として計算します。

トレーニングと取引のループ train_and_trade

  • 機能: 取得したデータを使用してトレーディング環境を設定し、複数のエピソードにわたってモデルをトレーニングします。各エピソードでは、モデルを使用して行動を選択し、環境から報酬を受け取り、モデルを更新します。
  • 報酬の記録と可視化: 各エピソードでの報酬を記録し、学習の進行を可視化します。

モデルの初期化

  • 設定: モデルの入力サイズと行動空間のサイズを定義し、モデルを初期化します。

このコードは、ディープラーニングと強化学習の手法を組み合わせて、仮想通貨の自動取引を行うための完全なフレームワークを提供します。実際の運用には、市場の変動に適応するためにパラメータの調整や追加の安全策を施すことが重要です。

プログラムの詳細な解説

Yodaka

ちらのコードはビットコインの自動取引プログラムで、TensorFlowとKerasを利用して機械学習モデルを構築し、ccxtを使用して実際にBinanceでの取引を行うというものです。詳細に分析し、各部分の機能と動作について深く掘り下げて説明します。

環境設定とAPIキーの取得

import os
import numpy as np
import tensorflow as tf
from tensorflow.keras.models import Model
from tensorflow.keras.layers import Input, Dense, LSTM
from tensorflow.keras.optimizers import Adam
import ccxt
import matplotlib.pyplot as plt

api_key = os.getenv('BINANCE_API_KEY')
api_secret = os.getenv('BINANCE_API_SECRET')

ライブラリのインポート:

  • numpy, tensorflowは数値計算と機械学習モデルの構築に使われます。
  • ccxtライブラリは仮想通貨の取引所APIとのインターフェースを提供し、matplotlibは結果の可視化に使用されます。

APIキー:

  • os.getenvは環境変数からBinanceのAPIキーとシークレットキーを読み込むために使用されます。これにより、ユーザーは安全にAPIキーをコード外で管理できます。

データ取得

def fetch_binance_data(symbol, timeframe='1m', limit=500):
    try:
        bars = binance.fetch_ohlcv(symbol, timeframe, limit=limit)
        return np.array(bars)
    except Exception as e:
        print(f"Error fetching data: {e}")
        return None

機能:

  • fetch_binance_data関数は指定された通貨ペア(symbol)と時間枠(timeframe)のOHLCVデータを取得します。例えば、ビットコイン対USドルの価格データを1分間隔で取得します。

エラーハンドリング:

  • この関数はデータ取得中に発生可能な例外を捕捉し、問題が発生した場合にはエラーメッセージを表示してNoneを返します。これにより、プログラムがクラッシュすることなく安全に失敗できます。

LSTMモデルの構築

def create_model(input_shape, action_space):
    inputs = Input(shape=input_shape)
    x = LSTM(64, return_sequences=True)(inputs)
    x = LSTM(64)(x)
    action_output = Dense(action_space, activation='softmax')(x)
    value_output = Dense(1, activation='linear')(x)
    
    model = Model(inputs=inputs, outputs=[action_output, value_output])
    model.compile(optimizer=Adam(learning_rate=0.001), loss=['categorical_crossentropy', 'mse'])
    
    return model

モデルアーキテクチャ:

  • 入力層に続いて2層のLSTMネットワークがあります。LSTM層は時系列データの特徴を捉え、過去の価格の動きから未来の動向を予測するために設計されています。
  • 出力層は2部構成で、一つは取引行動(買う、売る、待機)の確率分布をsoftmax関数を使って出力し、もう一つはその行動の価値をlinear活性化関数を用いて出力します。

コンパイル:

  • モデルはAdamオプティマイザを使用し、損失関数としてカテゴリカルクロスエントロピーと平均二乗誤差を採用します。これにより、アクション選択の精度と価値予測の正確性の両方を最適化します。

