こんにちは、よだかです。
今回も『金融読本』の内容を起点にして、読んだこと、調べたこと、そこから考えたことをまとめていきます。
今回読んだ範囲では、金融のIT化、仮想通貨とブロックチェーン、デリバティブ、証券化、金融政策などが扱われていました。
ただ、内容そのものは基礎的な部分も多かったので、今回は本の要約はギュッと圧縮します。
むしろ今回の本筋は、そこから現代の金融インフラに接続して考えた部分です。
CBDC、ステーブルコイン、トークン化預金、トークン化国債、既存金融による暗号技術の取り込み。
このあたりを調べていくと、単に「仮想通貨が普及するかどうか」という話ではなく、金融そのものの台帳や決済、担保、流動性がどう再設計されていくのか、という話に見えてきました。
そしてこれは、仮想通貨botterとして今後どこを観測し、どの市場の摩擦を見に行くのかにも関わるテーマだと感じています。
ということで、今回は、読書メモというより、読書をきっかけにした金融インフラ考察としてまとめていきます。
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🛠️開発記録#544(2026/6/1)金融読本まとめ(5~7章)"減価償却"の本義をきっかけに「仕組みの見方」が変わった話
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1. 金融読本から、現代金融インフラの問いに接続した
今回読んだ範囲では、金融のIT化、フィンテック、仮想通貨とブロックチェーン、デリバティブ、証券化、金融政策などが扱われていました。
テーマだけ並べると、かなり広いです。
ネット銀行やスマホ決済。
仮想通貨とブロックチェーン。
先物、スワップ、オプション。
証券化商品。
中央銀行による金融政策。
一見すると、それぞれ別々の話に見えます。
金融サービスが便利になった話。
仮想通貨という新しい技術の話。
デリバティブという難しそうな金融商品の話。
証券化という金融工学の話。
中央銀行が金利や資金量を調整する話。
ただ、読み進めていくうちに、自分の中ではこれらが少しずつつながっていきました。
結局、金融で見なければいけないのは、表面上の商品名やサービス名ではないのだと思います。
誰が何を払っているのか。
誰の債務なのか。
どの資産が裏付けなのか。
どこにリスクが移っているのか。
その流動性は本当にあるのか。
どの台帳が正なのか。
危機時にも額面で戻ってくるのか。
こういう問いです。
たとえば、スワップ取引は「固定金利と変動金利を交換する取引」と説明できます。
それ自体は間違いではありません。
しかし、そこで止まると、ただの用語暗記になります。
なぜ固定金利を払いたい主体がいるのか。
なぜ変動金利を取りたい主体がいるのか。
その取引によって、誰のリスクがどこへ移っているのか。
仲介者はどこで収益を得ているのか。
そこまで見ないと、金融商品としての意味は見えてきません。
証券化も同じです。
「貸付債権や不動産など、将来キャッシュフローを生む資産を裏付けにして証券を発行する仕組み」と説明することはできます。
ただ、本当に大事なのは、その先です。
原資産は何か。
その原資産は本当にキャッシュフローを生むのか。
そのキャッシュフローは安定しているのか。
証券化によってリスクは分散されたのか。
それとも、見えにくい場所へ移動しただけなのか。
原資産の流動性と、証券の流動性にズレはないのか。
ここを見ないと、証券化は単なる便利な金融技術にも見えるし、逆にただ怪しい仕組みにも見えてしまいます。
どちらも雑です。
金融技術そのものが良い、悪いという話ではなく、どの構造で、誰のリスクを、どこへ移しているのかを見る必要があるのだと思います。
この視点で見ると、仮想通貨やブロックチェーンの話も、単なる「新しい通貨」や「投機対象」では終わりません。
もちろん、日常決済だけで見れば、既存の銀行振込、クレジットカード、電子マネー、QR決済で十分な場面は多いです。
少なくとも、日本で普通に生活している限り、コンビニでビットコイン決済をしたいと思う場面はほとんどありません。
その意味では、「仮想通貨が支払い手段として普及する」という語り方には、かなり疑問があります。
ただ、そこで話を終わらせるのも違う。
ブロックチェーンや暗号技術が意味を持つのは、日常の小口決済だけではありません。
国境をまたぐ資金移動。
24時間365日動く市場。
ステーブルコインによるドル建て残高。
DeFiにおける担保、清算、レンディング、流動性供給。
トークン化された国債やファンド持分。
中央銀行マネーや銀行預金のデジタル化。
こうした文脈で見ると、論点はかなり変わります。
問うべきなのは、「仮想通貨は日常決済で便利か」だけではありません。
どの制約を外しているのか。
誰にとって使う意味があるのか。
どの資金移動が速くなるのか。
どの担保が使いやすくなるのか。
既存金融のどの摩擦が本当に消えるのか。
このあたりです。
今回、金融読本を読みながら調べていて面白かったのは、まさにここでした。
本の内容そのものは、基礎的な説明が多いです。
しかも、フィンテックや仮想通貨のような領域は変化が早いので、現在の状況に照らすと古くなっている部分もあります。
ただ、その古さも含めて、良い入口になりました。
本に書かれている金融の基礎概念を、現在のCBDC、ステーブルコイン、トークン化預金、トークン化国債、既存金融による暗号技術の取り込みに接続して考える。
すると、金融のデジタル化は、単に「金融サービスがスマホで便利になる」という話ではないように見えてきます。
もっと根本的には、金融の台帳、決済、担保、流動性、権利移転、規制責任をどう再設計するかという話です。
これは、仮想通貨botterとしてもかなり重要なテーマです。
botterとして市場を見るとき、つい価格差や出来高、板、Funding Rate、裁定機会のような目に見える数字に意識が向きます。
もちろん、それらは大事です。
でも、その背後には必ず資金の流れがあります。
担保の流れがあります。
決済の仕組みがあります。
規制の制約があります。
台帳の違いがあります。
移動できる資金と、移動できない資金があります。
価格差は、そうした摩擦の表面に出てくる現象の一つです。
