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🛠️開発記録#514(2026/4/15)DeFi研究メモ ― "利回り付きステーブルコイン"から金の流れを追い、エッジ候補を絞る

こんにちは、よだかです。

今回は、DeFi側のbot開発に向けた研究メモをまとめます。テーマは、利回り付きステーブルコインやその周辺市場を観測することで、どこに金が流れ、どの構造にエッジ候補がありそうかを見に行くことです。現時点ではまだ判断材料が十分とは言えませんが、だからこそ今は、何を根拠にどの仮説を立て、どう検証し、何が出たら継続して何が出たら切るのかを先に明確にしておくことに意味があります。今回はその土台を、できるだけ実務寄りに整理しておきます。

利回り付きステーブルコインというテーマについては過去にもリサーチしていたので、今回はそれを土台にしてもう一歩具体的なプランまで進めたという感じです。

前回の話
🛠️開発記録#479(2026/3/10)「成熟期のDeFiで何を観測するべきか ― OrderBook型DEXとキャッシュフロー中枢を追う」

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参考情報

今回の整理にあたっては、主に以下の情報を参照しています。

  • State of DeFi 2025
    DeFi全体の資金の流れ、stablecoin、perps、DEX、RWA、MEV、institutional access などの構造整理に使用。
  • Ethena / Sky関連ドキュメント・ガバナンス更新
    USDe / sUSDe の設計、利回り源泉、供給や活用先の把握に使用。
  • Pendle ドキュメント
    PT / YT / implied APY の意味と、利回り市場としての読み方の整理に使用。
  • Hyperliquid / DefiLlama などの公開情報
    perp市場、TVL、stablecoin、protocol activity のざっくりした状況把握に使用。
  • 主な参照先:Ethena Governance / Ethena Docs / Pendle Docs / Hyperliquid Docs / DefiLlama / Sky

1. 今回の問い ― DeFi のどこに「金の匂い」があるのかを、まず観測可能な形にする

今回の研究メモで最初に置いておきたい問いは、かなりシンプルです。
DeFi のどこに、個人 botter が追いかける価値のある「金の匂い」があるのか。
そしてもう一段具体的に言えば、その匂いを、今の自分が観測可能で、しかも比較的短い時間で白黒をつけられる仮説に落とせるのか。
この2点です。

DeFi というテーマ自体は広すぎます。
DEX、perps、lending、yield、RWA、stablecoin、MEV、bridge、governance、prediction market と、とにかく対象が多いです。しかも一見すると、どのテーマもそれっぽく見えます。そのため、何も決めずに「DeFi を調べる」という態度で入ると、たいていは情報を拾っただけで終わります。見たことのない単語が増え、面白そうな仕組みも増え、構造っぽい説明もたくさん見つかる一方で、「では自分は何を観測し、どこに仮説を置き、どの条件なら継続でどの条件なら切るのか」というところが曖昧なまま残ります。今回避けたいのは、まさにその状態です。

そのため今回は、DeFi 全体を均等に見るのではなく、資金の通り道に近いものから見るという方針を取ります。
もう少し言えば、「派手に値動きするもの」ではなく、実際に誰かが資本コストを払っている場所に近いものから見る、ということです。
なぜなら、エッジの匂いというのは、価格の動きそのものよりも、まずは誰が、何のために、どんなコストを払っているのかの方に表れやすいからです。

今回その観点から最も気になっているのが、利回り付きステーブルコインとその周辺市場です。
ここでいう利回り付きステーブルコインとは、単なる「1ドルに張り付く決済用トークン」ではありません。米国債や MMF を裏付けとするもの、プロトコルの貯蓄レートや収益を流すもの、あるいは暗号資産担保と先物ヘッジ・funding(先物市場などで発生する資金調達コスト)を利用して利回りを作るものなど、複数の型があります。見た目はどれも「ドル建てで、しかも利回りが付く便利なやつ」に見えますが、実態はかなり違います。

この違いが重要です。
なぜなら、それぞれの利回りの原資が違うということは、そこに流れてくる資金の性格も違うからです。

米国債・MMF 型であれば、そこに流れてくるのは比較的保守的な待機資金、treasury 資金、あるいは待機資金の運用先を探す機関的な資金かもしれません。
プロトコルの貯蓄レート型であれば、そこには DeFi 内部の借り手需要や資本配分の構造が反映されるはずです。
そして Ethena 系のようなデルタヘッジ・funding 型であれば、その利回りの背後には perp 市場のレバレッジ需要や basis、市場の取引熱にかなり近いものがある可能性があります。
どれも見た目は「ドル建てで利回りが付いている」という意味では似ていますが、背後にあるお金の色がまるで違います。
この違いが見えるということは、どの種類の資本需要が今強いのかを切り分けられる可能性があるということでもあります。

ここで自分が面白いと感じているのは、利回り付きステーブルコイン自体を「買う対象」として見ることではありません。
少なくとも現時点では、そこにそのまま投資エッジがあるとはまだ全然言えません。
そうではなく、それらを「資金需要のセンサー」として使えないか、という問いの方に価値を感じています。

たとえば、あるタイプの利回り付きステーブルコインの供給が増えているとします。
それが単に「高い利回りだから集まっている」だけなら、その背後にあるのは単なる利回り追求かもしれません。
一方で、利回りそのものはそこまで目立たないのに、それでも供給が増え、担保として使われ、特定の lending や yield protocol や perp 市場と連動しているなら、それは「この資産が便利だから使われている」「この市場で何か別の需要が立っている」ことを意味するかもしれません。
この違いはかなり大きいです。前者はただの人気商品かもしれませんが、後者は構造を映している可能性があります。

今回、自分が DeFi 側で最初に見に行く価値があると考えているのは、まさにこの後者です。
つまり、利回り付きステーブルコインの“利回りそのもの”ではなく、その背後で誰がどんな都合でその資産を必要としているのかを観測すること。
そのうえで、それが perps、yield market、collateral demand、あるいは特定プロトコルの activity にどう繋がっているかを見ること。
これが今回の研究の出発点です。

もちろん、現時点ではまだ判断材料が足りません。
正直に言えば、この段階では「面白そうだ」「資金の匂いがする」と感じているに過ぎず、それが本当にエッジ候補になるのかどうかは全く別問題です。
むしろ今の自分に必要なのは、ここで早々に「勝てそう」などと判断することではなく、どこまでが情報不足で、どこから先が仮説の問題なのかを切り分けることです。

今回のメモでは、そこを明確にしたいと考えています。
具体的には、DeFi の広いテーマをむやみに舐め回すのではなく、

  • 何を起点に見るのか
  • その理由は何か
  • どんな根拠が現時点であるのか
  • まだ何が足りないのか
  • その不足を最短でどう埋めるのか
  • 何が出たら継続し、何が出たら切るのか

を順に整理していきます。

ここで大事なのは、研究メモを「調べたことの記録」にしないことです。
本当にやりたいのは、「この情報があるなら次にこう判断する」「このデータが取れないならこの仮説は保留にする」「この条件を満たさなければ切る」といった、行動に接続するメモにすることです。
専業である以上、研究は研究として面白がるだけでは足りません。
最終的には、市場で白黒をつけるところまで接続しなければ意味がありません。

その意味で、この第1章で置いておきたい問いは改めてこうなります。

DeFi のどこに、資本需要と収益構造が交差する観測可能なポイントがあるのか。
その中で、自分が今もっとも短い時間で白黒をつけにいけるテーマは何か。

この問いに対して、現時点で最も有力な候補として見ているのが、
利回り付きステーブルコイン → 利回り市場 → perp / 担保需要
という流れです。

この見方は、2025年の DeFi 全体像ともかなり噛み合っています。
State of DeFi 2025』では、2025年の DeFi は投機サイクル依存の場から少し離れ、stablecoin を土台にしつつ、trading stack・credit・yield・RWA collateral・execution infrastructure がそれぞれ分化しながら接続する構造に寄ってきたと整理されています。特に stablecoins は monetary base layer とされ、trading infrastructure は issuance、spot、derivatives、event-driven markets を繋ぐ連続した系として描かれています。さらに execution は private routing や solver-based systems によって改善しつつ、権限やフローは一部に集中している、という整理です。

この整理を自分なりに読み替えると、いま見に行くべきなのは、派手な価格そのものではなく、どこに資金が溜まり、どこに資本コストが発生し、どの配管が太っているのかです。
だからこそ、今回の入り口を利回り付きステーブルコイン周辺に置く意味があります。

以降の章では、この問いを土台にしながら、情報源、仮説、検証方法、期限、継続条件、撤退条件を具体的に詰めていきます。

2. なぜ今 DeFi 側を掘るのか ― 本線を崩さずに「金の匂い」を追える数少ないテーマだから

今回 DeFi 側を見に行こうとしている理由は、単に最近触っていなかったからでも、話題になっているからでもありません。もっと実務的な理由があります。今の自分にとって DeFi は、本線の研究を崩さずに、しかも比較的少ない初期コストで「金の匂い」を探しに行ける数少ない領域だからです。

ここでいう本線とは、いま継続している観測機の開発や、lead-lag 構造の探索です。こちらはすでに相応の時間をかけて土台を作っており、観測→判断→必要なら執行、という自分の主戦場の流れもかなり明確になっています。一方で、主戦場に集中することと、他のテーマを一切見ないことは同義ではありません。むしろ、主戦場に集中しているからこそ、そこを崩さない範囲で別の収益候補を見ておく必要があります。専業である以上、「いま動いているテーマ」「次に金が集まりそうなテーマ」「自分の技術資産で掘れるテーマ」を並行して把握しておくこと自体が仕事です。

ただし、ここで雑に横展開すると危険です。DeFi は対象が広く、しかも一見するとどのテーマも面白そうに見えます。DEX も面白そうですし、perps も面白そうですし、RWA や treasury も魅力的に見えます。けれど、そこで「全部気になるから全部少しずつ見る」という動き方をすると、たいていは情報を摂取しただけで終わります。知った単語だけが増え、構造理解も浅いまま残り、何一つ観測可能な仮説に落ちません。今回はそこを避けたいです。

では、なぜ DeFi の中でも今回の切り口に価値があるのか。
その理由は、DeFi 全体が 2025 年を通して「投機の寄せ集め」から「資本が通る配管」へ少しずつ寄ってきたからです。
『State of DeFi 2025』の冒頭では、2025 年の DeFi は speculative arena から一歩離れ、より durable な financial system に近づいたと整理されています。とくに stablecoins が monetary base layer になり、trading stack が issuance・spot・derivatives・event-driven markets をつなぐ連続した系になり、execution quality が private routing や solver-based systems を通じて改善する一方で、権限や流れが一部に集中していく、という構図が描かれています。

この整理は、自分の感覚ともかなり一致しています。以前の自分なら、「DeFi で何か面白い価格差や歪みがないか」をまず探しに行っていたかもしれません。けれど今は、少なくともそれだけでは足りないとわかっています。価格差は見えていても、取れないことがある。構造はありそうでも、約定品質が悪ければ勝負にならない。単純な公開面の観測だけでは、private routing や solver に吸われた後の残骸しか見ていない可能性がある。これは lead-lag 研究を通して自分が痛感してきたことでもありますし、DeFi 側の市場構造ともかなり噛み合っています。

その意味で、今回 DeFi 側を見るのは「価格を当てにいく」ためではありません。むしろ、どこに資本需要があり、どの配管に資金が流れ、どの市場参加者がどんな理由でコストを払っているのかを見に行くためです。この観点に立つと、派手に動くトークンや短期のニュースよりも、stablecoin、利回り付きステーブルコイン、RWA collateral、perp collateral、Pendle のような利回り市場の方が、はるかに「金の匂い」に近く見えてきます。

特に今回、自分が利回り付きステーブルコイン周辺に注目しているのは、そこが単なる商品群ではなく、複数の市場を繋ぐ接続点だからです。たとえば、米国債・MMF 型のトークンは保守的な待機資金や treasury 運用資金を引き受けます。プロトコルの貯蓄レート型は、DeFi 内部の credit や capital allocation の状態を映します。Ethena 系のようなデルタヘッジ・funding 型は、perp 市場のレバレッジ需要や basis、市場の取引熱にかなり近いところを触っています。どれも見た目は「ドル建てで利回りが付いている」という意味では似ていますが、背後にあるお金の色が違います。そこを切り分けて見られるなら、どの種類の資本需要が今強いのかを、価格以外の形で観測できるかもしれません。

