こんにちは、よだかです。
今日はBitcoinのmempoolを補助状態タグとして観測機に追加し、値が取れて可視化できるところまで進めました。ただ、作業を進める中で「これは本筋ではなく、周辺実装で満足しているだけではないか」という違和感も強くなりました。そこで途中からは、そもそも自分が狙うべきリードラグ構造とは何かを改めて考え直し、最終的には「資金移動・交換・再配分の遅れ」という核を残したうえで、明日から探索する候補を3本に絞るところまで整理しました。
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🛠️開発記録#510(2026/4/12)リードラグ研究メモDAY7 ― mempoolを補助軸として試しつつ、本筋の問いに立ち返った日
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1. リードラグ仮説の問いに答えるところから始めた
今日はタスクの2つめとして、新しい観測機を増やしたり、コードをいじったりする前に、一度ちゃんと立ち止まって「自分は何を狙っているのか」を言葉にし直すところから始めました。
テーマはリードラグです。
ただ、ここで言うリードラグも、ただ「何かが先に動いて、何かが後から追うらしい」というふわっとした話ではありません。そうではなく、誰が、なぜ、どんな遅れによって金を落とすのかを説明できる形まで持っていかないと、多分botにはならない。今日はその前提に改めて立ち返ることにしました。
そこでまず、自分に対していくつか質問を投げました。
誰が金を落とすのか。
何が遅れるのか。
なぜその遅れが繰り返し発生するのか。
どの市場や情報経路で観測されるのか。
どの時間軸なら自分でも取れるのか。
そして、その仮説が間違っているなら何が観測されるはずか。
要するに、「それっぽい話」を並べるのではなく、仮説として最低限の骨格を作ろうとしたわけです。
実際に書き出してみると、最初はかなり散らかっていました。
パニック売り、不合理な意思決定、資金移動の遅れ、送金の詰まり、ポジション組み換え、情報解釈の遅れ、システム由来の伝達遅延、取引所都合の停止や詰まり、精算プロトコルの発動……と、思いつくものをとにかく大量に並べた感じです。
この段階では、正直かなり荒いです。
でも、今日はそれで良かったと思っています。最初から綺麗にまとめようとすると、逆に自分を誤魔化しやすいからです。雑でもいいので、一旦全部出してみて、その中に何が混ざっているのかを後から見分ける方が多分マシです。
少なくとも今日の最初の一歩としては、「リードラグっぽいものを探す」ではなく、「そもそもどんな遅れを狙うべきなのかを、自分の言葉で答えてみる」に戻れたのが大きかったと思います。
ここを曖昧にしたまま新しいソースや市場を増やしても、たぶんまた同じところをぐるぐる回るだけなので。
2. 仮説の中に余分なものがかなり混ざっていた
で、実際に書き出してみてすぐにわかったのが、このままでは仮説ではなく、ただの棚卸しに近いということでした。
誰が金を落とすのか、なぜ遅れるのか、といった問いに答えようとすると、どうしても色々なものを盛り込みたくなります。しかも、そのどれもが完全に見当外れというわけではないから厄介です。パニック売りや混乱による不合理な意思決定もありうるし、送金や資金移動、通貨交換に時間がかかることもありうる。情報が少ないまま判断してズレた価格で売買することもあるだろうし、取引所や清算の仕組みそのものが遅れを作る場面もあるはずです。
でも、そこで思い浮かんだものを全部まとめて「これがリードラグ構造です」と言ってしまうと、さすがに広すぎる。
それでは「何でもあり」になってしまって、検証のしようがなくなります。雑に言えば、ありとあらゆる遅い主体、詰まる主体、歪んだ判断をする主体が金を落とすという話になってしまう。方向としては間違っていなくても、それはまだ戦場候補の巨大な棚卸しであって、一本の仮説ではない。
今回、自分の中で特にまずいなと思ったのは、性質の違うものをかなり混ぜていたことです。