だから、今後の仮想通貨botterとしての身の振り方を考えるうえでも、単に「どの通貨が上がるか」「どのDEXに歪みがあるか」だけでは足りないのだと思います。
どの金融インフラが変わろうとしているのか。
どの台帳に資金が集まるのか。
どの担保が使われるのか。
どの規制によって資金移動が制限されるのか。
どの市場に、まだ摩擦が残るのか。
こういう問いを持っておく必要がある。
今回の読書は、金融読本を読んだというより、金融インフラの見方を少し広げるきっかけになりました。
次章では、その中でも特に重要だと感じた「金融は誰が何を払っているのかで見る」という視点について整理していきます。
2. 金融は「誰が何を払うか」で見る
今回の読書メモを書いていて、自分の中で一番手応えがあったのは、金融商品を「名前」ではなく「支払いの構造」から見ようとした部分でした。
先物。
スワップ。
オプション。
証券化商品。
ステーブルコイン。
DeFiの利回り。
それぞれ別の金融商品として説明されます。
分類は必要です。
先物とオプションは違います。
スワップと証券化も違います。
ステーブルコインと銀行預金も違います。
ただ、用語を分けるだけでは、まだ見えてこないものがあります。
誰が払っているのか。
なぜ払っているのか。
何を避けるために払っているのか。
何を得るために払っているのか。
その支払いは、どこまで続くのか。
このあたりです。
たとえば、高い利回りがあるとします。
年利10%。
年利20%。
DeFiなら、もっと高い数字が表示されることもあります。
表面上は、利回りが高いほど魅力的に見えます。
ただし、同じ利回りでも、支払いの源泉によって意味は変わります。
借り手が金利を払っているのか。
発行体が報酬を出しているのか。
プロトコルがトークンを配っているのか。
新規流入者の資金が回っているだけなのか。
リスクを引き受ける対価なのか。
市場を立ち上げるための補助金なのか。
同じ10%でも、中身は違います。
本当に資金需要があり、借り手が金利を払っている場合。
リスクを引き受ける対価として、投資家にプレミアムが払われている場合。
市場を立ち上げるために、一時的なインセンティブが出ている場合。
持続的な収益がないまま、トークン発行で見かけの利回りを作っている場合。
数字だけを並べても、これらは比較できません。
金融で見たいのは、数字の高さではなく、その数字がどの構造から出ているかです。
これは、スワップ取引の説明を読んだときにも感じました。
金利スワップは、固定金利と変動金利を交換する取引です。
説明としてはそれで合っています。
ただ、それだけでは、取引が成立する理由までは見えません。
なぜ固定金利を払いたい主体がいるのか。
なぜ変動金利を払いたい主体がいるのか。
なぜ将来の金利変動リスクを外したいのか。
なぜ別の主体は、そのリスクを取ってもよいと考えるのか。
ここまで見ると、スワップは単なる複雑な金融商品ではなく、リスクの形を変える取引として見えてきます。
それぞれの主体が、自分の資産、負債、調達条件、将来の見通しに合わせて、将来のキャッシュフローを交換している。
自分のメモでは、少し乱暴に「金利の回収先がなければ、このビジネスは成立しない」というようなことを書いていました。
表現としては雑だったと思います。
スワップは、単純な金利回収ビジネスではありません。
異なるキャッシュフローやリスク形態を交換する取引です。
ただ、そのときに引っかかっていた感覚自体は残しておきたいと思います。
利回りや金利は、どこかから自然に出てくるものではありません。
どこかに支払っている主体がいる。
何らかのリスクを引き受けている主体がいる。
制度や補助金によって一時的に生まれている場合もある。
この確認を飛ばすと、利回りの性質を見誤ります。
DeFiでも同じです。
ステーキング報酬。
LP報酬。
レンディング金利。
ポイント。
エアドロップ期待。
どれも、表面上は利回りや期待収益として表示されます。
しかし、性質は違います。
実需から出ている利回りなのか。
利用者獲得のための一時的なインセンティブなのか。
トークンの希薄化で支払われているだけなのか。
価格下落リスクを引き受ける対価なのか。
スマートコントラクトリスクや清算リスクの対価なのか。
撤退しにくい流動性提供に対する補償なのか。
ここを分けないと、利回りの比較はできません。
国債利回りの10%。
銀行預金の10%。
レンディングの10%。
DeFiプロトコルの10%。
新興国通貨建ての10%。
ステーブルコイン運用の10%。
同じ10%でも、背後にある信用、流動性、為替、規制、担保、清算、償還条件は違います。
高金利通貨についても、同じ見方ができます。
金融入門では、高金利の通貨は買われやすい、という説明が出てきます。
他の条件が同じなら、高い金利を得られる通貨は魅力的です。
ただ、現実には他の条件が同じとは限りません。
その高金利は、健全な成長によるものなのか。
高インフレの結果なのか。
通貨防衛のために無理に金利を上げているのか。
財政不安のリスクプレミアムなのか。
市場が将来の通貨安を見込んでいるから高いのか。
高金利という一つの数字だけでは、判断できません。
金利が高いということは、誰かが高い金利を払っているということでもあります。
その支払いを続けられるだけの経済活動、信用、資本、制度、収益力があるのか。
なければ、高金利は魅力ではなく、リスクの表示にもなります。
これは、DeFiの高APRを見るときと似ています。
高い利回りには理由があります。
実需なのか。
補助金なのか。
リスクプレミアムなのか。
一時的な歪みなのか。
持続しにくい構造なのか。
そこを分けて見る必要があります。
botterとして市場を見るときも、同じ問題にぶつかります。
botは価格差を見ます。
板を見ます。
出来高を見ます。
Funding Rateを見ます。
スプレッドを見ます。
ただ、それらの数字も、背後にある参加者の行動から出てきます。
なぜそのFunding Rateが発生しているのか。
なぜその市場だけベーシスが開いているのか。
なぜそのステーブルコインだけ利回りが高いのか。
なぜそのチェーンに流動性が集まっているのか。
なぜその取引所から資金が出にくいのか。
なぜその担保には高い借入需要があるのか。
短期の執行では、すべての背景を理解してから動くわけにはいきません。