ここで重要なのは、自分がいきなり DeFi の執行 bot を作ろうとしているわけではない、という点です。少なくとも現時点では、そこまで進むつもりはありません。理由は単純で、そこに入ると途端に実装負荷が跳ね上がるからです。ルーティング、ガス、非公開注文フロー、失敗時の挙動、実際の約定品質、そのへんまで含めると、観測の段階を飛ばしていきなり執行に入るのは筋が悪いです。いま欲しいのは、「何か動きそうだから作る」ではなく、作る価値があるテーマを観測で絞ることです。つまり今回の DeFi リサーチは、収益 bot を即作るためというより、観測対象としての優先順位をつけるためのものです。

この見方に立つと、DeFi 側を今掘ることにはもう一つ利点があります。
それは、比較的短い時間で「やる価値があるかどうか」の白黒をつけやすいことです。
これはかなり大きいです。RWA や treasury 周辺のテーマの中には、長い時間軸でしか意味が出てこないものも多いですし、institutional adoption 系は流れそのものは重要でも、個人が最短で収益化に接続するには遠すぎることがあります。一方で、利回り付きステーブルコイン → Pendle → perp / collateral という流れは、公開情報が比較的多く、API も存在し、日次から時間足で見られる指標もあります。つまり、大きい市場なのに、まだ観測による仮説検証ができる余地が残っているわけです。これは個人にとってかなり嬉しい条件です。

自分にとって「今 DeFi 側を掘る」という行為は、したがって気分転換ではありません。むしろ、かなり本線寄りの動きです。理由をまとめると、次の3点になります。

第一に、今の DeFi は資本の通り道として見る価値がある段階に入っていること。
第二に、自分はもう、価格差や表面の値動きだけではなく、その背後の資本需要を見るべき段階にいること。
第三に、その中でも利回り付きステーブルコイン周辺は、観測可能で、比較可能で、短期検証に落としやすいことです。

もちろん、ここで過剰に期待するつもりはありません。現時点ではまだ、「金の匂いがするかもしれない」というレベルです。何なら、ここから観測してみた結果、「結局、思ったより取れる構造はなかった」という可能性も普通にあります。ただ、それでもなお今このテーマを見る価値があるのは、少なくともここには

  • 資本需要の違いがある
  • 利回り源泉の違いがある
  • 資金の流入先の違いがある
  • その違いが公開情報からある程度追える

という、仮説を立てて白黒をつけるための材料があるからです。

今回の章で言いたいことを一文にすると、こうなります。

今 DeFi 側を掘るのは、DeFi が面白そうだからではなく、資金の流れと資本コストの偏りを観測することで、比較的短い時間で「金の匂い」を白黒つけにいけるテーマだからです。

次は、その前提の上で、今回あえて見ないもの、つまり今はやらないことを明確にしていきます。

3. 今回やらないこと ― 面白そうでも、いまは掘らないテーマを先に切っておく

ここまでで、「なぜ今 DeFi 側を見るのか」はある程度整理できました。
ただ、それと同じくらい大事なのが、今回やらないことを先に決めておくことです。
これは単なる慎重さではなく、専業としての研究コスト管理そのものです。

DeFi は情報量が多く、新しいテーマも次々に出てきます。
そのため、何かを見に行くときに「これも面白そう」「あれも繋がっていそう」と横に広がりやすいです。
けれど、ここで広がり始めると、たいていはリサーチした感だけが残って、実際には何一つ白黒がつきません。
だから今回は、あえて「いまは掘らないもの」を明示します。
何をやるかだけでなく、何を切るかを決めておくことが、むしろ今回の研究メモの核です。

3-1. 汎用的な DeFi アービトラージ bot はやらない

まず切るのは、汎用的な DeFi アービトラージ bot です。
ここでいう汎用的というのは、複数 DEX や複数チェーンをまたいで価格差を取りに行くような、いわゆる「わかりやすいアービトラージ」のことです。

これは一見すると、DeFi 側で最も金の匂いがしそうなテーマに見えます。
実際、自分も以前から気になっていましたし、やってみたい感覚もありました。
ただ、現時点ではここに入る優先度は低いと判断しています。

理由は単純で、今の自分にとって検証コストが高すぎるからです。
価格差を見つけるだけなら簡単ですが、実際にそれを取れるかどうかは全く別問題です。
ルーティング、ガス、非公開注文フロー、MEV、トランザクション失敗、スリッページ、競合の存在、執行経路の違い……こうしたものを全部飲み込まないと、表面価格の歪みはそのままエッジになりません。
しかも今の DeFi は、公開面に見えている価格差の背後で、**執行最適化業者(solver。ユーザーが望む結果を満たすために複数の経路や流動性を使って最適な執行を組み立てる主体)**や、相対見積執行(RFQ。市場に投げる前に相手方から見積価格を取って執行する仕組み)、非公開ルーティングが動いている構造です。
つまり、「見えている歪み」をそのまま取りに行く設計は、かなりの確率で後追いになります。

ここは、以前から自分が lead-lag や短期構造の研究で学んできたこととも一致しています。
構造があることと、個人がそれを取れることは別競技です。
汎用アービトラージは、その差が特に大きい領域です。
したがって今回は、「面白そうだから」では入らず、いったん明確に切ります。

3-2. いきなり執行 bot まで作ることはしない

次にやらないのは、観測を飛ばしていきなり執行 bot を作ることです。

これは DeFi アービトラージに限らず、どのテーマでも同じです。
何かの構造がありそうだ、資金が流れていそうだ、利回りの差がありそうだ、と感じた瞬間に「では bot を作って試そう」と行きたくなるのは自然です。
ただ、ここで作る方向へ飛ぶと、実装の重さが一気に増えます。
しかも、まだ白黒がついていない段階で実装を抱えると、実装そのものが「やった感」を生みます。
これはかなり危険です。

今ほしいのは、観測の解像度を上げて、比較可能な仮説を作ることです。
つまり、

  • どの資本需要が強いのか
  • どの利回り源泉がいま効いているのか
  • どの protocol や市場と繋がっているのか
  • その関係性に時系列上の先行性があるのか

といったところを、まず観測で詰める必要があります。
ここを飛ばして執行に入ると、最終的には「何を検証しているのかわからない bot」になります。
それならまだ、作らない方がマシです。

3-3. DeFi 全体の“面白そうなテーマ”を均等に舐めることはしない

今回は、DeFi 全体を広く均等に見ることもしません。
これは本当にやりがちな失敗です。

stablecoin も見る。
RWA も見る。
perps も見る。
DEX も見る。
prediction market も issuance rail も MEV も見る。
こう書くと一見バランスが良さそうですが、実際には視点が散ります。
しかも、それぞれで必要な知識やデータの粒度が違うので、表面だけ撫でて終わる可能性が高いです。

今回の研究でやりたいのは、「DeFi を勉強すること」ではありません。
収益候補になりうる構造を、今の自分が比較可能な形で見に行くことです。
そのためには、対象を絞る必要があります。

なので今回は、DeFi 側を見ると言っても、実際にはかなり狭く切ります。
主に見るのは、

  • 利回り付きステーブルコイン
  • その担保採用先
  • その周辺の利回り市場
  • さらに繋がる perp / 担保需要

のあたりです。
逆に、それ以外のテーマは「いまは主戦場にしない」と決めておきます。

3-4. 機関投資家向け文脈を、最初から主戦場にしない

もう一つ明確に切るのは、機関投資家向け文脈やトークン化国債の大きな流れそのものを、最初の収益仮説にしないことです。

ここはかなり重要です。
たとえば USYC や USDY、OUSG、BUIDL のような tokenized treasury 系は、明らかに大きな流れです。
実際、DeFi 側の文脈でも、RWA collateral や tokenized Treasuries はかなり本流化しています。
なので、テーマとしての魅力はかなりあります。

ただし、ここには落とし穴があります。
重要な流れであることと、個人が最短で検証できることは別です。

機関投資家導入というテーマは、大きくて、遅くて、しかも permissioned な部分が多いです。
つまり「市場全体として重要」である一方で、「個人が短い時間で白黒をつけられる観測対象」としては少し遠いのです。
だから今回は、これを主戦場にはしません。
完全に無視するわけではありませんが、せいぜい二段目、三段目の観測テーマとして置くに留めます。

ここで最初から機関投資家向け文脈を本丸にしてしまうと、観測も判断も遅くなります。
今やりたいのはそこではありません。
今必要なのは、もっと短いサイクルで白黒をつけられる構造です。

3-5. 「高利回りだから伸びている」という単純ストーリーには乗らない

これもかなり大事なので、明示しておきます。
今回は、高利回りだから資金が流入しているだけ、という単純ストーリーには乗りません。

利回り付きステーブルコインを見ると、どうしても最初に「利回りが高いから人気なのだろう」と考えたくなります。
それ自体は自然ですし、実際にそういう面もあるでしょう。
ただ、それを最初の説明にしてしまうと、観測が浅くなります。

自分が今回知りたいのは、「人気商品は何か」ではなく、その資産がなぜ必要とされているのかです。
もし単に高利回りだから流入しているだけなら、それはそれで一つの現象ですが、そこから収益構造を引くのは難しいです。
逆に、利回りがそこまで高くないのに流入し、担保に使われ、特定市場と連動しているなら、そこには利便性に根ざした需要や資本需要に根ざした構造があるかもしれません。
今回追いかけたいのは後者です。

なので、「高利回りだから伸びる」という雑な物語で片付けられる段階では、まだ仮説の入り口にすら立っていないと考えています。

3-6. 研究テーマを増やして達成感を作ることもしない

最後に、これはかなり自戒を込めて書いておきます。
研究テーマを増やすことで達成感を作ることもしません。

DeFi に触っていると、新しいテーマはいくらでも見つかります。
BTC DeFi もありますし、RWA もありますし、MEV もありますし、prediction market もあります。
それぞれに面白さがあり、それぞれにもっともらしい収益ストーリーがあります。
ただ、それを片っ端から「次に見たいテーマ」としてメモしていくと、研究している感覚だけが増えていきます。
これはかなり危ないです。

今の自分に必要なのは、広げることではなく、狭めることです。
「このテーマはいまは見ない」「これは二段目に回す」「これは主戦場にしない」と切り続けることの方が、たぶん価値があります。
なぜなら、そうしないと観測と判断が散って、本当に重要なものが見えなくなるからです。

今回の章でやったのは、要するにその整理です。

  • 汎用アービトラージはやらない
  • いきなり執行までは行かない
  • DeFi 全体を広く舐めない
  • 機関投資家向け文脈を最初の本丸にしない
  • 高利回りというだけの説明には乗らない
  • テーマを増やして達成感を作らない

これらを切った上で、残ったものだけを見る。
そのくらい絞って、ようやく今回の研究は意味を持ち始めます。

一言でまとめると、今回やらないことを先に決めた理由はこうです。

DeFi 側で金の匂いを追うにしても、今の自分が最短で白黒をつけられる範囲にテーマを閉じ込めないと、研究した感だけで終わるからです。

次は、その前提の上で、実際に今回どの情報を見に行ったのか、主な情報源とともに整理していきます。

4. 今回見に行った情報源 ― どの市場を、どの視点で、何のために読むのか

今回のリサーチでは、情報源をむやみに増やさず、**「市場構造の全体像」「個別プロトコルの設計」「実際の活動量や規模」**の3層に分けて見ました。
理由は単純で、DeFi は情報が多すぎるからです。
ニュースだけ読んでも地図ができませんし、逆に個別プロトコルの仕様だけ掘っても、それが市場全体の中でどの位置にあるのかが見えません。
そこで今回は、まず全体像を掴み、そのうえで有力候補の設計を読み、最後に公開データで「本当に規模があるのか」「観測対象として耐えるのか」を確認する、という順番で整理しました。