取引判断と実行

def decide_trade_action(model, state):
    state = np.expand_dims(state, axis=0)
    action_prob, value = model.predict(state)
    action = np.argmax(action_prob[0])
    return action, value[0][0]

def execute_trade(action, amount):
    try:
        if action == 1:
            order = binance.create_market_buy_order('BTC/USDT', amount)
        elif action == 2:
            order = binance.create_market_sell_order('BTC/USDT', amount)
        else:
            print("No action taken.")
            return None
        return order
    except Exception as e:
        print(f"Error executing trade: {e}")
        return None

取引判断:

  • decide_trade_actionはモデルを用いて入力状態から最適な行動を予測し、その行動の価値も同時に算出します。これは実際の取引において何をすべきか(買う、売る、何もしない)を決定するために使用されます。

取引実行:

  • execute_tradeは予測された行動に基づいてBinanceで実際の取引を行います。この関数は取引時に発生する可能性のあるエラーを捕捉し、問題がある場合には適切なエラーメッセージを表示します。

トレーディング環境とトレーニングループ

class TradingEnvironment:
    def __init__(self, data):
        self.data = data
        self.current_step = 0
        self.done = False

    def reset(self):
        self.current_step = 0
        self.done = False
        return self.data[self.current_step, 1:5]

    def step(self, action):
        self.current_step += 1
        if self.current_step >= len(self.data):
            self.done = True
            return None, 0, self.done

        next_state = self.data[self.current_step, 1:5]
        reward = self.calculate_reward(action)
        return next_state, reward, self.done

    def calculate_reward(self, action):
        if action == 1:  # Buy
            return self.data[self.current_step, 3] - self.data[self.current_step - 1, 3]
        elif action == 2:  # Sell
            return self.data[self.current_step - 1, 3] - self.data[self.current_step, 3]
        else:
            return 0

トレーディング環境:

  • TradingEnvironmentクラスは取引のシミュレーション環境を提供します。resetメソッドで環境を初期状態に戻し、stepメソッドで次の時間ステップに進みます。stepメソッドは選択した行動に基づいて報酬を計算し、次の状態を返します。

報酬計算:

  • 報酬は行動に応じて計算されます。買い注文の場合、次のステップでの価格上昇分が報酬となり、売り注文の場合は価格の下降分が報酬となります。何もしない場合の報酬は0です。

トレーニングと報酬の可視化

def train_and_trade(model, episodes):
    data = fetch_binance_data('BTC/USDT')
    if data is None:
        return

    env = TradingEnvironment(data)
    rewards_history = []

    for episode in range(episodes):
        state = env.reset()
        total_reward = 0
        while not env.done:
            action, value = decide_trade_action(model, state)
            next_state, reward, done = env.step(action)
            if next_state is None:
                break

            _, next_value = decide_trade_action(model, next_state)
            advantage = reward + (0.99 * next_value) - value
            
            model.fit(state.reshape((1, *state.shape)), [action, advantage], verbose=0)
            
            state = next_state
            total_reward += reward
        
        rewards_history.append(total_reward)
        print(f"Episode {episode + 1}: Total Reward: {total_reward}")

    plt.plot(rewards_history)
    plt.title('Episode Rewards Over Time')
    plt.xlabel('Episode')
    plt.ylabel('Total Reward')
    plt.show()

トレーニングループ:

  • この関数は指定されたエピソード数だけトレーニングを繰り返し、各エピソードで環境をリセットし、完了するまで行動を選択し続けます。報酬を累積し、各ステップ後にモデルを更新します。

報酬の可視化:

  • 各エピソードの総報酬をプロットして、学習の進行を視覚化します。これにより、モデルのパフォーマンスの改善が一目で確認できます。
Yodaka

このコード全体を通して、データの取得からモデルの訓練、取引の実行、結果の可視化までの一連の流れが包括的に示されています。各ステップは独立して機能しつつ、全体としては一つの自動取引システムを形成しています。

まとめ

今回はA3CとLSTMを組み合わせたアプローチについてまとめました。

一旦コードを書いてみることで、プログラムの面からこのアプローチへの理解を深めることができました。

Yodaka

ここからこのアプローチを自動取引ロジックと組み合わせてbot運用に繋げていきます。

今後もこの調子で開発の状況を発信していきます。

-Bot, 機械学習・データサイエンス