しかし、戦場を選ぶ段階では、背景を見る必要があります。
どの市場を観測するか。
どの資産を対象にするか。
どの歪みを継続的に追うか。
どの利回りを信用してよいか。
どの摩擦が構造的に残りやすいか。
こうした判断には、支払いの構造を見る力が関わってきます。
今回の読書で得た収穫の一つは、金融を「商品名」ではなく「誰が何を払っているのか」で見る視点を、改めて確認できたことでした。
利回りは、どこかから出ている。
金利は、誰かが払っている。
リスクは、どこかに移っている。
流動性は、誰かが供給している。
便利な金融商品には、その便利さを支える構造がある。
この見方を持っておくと、金融商品も、DeFiも、ステーブルコインも、金融政策も、少しだけ同じ地図の上に置けるようになります。
次章では、この視点を踏まえて、フィンテックを「便利アプリ」ではなく、金融機能の再配置として整理していきます。
3. フィンテックは便利アプリではなく、金融機能の再配置だった
金融読本の中では、金融のIT化やフィンテックについても触れられていました。
ネット銀行。
ネット証券。
スマホ決済。
QRコード決済。
クラウドファンディング。
ロボアドバイザー。
家計簿アプリ。
財務管理サービス。
こうした事例を見ると、フィンテックは「金融サービスをスマホやインターネットで便利にしたもの」として理解しやすいです。
実際、それは間違っていません。
銀行に行かなくても振込ができる。
スマホから証券口座を開設できる。
QRコードで決済できる。
アプリで家計や資産を管理できる。
個人でも少額から投資できる。
利用者目線では、かなり分かりやすい変化です。
ただ、現代のフィンテックをそれだけで見ると、少し表面に寄りすぎる気がします。
便利なアプリが増えた。
スマホで金融サービスが使えるようになった。
手続きがオンライン化した。
これだけだと、金融のIT化を「ユーザー体験の改善」としてしか見ていないことになります。
もちろん、ユーザー体験の改善は大きいです。
ただ、それ以上に重要なのは、金融機能が分解され、別の形で再配置されていることだと思います。
もともと銀行は、多くの機能をまとめて持っていました。
預金を受け入れる。
送金する。
決済する。
融資する。
本人確認をする。
信用を評価する。
資金を保全する。
金融取引の台帳を管理する。
証券会社も同じです。
口座を開く。
注文を受ける。
売買を執行する。
残高を管理する。
情報を提供する。
投資商品を販売する。
顧客の適合性を確認する。
これらは、昔は一つの金融機関の中にまとまっていました。
しかし、フィンテックが進むと、このまとまりが少しずつ分解されます。
決済だけを担う会社。
本人確認だけを担う会社。
与信モデルを提供する会社。
不正検知をする会社。
会計ソフトと銀行口座をつなぐ会社。
カード発行を裏側で支える会社。
銀行免許を持たない事業者に金融機能を提供する会社。
つまり、金融機能が部品化されていきます。
そして、その部品が別のサービスの中に組み込まれていく。
ECサイトの中で決済する。
会計ソフトの中で請求や入金管理をする。
業務SaaSの中で融資を受ける。
アプリの中で証券投資をする。
プラットフォーム内でウォレットやカードを持つ。
利用者から見ると、金融サービスを使っている感覚が薄くなります。
しかし、裏側では金融機能が動いています。
これが、現代のフィンテックの大きな特徴だと思います。
金融が、銀行や証券会社の窓口から外に出ていく。
そして、別のサービスの中に埋め込まれていく。
この見方をすると、フィンテックは単なる便利アプリではありません。
金融機能のアンバンドリング。
そして、別の場所でのリバンドリングです。
ここで面白いのは、金融機能が分解されるほど、責任の所在も見えにくくなりやすいということです。
たとえば、あるアプリで口座のようなものを持てるとします。
利用者から見ると、そのアプリにお金を預けているように感じます。
しかし、実際には、裏側に提携銀行がいるかもしれません。
決済代行会社がいるかもしれません。
台帳を管理する別会社がいるかもしれません。
本人確認を担当する外部サービスがいるかもしれません。
カード発行を支える別の基盤があるかもしれません。
このとき、利用者のお金はどこにあるのか。
誰の債務なのか。
誰が台帳を管理しているのか。
障害が起きたとき、誰が責任を取るのか。
破綻したとき、利用者の残高はどう扱われるのか。
ここが重要になります。
金融機能の部品化は、便利さを生みます。
同時に、構造の複雑さも生みます。
これは、BaaSや組込型金融を見るとかなり分かりやすいです。
BaaSは、銀行機能をAPIのような形で外部事業者に提供する仕組みです。
銀行免許を持たない企業でも、提携銀行や基盤事業者を通じて、口座、カード、決済、送金などの機能を提供できるようになります。
表面上は、金融サービスの立ち上げが簡単になります。
新しいアプリやサービスの中に、銀行のような機能を組み込める。
一方で、裏側ではかなり複雑な関係が生まれます。
顧客接点を持つ会社。
実際に銀行免許を持つ会社。
台帳を管理する会社。
決済ネットワークに接続する会社。
コンプライアンスを担う会社。
資金保全の責任を持つ会社。
これらが分かれていく。
ここで台帳や残高管理が曖昧になると、利用者は「自分のお金がどこにあるのか」を把握しにくくなります。
金融のIT化は、画面をきれいにすることではありません。
裏側の責任分界をどう設計するかでもあります。
この点は、仮想通貨やステーブルコインにもつながります。
ステーブルコインも、利用者から見れば「1ドルに連動するトークン」です。
しかし、実際には裏側に準備資産があります。
発行体があります。
償還ルールがあります。
監査や規制があります。
ブロックチェーン上の台帳と、現実の銀行口座や国債保有が接続しています。
トークンだけを見ても、全体は分かりません。
フィンテックでも、ステーブルコインでも、トークン化預金でも、同じ問いが出てきます。
表面のアプリやトークンではなく、裏側の金融機能を見る必要がある。
誰が残高を管理しているのか。
誰が顧客に対して債務を負っているのか。
誰が本人確認をしているのか。
誰が不正取引を止めるのか。
誰が資金を保全しているのか。
どの台帳が正なのか。
