こんにちは、よだかです。
今回は「金融読本」の5~7章の内容のざっくりまとめとそこから考えたことのまとめです。
特に、仕組みが発生する力学やその構造をbot開発にどう接続するかという部分について掘り下げていきます。
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🛠️開発記録#543(2026/5/31)金融読本4章まとめ「金融市場と金利の整理:資金・信用・流動性・時間をどう見るか」
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1. 今回学んだこと
金融読本の5〜7章を読みました。
扱われていたのは、資金循環、企業金融、消費者金融、決済システムあたりです。
正直に言うと、今回の読書では「理解できた部分」と「まだ掴み切れていない部分」がかなりはっきり分かれました。
資金循環統計は、誰が資金を持っていて、誰が資金を必要としているのかを見るためのもの。
家計、企業、政府、海外、金融機関。
それぞれの部門が、資金余剰なのか、資金不足なのか。
そこを見ることで、お金の流れをざっくり掴む。
ここは比較的理解しやすかったです。
企業金融の章では、企業がお金をどう調達するのかを読みました。
銀行借入。
CP。
社債。
株式発行。
売掛債権や買掛債務。
これまで私は、株式や社債をどちらかというと「投資対象」として見ていました。
でも、企業側から見ると違う。
株式は資本調達。
社債は借入。
CPは短期資金調達。
売掛債権や買掛債務は、企業間信用。
つまり、同じものでも、投資家から見るか、企業から見るかで意味が変わる。
ここはかなり大きな発見でした。
決済システムの章では、約定と決済の違い、ネッティング、日銀ネット、全銀システム、DvPなどが出てきました。
ここは未知の部分が多かったです。
市場で売買していると、約定した瞬間に取引が終わったように感じます。
でも実際には違う。
約定。
清算。
決済。
この3つは別のレイヤー。
取引が成立することと、実際に資金や証券が移ることは同じではない。
このあたりは、まだ身体感覚としては弱いです。
ただ、今回かなり重要だと思ったのは、金融の仕組みの多くが「時間のズレ」や「信用」を扱っているということです。
お金を今すぐ動かさない。
でも取引は成立させる。
将来払うことを前提に、今の経済活動を進める。
そのために、信用があり、清算があり、ネッティングがあり、決済システムがある。
つまり金融システムは、単にお金を動かす仕組みではない。
信用と時間のズレを管理する仕組みでもある。
今回の5〜7章を読んで、まずそこが一番大きく残りました。
2. 減価償却の本義を調べたことで認識がひっくり返った
今回、一番認識が変わったのは減価償却です。
私はこれまで、減価償却をほとんど節税の文脈で理解していました。
高額な設備や備品を買う。
それを減価償却する。
費用として計上する。
利益が下がる。
税金が下がる。
そういう理解です。
間違いではないと思います。
実際、実務上はそういう使われ方もされます。
ただし、それは減価償却の本義ではありません。
ここが今回の大きな修正点でした。
減価償却は、本来、節税のための仕組みではない。
利益を正しく測るための仕組みです。
たとえば、1000万円の機械を買ったとします。
支払い自体は、購入時点で済んでいる。
現金は出ていく。
でも、その機械は1年で使い切るわけではありません。
5年、10年と使いながら、売上を生み続ける。
それなのに、買った年に1000万円すべてを費用にしてしまうと、その年だけ利益が大きく下がり、翌年以降は機械を使っているのに費用が出ないことになります。
それでは、事業の実態が見えにくい。
だから、機械が収益を生む期間に合わせて、費用も分けて認識する。
これが減価償却。
つまり、分割しているのは支払いではなく、費用認識です。
ここを私は混同していました。
節税の文脈から入ると、減価償却は「税金を減らすためのテクニック」に見えます。
でも、会計の文脈から見ると違う。
まず、利益をどう正しく測るかという問題がある。
その利益を税金計算にも使うから、結果として税額が変わる。
順番としては、
利益計算。
その後に税金。
節税は副次的な効果。
この順番を取り違えていました。
そして、この取り違えは減価償却だけの話ではない気がします。
株式もそうです。
市場参加者から見れば、株式は値上がりを狙う投資対象です。
でも企業側から見れば、資本調達の手段です。
社債もそう。
投資家から見れば利回り商品。
企業から見れば借金。
国債もそう。
投資家から見れば安全資産。
政府から見れば資金調達。
見る立場が変わると、同じ仕組みの意味が変わる。
今回の減価償却の件で、自分は仕組みの副次的な使われ方だけを見て、原義を見落としていたのだと気づきました。