4-1. 全体像の把握には『State of DeFi 2025』を使った

最初に見たのは、DeFi 全体の地形をざっくり把握するための資料です。
ここで主に使ったのが『State of DeFi 2025』でした。

この資料の価値は、単なる分野紹介にとどまらず、2025年時点の DeFi がどの方向へ構造変化しているのかをかなり大きな視点で整理してくれている点にあります。
特に重要だったのは、DeFi が「投機的なテーマの集合」から、stablecoin を土台にしつつ、執行、信用、利回り、担保、実資産連動といった要素が接続された金融システムに近づいている、という整理です。資料では stablecoin が monetary base layer とされ、trading stack は issuance・spot・derivatives・event-driven markets をつなぐ連続した系として描かれています。また execution は private routing や solver-based systems を通じて改善しつつ、一部への集中も進んでいると整理されています。

この全体像が必要だったのは、今回のテーマを「面白そうなもの探し」にしないためです。
たとえば、利回り付きステーブルコインだけを単独で見ると、「利回りがついて便利そう」「最近増えているらしい」で終わってしまいます。
けれど、それを stablecoin の基盤化、利回り市場の発達、担保の再編、執行品質の競争という文脈の中に置くと、見え方が変わります。
それは単なる商品ではなく、資本需要の色が出る接続点として見えてきます。
今回、この視点を持てたことがかなり大きかったです。

また、この資料は「どこに金が集まったのか」という観点でも役立ちました。
perps は成熟した収益源になり、DEX は単純な AMM の時代から最良執行競争の時代へ移り、RWA や tokenized Treasuries は担保・利回りの基盤として存在感を増し、restaking のような複雑な領域は報われにくくなった、といった整理があります。
このあたりを読むことで、「全部を見に行く必要はない」「勝ち筋の候補はある程度偏っている」という判断材料が増えました。

4-2. 利回り付きステーブルコインの設計を見るために、Ethena と Sky を読んだ

全体像を掴んだあとは、今回の主題である利回り付きステーブルコインについて、個別の設計を確認しました。
ここで特に重要だったのが Ethena と Sky です。

まず Ethena です。
Ethena は USDe と sUSDe を中心にした仕組みを持っており、今回の観測候補としてかなり重要です。
なぜなら、ここは単なる「利回り商品」ではなく、暗号資産担保、先物ヘッジ、資金調達コスト、担保需要が交差する場所だからです。
公式文書では、USDe は暗号資産担保と先物・永久先物での反対売買を組み合わせた合成ドルであり、sUSDe の利回りは backing asset に由来する報酬や funding、basis などから構成されると説明されています。
つまり、ここで見ている利回りは、米国債のような外生的な金利ではなく、暗号市場の内部で誰かが払っているコストに近いわけです。
この点が、自分にとってかなり重要でした。

さらに、Ethena のガバナンス更新を追うことで、単なる設計だけでなく、実際の供給量、活用先、足元の利回りまで見られます。
この手の情報は、テーマの規模感を掴むうえでかなり役立ちます。
「仕組みとして面白い」だけではなく、「実際にどの程度使われているのか」「今の利回りはどの程度なのか」「どこに接続されているのか」を見ることができるからです。
ここを読んで初めて、Ethena 系は単なる話題枠ではなく、ちゃんと観測対象にできるサイズを持った市場だと判断できました。

もう一つ見たのが Sky です。
ここでは sUSDS を中心に見ました。
Sky 系は、Ethena ほど市場の熱や先物需給に近いわけではありませんが、その代わり DeFi 内部の貯蓄レートの基準として使いやすいです。
つまり、自分の中では sUSDS を「DeFi 版の短期金利の基準」に近いものとして置いています。
そうしておくと、Ethena 系や Pendle 側の利回りが「単に高いから人が来ている」のか、「基準レートと比べても別の理由で需要が立っている」のかを見やすくなります。

ここで重要だったのは、同じ「利回り付きステーブルコイン」でも中身が全く違うと確認できたことです。
Ethena は市場の資金調達コストに近く、Sky はプロトコル内の貯蓄・資本配分に近い。
この違いを分けて見ないと、後段の仮説が全部ぼやけます。
今回、個別ドキュメントを読む意味があったのはまさにそこです。

4-3. 利回り市場の読み方を整理するために Pendle を見た

次に見たのが Pendle です。
ここは今回かなり重要でした。
理由は、Pendle が単なるプロトコルの一つではなく、市場参加者が将来の利回りをどう見ているかを直接観測できる場所だからです。

Pendle では、元本部分と利回り部分が分けて取引されます。
原語では PT(Principal Token)と YT(Yield Token)ですが、今回は意味を重視して、元本トークン利回りトークンと読んでおきます。
この分離によって、市場が「将来どのくらいの利回りを織り込んでいるか」をかなり直接的に見られます。
これは非常に面白いです。
というのも、利回り付きステーブルコインそのものを見ているだけだと、現時点の利回りしかわかりません。
けれど Pendle を通すと、市場の期待が見えます。

今回 Pendle を読むことで整理したかったのは、ここです。
つまり、利回りそのものではなく、実現している利回りと、市場が織り込んでいる将来利回りの差が情報になるのではないか、ということです。
もしその差が大きいなら、それは単なる人気ではなく、「将来の資本需要」「担保需要」「取引需要」に対する市場の見方が含まれているかもしれません。
この視点が得られたことで、今回の仮説はかなり一段深くなりました。

また Pendle を見ることで、Ethena や Sky を単独で見るのではなく、それらを利回り市場の文脈に接続して読むという構図ができました。
これも大きいです。
利回り付きステーブルコイン単体の供給や利回りだけを見ていても、結局は「増えた」「減った」で終わりやすい。
そこに Pendle の価格形成が入ると、「市場がそれをどう評価しているか」が乗ってきます。
これは観測対象としてかなり強いです。

4-4. 活動量や市場規模の確認には Hyperliquid と DefiLlama を使った

最後に、個別設計を読んだだけではテーマの優先順位は決まりません。
「理屈として面白い」と「実際に市場として十分大きい」は別だからです。
そこで使ったのが Hyperliquid と DefiLlama です。

Hyperliquid は、今回の文脈では perp 市場の代表的な観測対象です。
自分がここを見た理由は単純で、Ethena 系の利回り源泉や資本需要が本当に市場フローと接続しているなら、その影響は最終的に perp 市場にも何らかの形で出るはずだからです。
しかも Hyperliquid は公開情報がかなり整っていて、建玉(open interest)、資金調達率、出来高など、見たい指標が比較的取りやすい。
これは大きいです。
「巨大だが観測できない市場」ではなく、「巨大で、しかも公開データがある市場」だからです。
この条件があると、仮説を短い時間で白黒つけやすくなります。

DefiLlama は、より広い確認に使いました。
ここでは stablecoin の供給規模、protocol の TVL、RWA 関連の規模感、チェーン別の偏りなどをざっくり把握できます。
とくに今回のように、まだ何を本丸にするかを絞っている段階では、DefiLlama のような「全体地図」はかなり便利です。
ただし、ここで重要なのは、DefiLlama だけで判断を完結させないことです。
DefiLlama は規模や位置関係を見るには強いですが、資金の中身や設計の意味までは教えてくれません。
だから今回は、DefiLlama を「地図」として使い、個別ドキュメントやガバナンス更新を「設計図」として読む、という役割分担にしました。

4-5. 今回の情報源の役割をまとめるとこうなる

ここまで見てきた情報源を、自分の中では次のように使い分けています。

  • 『State of DeFi 2025』
    → DeFi 全体の地形を見るための資料
  • Ethena / Sky の公式文書・ガバナンス更新
    → 利回り付きステーブルコインの中身を見るための資料
  • Pendle の文書
    → 市場が将来の利回りをどう見ているかを読むための資料
  • Hyperliquid / DefiLlama
    → 実際の活動量・市場規模・観測可能性を確認するための資料

この分け方ができたことで、今回の研究はかなり進めやすくなりました。
もし全部を同じレベルで並べて見ていたら、たぶん「いろいろ読んだ」で終わっていたと思います。
けれど今回は、

  • 全体の流れを掴む
  • 個別の設計を理解する
  • 実際の市場規模と観測可能性を確認する

という順番にしたことで、少なくとも「どこに金の匂いがありそうか」「どこなら今の自分でも白黒をつけに行けるか」はかなり見えやすくなりました。

一言でまとめると、今回の情報源選びでやったことはこうです。

DeFi を広く読むのではなく、全体地図、個別設計、公開データの3層に分けて読み、仮説を置けるところまで絞り込むための情報だけを集めた。

次章では、その情報源を踏まえて、自分が今回どういう市場構造を見たのか、そこからどんな考えが導かれたのかを整理していきます。

5. そこから見えた市場構造 ― DeFi は「何が伸びるか」より「どこに資本が集まり続けるか」で見るべきだと判断した

ここまで資料や一次情報を見てきて、今回いちばん大きかった整理は、DeFi を「面白いテーマの集合」としてではなく、「資本が流れ込む配管の束」として見た方がよいということです。
これは感覚的な話ではなく、今回見た情報源同士を重ねるとかなり自然に出てくる結論です。

まず全体像として、2025年の DeFi は stablecoin を土台にしながら、取引、担保、信用、利回り、実資産連動が接続された系へかなり寄ってきています。『State of DeFi 2025』では、stablecoin が monetary base layer として扱われ、trading stack は issuance・spot・derivatives・event-driven markets をつなぐ連続した構造として整理されています。さらに、execution は private routing や solver-based systems を通じて改善する一方で、流れは一部に集中していくとまとめられています。

この整理をそのまま自分の研究文脈へ引き寄せると、重要なのは「どのトークンが次に上がるか」ではありません。
むしろ重要なのは、どこに資本需要があり、その需要を満たすための担保・執行・利回りの仕組みがどこで組まれているのかです。
つまり、表に見えている価格そのものよりも、資本がどこへ流れ、何の対価として利回りや手数料が発生しているのかの方が、よほど本質に近いです。

5-1. stablecoin は「便利な決済トークン」ではなく、すでに土台になっている

今回あらためて確認できたのは、stablecoin がもはや単なる決済用の補助道具ではなく、DeFi の土台そのものになっているということです。
『State of DeFi 2025』でも、stablecoin は payments、trading、collateralization、treasury operations をつなぐ settlement layer として整理されており、供給も再び拡大し、Ethereum と Tron を中心に強い二極構造を作っていると書かれています。

ここで重要なのは、stablecoin の供給量そのものより、どの型の stablecoin が、どの文脈で使われているかです。
たとえば法定通貨担保型の決済用ステーブルコインは、送金・決済・証拠金・待機資金の基盤として機能します。
一方で、利回り付きステーブルコインや tokenized Treasuries は、単なる決済ではなく、担保、利回り、資本運用の器として使われています。
この違いはかなり大きいです。

つまり、今の stablecoin を見るというのは、「どのコインが人気か」を見ることではありません。
どの種類のドル資本が、どんな目的で、どの市場に入り込んでいるかを見ることです。
この視点を取ると、利回り付きステーブルコインが今回の入り口としてかなり良い理由もはっきりしてきます。
あれは単なる高利回り商品ではなく、資本需要の色が出る接点だからです。

5-2. DeFi の収益源は、表面上の取引量より「約定品質」と「資本効率」に寄っている

もう一つ大きかったのは、取引系の DeFi の見方です。
以前なら DEX や perps を見るとき、「どこに出来高があるか」「どこに流動性があるか」をまず見ていたと思います。
けれど今回あらためて見えてきたのは、今の DeFi の競争軸はそこだけではないということです。

『State of DeFi 2025』では、DEX は単純な AMM の時代から、集約、相対見積執行、最適化執行へと進み、ユーザーはもはや「どのプールを使うか」を意識しない方向へ進んでいると整理されています。perps についても、2025年は設計の中心が microstructure に移り、orderbook 型や hybrid 型、cross-margin、統合担保、より強い liquidation 設計が競争力になったとまとめられています。

この整理を自分の言葉にすると、今の DeFi で収益を生むのは、単に「取引が多い場所」ではなく、約定品質が高く、資本効率が高く、プロのフローを受けられる場所です。
ここはかなり重要です。
なぜなら、個人が「価格差がある」「出来高が多い」と見えている場所に入っても、その背後でより強い経路が動いている可能性が高いからです。
言い換えれば、公開面で見えているものだけでは、すでに遅いことが多いということです。