このあたりを見ないと、金融サービスの実体をつかみにくくなります。
フィンテックは、既存金融を外から壊すものとして語られることがあります。
ただ、現代の流れを見ると、そこまで単純ではありません。
既存金融の外側から新しいサービスが出てくる一方で、既存金融の機能を裏側から使っているものも多い。
銀行が直接アプリを出す場合もある。
銀行がAPIを提供する場合もある。
フィンテック企業が銀行と組む場合もある。
非金融サービスの中に金融機能が埋め込まれる場合もある。
つまり、フィンテックは「銀行 vs 新興企業」だけではありません。
金融機能が、いったん分解される。
そのうえで、別の事業者、別の画面、別の台帳、別の顧客接点の中で再統合されていく。
その再配置の過程で、便利さも生まれる。
新しい収益機会も生まれる。
同時に、責任の所在やリスクの位置も変わる。
今回、金融読本を読んだだけでは、この現代的な広がりまでは十分に見えませんでした。
本に出てくるフィンテックの説明は、どうしてもネット銀行、スマホ決済、ロボアドのような分かりやすい例に寄りやすいです。
それは入口としては良いです。
ただ、今見るべきなのは、そのさらに裏側です。
金融機能がどこに移動しているのか。
どの事業者が顧客接点を持っているのか。
どの事業者が実際の金融リスクを持っているのか。
どの台帳が残高の正本になっているのか。
どこで収益が発生しているのか。
この視点で見ると、フィンテックは単なる利便性向上ではなく、金融インフラの配置換えとして見えてきます。
そして、この配置換えは、次章で扱うCBDC、ステーブルコイン、トークン化預金にもつながっていきます。
金融のデジタル化が進むほど、問いはより具体的になります。
それは中央銀行マネーなのか。
銀行預金なのか。
民間発行のステーブルコインなのか。
誰の債務を、どの台帳で動かしているのか。
次章では、この違いを整理していきます。
4. CBDC・ステーブルコイン・トークン化預金の競合
前提として、この章で触れる"CBDC"とは、Central Bank Digital Currency の略で、日本語では中央銀行デジタル通貨と呼ばれる類のものです。要するに、中央銀行が発行するデジタルなお金です。民間銀行の預金や民間企業が発行するステーブルコインではありません。この文脈では、個人や企業が使うリテールCBDCと、金融機関同士の決済に使うホールセールCBDCに分けて考えています。
金融のデジタル化を考えるとき、少し前まではCBDCが中心テーマになりやすかったと思います。
中央銀行がデジタル通貨を発行するのか。
現金のデジタル版が出てくるのか。
それは銀行預金や民間決済とどう違うのか。
そういう問いです。
もちろん、CBDCは今でも重要なテーマです。
欧州ではデジタルユーロの議論が続いています。
中国ではデジタル人民元の実証と利用拡大が進められています。
日本でも、発行を決めたわけではないものの、将来に備えた実証実験や制度検討は続いています。
ただ、現代の文脈では、CBDCだけを見ていても足りないと感じました。
今は、中央銀行が発行するCBDCだけでなく、民間発行のステーブルコイン、銀行預金をトークン化する預金トークン、さらにホールセール領域で使われるトークン化中央銀行準備まで含めて、複数のデジタルマネーが並び始めています。
つまり、問いは「CBDCが来るかどうか」だけではありません。
中央銀行マネー、銀行預金、民間ステーブルコインのどれが、どの用途で使われるのか。
どの台帳で動くのか。
どの規制の下に置かれるのか。
誰の信用を背負っているのか。
ここが争点になっているように見えます。
この違いを見るときに、まず確認したいのは、技術よりも「誰の債務なのか」です。
中央銀行の債務なのか。
民間銀行の債務なのか。
ステーブルコイン発行体の債務なのか。
あるいは、準備資産への請求権に近いものなのか。
ここを分けないと、すべてが「デジタル通貨」や「ブロックチェーンを使ったお金」に見えてしまいます。
まず、CBDCは中央銀行が発行するデジタル中央銀行マネーです。
現金に近い性質を持たせるのか、銀行預金や電子マネーに近い使い方を想定するのかは、設計によって変わります。
ただ、信用の源泉は中央銀行です。
この点で、民間企業が発行するステーブルコインとはかなり違います。
CBDCの強みは、中央銀行マネーであることです。
信用リスクが低く、通貨制度の中核に近い位置にあります。
一方で、実装には大きな論点があります。
民間銀行の預金と競合しないのか。
決済事業者の役割を奪わないのか。
プライバシーをどう守るのか。
中央銀行が個人の決済データにどこまで関わるのか。
金融危機時に、銀行預金からCBDCへ資金逃避が起きないのか。
技術的に発行できるかどうかだけでは決まりません。
むしろ、銀行制度、民間決済、プライバシー、金融安定との調整が中心になります。
日本のように、銀行振込、クレジットカード、電子マネー、QR決済がすでに広く使われている国では、リテールCBDCの利便性は見えにくい部分があります。
日常決済だけなら、既存の手段で足りている場面も多い。
そのため、CBDCは「便利な決済アプリ」として見るより、中央銀行マネーをデジタル環境でどう維持するかという話として見た方が自然です。
次に、ステーブルコインです。
ステーブルコインは、法定通貨などに価値を連動させることを目指すトークンです。
代表的には、米ドルに連動するUSDTやUSDCがあります。
利用者から見ると、1ドル相当のデジタルトークンとして扱われます。
ただし、中央銀行が発行するお金ではありません。
発行体がいて、準備資産があり、償還ルールがあります。
ブロックチェーン上のトークンと、現実世界の銀行預金、短期国債、レポ、MMFなどが接続しています。
そのため、ステーブルコインを見るときには、トークン価格だけでなく、裏側を見る必要があります。
準備資産は何か。
本当に1対1で裏付けられているのか。
誰が監査しているのか。
償還請求は誰に対してできるのか。
ストレス時にも額面で戻るのか。
規制上、どのように扱われているのか。
ここが弱いと、表面上は1ドルでも、信用は揺らぎます。
一方で、ステーブルコインには明確な強みもあります。
24時間365日動く。
国境をまたいで移転できる。
暗号資産取引所やDeFiと接続しやすい。