これはかなり大きい。
金融の仕組みは、表面だけ見るとテクニックに見えることがあります。
節税テクニック。
投資商品。
利回り商品。
高APY。
でも、その仕組みが最初に何を解決するために生まれたのかを見ないと、理解の順番を間違える。
今回の減価償却についてあらためて調べたことは、そのズレを修正するきっかけになりました。
3. 仕組みの前には需要がある
減価償却の認識を修正してから、他の仕組みの見え方も少し変わりました。
仕組みが先にあるのではない。
先に需要がある。
もっと言えば、先に解決すべき問題がある。
その問題を解くために、仕組みが生まれる。
たとえば、減価償却。
これは節税のために生まれた仕組みではなく、巨大な設備投資をどう利益計算に反映するかという問題から生まれたものです。
高額な機械や設備は、買った年だけでなく、その後何年も収益を生む。
だから費用も、収益を生む期間に合わせて配分する必要があった。
そこから減価償却という仕組みが必要になった。
売掛債権や買掛債務も同じです。
すべての取引を即時現金決済にしていたら、経済活動はかなり重くなる。
商品を受け取るたびに現金を用意する。
納品するたびに即座に回収する。
それでは商流が詰まる。
だから、後で払う、後で受け取るという企業間信用が生まれる。
これも、単なる会計項目ではありません。
経済を前に進めるための仕組みです。
決済システムもそうです。
大量の取引をすべて1件ずつ資金移動していたら、必要な資金量が大きくなりすぎる。
だから、清算し、差額を計算し、ネッティングする。
全額を動かすのではなく、差額だけを動かす。
これは決済資金を減らすための工夫です。
DvPも同じです。
証券だけ渡したのにお金が来ない。
お金を払ったのに証券が来ない。
そういう片側だけ履行されるリスクを防ぐために、証券と資金を同時に交換する仕組みが必要になった。
こうやって見ると、金融の仕組みはどれも「何となく存在している制度」ではありません。
それぞれに、解こうとしている問題がある。
需要がある。
必然性がある。
今回、自分の中でかなり整理されたのはこの部分です。
需要。
仕組み。
副次効果。
この順番。
最初に問題がある。
その問題を解くために仕組みができる。
そして、その仕組みが別のメリットを生むことがある。
減価償却で言えば、本来は利益を正しく測るための仕組み。
でも結果として、税金の支払いタイミングに影響する。
そこだけ切り取ると、節税テクニックに見える。
企業間信用も、本来は商流を円滑にするための仕組み。
でも結果として、強い企業が支払条件を有利にできることがある。
ネッティングも、本来は決済資金を減らすための仕組み。
でも結果として、巨大な取引量を少ない資金で回せるようになる。
仕組みだけを見ると、最初からそのメリットのために作られたように見える。
でも、実際には順番が逆のことがある。
そこを取り違えると、理解がズレる。
今回の読書で一番大きかったのは、この見方を得たことかもしれません。
金融の仕組みを見るときは、まず名前や機能を覚える前に、
この仕組みは何を解決するために生まれたのか。
どんな需要があったのか。
どんな前提の上で成り立っているのか。
そこを見る。
この読み方は、金融読本の続きだけでなく、クリプトやbot開発にもそのまま使える気がしています。
4. なぜ原義を見失うのか
仕組みには、もともとの目的があります。
ただ、その仕組みが一度制度として定着すると、後から見る人間には、目的よりも使い方の方が目立ちます。
減価償却なら、利益を正しく測るための仕組みだったものが、初心者には節税テクニックとして見える。
株式なら、企業の資本調達手段だったものが、投資家には値上がりを狙う商品として見える。
社債なら、企業の借入手段だったものが、投資家には利回り商品として見える。
見えているものが間違っているわけではありません。
実際に、減価償却には節税効果があります。
株式は投資対象です。
社債は利回り商品です。
ただし、それはその仕組みの一面であって、出発点そのものではない。
ここを取り違えると、理解の順番が逆になります。
本来は、
問題がある。
その問題を解くために仕組みが生まれる。
その仕組みが、後から別の効用を持つ。
この順番です。
しかし、後から参加する人間は、すでに完成した仕組みしか見ません。
だから、
減価償却は節税のためにある。
株式は値上がりを狙うためにある。
社債は利回りを取るためにある。
そう見えてしまう。
これはクリプトでもよく起きます。
最近の例で言えば、ステーブルコインやRWA、トークン化預金まわりの議論がそうです。
表面だけ見ると、
「ステーブルコインが伸びている」
「RWAが伸びている」
「銀行もトークン化に入ってきている」
という話になります。
でも、そこで止まると浅い。