この点は、自分がこれまで lead-lag や超短期構造を見てきた中で痛感してきたこととも重なります。
しつこいようですが、構造があることと、それを個人が取りにいけることは別です。
DeFi でも同じで、約定品質や資本効率の高いところにフローが集まり、その裏側で solver や private routing が動くなら、単純な public surface の観測だけで戦うのはかなり厳しいです。

だから今回、汎用アービトラージをいったん切り、代わりに「資本需要の観測」へ寄せたのはかなり自然な流れでした。
いま追いかけるべきなのは、表面価格の歪みよりも、歪みが生まれる手前で誰が資本コストを払っているかです。

5-3. 利回り市場は「高い利回りの商品が並ぶ場所」ではなく、将来の資本需要を織り込む市場として見た方がよい

今回、Pendle を見に行った意味もここでかなりはっきりしました。
Pendle を単に「利回り系の人気プロトコル」として見るだけでは弱いです。
むしろ Pendle の強みは、市場が将来の利回りをどう見ているかを、かなり直接的に価格へ落としていることにあります。

元本トークンと利回りトークンに分けて取引する構造によって、いま実現している利回りと、市場が織り込んでいる将来利回りの差が見えます。
これはかなり面白いです。
なぜなら、利回り付きステーブルコイン単体では「いま何%か」しか見えなくても、Pendle を通すと「市場は今後どうなると思っているか」が見えるからです。

この差が意味を持つのは、利回り市場が単なる人気投票ではなく、資本需要や担保需要の将来像を含んだ価格形成の場になっている可能性があるからです。
もしここで織り込まれている将来利回りが、実際の利回りや基準的な貯蓄レートと大きくずれているなら、そのズレは単なる誤差ではなく、「市場が別の需要を見ている」サインかもしれません。

今回の時点では、まだそこをエッジと断定する材料はありません。
ただし少なくとも、Pendle を見ることで、利回り付きステーブルコインを「商品」としてではなく、資本需要を映す市場と接続されたものとして見られるようになりました。
これはかなり大きい変化です。

5-4. 一番本質に近いのは「どこで利回りが生まれているか」ではなく「誰がその利回りの原資を払っているか」だった

今回の整理で、個人的にかなり重要だったのはここです。
利回り付きステーブルコインを見ていると、どうしても「この利回りは何%か」「どれが高いか」に目が行きがちです。
けれど本当に重要なのはそこではありませんでした。

本当に重要なのは、その利回りの原資を誰が払っているのかです。

米国債・MMF 型なら、そこにはオフチェーンの短期金利が流れています。
つまり、待機資金や保守的な treasury 資金が「ドル資本を安全に置きつつ利回りを得る」ためにそこへ来ていると読めます。
プロトコルの貯蓄レート型なら、DeFi 内部の借り手、運用先、信用供与の相手が何らかの形でコストを払っています。
そして Ethena のようなデルタヘッジ・funding 型なら、perp 市場でレバレッジを取りたい側、あるいは資金調達コストを払う側が原資になっています。

この違いを切り分けてみると、利回り付きステーブルコインは「高利回り商品」ではなく、誰がどんな資本コストを払っているのかを映すセンサーとして見えてきます。
この見方が今回かなり大きかったです。

つまり、ここで見たいのは商品の人気ではありません。
いま誰が資本を欲しがっていて、そのために何を担保にし、どこでコストを払っているのかです。
この視点を持つと、利回り付きステーブルコイン自体を売買する発想よりも、その背後で動く市場や担保需要を観測する発想の方が、かなり筋が良く見えてきます。

5-5. ここまでをまとめると、今回見えた市場構造はこうなる

今回の時点で自分が見た市場構造を、一度かなり単純化して書くとこうです。

  • stablecoin は土台になっている
  • その中でも利回り付きステーブルコインは、単なる商品ではなく、資本需要の色が出る接続点になっている
  • 取引系の競争軸は、出来高そのものより約定品質と資本効率に寄っている
  • 利回り市場は、将来の資本需要や担保需要を織り込む市場として見た方がよい
  • したがって、いま追いかけるべきなのは「何が上がるか」より、「どこで資本コストが発生し、その流れがどこへ接続しているか」である

この整理に立つと、次にやるべきこともかなり自然に見えてきます。
つまり、利回り付きステーブルコインそれ自体を価格対象として扱うのではなく、

  • 供給の増減
  • 担保採用
  • 利回り市場との接続
  • perp や collateral demand との関係

を観測対象として並べ、どこに lead-lag や先行性があるかを見に行くことです。

一言でまとめると、今回この章で整理したかったのはこういうことです。

DeFi でいま見るべきなのは、トークンそのものの値動きではなく、どこで資本コストが発生し、その資本がどの配管を通っているか、という市場構造の方である。

次章では、この市場構造を踏まえたうえで、そこから自分がどういう考えを導いたのか、研究上の仮説へどう絞っていったのかを整理していきます。

6. そこから導かれる考え ― 今回追うべきなのは「価格そのもの」ではなく「資本需要の先行指標」である

ここまでで、今回のテーマ設定、やらないこと、情報源、そして大まかな市場構造までは整理できました。
そのうえで、ここから自分がどう考えるようになったのかを一度はっきり書いておきます。
この章でやりたいのは、新しい事実を足すことではありません。
むしろ、前章までに出てきた材料を踏まえて、自分は何を見に行くべきだと判断したのかを整理することです。

結論から書くと、今回の調査を通してかなり明確になったのは、いま追うべきものは「価格そのもの」ではなく、「資本需要の先行指標」ではないかということです。
もう少し正確に言えば、利回り付きステーブルコインや利回り市場、担保採用状況、周辺の perp・信用市場の反応を通じて、どこに先に需要が立ち、その後どの市場へ流れが波及するのかを見に行く方が、自分には合っているし、今の地形にも合っているという判断です。

6-1. 「何が上がるか」を当てる発想は、今回の入り口としては弱い

今回の調査を始めた時点では、正直なところ、どこかに「取りやすい価格の歪み」や「わかりやすい商品の伸び」があるのではないか、という期待も少しありました。
DeFi には、見た目に面白いものが多いです。新しい利回り商品もありますし、担保としての使われ方が増えている資産もありますし、機関投資家文脈の流れもあります。
そういうものを見ると、つい「これは次に伸びるのではないか」「この価格差には何かあるのではないか」と考えたくなります。

ただ、ここまでの整理を通して、その発想は今回の入り口としては弱いと感じています。
理由は二つあります。

一つ目は、価格の動きだけを見ても、その背後にある資本需要の色が見えないからです。
たとえば、ある利回り付きステーブルコインの供給が増えているとしても、それが単なる高利回り人気なのか、担保としての実需なのか、取引需要なのか、資金退避先としての選好なのかは、価格だけでは分かりません。
また、たとえ価格が上がっていたとしても、それが収益構造の改善を意味するとは限りません。短期的な人気や narrative で動くこともありますし、流動性が薄い中で見かけ上そう見えているだけかもしれません。

二つ目は、自分が本当にほしいのは値動きの説明ではなく、次の行動に繋がる観測の手がかりだからです。
価格が上がった、下がった、人気が出た、流行った、という整理はあとからでもできます。
しかし、自分がいま必要としているのは、「どの市場参加者が、どの資産を、どんな理由で必要としているのか」を、なるべく早い段階で捉えることです。
そこが見えれば、価格や出来高や担保利用や利回りの変化を、単なる結果ではなく構造の一部として読めるようになります。

そのため、今回の起点は価格そのものではなく、誰がどこで資本コストを払っているかに置いた方がよい、と考えるようになりました。

6-2. 利回り付きステーブルコインは「投資対象」より「需要のセンサー」として見る方が筋が良い

この考えに至ったことで、利回り付きステーブルコインの見え方もかなり変わりました。
最初に興味を持ったときは、「何が担保で、どれくらいの利回りで、最近どれが伸びているのか」といった、どちらかと言えば商品比較のような見方をしていました。
もちろんそれ自体は必要です。
ただ、それだけでは浅いです。
重要なのは、その商品が何を反映しているのかです。

たとえば、米国債・MMF 型の利回り付きステーブルコインは、保守的な資金や treasury 資金の待機先として機能しやすいです。
ここで供給が増えるということは、単純に「利回り商品が人気」というより、ドル待機資金がオンチェーンに置かれる余地が増えていると読めるかもしれません。
一方、プロトコル内の貯蓄レート型であれば、その背後には DeFi 内部の credit や savings の需要があります。
そして Ethena のようなデルタヘッジ・funding 型は、よりはっきりと perp 市場や取引熱に近いところを触っています。

ここで自分が一番重要だと感じたのは、利回り付きステーブルコインを「何を買うか」という投資対象として見るより、「いま何が必要とされているのか」を映すセンサーとして見る方が筋が良いということです。
この見方に立つと、価格や利回りの上下は単なる投資妙味の話ではなく、背後の資本需要の変化として解釈できる可能性が出てきます。

つまり、今回の調査を通して自分の中で起きた変化はこうです。
利回り付きステーブルコインは、最初は「面白そうな商品」に見えていました。
けれど今は、資本需要の種類を切り分けるための観測窓に近く見えています。
この変化はかなり大きいです。

6-3. 一番気になるのは、利回りそのものより「利回りが高くなくても使われる理由」があるかどうか

もう一つ、かなり大きい考えの変化がありました。
それは、高利回りであること自体には、そこまで大きな情報価値がないかもしれないということです。

もちろん、利回りが高ければ資金が流入しやすい、というのは自然な話です。
しかし、それだけで終わるなら、そこから見えてくるのは単なる人気投票です。
高い利回りを求めて資金が動いている、というだけなら、たしかに説明にはなりますが、エッジ候補としてはまだ弱いです。

自分が今回とくに気になっているのは、むしろ逆です。
利回りがそこまで際立っていないのに、それでも供給が増え、担保として使われ、周辺市場と繋がっていくケースです。
この場合、そこにあるのは単なる利回り追求ではなく、別の utility、つまり利便性に根ざした需要や市場上の必要性かもしれません。
この「高利回りだから」以外の説明が立つなら、それはかなり面白いです。

たとえば Ethena 系であれば、単に利回りの高さで人が来ているのではなく、担保としての使いやすさ、取引市場との接続、周辺プロトコルでの採用、あるいは将来の資本需要を見越した利用があるかもしれません。
ここは、まだ現時点では断言できません。
ただし、もしここに単なる人気ではない理由があるなら、それは市場構造にかなり近い情報です。

この点は、自分が今後仮説を立てるうえでの大きな軸になりそうです。
つまり、今回のテーマで本当に見たいのは「何%か」ではなく、なぜその利回り水準でも需要が続くのかの方です。
これはかなり大事な違いです。

6-4. Pendle を見る理由は、利回りを見たいからではなく「市場の期待」を見たいから

Pendle の位置づけも、この考え方でだいぶ整理されました。
最初のうちは、Pendle は「利回り市場だから一応見ておく」くらいの感覚もありました。
けれど、ここまでの整理を踏まえると、Pendle を見る本当の意味はそこではありません。

Pendle を見たいのは、現時点の利回り水準そのものを知りたいからではなく、市場が将来の利回りや需要をどう見ているかを知りたいからです。
元本トークンと利回りトークンが分かれ、それぞれの価格がつくことで、市場は「この資産の将来利回りをどう見ているか」をかなり露骨に表します。
この機能はかなり強いです。
なぜなら、利回り付きステーブルコインの現在値だけを見ていると、「いま何%か」は分かっても、「市場がその先をどう見ているか」は分からないからです。

この整理を踏まえると、Pendle は「利回りを取りに行く場所」というより、将来の資本需要や利回り期待を市場がどう価格に埋め込んでいるかを読む場所として見る方がしっくりきます。
ここでいまの実現利回りと市場の織り込みがズレているなら、そのズレの意味を読みたい。
つまり、ここで関心があるのは商品比較ではなく、期待形成の歪みです。