スマートコントラクトで扱える。
銀行口座が使いにくい地域でも、ドル建て残高として機能する場合がある。
つまり、ステーブルコインは、既存金融の外側や境界部分で強みを持ちやすい。
特に暗号資産市場では、ステーブルコインは単なる決済手段ではありません。
取引所間の資金移動。
証拠金。
DeFiの担保。
レンディング。
流動性プール。
利回り運用。
裁定取引の中間資産。
こうした用途の中で使われています。
この意味で、ステーブルコインは「仮想通貨で買い物をする」という話よりも、金融市場の中で使われるデジタルな決済・担保資産として見た方が理解しやすいです。
三つ目が、トークン化預金です。
これは、銀行預金をトークン化する発想です。
銀行預金は、民間銀行の債務です。
預金者から見ると自分のお金のように感じますが、金融構造としては銀行に対する請求権です。
トークン化預金は、その銀行預金をデジタルトークンとして移転しやすくするものだと考えられます。
ここがステーブルコインと違います。
ステーブルコインは、発行体が準備資産を持ってトークンを発行します。
トークン化預金は、銀行の預金債務をトークンの形で表現します。
つまり、既存の銀行システムを外から置き換えるというより、銀行預金そのものを新しい台帳で扱えるようにする方向です。
この発想は、銀行側にとって自然です。
ステーブルコインが広がると、資金が銀行預金からステーブルコイン発行体へ流れる可能性があります。
銀行から見れば、預金流出や信用仲介機能の低下につながる可能性がある。
そのため、銀行としては、預金をトークン化して、オンチェーンや新しい決済基盤に対応する意味があります。
預金の信用を維持する。
KYCやAMLを維持する。
銀行のバランスシート上に残す。
そのうえで、24時間決済やプログラマブルな移転に対応する。
これがトークン化預金の方向性です。
三つを並べると、違いはかなりはっきりします。
CBDCは、中央銀行マネーのデジタル化。
ステーブルコインは、民間発行体による準備資産付きトークン。
トークン化預金は、銀行預金のトークン化。
同じ「デジタルなお金」でも、信用の源泉が違います。
中央銀行の信用。
銀行の信用。
発行体と準備資産の信用。
使われやすい領域も違います。
CBDCは、通貨制度や公的決済インフラに近い。
ステーブルコインは、グローバルな資金移動、暗号資産市場、DeFi、ドルアクセスに近い。
トークン化預金は、既存銀行システムとデジタル台帳の接続に近い。
この三つは、単純な勝ち負けで見るものではなさそうです。
CBDCがステーブルコインを完全に置き換える。
ステーブルコインが銀行預金をすべて奪う。
トークン化預金がDeFiをそのまま飲み込む。
そういう単純な展開ではなく、用途ごとに使い分けられる可能性があります。
公的な決済インフラではCBDC。
暗号資産市場や国境をまたぐ資金移動ではステーブルコイン。
規制された金融機関同士の決済や証券取引ではトークン化預金。
ホールセール領域ではトークン化された中央銀行準備。
こうした形で、複数のデジタルマネーが並存する可能性があります。
そこで問題になるのが、相互運用性です。
CBDC、ステーブルコイン、トークン化預金、既存銀行預金、証券、国債、ファンド持分。
これらが別々の台帳に存在すると、それぞれの間で移転や交換が必要になります。
どの台帳が正なのか。
どこで決済が完了するのか。
別の台帳へ移るとき、誰が信用リスクを負うのか。
法的な所有権移転はどの時点で成立するのか。
AMLや制裁対応はどこで行うのか。
デジタル化によって、送金や決済は速くなるかもしれません。
しかし、速くなったからといって、金融の論点が消えるわけではありません。
むしろ、処理が速くなるほど、制度、責任、信用、流動性の設計が前面に出てきます。
仮想通貨botterとして見ると、この領域は重要な観測対象になります。
資金がどの形のデジタルマネーに集まるかによって、市場の流動性が変わるからです。
ステーブルコイン供給量が増える。
特定チェーン上のステーブルコイン流通量が増える。
トークン化国債が担保として使われ始める。
銀行預金がトークン化され、機関投資家向けのオンチェーン決済に使われる。
CBDCや中央銀行準備のトークン化がホールセール決済に組み込まれる。
こうした変化は、すぐに個人botterの執行機会になるとは限りません。
ただ、流動性の通り道を変える可能性があります。
どの資産が担保として使われるのか。
どのチェーンに決済資産が集まるのか。
どの台帳が機関投資家に使われるのか。
どこに移動制約が残るのか。
どこに裁定の摩擦が残るのか。
このあたりは、今後の観測対象として持っておきたいです。
現時点で結論を急ぐ必要はありません。
ただ、少なくとも「仮想通貨が既存金融を置き換えるか」という問いだけでは、現代の動きは捉えにくいと感じました。
むしろ起きているのは、中央銀行マネー、銀行預金、民間ステーブルコイン、証券、国債、ファンド持分が、それぞれどのようにデジタル台帳へ接続されるかという話です。
次章では、その流れの中で、既存金融が暗号技術をどのように取り込もうとしているのかを整理していきます。
5. 既存金融は暗号技術をどう取り込もうとしているのか
ここまで調べていて感じたのは、既存金融がそのまま仮想通貨化しているわけではない、ということでした。
銀行がビットコインを決済通貨として全面採用する。
中央銀行がパブリックチェーン上で誰でも使える通貨を発行する。
証券市場がそのままDeFiに置き換わる。
そういう分かりやすい変化ではありません。
むしろ起きているのは、もう少し地味で、制度寄りの変化です。
既存金融は、暗号技術やブロックチェーンのうち、使える部分を自分たちの制度内に取り込もうとしているように見えます。
台帳を共有する。
資産をトークン化する。
決済と権利移転を近づける。
担保を移しやすくする。
取引後の事務処理を減らす。
24時間動く決済基盤に近づける。
スマートコントラクトで一部の処理を自動化する。
ただし、既存金融が重視しているものは残ります。
本人確認。
AML。
制裁対応。
法的ファイナリティ。
決済の最終性。
中央銀行マネー。
銀行預金。
国債担保。
規制された参加者。
監督可能な市場構造。
つまり、既存金融はクリプトの思想を丸ごと採用しているのではありません。