たとえば、パニックや誤認による不合理売買のような心理要因。送金や交換、ポジション再配分の遅れのような資金移動要因。制度やシステム都合による処理遅延。ニュースや情報の解釈差、伝達経路の違い。こういうものはそれぞれ別のメカニズムなのに、最初はかなり同じ箱に放り込んでいました。
この状態だと、たとえ何か観測差が出ても、「で、それはどの要因なの?」がわからなくなる。
逆に何も出なかったとしても、「いや、今回はこの要因じゃなかっただけかもしれない」といくらでも逃げ道が残る。これでは白黒がつきません。仮説を広げすぎると、何でも説明できる代わりに、何も判断できなくなるわけです。
だからここで必要だったのは、さらに材料を集めることではなく、むしろ削ることでした。
全部が無価値なわけではない。でも、今ここで主線として扱うにはノイズが多すぎるものはある。そういうものをいったん脇に置いて、まずは「今の自分が一本の仮説として扱うべき核は何か」を残す方向に切り替える必要がありました。
今日はその意味で、仮説を立てたというより、仮説の中に混ざっていた余分なものを見つけた日だったのだと思います。
綺麗な答えが出たというより、むしろ「今のままだと広すぎて使えない」という現実が見えた。ここを自覚できたのは、かなり大きかったです。
3. 今回の核として残したのは「資金移動・交換・再配分の遅れ」
そうやって削っていった結果、今回の仮説の中でいちばん筋が良さそうだと感じたのは、市場間の資金移動・交換・ポジション再配分の遅れによって、メイン市場で起きた価格変化や需給変化が別市場へ遅れて伝播する、という線でした。
これを核として残した理由はシンプルです。
まず、心理やニュース解釈のような広すぎる話に比べて、かなり構造的に捉えやすい。しかも、単なる「誰かが遅い」という曖昧な話ではなく、資金やポジションが同じ場所へ即時には移れないという具体的な friction を想定できる。さらに、ミリ秒〜数秒の純粋な価格同期レースのように、いきなりHFTや執行速度の殴り合いに全部寄ってしまうわけでもない。このあたりが、自分の今の主線としてはかなり扱いやすく感じました。
ここで遅れるのは、必ずしも「価格を見ていない人」ではありません。
むしろ、価格変化自体は認識していても、その変化に対して資金移動・通貨交換・ヘッジ・ポジションの組み換えを即時に完了できない主体がいる、という見方の方がしっくりきています。要するに、判断より先に、執行や再配分の方に時間がかかる。その結果、価格や需給の変化がメイン市場だけで吸収されず、別の市場や経路に少し遅れて波及する可能性がある、ということです。
この仮説が良いのは、遅れが繰り返し起きる理由も比較的素直に書けるところです。
個人の感情や一時的なミスに頼るのではなく、市場構造やシステム構造に内在する遅延として説明しやすい。たとえば、通貨や資金を移すのに手間や時間がかかる、交換経路が多段になる、ヘッジやポジション調整に手順がある、市場ごとに流動性や資金の集まり方が違う、といったことです。こういうものは、なくそうとしても簡単には消えませんし、だからこそ繰り返し起きる余地がある。
もちろん、この時点ではまだかなり雑です。
どの市場間でその遅れが一番残りやすいのか、どの時間軸でなら自分でも取れるのか、コスト込みで本当に残るのか、といったことは全然これからです。ただ、少なくとも「何となくリードっぽいものを探す」よりは一段前に進んだ感じはあります。見えているズレそのものではなく、なぜそのズレが残るのかを一応説明できる形になってきたからです。
今日の時点で言えるのは、多分ここまでです。
自分が狙うべきなのは、単なる超短期の価格同期レースではない。
少なくとも今の仮説の核として残したのは、市場間の資金移動・交換・再配分の遅れによる遅延伝播でした。
この一本を軸にして、次の整理へ進もうと思います。
4. 採用したもの、今は触らないもの、切るものを分けた
今回いちばん良かったのは、仮説を一本に圧縮できたこと以上に、混ざっていたものをちゃんと分類できたことかもしれません。