これは、次に仮説へ落としていくときにかなり大きいです。
なぜなら、単なる出来高や TVL の増減よりも、期待と実現のズレの方が、時系列上の先行性を持つ可能性があるからです。
もちろん、それが本当に使えるかどうかはまだ分かりません。
ただ、自分の中では、Pendle を見る意味がかなり「利回り商品観察」から「期待形成の観測」へ寄ってきました。

6-5. 最終的に見に行きたいのは、資本需要の波及順序である

ここまでの考えを一度まとめると、今回自分が本当に見に行きたいのは、個別商品の良し悪しではありません。
もっと言えば、単発の利回り差や一時的な供給増でもありません。
見たいのは、どの需要が先に立ち、その需要がどの市場へ、どの順番で波及するのかです。

たとえば、ある利回り付きステーブルコインへの需要が先に立ち、その後に担保採用が増え、その後で利回り市場に織り込まれ、その先に perp 市場や collateral demand に変化が出る、という順序があるかもしれません。
もしそうした順序が見えるなら、それはかなり有力な観測対象です。
なぜなら、そこには単なる同時相関ではなく、市場構造上の流れがある可能性があるからです。

ここでの発想は、以前から自分が得意としてきた観測機の考え方にも近いです。
単に「何が起きたか」を見るのではなく、「どの順番で起きるか」「何が先に動くか」を見る。
今回の DeFi 調査でも、最終的にそこへ戻ってきた感覚があります。

だから今の自分にとって重要なのは、「どのトークンを買うか」ではなく、資本需要の波及順序を観測できるかです。
これができるなら、その先に regime 判断も、場合によっては執行判断もあり得ます。
逆に、そこが見えなければ、このテーマは「面白いけれどまだ早い」で終わるべきです。

6-6. この章での結論

ここまでを一言でまとめると、今回の調査を通して自分が導いた考えはこうです。

今回追うべきなのは、利回り付きステーブルコインそのものの投資妙味ではなく、それらを通じて観測できる資本需要の先行性である。

この判断に至ったことで、次にやるべきこともかなり明確になりました。
つまり、今後の仮説は

  • 商品比較
  • 利回り比較
  • 人気比較

ではなく、

  • どの需要が先に立つのか
  • どの市場へ波及するのか
  • その順序に観測可能な先行性があるのか

を中心に置くべきだ、ということです。

次章では、この考えを踏まえて、実際に自分がいま有力だと見ているエッジ仮説を具体的に整理していきます。

7. 有力なエッジ仮説 ― 利回り付きステーブルコインを「商品」としてではなく、「資本需要の先行指標」として扱えるか

ここまでの整理を踏まえると、今回の研究で本当に立てるべき仮説は、「どの利回り付きステーブルコインが人気化するか」ではありません。
また、「どの利回りが高いか」でもありません。
そこに留まる限り、見えてくるのは商品比較や人気投票に近いものであって、個人 botter が収益構造へ接続していくには少し弱いです。

今回立てたい仮説は、もっと構造寄りです。
一言で言えば、利回り付きステーブルコインや利回り市場の変化は、周辺の資本需要や担保需要、あるいは取引需要の先行指標になりうるのではないか、というものです。
つまり、これらを「投資対象」として見るのではなく、市場構造の温度計として使えないかを問うのが今回の本筋です。

この章では、その中でも特に有力だと見ている仮説を整理します。
ただし、単に「こうなりそう」と書くだけでは弱いです。
重要なのは、なぜその仮説を立てるのか、その背後にどんな市場観があるのかまで押さえることです。
ここを曖昧にすると、後段の検証がぶれますし、都合の良い結果だけを拾いやすくなります。
したがって、この章では仮説そのものだけでなく、仮説の背後にある考え方までセットで整理しておきます。

7-1. 第一仮説 ― Ethena 系の需要変化は、perp 市場や担保需要の先行指標になりうる

今回もっとも有力だと見ているのは、Ethena 系の需要変化が、その後の perp 市場や担保需要の変化を先導するのではないか、という仮説です。
ここでいう Ethena 系とは、主に USDe と sUSDe を指しています。

この仮説の背後にある考え方はかなりシンプルです。
Ethena 系の利回りは、米国債のような外生的な短期金利から来ているわけではなく、暗号資産担保、先物・永久先物での反対売買、資金調達コスト、basis、さらに一部は担保資産の報酬などから構成されています。
つまり、Ethena 系の需要は、単なる「高利回り商品を買いたい」という動機だけでは説明しきれず、暗号市場の内部にある取引需要、担保需要、レバレッジ需要と繋がっている可能性が高いということです。

ここで自分が重要だと考えているのは、Ethena 系の供給増加や staking 比率の変化を、「人気商品の拡大」として読むのではなく、その背後で誰かがこの資産を必要としているサインとして読むことです。
もし本当にそうであるなら、Ethena 系の供給や利用状況の変化は、その後に

  • perp 市場の建玉が増える
  • 資金調達コストが変化する
  • 取引量が増える
  • 担保利用や collateral demand が増える

といった波及を先に示しているかもしれません。

この仮説が面白いのは、ここで見ているものが「トークンの価格」ではなく、資本の使われ方だからです。
価格は結果として動くことがありますが、その前に「誰がそれを必要としているか」の方が立つ可能性があります。
もし Ethena 系の需要増が、その後の perp 市場の活性化や collateral demand の増加と一貫して繋がるなら、そこにはかなり実務寄りの情報価値があります。

この仮説をもう少し噛み砕くと、こうなります。

  • 単に高利回りだから USDe / sUSDe に資金が入るのではない
  • その資金流入の一部は、担保としての使い勝手や市場接続性を見た実需かもしれない
  • その実需は、取引やヘッジやレバレッジ需要と繋がっているかもしれない
  • ならば、Ethena 系の供給や利用の変化は、perp 市場の activity に先行する可能性がある

この発想です。

ここで大事なのは、この仮説は「Ethena が良い商品だから上がる」という話ではない、ということです。
自分が見たいのは価格ではなく、Ethena 系を必要とする市場参加者の都合が、他の市場にどう波及するかです。
この視点を持てるかどうかで、観測設計も検証設計も大きく変わります。

この仮説が成立するなら、Ethena 系は「投資対象」よりも、perp 市場や collateral demand の regime 指標として使える可能性があります。
逆に、この仮説が成立しないなら、Ethena 系の需要変化は単なる商品人気に近く、そこから先に波及する情報はあまり取れない、ということになります。
つまり、これはかなりはっきり白黒がつく仮説でもあります。

7-2. 第二仮説 ― Pendle が織り込む将来利回りは、実現利回りより先に資本需要の変化を映す

次に有力なのが、Pendle が価格に埋め込んでいる将来利回りの期待は、いまの実現利回りよりも先に資本需要の変化を映しているのではないか、という仮説です。

この仮説の背後にある考え方は、期待形成の読み方にあります。
通常、利回り付きステーブルコインを見ているときは、「いま何%か」「最近どれだけ供給が増えたか」を見がちです。
けれど、それだけでは少し遅いです。
なぜなら、いま見えている利回りは現在値であって、市場がその先をどう見ているかはそこには乗っていないからです。

Pendle では、元本と利回りが分けて取引されるため、市場が将来の利回りをどう見ているかがかなり直接的に価格へ出ます。
これは非常に重要です。
もし Pendle が織り込む将来利回りと、現実の実現利回り、あるいは基準的な貯蓄レートの間に大きな差があるなら、その差は単なる誤差ではなく、市場参加者が将来の資本需要や担保需要の変化を見ているサインかもしれません。

ここで自分が面白いと感じているのは、Pendle を「利回り商品を買う場所」としてではなく、期待形成の市場として見ることです。
つまり、Pendle の価格が重要なのは、そこに「いまの人気」が出るからではなく、市場が先にどういう変化を織り込んでいるかが出るからです。

この仮説の背後にある考え方をもう少し詳しく書くと、こうです。

  • 実現利回りは現在値であり、いま起きていることを表している
  • 一方で、市場価格は将来を見に行く
  • もし Pendle 側の織り込みが、供給変化や担保利用や周辺市場の activity に先行するなら、そこには情報価値がある
  • 特に、利回り付きステーブルコインが複数市場を繋ぐ接続点になっているなら、その期待形成はかなり重要なシグナルになりうる

この発想です。

ここで大事なのは、この仮説は「Pendle が正しい」という信仰ではない、ということです。
むしろ、Pendle の価格が何を先に織り込んでいて、何を織り込めていないのかを見たいという立場です。
もしここに先行性があるならかなり面白いですし、逆に何もなければ、「期待市場として使うには弱い」と素直に切ればよいです。

この仮説が成立するなら、Pendle は単なる利回り市場ではなく、将来の需要や regime 変化を先に映す観測面になります。
逆に成立しないなら、Pendle はあくまでその場の価格形成であって、個人がそこから優位を取るのは難しい、という判断になります。

7-3. 第三仮説 ― Sky 系は「DeFi 内の基準金利」として機能し、他の需要の異常値を測る物差しになる

第三の仮説は、少し地味ですがかなり重要です。
それは、Sky 系の貯蓄レートや sUSDS を、DeFi 内の基準金利として置くことで、他の利回り付き資産の“異常値”が見やすくなるのではないかというものです。

この仮説の背後にある考え方は、比較対象の必要性です。
利回り付きステーブルコインや利回り市場を見ていると、どうしても「高い」「低い」で語りたくなります。
ただ、その高低は単独では意味を持ちません。
重要なのは、何に対して高いのか、何に対して低いのかです。

ここで Sky 系が役立つのではないかと考えています。
自分の中では、Sky の貯蓄レートや sUSDS は「DeFi 内の比較的保守的な貯蓄レート」に近い位置づけです。
つまり、これを一つの基準として置くことで、Ethena 系や Pendle 側の利回りが単に高いのか、それとも別の需要を織り込んでいるから高いのかを見分けやすくなります。

この仮説は、派手なエッジ仮説ではありません。
けれどかなり大事です。
なぜなら、基準がない状態で利回りだけを見ても、結局は「高いから面白そう」で終わってしまうからです。
一方、基準金利を置いて、その差を見に行くと、そこにははじめて「何か別の要因が乗っているのではないか」という読みが入れられます。

この仮説が成立するなら、Sky 系そのものが直接の収益源になるというより、他の需要の過熱や変調を測るベンチマークとして使えることになります。
つまりここでは、Sky を「勝ち筋」としてではなく、物差しとして見ています。
この役割の整理は、かなり重要です。

7-4. 今回の仮説群に共通している考え方

ここまで三つの仮説を書いてきましたが、実はその背後にある考え方は共通しています。
それは、直接価格を当てにいくのではなく、資本需要の変化がどこに、どの順番で現れるかを観測したいというものです。

これは、自分がこれまでやってきた観測機や lead-lag 研究の考え方ともかなり近いです。
市場を見るときに重要なのは、何が強いかだけではありません。
何が先に動くか、何が後からついてくるか、何が接続点になっているかの方が、よほど使える情報になります。

今回の DeFi 側の仮説でも、やっていることは本質的には同じです。

  • Ethena 系の需要変化が先か
  • Pendle の期待形成が先か
  • Sky を基準に見たとき、どこに異常な需要が乗っているか

を見に行く。
つまり、商品の比較ではなく、需要の波及順序の観測です。

この考え方を押さえておかないと、仮説がすぐ「どれが人気か」「どれが高利回りか」に戻ってしまいます。
それでは弱いです。
今回本当に見たいのは、そうした表面ではなく、市場参加者の都合がどこに先に表れるかです。

7-5. ここでの結論

この章の結論を一度かなりはっきり書くと、こうです。

今回の有力なエッジ仮説は、

  • Ethena 系の需要変化は perp や担保需要の先行指標になりうる
  • Pendle の将来利回りの織り込みは、実現利回りより先に需要変化を映すかもしれない
  • Sky 系は DeFi 内の基準金利として、他の需要の異常値を測る物差しになりうる

という三本です。

そして、その三本に共通しているのは、価格ではなく、資本需要の先行性を見に行くという発想です。
この発想があるからこそ、今回のテーマは「DeFi 商品の調査」ではなく、市場構造を観測する研究として成立します。