パーミッションレス。
匿名性。
自己責任。
コードだけで完結する金融。
誰でも自由に参加できる市場。
このあたりは、既存金融の中核とは相性がよくありません。
既存金融が取り込もうとしているのは、思想というより機能です。
共有台帳。
トークン化。
プログラマブルな移転。
決済と資産移転の同時処理。
中間事務の削減。
台帳間の相互運用。
この区別はかなり大事だと思いました。
たとえば、既存金融がトークン化国債に関心を持つとしても、それは「国債を暗号資産のように自由に売買したい」という話ではありません。
国債は、既存金融において安全資産であり、担保であり、流動性の中心でもあります。
その国債をトークン化できれば、決済、担保差し入れ、レポ取引、証券決済などの処理を速くできる可能性があります。
ここで見ているのは、投機対象としてのトークンではありません。
担保としての国債です。
決済インフラとしての台帳です。
取引後処理の効率化です。
トークン化ファンドも同じです。
ファンド持分をトークン化すると聞くと、新しい投資商品が増えるように見えます。
ただ、既存金融側の狙いは、単に「買える商品を増やすこと」だけではないはずです。
ファンド持分の管理。
移転。
償還。
権利確認。
投資家制限。
分配金処理。
担保利用。
こうした処理を、より扱いやすくすることに意味があります。
特に私募商品やプライベート資産のように、管理や移転が重い領域では、トークン化によって事務処理を圧縮できる可能性があります。
ただし、ここで「流動性が増える」と言い切るのは早いです。
トークン化は、所有権や権利の移転を速くする可能性があります。
しかし、買い手そのものを無限に増やすわけではありません。
適格投資家しか買えない商品なら、買い手は限定されます。
原資産が低流動性なら、危機時の流動性も限定されます。
規制上の制約が強ければ、自由な二次流通は難しくなります。
この点は、証券化と似ています。
証券化は、原資産から生まれるキャッシュフローを証券に変換する技術です。
トークン化は、権利や資産をデジタル台帳上で扱える形にする技術です。
どちらも、金融機能を変換する技術です。
ただし、変換したからといって、原資産の質が変わるわけではありません。
低流動性のものをトークン化しても、低流動性であるという性質が消えるわけではありません。
ここはかなり慎重に見る必要があると感じました。
既存金融による暗号技術の取り込みで、もう一つ大きいのはホールセール決済です。
一般利用者が使う決済アプリではなく、銀行や金融機関同士の決済です。
国際送金。
証券決済。
担保移転。
レポ取引。
外為決済。
清算機関との資金移動。
こうした領域では、取引そのものよりも、取引後の処理が重くなります。
誰が資産を持っているのか。
誰が資金を払ったのか。
証券の移転と資金の移転は同時に完了したのか。
担保はどこにあるのか。
決済は法的に完了したのか。
このあたりを台帳上で同期できれば、かなり大きな効率化につながる可能性があります。
だから、Project Agoráのような取り組みでは、トークン化された中央銀行準備とトークン化された商業銀行預金を、ホールセールのクロスボーダー決済に使う方向が検討されています。
ここでの狙いは、銀行を消すことではありません。
むしろ、既存の銀行システムを残したまま、台帳と決済を近づけることです。
中央銀行マネーを最終決済資産として使う。
商業銀行預金を顧客向けの銀行マネーとして使う。
それらをトークン化して、同じ基盤や相互運用可能な基盤で扱う。
こういう方向です。
JPM Coinや預金トークンのような取り組みも、この流れの中にあります。
銀行預金をデジタル台帳上で扱えるようにする。
機関投資家向けに24時間の資金移動を可能にする。
トークン化証券や担保資産と接続する。
ただし、参加者はKYC済みで、発行体も償還ルールも明確にする。
これは、一般的なDeFiとはかなり違います。
誰でもウォレットを接続して参加できるわけではありません。
匿名で自由に取引できるわけでもありません。
規制された参加者だけが使える、パーミッション型のデジタル金融に近い。
この方向は、仮想通貨の世界から見ると中途半端に見えるかもしれません。
でも、既存金融から見ると自然です。
金融機関は、本人確認を外せません。
マネーロンダリング対策も外せません。
制裁対応も外せません。
顧客資産の保護も必要です。
法的な所有権移転も必要です。
会計や税務の処理も必要です。
そのため、既存金融が暗号技術を取り込むときは、どうしても許可型、規制準拠型、監督可能な形になりやすい。
ここに、クリプトと既存金融の違いがあります。
クリプトは、金融機能をオープンなネットワーク上に置こうとしてきました。
既存金融は、オープンな技術の一部を、自分たちの管理可能な範囲に取り込もうとしている。
両者は似た言葉を使います。
トークン。
ブロックチェーン。
スマートコントラクト。
ステーブルコイン。
オンチェーン決済。
RWA。
しかし、実際に目指しているものは必ずしも同じではありません。
クリプト側では、誰でも参加できる市場や、既存金融の外にある資金移動が重視されやすい。
既存金融側では、規制された参加者、法的確実性、中央銀行マネー、担保効率、事務処理の圧縮が重視されやすい。
この違いを見ないと、同じ「トークン化」という言葉でも、中身を見誤ります。
たとえば、RWAという言葉があります。
暗号資産市場では、RWAは「現実資産をオンチェーンに持ち込むもの」として語られます。
国債。
不動産。
プライベートクレジット。
ファンド持分。
売掛債権。
ただ、既存金融側から見ると、それらはもともと金融市場に存在していた資産です。
新しいのは、資産そのものではありません。
その権利をどの台帳で表現し、どの範囲で移転できるようにし、どの決済資産と接続するかです。
つまり、RWAで見るべきなのは「現実資産がオンチェーンに来た」という表面的な話だけではありません。
誰が発行体なのか。
誰が保管しているのか。
償還はどう行うのか。
権利移転は法的に有効なのか。
担保として使えるのか。
二次流通は可能なのか。
危機時に買い手はいるのか。
価格参照はどうするのか。
ここまで見ないと、RWAの実体は分かりません。
既存金融による暗号技術の取り込みは、今後も進むと思います。