最初に書き出した段階では、とにかく色々なものが同じ箱に入っていました。パニック売りや混乱のような心理要因もあれば、ニュースや情報解釈の遅れもある。送金や通貨交換、ポジション組み換えのような資金移動の話もあるし、取引所都合の停止やメンテ、精算プロトコルのようなイベント寄りのものもある。どれも「遅れ」という意味では関係していそうに見えるのですが、全部を同列に並べたままだと、さすがに仮説としては広すぎます。
そこで今回は、それらを採用するもの、今は触らないもの、切るものに分けることにしました。
まず採用したのは、もちろんここまで書いてきた資金移動・交換・再配分の遅れです。今の自分が主線として扱うなら、ここがいちばん筋が良い。理由は、構造として言語化しやすく、しかも市場間で実際に friction が残る余地もありそうだからです。超短期の単純な価格同期レースに比べれば、少なくとも「観測できても取れない」だけで終わる可能性を一段下げられるかもしれない。
一方で、今は触らないものとして残したものもあります。
たとえば、パニック売りや恐怖・混乱による不合理売買。これは現象としては確かにあるはずです。ただ、今の主線である「資金移動や再配分の遅れ」と混ぜると、心理要因なのか構造要因なのかが曖昧になる。だから、無価値というわけではないけれど、今ここで主線仮説に混ぜるのはやめました。ニュースや情報解釈の遅れについても同じです。面白いし、将来的には十分ありうるテーマだけれど、今の段階では広すぎて、主線を濁らせる方が大きいと判断しました。
さらに、切るものもあります。
たとえば、一部のbotのロジック不具合や、取引所の一時停止、定期メンテ、サーキットブレーカー、精算プロトコル発動のようなものです。もちろん、これらが無価値というわけではありません。市場では実際に重要な局面を作ることもあるでしょう。ただ、少なくとも「継続的に観測して、再現的な収益構造として扱う主線仮説」の材料としては弱い。頻度が低かったり、偶発性が高かったりして、今の段階で主線に据えるには向いていない。なので今回は、いったん完全に外しました。
この分類をやってみて改めて思ったのは、全部を大事にしようとすると、結局何も大事にできなくなるということでした。
無価値ではないものを「今は触らない」に回す。
面白くても主線にならないものを切る。
そうやって残した芯だけを仮説として扱う。
多分、これをやらないと、また何でもありの棚卸しに逆戻りしてしまうのだと思います。
今日はその意味で、仮説を立てたというより、仮説の周りにまとわりついていたノイズを分別した日だったのかもしれません。
この作業は地味ですが、主線を作る上ではかなり重要だった気がしています。
5. 明日から見るリード構造候補を3本に絞った
ここまで整理したうえで、最後にやったのが「では、実際にどこを見に行くのか」を絞ることでした。
仮説の核を資金移動・交換・再配分の遅れに置くなら、見るべきなのは単純な価格先行ではなく、価格や需給の変化が別の市場へ遅れて伝わりやすい経路です。つまり、同じビットコインでも、すぐ同じ場所に同じ資金を持っていけないとか、取引時間やアクセス窓口が違うとか、法定通貨やデリバティブを挟むことで friction が乗るようなところを優先して見た方が良い、という整理になりました。
その前提で、明日からの探索対象として残した候補は3本です。
1本目は、グローバルBTC/USDとUSD/JPYを組み合わせた理論価格と、ローカルBTC/JPY市場のズレです。
これは今の仮説とかなり相性が良い。BTC/USDそのものとUSD/JPYは比較的グローバルな価格情報として見やすい一方で、実際にローカルBTC/JPY市場へ資金を持ち込み、売買し、価格を均していくには円資金や取引所ごとの在庫・流動性の事情が絡む。要するに、価格を知ることと、その価格に合わせてすぐ同じ土俵で資金を動かすことは別、という friction を見に行ける可能性がある。
2本目は、米国のスポットBTC ETFと24/7のBTCスポット市場です。