もちろん、現時点ではまだどれも仮説です。
つまり、ここで重要なのは「面白そうだから信じる」ことではなく、どれが本当に先行性を持ち、どれがただの見かけなのかを切り分けることです。
次章では、そのために具体的にどんなデータが必要で、何がまだ足りていないのかを整理していきます。

8. 検証に必要なデータと不足情報 ― いまのままでは判断できない理由を、感覚ではなく構造で切り分ける

ここまでで、見たい市場構造と有力仮説まではかなり整理できました。
ただし、その一方で、現時点ではまだ判断を下すには情報が足りないという自覚もかなりはっきりしています。
この章でやりたいのは、その「足りない」を曖昧な不安として残すのではなく、何が足りず、なぜ足りず、それがないとどの仮説が検証不能なのかを構造で切り分けることです。

これはかなり重要です。
研究を進めていると、「まだよく分からない」「もっと調べないといけない」という感覚は簡単に出てきます。
けれど、その感覚をそのまま放置すると、いつまでも調べ物が終わりません。
逆に、何が不足しているのかを分解できれば、次に取るべき行動もかなり明確になります。
つまり、不足情報の整理は消極的な確認ではなく、次の行動を決めるための設計作業です。

8-1. いま持っているのは「静止画」であって、「流れ」ではない

まず、一番大きな不足はここです。
現時点で自分が持っている情報の多くは、静止画です。
つまり、ある時点での供給量、ある時点での利回り、ある時点での TVL、ある時点での出来高、ある時点でのプロトコル設計、そういったスナップショットです。

これ自体は無意味ではありません。
むしろ、最初の地図を作るには必要です。
ただ、今回立てている仮説はどれも「何が先に動くか」「どこに先行性があるか」という話です。
ということは、必要なのは単発の静止画ではなく、時間の流れの中での変化です。

たとえば、Ethena 系の需要変化が perp 市場の activity に先行するかを見たいなら、

  • USDe / sUSDe の供給がいつ増えたか
  • staking 比率がいつ変化したか
  • その前後で perp の建玉や資金調達率がどう動いたか
  • それが何時間後、何日後に出たのか

といった、時系列の関係が必要です。

Pendle の織り込みが先行するかを見たいなら、

  • implied APY がいつ動いたか
  • underlying の実現利回りがどうだったか
  • その後に供給や担保利用や周辺市場がどう変わったか

を見る必要があります。

Sky を基準金利として使いたいなら、

  • sUSDS 側のレートや供給がどう推移していたか
  • それに対して Ethena 系や Pendle 系の差がいつ、どの程度開いたか
  • その差が何かの需要変化に繋がったのか

を見なければなりません。

つまり今の段階では、
「何があるか」はある程度分かったが、「それがどう流れるか」はまだ見えていない
という状態です。
このズレを埋めるのが、まず最初の課題です。

8-2. 足りないのは「価格」ではなく、「供給・採用・活用」の時系列である

次に大きいのは、何を時系列で取るべきか、という点です。
ここでよくある失敗は、とりあえず価格を集め始めることです。
けれど、今回の仮説は価格方向の予測ではありません。
したがって、最優先で欲しいのは価格系列ではなく、供給・採用・活用の時系列です。

具体的に言うと、まず Ethena 系では、

  • USDe 供給量
  • sUSDe 供給量
  • sUSDe への移行比率、あるいは staking 比率
  • Reserve fund の推移
  • Aave や Pendle など主要活用先での残高や TVL
  • 足元 APY の変化

が欲しいです。

ここで重要なのは、単に供給が増えたかどうかではありません。
どの形で増えたのか、どこへ流れたのか、どの用途に使われたのかまで見たいです。
供給が増えても、ただウォレットに置かれているだけなのか、担保として使われているのか、利回り市場へ流れているのかで意味が違います。
この違いが見えないと、「人気なのか、実需なのか」という最初の問いに答えられません。

Sky 系では、

  • sUSDS 供給量
  • 貯蓄レートの推移
  • 供給先、あるいは主要な受け皿での利用状況
  • 可能なら protocol revenue や関連する reserve の動き

が欲しいです。

ここは Ethena ほど「市場の熱」に直結しているわけではありませんが、その代わり比較基準として安定しているかが重要です。
なので、見るべきは絶対値よりも、基準レートとして機能するだけの安定性があるかどうかです。

Pendle では、

  • 対象市場ごとの implied APY
  • underlying APY
  • 元本トークンと利回りトークンの価格
  • 市場ごとの流動性
  • 満期までの日数
  • TVL の推移

が必要です。

ここで大事なのは、Pendle を「利回りランキング」として使わないことです。
見たいのはランキングではなく、織り込みと実現の差の時系列です。
その差が開いたときに何が起こるのか、縮んだときに何が起こるのかを見ない限り、仮説Bは進みません。

そして perp 側では、

  • 建玉
  • 資金調達率
  • 出来高
  • 場合によっては清算や open interest の偏り
  • 取引所ごとの regime 変化

が必要です。

ここで見るのは価格ではなく、取引需要の熱量です。
建玉が増えるのか、資金調達率が偏るのか、出来高が連動するのか。
Ethena 系や Pendle 側の変化がここに先行するなら、初めて仮説が構造を持ち始めます。

8-3. 単発の数値ではなく、「差」と「順序」のデータが必要である

もう一つ大事なのは、今回必要なのが単体の指標ではなく、順序だということです。

たとえば、

  • Ethena の APY が何%か
  • Sky の APY が何%か
  • Pendle の implied APY が何%か

という単体の数値だけでは、まだ弱いです。
重要なのは、それらの差がいつどう開いたかです。

Ethena と Sky の差が急に広がったのか。
Pendle の織り込みが、実現利回りよりどれだけ先に上がったのか。
その差が開いた後に、供給や担保利用や perp activity がどう動いたのか。
こうした「差分」を見に行かないと、どれも単なる説明で終わります。

同時に必要なのが順序です。
つまり、

  • まず何が動いたのか
  • その後で何がついてきたのか
  • 何時間後、何日後に反応が出たのか

を見たいです。

これは、自分がこれまで観測機でやってきたことともかなり近いです。
市場を見るうえで本当に大事なのは、絶対値そのものより、「どれが先に動くか」です。
今回の DeFi 側のテーマでも、同じ発想が必要です。

8-4. 不足しているのはデータだけではなく、「比較の基準」でもある

ここで見落としやすいのが、足りないのはデータそのものだけではない、という点です。
実は同じくらい重要なのが、何を基準にして比較するのかです。

たとえば Ethena 系の供給が増えたとして、それが多いのか少ないのかをどう判断するのか。
Pendle の implied APY が高いとして、それは本当に高いのか、それとも単に満期構造の違いなのか。
Sky との差が開いたとして、それは regime 変化なのか、一時的なノイズなのか。
こうした判断には、基準が必要です。

つまり、今回欲しいのは単なる生データではなく、比較のための土台でもあります。
この土台がないと、いくら数値が増えても「何となく動いている」にしかなりません。

だから今回の不足情報整理では、単なるデータ収集だけでなく、

  • 何を benchmark にするのか
  • 何日移動平均で見るのか
  • どの時間足で先行性を判定するのか
  • 何を平常値として扱うのか

まで含めて設計しないといけません。

この点で、Sky を基準に置くという発想はかなり重要ですし、Pendle を「市場の期待」の面として見るのも、比較軸を作るために必要なことです。

8-5. 現時点で不足している情報を、実務的に言い直すとこうなる

ここまでを、かなり実務寄りに言い直すと、いま足りていないのは次の三つです。

第一に、主要指標の時系列データです。
供給、利回り、TVL、担保利用、建玉、資金調達率、出来高。
これらを最低でも日次、できれば一部は時間足で取りたいです。

第二に、差分を見るための比較軸です。
Ethena 対 Sky、Pendle の織り込み対実現利回り、供給増加対 perp activity など、単体ではなく差として読むための軸が必要です。

第三に、先行性を判定するための時間窓です。
6時間先を見るのか、24時間先を見るのか、72時間先まで持つのか。
ここを切らないと、結果がいくらでも都合よく見えてしまいます。

この三つが揃わない限り、今回の仮説は「面白い考え」で止まります。
逆に言えば、ここさえ揃えば、少なくとも短い時間で白黒をつけにいけます。

8-6. この章での結論

この章で言いたいことを一言でまとめると、こうです。

いま不足しているのは、テーマ理解ではなく、時系列で比較可能な観測データである。

つまり、
もう「何を見たいか」はかなり整理できています。
足りないのは、それを本当に先行指標として扱えるのかを判定するための、時間軸を持ったデータです。

だから次にやるべきことは、さらに広く調べることではありません。
必要な系列を決め、比較軸を決め、時間窓を決めて、短い期間で白黒をつけられる観測基盤を作ることです。

次章では、その不足情報を埋めるために、実際にどういう順番で検証を進めるのか、最短の行動プランとして整理していきます。

9. 最短の検証プラン ― まずは5営業日で「続ける価値があるか」だけを白黒つける

ここまでで、問い、見に行く理由、やらないこと、情報源、市場構造、有力仮説、不足情報までは整理できました。
では次に何をやるのか。
ここで大事なのは、最初から完璧な観測機や売買 bot を作ろうとしないことです。
今回の目的は、DeFi 側の巨大テーマを一気に攻略することではありません。
最短で、「この仮説群は続けて掘る価値があるのか」を白黒つけることです。

そのため、検証プランも最小構成で組みます。
期間はまず 5営業日 を想定します。
このくらいなら、短すぎて何も見えないということも避けつつ、長すぎてだらだら調べ続ける状態にもなりにくいです。
しかも今回は、観測したい対象もある程度絞れています。
Ethena 系、Sky 系、Pendle、そして perp 市場。
この範囲なら、ChatGPT や CODEX を前提にすれば、十分に短期検証へ落とし込めます。

9-1. Day 0 ― まずは取得対象を固定し、観測対象を増やさない

最初にやるべきことは、コードを書くことそのものではなく、何を取るかを固定することです。
ここで欲張ると、その後の全部が崩れます。
したがって、Day 0 では観測対象を以下に限定します。

Ethena 系

  • USDe 供給量
  • sUSDe 供給量
  • sUSDe 化率、あるいは staking 比率
  • APY
  • 主要活用先への流入状況

Sky 系

  • sUSDS 供給量
  • Sky Savings Rate
  • APY
  • 可能なら関連する reserve / protocol 側の基礎データ

Pendle

  • 対象市場ごとの implied APY
  • underlying APY
  • TVL
  • 満期までの日数
  • 元本トークン / 利回りトークンの価格

perp 市場

  • 建玉
  • 資金調達率
  • 出来高

ここで大事なのは、対象市場も最初から広げすぎないことです。
perp 市場についても、最初は Hyperliquid を主対象にします。
理由は、十分な規模があり、かつ公開情報が比較的取りやすいからです。
いま必要なのは、「全部を見ること」ではなく、一つの戦場で先行性の有無を確かめることです。

この段階では、まだ分析はしません。
Day 0 の仕事は、あくまで

  • 取得対象を固定する
  • 使う情報源を固定する
  • データの保存形式を決める
  • テーマを増やさない

この4つです。

9-2. Day 1 ― 180日程度のバックフィルを作り、まず「見える状態」にする

取得対象が固まったら、次は 180日程度のバックフィル を作ります。
ここでいきなり複雑な分析を始める必要はありません。
まずは「系列として並んで見える状態」を作ることの方が大事です。

この段階でやることは、かなり単純です。

  • 各系列の欠損確認
  • 粒度の揃え方の確認
  • 日次で取るか、時間足で取るかの切り分け
  • スケールの確認
  • ざっくりした推移の可視化

ここで重要なのは、最初から minute レベルや秒レベルに行かないことです。
今回の仮説は、高頻度執行のようなミクロな競争を見たいわけではありません。
見たいのは、供給や担保利用、利回りの織り込み、取引需要の変化が、数時間から数日単位でどの順番で出るかです。
したがって、まずは日次を中心に組み、必要な箇所だけ時間足へ下ろす方が自然です。