ただし、それは「全部がDeFiになる」という話ではなさそうです。
より現実的には、いくつかの層に分かれるはずです。
中央銀行マネーの層。
銀行預金の層。
ステーブルコインの層。
トークン化証券の層。
担保・レポ・清算の層。
一般の暗号資産市場の層。
それぞれが別々に動きながら、必要な部分だけ接続されていく。
このとき、botterとして気になるのは、どの接続部分に摩擦が残るかです。
既存金融と暗号資産市場の間。
ステーブルコインと銀行預金の間。
トークン化国債とDeFi担保の間。
パブリックチェーンと許可型台帳の間。
24時間動く市場と、営業時間のある金融機関の間。
オンチェーン残高と、現実の償還・送金・規制処理の間。
こうした境界には、情報差、時間差、流動性差、規制差が残りやすい。
すぐに取引機会になるとは限りません。
むしろ、多くは個人が直接触れない機関向けインフラとして進むはずです。
それでも、流動性の通り道が変われば、市場の歪み方も変わります。
どの資産が担保として使われるか。
どのデジタルマネーが決済資産になるか。
どの台帳が機関投資家に採用されるか。
どのステーブルコインが規制上使いやすくなるか。
どのチェーンに実需のある残高が乗るか。
このあたりは、今後も観測する価値があると思います。
既存金融は、暗号技術をそのまま受け入れているわけではありません。
制度の外にあるものを、制度の中へ取り込む。
自由な台帳を、監督可能な台帳にする。
匿名性ではなく、本人確認を前提にする。
完全な自己責任ではなく、法的責任を設計する。
投機対象としてのトークンではなく、決済、担保、権利移転の道具として使う。
この方向で進んでいるように見えます。
仮想通貨botterとして見るなら、この動きは無視できません。
なぜなら、将来の流動性は、単に暗号資産市場の中だけで完結しない可能性があるからです。
既存金融の資金、担保、決済インフラが、どの形で暗号技術と接続するのか。
その接続部分にどんな制約が残るのか。
どこに個人が観測できるデータが出てくるのか。
この視点は、今後の戦場選びにも関わってくるはずです。
次章では、この流れを踏まえて、仮想通貨botterとしてこれから何を観測すべきかを整理していきます。
6. botterとして、これから何を観測すべきか
ここまで調べてきたことは、仮想通貨botterとしての今後の見方にも関わってきそうです。
ただし、現時点で結論を出すのは早いです。
CBDCがどこまで使われるのか。
ステーブルコインが既存金融にどこまで食い込むのか。
銀行預金のトークン化が本当に普及するのか。
トークン化国債やRWAが担保市場としてどれくらい機能するのか。
パーミッション型の金融インフラに、個人botterがどこまで関われるのか。
まだ分からないことが多いです。
なので、今すぐ「この領域で稼ぐ」と決める段階ではありません。
現時点では、執行対象というより観測対象です。
ただ、観測対象としてはかなり重要だと思います。
なぜなら、botterが見ている価格差や歪みは、最終的には資金の流れ、担保の流れ、決済の制約、規制の差、台帳の違いから出てくるからです。
価格差だけを見るなら、板や約定履歴を見ればいい。
Funding Rateを見るなら、取引所のデータを取ればいい。
DEXの歪みを見るなら、プールやルートを見ればいい。
もちろん、それらは必要です。
ただ、どの戦場を選ぶかという段階では、もう少し上流を見る必要があります。
どこに資金が集まっているのか。
どの資産が担保として使われているのか。
どの決済資産が主流になっているのか。
どの市場間で資金移動が遅いのか。
どの台帳の間に摩擦が残っているのか。
どの規制によって、自由に移動できない資金があるのか。
こうした摩擦が残る場所に、価格差や裁定機会の種が出やすいはずです。
まず見たいのは、ステーブルコインです。
ステーブルコインは、仮想通貨市場の中ではすでに決済資産であり、担保であり、流動性の中継地点です。
どのステーブルコインが増えているのか。
どのチェーンに乗っているのか。
どの取引所で使われているのか。
どのDeFiプロトコルで担保になっているのか。
どの地域や用途で使われているのか。
償還や規制にどんな制約があるのか。
ここは継続して見たいです。
特に、ステーブルコインはチェーンごとに性質が変わります。
同じUSDTでも、Ethereum上のUSDT、Tron上のUSDT、Solana上のUSDTでは、手数料、利用者層、送金用途、DeFi接続、取引所接続が違います。
同じ1ドル建てのトークンでも、流動性の通り道が違う。
botterとして見るなら、この差はかなり大きいです。
次に、ステーブルコインと短期金利の関係です。
ステーブルコイン発行体は、裏付け資産として短期国債や銀行預金などを持ちます。
金利が高い環境では、その準備資産から利息収入が出ます。
つまり、ステーブルコインは暗号資産市場だけの存在ではありません。
短期国債市場、銀行預金、レポ市場、MMF、金融政策ともつながっています。
米国の短期金利が変われば、ステーブルコイン発行体の収益も変わる。
規制が変われば、持てる準備資産も変わる。
償還不安が出れば、オンチェーンの流動性にも影響する。
ステーブルコイン供給量だけではなく、その裏側の準備資産と金利環境も見たいです。
次に、トークン化国債やRWAです。
RWAは、暗号資産市場ではよく使われる言葉になりました。
ただ、見るべきなのは、単に「現実資産がオンチェーンに来た」という話ではありません。
その資産が本当に担保として使われるのか。
二次流通があるのか。
償還できるのか。
価格参照が安定しているのか。
DeFi上で借入や清算に使えるのか。
既存金融側の保管・決済・法的権利と接続しているのか。
ここを見る必要があります。
もしトークン化国債が、単なる保有商品ではなく、担保として使われ始めるなら意味が大きいです。
国債は既存金融において、安全資産であり、担保であり、流動性の中心です。
それがオンチェーンやデジタル台帳で扱われるなら、資金の置き場所や担保の流れが変わる可能性があります。
ただし、トークン化されただけでは不十分です。
担保として差し入れられるか。
清算時に売却できるか。
危機時に買い手がいるか。
法的な権利が明確か。
償還までの道筋があるか。