本当に見るべきなのは、それらが何を解決しようとしているのかです。
ステーブルコインなら、国境をまたぐ決済、24時間動くドル建て決済、既存銀行網では重い送金や清算の問題。
RWAなら、既存金融資産をオンチェーン上で扱うことによる決済・担保・流通の効率化。
トークン化預金なら、銀行システムの信用を保ったまま、デジタルな決済・清算インフラへ接続すること。
実際、2026年時点の議論でも、ステーブルコインそのものが最終形というより、トークン化預金やCBDC、銀行主導のデジタルマネーとの競争の中で位置づけられています。Bank of England のMegan Greene氏は、今後はステーブルコインよりも商業銀行のトークン化預金が優勢になる可能性に言及しています。一方で、FRBのChristopher Waller氏は、ステーブルコインを決済システムの競争と効率化を促す金融イノベーションとして評価しています。
【参考】Stablecoin demand may soon fade, BoE's Greene says
つまり、ここでも問うべきなのは、
「ステーブルコインは上がるのか」
ではなく、
「ステーブルコインはどの問題を解いているのか」
です。
そしてさらに言えば、
「その問題は、本当にステーブルコインでなければ解けないのか」
です。
もし銀行のトークン化預金が同じ問題をより規制親和的に解けるなら、ステーブルコインの一部の価値は薄まるかもしれない。
逆に、銀行システムでは届きにくい領域でステーブルコインが使われ続けるなら、そこには独自の需要が残るかもしれない。
ここを見ないと、仕組みの表面だけを追うことになります。
最近は、野村系のLaser Digitalが米国でナショナル・トラスト銀行免許の条件付き承認を得たというニュースもありました。目的は、暗号資産だけでなく、トークン化資産、従来型資産、クロスボーダー決済、ステーブルコイン取引、担保管理を扱うための機関向けインフラです。
【参考】Nomura-backed Laser Digital secures conditional approval for US banking license
これも、単に「金融機関がクリプトに参入した」という話ではないと思います。
むしろ、既存金融がクリプトの仕組みを取り込みながら、自分たちの決済・保管・担保・清算の仕組みを拡張しようとしていると見る方が自然です。
ここでも、BTCの思想とはかなり違う方向に進んでいます。
クリプトが既存金融を置き換えるというより、既存金融の一部を補強する技術として取り込まれている印象を受けます。
少なくとも、今見えている大きな流れはそちらに近い。
こういう変化を見ると、仕組みの原義を見失うことの危うさがよく分かります。
仕組みだけを見ると、流行に見える。
価格だけを見ると、テーマ株のように見える。
でも、その奥には必ず、
何を解決するのか。
誰の需要なのか。
どの前提で成り立つのか。
という問いがあります。
この問いを飛ばすと、仕組みの副次的な効用だけを見てしまう。
そして、それが市場で過大評価されているとき、価格は現実から離れていく。
逆に言えば、原義と現在の使われ方のズレを見ることは、市場を見る上でもかなり重要なのだと思います。
5. 私は何を観測するべきなのか
今回の読書を通して、自分が市場を見るときの観測対象についても少し整理できました。
これまで私は、市場の歪みや価格差を探すことに多くの時間を使ってきました。
どこに流動性があるのか。
どこに価格差があるのか。
どこにボラティリティがあるのか。
どこにまだ人が見落としている余地があるのか。
botterとして利益を出すためには、当然ここを見る必要があります。
最終的に取るのは価格差です。
出来高です。
流動性です。
執行可能な歪みです。
ただ、今回の読書で気づいたのは、その一段上にあるレイヤーをもっと見た方がよいということでした。
価格差は結果です。
出来高も結果です。
TVLも結果です。
流動性も結果です。
では、その結果を生み出しているものは何か。
ここを見ないと、観測が表面で止まってしまう。
新しいチェーンが伸びている。
新しいプロトコルが流行っている。
新しい金融商品が出てきた。
ステーブルコインの供給量が増えている。
ETFに資金が入っている。
こうした情報は重要です。
ただし、それだけではまだ足りない。
その裏側で、どんな需要が発生しているのか。
誰がその仕組みを必要としているのか。
なぜ今それが必要になっているのか。
その需要は一時的なものなのか、継続するものなのか。
そこまで見ないと、表面上の数字に振り回される可能性があります。
最近チェーン調査をしていても、似たことを感じています。
TVLが大きいから良い。
出来高があるから良い。
アクティブアドレスが多いから良い。
そう単純には言えない。