この段階での到達目標は、かなり明確です。
つまり、

「各系列がちゃんと取れていて、時間の流れとして眺められる」

ところまで持っていくことです。
まだ仮説の当否は問わなくてよいです。
ここは準備段階ですが、かなり大事です。
この時点で系列が崩れていたり、取得元が安定しなかったり、粒度が合わなかったりするなら、その後の検証は全部怪しくなります。

9-3. Day 2 ― 第一仮説をイベントスタディで叩く

Day 2 で、まず一番有力な仮説を叩きます。
つまり、Ethena 系の需要変化は perp 市場や担保需要の先行指標になりうるのか、という第一仮説です。

ここでやるべきなのは、複雑なモデル構築ではありません。
まずは イベントスタディ で十分です。
たとえば、次のような条件でイベントを切ります。

  • USDe 供給量の24時間変化が上位何%か
  • sUSDe 供給量の変化が急増したとき
  • sUSDe 化率が一定以上上昇したとき
  • Ethena 系 APY と Sky 系 APY の差が急拡大したとき

このようなイベント発生後に、perp 市場側で

  • 建玉が増えるか
  • 資金調達率が偏るか
  • 出来高が増えるか

を見ます。

ここで大事なのは、「相関があるか」ではなく、どのくらい先に動いているかを意識することです。
たとえば 6時間後、24時間後、72時間後でどう違うか。
イベント後すぐに出るのか、それとも一日遅れで出るのか。
ここが今回の仮説の核心です。

この段階では、モデルを凝る必要はありません。
平均 forward 変化、順位相関、単純な分位比較くらいで十分です。
むしろ、最初から複雑な統計処理に入る方が危険です。
今知りたいのは、「本当に何かありそうかどうか」だけだからです。

9-4. Day 3 ― 第二仮説を「織り込みと実現の差」で叩く

Day 3 では、第二仮説を検証します。
つまり、Pendle が織り込む将来利回りは、実現利回りより先に需要変化を映しているのかという問いです。

ここで見るべきものは二つです。

一つは、Pendle の implied APY と underlying APY の差です。
もう一つは、Pendle の織り込みと Sky 系の基準レートとの差です。

この差が開いたときに、その後で

  • Ethena 系の供給が増えるのか
  • 利回り市場の TVL が動くのか
  • perp 市場側の activity が反応するのか

を見るわけです。

ここでも、まずは単純な比較で十分です。
たとえば、

  • 差が大きく開いた局面
  • 差が極端に縮んだ局面
  • 差が平常域に戻った局面

を切り出して、その後の系列を比較します。

このとき重要なのは、「Pendle の価格が当たっているか」を見ることではありません。
見たいのは、市場が何かを先に織り込んでいるのかです。
なので、正誤判定も「実現利回りとの差がどうなったか」だけでなく、「供給や担保需要や周辺市場に動きが出たか」で見ます。

ここを間違えると、Pendle をただの利回り市場としてしか見られなくなります。
今回やりたいのはそうではなく、期待形成の先行性の確認です。

9-5. Day 4 ― 使えるなら regime 指標へ、使えないならここで切りやすい形にする

Day 4 は、ここまでの検証で「何かありそう」と感じられたものを、運用可能な観測指標の形へ一段落とします。
ここでいう運用可能とは、いきなり発注まで行くことではありません。
まずは、

  • 観測機のパネル
  • regime tag
  • on / off フィルタ
  • 警戒度スコア

のような形です。

たとえば、

  • Ethena 系需要スコア
  • Pendle 期待乖離スコア
  • Sky 基準差分スコア

のような簡易指標を作り、それをもとに

  • いま perp 市場は需要過熱局面なのか
  • いま collateral 需要が偏っているのか
  • いま利回り市場の期待が歪んでいるのか

を見られるようにします。

ここでの狙いは、売買戦略を作ることではなく、「観測から判断へ」接続できるかを見ることです。
仮説がもし本当に価値を持つなら、最初に使うべき形は直接執行ではなく、regime の判定器です。
この考え方は、自分の本線の研究ともかなり一致しています。

逆に、この段階で何もスコア化できない、あるいはスコア化すると途端に意味が薄れるなら、その仮説は実務的に弱い可能性が高いです。
ここで「面白かった」で終わらせず、観測面へ落とせるかを見に行くのがかなり大事です。

9-6. Day 5 ― go / no-go を出す

最後に Day 5 でやるのは、go / no-go を出すことです。
ここで重要なのは、保留にしすぎないことです。
もちろん、何でも即 cut する必要はありません。
ただし、「まだ分からないから継続」はできるだけ減らしたいです。
研究を長引かせる一番の理由は、白黒をつけないまま次の作業へ進むことだからです。

この時点での判断は、かなりラフで構いません。
見るべきなのは、たとえば次のようなことです。

  • 先行性が、少なくとも一つの時間窓でそれなりに見えるか
  • 供給・利回り・期待形成・取引需要の関係が、全くの同時相関ではなく、順序を持っているか
  • regime 指標として使える程度の安定性があるか
  • 少なくとも「次にもう一段掘る価値がある」と言えるか

もしこの段階で何も見えないなら、いったん切った方がよいです。
もちろん完全否定ではなく、「現時点の観測設計では情報価値が薄い」として切るだけでも十分です。
大事なのは、そこを曖昧にしないことです。

9-7. この検証プランの核心

ここまでをまとめると、今回の最短検証プランの核心はこうです。

  • 最初から完璧を目指さない
  • まずは 5営業日で白黒をつける
  • 価格予測ではなく、先行指標として使えるかを検証する
  • 使えるなら regime 指標へ落とす
  • 使えないなら早めに切る

この順番です。

ここで一番大事なのは、「売買まで行くかどうか」より前に、「観測対象として価値があるか」を見極めることです。
そこを飛ばすと、また実装だけ重くなって終わります。
逆に、観測対象として価値があると分かれば、その先はかなり進めやすくなります。

この章を一言でまとめるとこうです。

今回の検証は、DeFi の巨大テーマを攻略するためではなく、5営業日で「この仮説群は観測対象として生きるのか」を白黒つけるためのものです。

次章では、その検証に対して、何が出たら継続し、何が出たら切るのか、つまり OK 条件と CUT 条件 を具体的に整理していきます。

10. OK条件・CUT条件・想定期限 ― 「面白かった」で終わらせず、続けるか切るかを先に決めておく

ここまでで、問い、前提、やらないこと、情報源、市場構造、有力仮説、不足情報、最短検証プランまでは整理できました。
ここまで来ると、次に必要なのはかなり明確です。
つまり、何が出たらこの研究を続けるのか、何が出たら切るのかを先に決めておくことです。

これはかなり大事です。
研究は、特に自分が興味を持ったテーマほど、簡単に長引きます。
しかも DeFi のような領域では、少し掘れば新しい単語も出てきますし、新しいデータも見つかりますし、「もう少し見れば何かありそう」という感覚も簡単に生まれます。
けれど、そこに流されると、いつの間にか「研究している状態を維持すること」が目的になります。
これは避けたいです。

そのため今回は、最初からかなりはっきり書いておきます。
今回の研究は、「DeFi が面白いからしばらく見続ける」ためのものではありません。
短い期間で白黒をつけ、続ける価値があるなら続け、なければ切るための研究です。
したがって、OK 条件、CUT 条件、そして想定期限を先に置きます。

10-1. 今回の OK 条件の基本方針

今回の研究で OK としたいのは、「何かありそう」ではありません。
もっと具体的に言えば、次のどれかが確認できた場合です。

1. 先行性が確認できる

最も重要なのはこれです。
つまり、Ethena 系の供給や staking 比率、Pendle の将来利回りの織り込み、Sky 系との差分といった指標が、perp 市場や担保需要、周辺 activity に対して時間的に先に動いていることです。

ここで言う「先行性」は、相関があることとは違います。
同時に動いているだけでは足りません。
見たいのは、

  • まず何が動き
  • その後に何が動くのか
  • その順番がある程度安定しているのか

です。

たとえば、Ethena 系供給の急増後に 24時間から72時間の範囲で建玉や出来高が有意に増える。
あるいは、Pendle の implied APY が先に歪み、その後に supply や担保利用が動く。
そうした順序が確認できるなら、これはかなり強い OK 条件です。

2. regime 指標として使える

次に重要なのは、単発の現象ではなく、観測指標として実務に落とせるかです。

たとえば、

  • Ethena 系の需要スコア
  • Pendle の織り込み乖離スコア
  • Sky 基準との差分スコア

のようなものを作ったときに、それが

  • 過熱局面の判定
  • 需要偏在の検知
  • 戦場選択の補助
  • 観測機の補助タグ

として使えるなら、これは十分 OK です。

ここではまだ「そのまま売買戦略になるか」までは求めません。
今回の段階では、執行の前段に置ける観測指標になるかで十分です。
むしろそこが確認できるなら、次の研究フェーズへ進む価値があります。

3. 少なくとも一つの仮説が残る

今回の研究は、複数仮説を同時に置いています。
そのため、全部が当たる必要はありません。
むしろ、三つのうち一つでも明確に残るなら、それで十分前進です。

たとえば、

  • Ethena 系 → perp は薄いが
  • Pendle の織り込み → 需要変化 は残る

でもよいですし、その逆でも構いません。
大事なのは、「全部微妙だった」で終わらず、何が残り、何が切れたかをはっきり言えることです。

つまり、OK 条件は「全勝」ではなく、少なくとも一本、掘る価値のある線が残ることです。

10-2. 今回の CUT 条件の基本方針

逆に、切る条件もかなり明確にしておきます。
ここが曖昧だと、研究は簡単に延命されます。

1. 先行性が見えない

まず切るべきなのは、時系列上の順序が見えない場合です。

たとえば、供給も利回りも建玉も全部なんとなく一緒に動いているだけ。
あるいは、イベントを切っても結果が時間窓ごとにバラバラで、先に動いているのか後に動いているのか分からない。
こうした場合は、今回の仮説の核である「先行指標として使えるか」が崩れます。
その場合は、かなり素直に切ってよいです。

ここでよくある罠は、「弱いけれど少し相関はある」と言って延命することです。
ただ今回は、そもそも直接の価格予測ではなく、先行性の有無を見に来ています。
ならば、順序が弱い時点で、このテーマの優先順位はかなり下がります。

2. 需要の説明が結局「高利回りだから」に戻ってしまう

今回かなり重視しているのは、単純な利回り追求ではなく、利便性に根ざした需要や資本需要の存在です。
なので、検証してみた結果、

  • 供給が増えたのは単に利回りが高かったから
  • 利回り差が縮むとすぐ資金が抜ける
  • 担保利用や周辺市場との接続はほとんど見えない

という状態なら、これは切る寄りです。

もちろん、それでも投資商品としては面白いかもしれません。
しかし今回見たいのは、商品人気ではなく構造です。
そのため、説明が「高利回りだから」でほぼ完結してしまうなら、今回の研究テーマとしては弱いです。

3. 観測指標に落とせない

もう一つの CUT 条件は、実務に落とせる形へ圧縮できないことです。

たとえば、分析をすれば何となく面白い図は出る。
けれど、それを regime 指標や観測タグや判断材料へ落とそうとすると途端に意味が薄れる。
こういう場合も危険です。

研究としては楽しいかもしれませんが、専業としては弱いです。
今回のテーマは、少なくとも

  • 観測機へ置ける
  • 定点監視できる
  • 時間とともに更新できる
  • 判断に使える

という形に落とせなければ価値がかなり下がります。

つまり、「分析としては面白いが、実務の画面に載せると意味がない」なら切る、ということです。

4. データ取得や更新が不安定すぎる

これは技術的な CUT 条件です。
今回の仮説群は公開データをかなり前提にしています。
そのため、

  • 主要系列が安定して取得できない
  • 欠損が多すぎる
  • 更新頻度がバラバラすぎる
  • 180日バックフィルすらまともに作れない

といった状態なら、それだけでかなり厳しいです。

ここは「テーマが悪い」というより「今の自分の検証対象として不向き」という意味で切ります。
DeFi には面白い構造があっても、個人が短期で検証できないものはあります。
それを無理に追う必要はありません。

