前回の記事に引き続き、今回も仮想通貨botの開発状況をまとめていきます。
今回は「仮想通貨botterとして必要な知識体系(と学び方)」についてまとめました。
bot開発を始めて10ヶ月が経過したので、今後の方向性を間違えないためにも記録を残しておきます。bot開発の参考になれば幸いです。
仮想通貨botterの定義
この記事では「仮想通貨botter」を「プログラミング技術を駆使して仮想通貨のシステムトレードを行うプログラムを作り、市場で儲けを出す人」と定義しています。
なお、「暗号通貨・クリプトの知識」や「リサーチをして何らかのエッジを創出する力」などは開発者が継続して獲得・学習していくものとして、本記事では扱っていません。
あくまで一般的に個人で習得可能な技術に絞って6つにまとめました。
- プログラミングスキル
- 金融と取引の基礎知識
- 統計学とデータ分析
- リスク管理
- テクノロジーやセキュリティ
- インフラ構築
プログラミングスキル
- Python: 金融取引で最も一般的に使用されるプログラミング言語。基本的な文法から始め、データ処理やAPIの利用方法を学ぶ。
Pythonは直感的で読みやすい言語であり、多くの金融APIやデータ分析ツールがPythonで利用可能。Pythonでのデータ構造、関数、クラスの使用法を理解し、NumPyやPandasのようなデータ分析ライブラリを活用する方法を学ぶことが重要。 - APIの使用: 取引所のAPIを利用して、リアルタイムで市場データを取得し、取引命令を自動で送信する方法を学ぶ。
取引所が提供するAPIを利用して、価格データを取得したり、取引指令を出したりすることができる。これには、REST APIやWebSocketを利用した非同期プログラミングの知識が必要。また、APIを通じて得たデータの処理方法や、取引の自動化スクリプトの作成も重要。
プログラミングスキルの発展的な手法
- 非同期プログラミング: リアルタイム取引やデータフィードの処理において非同期プログラミングが有効。Pythonの
asyncio
ライブラリを使用することで、複数のデータストリームを同時に管理し、効率的に処理することが可能になる。 - 高性能計算: 数値計算やデータ処理の速度を向上させるために、NumbaやCythonといったツールを利用してPythonコードを最適化する。これにより、大量のデータや複雑な数学的モデルを高速に処理することが可能になる。
金融と取引の基礎知識
- 市場の基礎: 価格形成や市場の動きの基本を理解する。
供給と需要、オーダーブック、価格変動の原因などの基本的な市場概念を理解する。 - 取引戦略: トレンドフォロー、逆張り、アービトラージなど、様々なトレーディング戦略について学ぶ。
どのような市場条件でどの戦略が最も効果的かを理解することが重要。例えば、トレンドフォロー戦略では、市場が明確な方向性を持っている時に有効で、逆張り戦略は市場が過反応したときに利用することができる。
金融と取引の基礎知識の発展的な手法
- 量的ファイナンスモデル: ブラック・ショールズモデルやバイナリーオプションなどのより高度な金融モデルを理解し、これらをシステムトレードに応用する。
- 微細構造分析: 市場のオーダーブックを詳細に分析し、価格形成の微細な動きを捉えることで、短期間での利益機会を見つけ出す。
統計学とデータ分析
- 統計的手法: 平均、標準偏差、相関係数など基本的な統計学を学ぶ。
統計的手法はデータから有意義な情報を抽出し、予測モデルを構築するための基礎となる。例えば、移動平均、ボリンジャーバンド、相関分析などがある。 - 機械学習: 価格予測やトレンド分析に利用できる基本的な機械学習モデルの開発と評価方法を学ぶ。
過去のデータからパターンを学習し、未来の価格動向を予測するモデルを構築する。回帰分析、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークなどが使用される。
統計学とデータ分析の発展的な手法
- 時系列解析: ARIMA、状態空間モデル、VARモデルなどの発展的な時系列分析技術を用いて、価格の時間的動向をより精密に予測する。
- 深層学習: LSTMや畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いたモデルを開発し、非線形な市場のパターンや複雑な関係性を把握する。