それが実需によるものなのか。
インセンティブによるものなのか。
一時的なキャンペーンによるものなのか。
外部資金の流入によるものなのか。
既存金融との接続によるものなのか。
ここを分けて見ないと、戦場選定を間違えます。
bot開発でも同じです。
価格差だけを見ていると、なぜその価格差が発生しているのかが分かりません。
なぜその市場に歪みがあるのか。
なぜその歪みが消えないのか。
なぜその流動性がそこにあるのか。
なぜその参加者はその市場を使っているのか。
ここを見ないと、単に価格差を拾いに行くだけになります。
もちろん、過去にはそれでも拾える場面はありました。
でも、長く戦うなら、それだけでは弱い。
今回の読書を通して、自分が作りたいものは、価格予測装置ではなく、市場構造の観測装置なのだと改めて感じました。
市場は結果。
価格も結果。
出来高も結果。
まずは、その結果を生み出している需要や前提条件を見る。
その上で、どこに歪みが発生しそうかを考える。
今後は、単に「動いている市場」を探すのではなく、「なぜ動いているのか」を観測する方向に寄せたいと思っています。
その方が、botterとしても長く戦いやすいはずです。
6. これからやること
今回の読書で得た一番大きな収穫は、個別知識そのものではありません。
減価償却。
企業間信用。
ネッティング。
決済システム。
それぞれの用語を覚えたことよりも、仕組みを見る順番が少し変わったことの方が大きい。
まず、問題がある。
その問題を解決するために仕組みが生まれる。
その仕組みが、副次的に別の効用を持つ。
時間が経つと、副次的な効用だけが目立ち、原義が見えにくくなる。
この順番を意識する。
今後は、金融やクリプトのニュースを見るときにも、まずここを確認したいと思います。
何が起きたのか。
価格はどう動いたのか。
どの銘柄が反応したのか。
それも大事です。
ただ、その前に、
それは何の需要に接続しているのか。
どの問題を解決しようとしているのか。
その前提は持続するのか。
ここを見る。
botterとしては、実務にも落とし込みたいです。
まず、ニュースやレポートを読むときの分類軸を変えます。
単に「ポジティブ」「ネガティブ」で分けない。
- 実需に接続しているニュース
- 規制や制度に関するニュース
- 資金流入経路に関するニュース
- 流動性に関するニュース
- 一時的なインセンティブに関するニュース
- 前提条件を強めるニュース
- 前提条件を弱めるニュース
こういう形で見る。
特に、クリプトについては、単にクリプト内で盛り上がっている話題だけでなく、既存金融や実世界の需要とどこで接続しているのかを見たい。
ETF。
ステーブルコイン。
RWA。
担保。
決済。
送金。
清算。
カストディ。
こうした領域は、単なるテーマではなく、金融インフラのどこを置き換える、あるいは補強しようとしているのかという視点で見る。
次に、bot開発の観測対象も少し広げます。
これまでは、価格、板、出来高、スプレッド、流動性、資金調達率など、市場内部のデータを中心に見ていました。
もちろん、これは今後も必要です。
ただ、それに加えて、
なぜその市場に資金が来ているのか。
なぜその流動性が維持されているのか。
どのプレイヤーがその市場を使っているのか。
その需要はインセンティブが切れても残るのか。
このあたりも観測対象に入れたい。
実装としては、いきなり複雑なことをする必要はありません。
まずはメモやレポートの段階で十分です。
チェーン調査や市場調査をするときに、
- 価格
- 出来高
- 流動性
- 資金流入
- 実需
- インセンティブ
- 前提条件
を分けて記録する。
そのうえで、botに渡すべき市場と、単に話題になっているだけの市場を分ける。
ここから始めます。
今回、クリプトbotterから少し抽象度を上げる必要があるかもしれないとも感じました。
クリプトだけを見るのではなく、金融インフラの変化を見る。
価格差だけを見るのではなく、価格差を生む構造を見る。
市場の動きだけを見るのではなく、市場を動かしている需要を見る。
そういう方向です。
これは、今やっているbot開発から離れるという意味ではありません。
むしろ逆です。
長く戦えるbotterになるために、観測の解像度を上げる。
表面の数字だけでなく、その数字を生み出している仕組みを見る。
今回の読書は、そのためのかなり良い補助線になりました。
まだ理解できていない部分も多いです。
決済システム。
清算機関。
企業金融。
資金循環。
このあたりは、まだ身体感覚としては弱い。
ただ、分からない場所はかなりはっきりしました。
今後は、そこを一つずつ潰していく。
そして、学んだことをそのまま終わらせず、botterとしての観測項目や戦場選定に接続していく。
当面はこの方向で進めます。
それでは、また。