10-3. OK / CUT を実務用に言い直すとこうなる

ここまでを、かなり実務寄りに言い直すとこうなります。

OK

  • 少なくとも一つの系列に、6時間〜72時間の先行性が見える
  • その先行性が、複数回のイベントで再現する
  • 単なる高利回り人気では説明しきれない
  • 簡易スコア化しても情報価値が残る
  • 観測機や regime tag に載せる価値がある

CUT

  • 先行性が見えず、同時相関にしか見えない
  • 説明が「高利回りだから」でほぼ終わる
  • 分析は面白いが、判断指標へ落とせない
  • データ取得が不安定で、継続観測に向かない

このくらいはっきりしていれば、少なくとも「何となく継続」はかなり避けられます。

10-4. 想定期限はまず 5営業日、その後は追加で 2週間以内

今回の第一期限は、前章で書いた通り 5営業日 です。
ここでやるのは、あくまで一次判定です。

つまり、

  • データは取れるのか
  • 先行性は少しでもあるのか
  • どの仮説が残るのか
  • regime 指標に落とせそうか

を確認するところまでです。

ここで一本も残らないなら、いったん切ります。
逆に、一本でも残るなら、その仮説だけを対象にして 追加で 2週間以内 の第二フェーズへ進めます。

この第二フェーズでやることは、たとえば

  • 時間窓の精査
  • 指標のスコア化
  • 追加市場への横展開
  • 観測機への実装
  • paper 運用での挙動確認

といったものです。

ここで重要なのは、最初から二週間や一か月を見る前提にしないことです。
まず 5営業日で「続ける価値があるか」だけを判定する。
その上で、残った一本だけに時間を追加投資する。
この順番を守らないと、またテーマが広がります。

10-5. この章で先に線を引いておく意味

今回ここまで OK 条件と CUT 条件を細かく書いたのは、後から自分を甘やかさないためです。
研究をしていると、どうしても「ここまで作ったし」「面白いし」「もう少し見たら何か出るかも」という気持ちが出ます。
その気持ち自体は自然です。
ただ、それに流されると、研究の終わりどころがなくなります。

だから今回は、あえて先に線を引きます。
つまり、

  • 何が出たら進むのか
  • 何が出なければ切るのか
  • いつまでに一次判定を出すのか

を先に決めます。

これは研究を縛るためではなく、むしろ研究を前に進めるためです。
白黒をつける基準が先にあるからこそ、観測も分析も無駄に膨らみにくくなります。

10-6. この章の結論

この章を一言でまとめると、こうです。

今回の研究は、「面白そうだから続ける」ではなく、「先行性と実務性が確認できたら続け、そうでなければ切る」という基準で進める。

この線引きを先に置くことで、DeFi 側の巨大テーマに飲み込まれず、最短で価値判断を下しやすくなります。

次章では、ここまでの整理を踏まえて、今回の研究が OK だった場合、あるいは CUT だった場合に、その後どう分岐するのかを最後に整理して締めます。

11. 判定後の次の分岐 ― 続けるにしても切るにしても、次の動きを先に決めておく

ここまでで、問い、前提、やらないこと、情報源、市場構造、有力仮説、不足情報、検証プラン、そして OK 条件と CUT 条件まで整理できました。
最後に必要なのは、その判定結果を受けて次にどう動くのかを先に決めておくことです。

ここを決めておかないと、たとえ 5営業日で一次判定を出しても、その後にまた迷います。
「少し反応があったからもう少し広く見てみよう」「駄目だったけれど別の切り方ならあるかもしれない」といった形で、結局テーマが延命されやすくなります。
それでは今回ここまで慎重に線を引いてきた意味が薄れます。
だから最後に、OK だった場合の次の一手と、CUT だった場合の次の行き先をはっきりさせておきます。

11-1. OK だった場合 ― 「すぐ執行」ではなく、まず観測機へ落とす

まず、今回の研究で一本でも仮説が残った場合です。
このとき、最初にやるべきことは執行 bot を作ることではありません。
ここはかなり大事です。
もし Ethena 系の需要変化に先行性がありそうだ、あるいは Pendle の織り込みが何らかの需要変化を先に映していそうだ、と分かったとしても、それだけで即座に「では売買だ」とはなりません。

最初にやるべきなのは、観測指標として安定的に置ける形へ落とすことです。
つまり、

  • 定点で更新できる
  • 画面に載せられる
  • しきい値や regime として扱える
  • 他の市場観測と並べて見られる

という形にすることです。

今回のテーマで言えば、たとえば

  • Ethena 系需要スコア
  • Pendle 織り込み乖離スコア
  • Sky 基準差分スコア

のような、簡易な観測指標として整えるのが最初の一歩になります。
この段階で大事なのは、「精密な戦略」にしようとしないことです。
まずは観測機の主画面か補助画面に載せて、日々の市場観測の中で本当に意味があるのかを見る方が自然です。

つまり、OK の場合の最初の分岐はこうです。

仮説が残ったら、まずは観測機へ実装し、日々の判断材料として使えるかを確認する。

ここで意味があるようなら、ようやく次の段階へ進めます。
逆に、分析上は有望でも、観測面に載せた瞬間に意味が薄れるなら、その時点でかなり怪しくなります。
したがって、OK の場合でも、次の段階は執行ではなく、観測面への定着です。

11-2. OK だった場合の第二段階 ― 「取引のきっかけ」ではなく「戦場選択の補助」に使う

観測面に置いて意味がありそうだと確認できた場合、その次にやるべきなのは、直接のエントリー条件へ落とし込むことではありません。
ここもかなり重要です。
いきなり「このスコアが高いから買う」「この差が開いたから売る」とすると、また飛びすぎます。

むしろ最初は、戦場選択の補助として使う方が筋が良いです。
たとえば、

  • いま perp 市場を深掘りする価値がある局面か
  • いま collateral demand が偏っている局面か
  • いま利回り市場の期待が歪んでいる局面か
  • いま risk-on 的な資本流入なのか、保守的な待機資金流入なのか

を判断するための補助軸として使うわけです。

この使い方の利点は、直接の売買戦略よりもずっと事故りにくいことです。
観測指標が多少荒くても、戦場選択や regime の判定に使う分には十分価値があります。
しかも、自分の今の本線である観測→判断→必要なら執行、という流れにもかなり合っています。

したがって、OK 後の第二段階はこう整理できます。

観測機に載せた指標を、まずは売買トリガーではなく、戦場選択・regime 判定・優先研究テーマの切り替えに使う。

ここまで行ければ、今回の研究はかなり成功です。
なぜなら、「DeFi の面白い話」を調べただけではなく、実際の観測と判断に接続できる新しい軸を一つ得たことになるからです。

11-3. そこからさらに進む場合 ― はじめて「売買可能性」を検討する

もし観測機への実装と regime 指標としての運用を経て、それでもなお情報価値が安定しているなら、そのとき初めて売買可能性を検討します。
ここでようやく、

  • perp 側の position sizing フィルタ
  • 需要過熱時のみ有効化する戦略
  • Pendle 側の期待乖離を使った相対価値観測
  • 特定 collateral demand の偏在を捉えた補助戦略

のような方向へ進めます。

ただし、この段階に行けるのはかなり後です。
今回の 5営業日検証では、そこまで行く必要はありません。
むしろ、そこまで行こうとすると研究全体が重くなります。
今回の目的は、売買戦略を完成させることではなく、売買可能性を持つ観測軸なのかを見極めることです。
この順番は守った方がいいです。

11-4. CUT だった場合 ― 「DeFi は無し」ではなく、「この切り方は無し」として切る

次に、今回の研究が CUT だった場合です。
ここで重要なのは、CUT を失敗として扱わないことです。
切るべきものを切れたなら、それは十分な成果です。
特に今回のように、最初から

  • 何を見に行くか
  • 何をやらないか
  • 何が出たら続けるか
  • 何が出なければ切るか

を整理しているなら、CUT はかなり健全です。

ここでの正しい読み方は、
DeFi が駄目だったではありません。
そうではなく、
今回の切り方、今回の観測対象、今回の仮説では、個人 botter が短期で掘る価値は薄かった
ということです。

この違いはかなり大きいです。
なぜなら、テーマ全体を否定する必要はないからです。
切るべきなのはあくまで、

  • 利回り付きステーブルコインを起点にする見方
  • Ethena → Pendle → perp という読み筋
  • 今回の時間窓
  • 今回の先行性仮説

であって、DeFi 全体ではありません。

つまり、CUT の場合の最初の分岐はこうです。

今回の仮説群は切る。ただし、切るのはテーマ全体ではなく、この切り方とこの読み筋である。

ここを曖昧にすると、
「まだ別の見方があるかも」と延命するか、逆に「DeFi は駄目だった」と雑に捨てるかのどちらかになります。
どちらも避けたいです。

11-5. CUT 後に次に行くなら、二段目のテーマへ移る

今回の研究が CUT だった場合、次に行く先も一応用意しておきます。
ここで移る先は、今回すでに「二段目、三段目の観測テーマ」として位置づけていたものです。

たとえば、

  • tokenized Treasuries / institutional collateral adoption
  • stablecoin chain flow の比較
  • yield-bearing stablecoin そのものではなく、担保採用先の protocol 監視
  • BTC DeFi や wrapper / bridge / collateral 側の flow 観測

などです。

ただし、ここでも大事なのは、一気に広げないことです。
今回の研究が CUT だったからといって、「じゃあ次は全部見よう」としてはいけません。
それでは、ただテーマを乗り換えているだけです。
必要なのは、今回切れた理由を踏まえて、次はどこならより短く白黒をつけられるかを考えることです。

たとえば、今回切れた理由が「先行性が見えない」なら、次はもっと遅い時間軸のテーマにするのか、逆にもっと構造が単純な flow 指標に寄せるのかを決める必要があります。
CUT の理由を無視して別テーマへ行っても、また同じところで詰まります。

したがって、CUT 後の第二段階はこうです。

今回切れた理由を明確にした上で、それを避けられる二段目のテーマへ移る。

この整理ができていれば、CUT は単なる撤退ではなく、かなり意味のある前進になります。

11-6. いちばん避けたいのは「保留のまま広げること」

ここまで OK と CUT の両方を書いてきましたが、実は一番避けたいのはそのどちらでもなく、
保留のままテーマを広げることです。

たとえば、

  • 先行性は弱いが、少しはありそう
  • 指標化すると薄いが、もう少し見れば使えるかもしれない
  • データ取得は不安定だが、工夫すれば何とかなるかもしれない

こういう状態は一番危険です。
なぜなら、研究している感覚だけが残るからです。
しかも DeFi はテーマが多いので、この「少しありそう」をいくらでも積み上げられます。
それでは終わりがありません。

だから今回は、最後にもう一度かなりはっきり書いておきます。

今回の研究で目指すのは、
勝ち筋の発見そのものではありません。
まずは、
観測軸として残す価値があるかどうかの判定です。
そして、判定結果に応じて

  • 観測機へ実装して使う
  • regime 指標として育てる
  • それとも切って次へ行く

のどれかへ明確に分岐することです。

このくらい割り切っておかないと、DeFi のような巨大テーマは簡単に人を飲み込みます。

11-7. 最後の結論

この章、そして今回の研究メモ全体を締める意味で、最後に一度まとめます。

今回の DeFi リサーチでやろうとしているのは、
「DeFi が面白そうだから広く触る」ことではありません。
また、「利回り付きステーブルコインが伸びそうだから買う」ことでもありません。
そうではなく、

  • どこに資本需要があるのか
  • それがどの市場へ波及するのか
  • その変化を、個人が観測可能な指標として掴めるのか
  • 何が出たら続け、何が出なければ切るのか

を、短い時間で白黒つけることです。

今回の研究が OK なら、次は観測機への実装と regime 指標化へ進みます。
CUT なら、その理由を明確にした上で、この切り方は捨てます。
どちらにしても、目的は同じです。

「金の匂いがするかもしれない」を、「追う価値がある」か「切るべきか」へ変えること。

その意味で、今回の研究メモは、DeFi の勉強記録というより、
専業 botter として DeFi を観測対象にできるかどうかの一次判定書
に近いものになっています。
ここで線を引けるなら、次に進むにしても退くにしても、かなり健全だと思います。

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