参考
リスク管理
- 資金管理: 取引でのリスクを適切に管理するための資金配分の戦略を学ぶ。
一度に多くの資金をリスクにさらすのではなく、トレードごとにリスクを限定する戦略を採用する。これには、損失を限定するストップロスオーダーやリスク:リワード比の計算などが含まれる。 - リスク評価: 取引におけるリスクを評価し、潜在的な損失を最小化する方法を理解する。
潜在的なリスクを事前に評価し、市場の異常な動きに対応できるようにすることが重要。これには、過去の市場データやボラティリティの分析が利用される。
リスク管理の発展的な手法
- バリュー・アット・リスク(VaR): 取引ポートフォリオの潜在的な最大損失を推定するためにVaRを計算し、リスク管理戦略を設計する。
- ストレステスト: 異常市況を想定したストレステストを実施し、市場の極端な状況におけるポートフォリオの耐性を評価する。
テクノロジーやセキュリティ
- システムのセキュリティ: 取引システムの安全性を確保するための基本的なセキュリティ対策を学ぶ。
取引システムを安全に保つために、暗号化、アクセス制御、安全な通信手段の確保が重要。 - 高頻度取引: 仮想通貨市場において利用される高頻度取引の技術について学ぶ。
高頻度取引は非常に短い時間スケールで行われる取引で、自動化されたアルゴリズムを使用して、僅かな価格変動から利益を得る。このためには、非常に高速で効率的なコンピューティングリソースや高度で複雑なブログラムを組む技術力が必要。
-
仮想通貨botの開発記録#78(2024/6/29)「高頻度取引の一般的な戦略と勉強方法まとめ」
続きを見る
テクノロジーとセキュリティの発展的な手法
- 分散台帳技術: ブロックチェーンなどの分散台帳技術を利用して取引データの透明性とセキュリティを高める。
- 量子耐性暗号: 量子コンピューティングの台頭に備え、量子耐性のある暗号技術を導入し、将来的なセキュリティの脅威から保護する。
インフラ構築
インフラ関連の技術や知識は、システムトレードの効率と安定性を大きく左右するため、十分な理解と適切な設計が求められます。
これらを習得し、適切に適用することで、システムトレードの成功率を向上させることができます。
サーバーとホスティング
- サーバー選定: 取引アルゴリズムが稼働するサーバーを選ぶ際には、処理能力、メモリ、ストレージ、およびネットワーク接続の速度を考慮する必要がある。
- クラウドベースのソリューション: AWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなどのクラウドサービスを利用することで、スケーラビリティと柔軟性を確保しつつ、コストを抑えることが可能。特に重要なのは、取引所のサーバーに近い地域にサーバーを配置することでレイテンシーを最小限に抑えること。
-
仮想通貨botの開発記録#77(2024/6/25)「MacOS利用Botterのための外部環境構築【基本編3種】」
続きを見る
データベース管理
- データベース設計: 取引データや市場データを効率的に処理・分析するためには、適切なデータベース設計が必要。リレーショナルデータベース(SQL)や非リレーショナルデータベース(NoSQL)の選定が重要。
- リアルタイムデータ処理: 大量の取引データをリアルタイムで処理するためには、高性能なデータベースシステムや、インメモリデータベースの利用が考慮される。
セキュリティ対策
- データの暗号化: 取引情報や個人情報を保護するために、データを暗号化することが重要。
- ネットワークセキュリティ: ファイアウォール、VPN、DDoS防御などを利用してシステムを外部の脅威から守る。
データバックアップと災害対策
- バックアップ戦略: データの損失を防ぐために、定期的なバックアップを行い、異なる地理的位置にバックアップを保存することが望ましい。
- 災害復旧計画: システム障害が発生した場合に迅速に対応し、システムを復旧するための計画が必要。
-
仮想通貨botの開発記録#79(2024/7/10)「プログラミングとネットワーク通信の基礎学習①」
続きを見る
まとめ
今回は「仮想通貨botterに必要な知識体系」についてまとめました。
どれも基礎的なことであり、これらの総合的な組み合わせがあってようやくbotterとして一人前なのだなと感じます。
今後もこの調子で開発の経過をまとめていきます。