ここはかなりわかりやすく、ビットコインそのものは24時間動いているのに、ETFというアクセス窓口には取引時間の制約がある。時間制約のある市場でしか動けない資金と、24/7で先に動く暗号資産市場の間に、再配分や価格消化の遅れが残るなら、かなり構造的です。少なくとも「誰が、なぜ遅れるのか」が比較的説明しやすい。
3本目は、CMEのBTC先物と24/7のBTCスポット市場です。
これは昔から自然に思いつくラインですが、今の時点では上の2本よりやや優先度を落としています。理由は単純で、重要市場ではあるものの、時間窓の違いだけで綺麗に説明しきれるかは少し怪しいからです。それでも、機関投資家のヘッジや再配分、先物主導の価格形成と現物側の消化のズレが残る可能性はあるので、候補からは外さずに持っておくことにしました。
ここで大事なのは、この3本が正しいと決めたわけではないということです。
むしろ逆で、ようやく「見るに値する候補を3本まで絞った」という段階です。ここから先にやるべきなのは、この3つを同じ熱量で信じることではなく、最小観測で白黒をつけることだと思っています。どこに本当に遅れが残るのか。どれが自分の執行条件まで届くのか。観測できるだけで終わるものはどれか。そこを冷たく見ていく必要がある。
今日は、その入口までようやく辿り着いた感じです。
リードラグ研究と言いながら、これまでは「何か先行しそうなもの」を探す方向に寄りがちだった気がします。でも、本当に必要なのはそういう雑な探索ではなく、どんな friction があり、誰が遅れ、その遅れがどこに残るのかを踏まえた候補選定なのだと思います。
明日からは、この3本を起点にして、ようやく本当に見に行くべきものを見に行きます。
6. 仮説設計力を高めるために、何を学ぶべきかも見えてきた
ここまで整理してみて、改めて感じたのは、自分にはまだ仮説設計力が足りないということでした。
問いの方向そのものはそこまでズレていないと思うのですが、仮説を一本に圧縮し、検証可能な形まで細く削る力はまだ弱い。要するに、「ありうる話」をたくさん並べるところまではできても、それを主線の仮説に仕立てる精度が足りていないわけです。
ただ、逆に言えば、今の課題が少しはっきりしてきたとも言えます。
自分に足りないのは、何か魔法みたいな発想力ではなく、現実にありうる取引構造を踏まえて、誰が・何を・なぜ遅らせ、その遅れがどこにどう残るのかを切り分ける力なのだと思います。
その意味で、今後はbotタスクを進めるだけでなく、並行してこの仮説設計力自体も鍛えていく必要があると感じました。
ただし、ここで何でもかんでも読めば良いわけではない。今の自分に必要なのは、一般的な投資心理や成功談を広く集めることよりも、まず市場構造そのものを理解することです。
具体的には、誰が市場に参加していて、どんな制約を抱えていて、どういう場面で流動性を供給し、どういう場面で価格を追いかけざるを得なくなるのか。あるいは、どこまでが純粋な技術勝負で、どこから先が構造理解や観測設計の勝負になるのか。こういう部分の理解がまだ甘いから、仮説が広がりすぎたり、逆に自分向きの話へ寄せすぎたりしやすいのだと思う。
なので、今後のインプットの方向性も少し見えました。
ただトレード本や論文を読むというより、市場構造・執行・裁定・価格発見の仕組みを学ぶ方向に寄せていく。さらに、毎回の研究について「主仮説を一本、反証条件を一つ、最小観測項目を三つ」という形に落とす訓練も並行してやる。結局のところ、仮説設計力は本を読んだだけで急に身につくものではなく、実際に仮説を立てて、削って、白黒をつける中で鍛えていくしかないのでしょう。
今日は、その意味でも一つ良い整理ができた気がします。
今の自分は、問いを立てること自体は以前よりだいぶマシになってきた。でも、そこから先、仮説を細くして検証可能な一本へ圧縮する力がまだ足りない。だから今後は、botを作ることと同じくらい、その前段にある「何を仮説として扱うべきか」を鍛えていく必要がある。多分、これも専業アルゴトレーダーとして避けて通れない地味な基礎力なのだと思います。