このあたりを見ないと、実際の市場インフラとして使えるのかは分かりません。
次に、取引所間・チェーン間の資金移動です。
botterにとって、資金移動の摩擦はかなり重要です。
価格差があっても、資金を移せなければ取れません。
資金を移せても、時間がかかればズレます。
手数料が高ければ利益が消えます。
出金制限やチェーン停止があれば、リスクが増えます。
今後、ステーブルコイン、トークン化預金、規制されたデジタルマネーが増えると、資金移動の経路はさらに複雑になる可能性があります。
パブリックチェーン上で動く資金。
取引所内部で動く資金。
銀行送金で動く資金。
機関投資家向けの許可型台帳で動く資金。
ステーブルコインとして動く資金。
預金トークンとして動く資金。
これらが完全に一つになるとは限りません。
むしろ、別々の流動性の島ができる可能性もあります。
その島の間に、時間差、手数料差、規制差、信用差が生まれる。
そこは、botterとして観測する価値があります。
次に、パーミッション型DeFiや機関投資家向けオンチェーン市場です。
ここは個人が直接触れる領域ではないかもしれません。
KYC済みの金融機関だけが参加できる。
適格投資家だけが取引できる。
トークンの移転先が制限される。
規制された台帳上でしか動かない。
スマートコントラクトも自由ではなく、許可制で動く。
こうした市場では、従来のDeFiのようなオープンな裁定機会は出にくいかもしれません。
ただし、そこに大きな資金が入るなら、周辺市場には影響が出ます。
たとえば、機関投資家がトークン化国債を担保に使い始める。
規制されたステーブルコインが決済資産として使われる。
オンチェーンMMFやトークン化ファンドが資金の待機場所になる。
許可型市場とパブリック市場の間で価格参照が生まれる。
このような変化が起きれば、直接触れなくても観測する意味があります。
次に、金融政策との接続です。
これまで仮想通貨市場を見るとき、金融政策は主にリスクオン・リスクオフやドル流動性の文脈で見ていました。
利上げ。
利下げ。
米国債利回り。
ドル指数。
株式市場。
BTC。
そうした見方は今後も必要です。
ただ、ステーブルコインやトークン化国債が重要になるほど、金融政策との接続はもう少し具体的になります。
短期金利がステーブルコイン発行体の収益に影響する。
国債利回りがトークン化国債の魅力を変える。
DeFiのステーブルコイン利回りと短期国債利回りが比較される。
リスク資産から待機資金へ移るとき、どのデジタルマネーに資金が滞留するかが変わる。
金融政策は、単にBTC価格に効くマクロ材料ではなく、ステーブルコインやRWAの収益構造にも関わります。
この見方は、今後持っておきたいです。
次に、規制です。
規制は、botterにとって扱いにくいテーマです。
コードで取れるデータではありません。
即時に数字に変換しにくい。
国や地域によって違う。
解釈も変わる。
ただ、資金移動の制約を作るのは規制です。
どのステーブルコインが使えるのか。
どの取引所で扱えるのか。
どの発行体が認可されるのか。
どの国で償還できるのか。
どの投資家がトークン化証券を買えるのか。
どの資産が担保として認められるのか。
こうした条件は、流動性の配置に影響します。
規制を細かく追いすぎるときりがありません。
ただ、主要な分岐点だけは見ておきたいです。
米国のステーブルコイン規制。
EUのMiCA。
日本の電子決済手段としてのステーブルコイン。
トークン化証券の制度。
CBDCやトークン化預金に関する中央銀行・金融当局の方針。
このあたりは、戦場選びの前提条件になります。
ここまで整理すると、今後の観測対象は大きく分けていくつかあります。
ステーブルコインの供給量とチェーン別流通。
ステーブルコインの準備資産と短期金利。
トークン化国債やRWAの担保利用。
取引所間・チェーン間の資金移動摩擦。
パーミッション型DeFiや機関投資家向けオンチェーン市場。
金融政策とデジタルマネーの接続。
主要国の規制。
これらは、すぐにbotの発注ロジックに入るものではありません。
むしろ、戦場を選ぶための上位レイヤーです。
どこに流動性が生まれているのか。
どこに摩擦が残っているのか。
どこは個人が触れない領域なのか。
どこは情報だけ観測すればよいのか。
どこは実装して監視する価値があるのか。
この切り分けをするための材料です。
自分は今、まだ結論を出す段階ではないと思っています。
既存金融と暗号技術の合流は進んでいる。
ただし、それがそのまま個人botterの収益機会になるとは限らない。
むしろ、機関投資家向け、規制市場向け、ホールセール決済向けに閉じた形で進む可能性も高い。
それでも、無視するには大きすぎる変化です。
仮想通貨市場の流動性が、ステーブルコイン、RWA、トークン化預金、規制されたデジタルマネーと接続していくなら、価格差の出方も変わるはずです。
今後のbotterとしての方向性は、単に「どの銘柄を取引するか」ではなくなっていくかもしれません。
どの市場構造を観測するか。
どの資金移動の摩擦を見るか。
どの担保の流れを見るか。
どの台帳間のズレを見るか。
どの規制差が残る場所を見るか。
その選択が、戦場選びそのものになる。
今回の読書と調査で、その視点はかなり強まりました。
次章では、ここまでのまとめとして、金融がデジタル化しても消えない問いについて整理します。
7. 金融がデジタル化しても、消えない問い
ここまで、金融読本を入口にして、フィンテック、CBDC、ステーブルコイン、トークン化預金、既存金融による暗号技術の取り込みについて整理してきました。
読み始めたときは、それぞれ別々の話として見ていました。
金融サービスがIT化する。
仮想通貨やブロックチェーンが登場する。
CBDCが議論される。
ステーブルコインが使われる。
既存金融がトークン化を試す。
ただ、調べていくうちに、これらはかなり深いところでつながっているように見えてきました。
金融のデジタル化とは、単にスマホで金融サービスが使えるようになることではありません。
ブロックチェーンを使えば既存金融が丸ごと置き換わる、という話でもありません。
もっと根本的には、金融の台帳、決済、担保、権利移転、流動性、規制責任をどう再配置するかという話です。
誰の債務を、どの台帳で動かすのか。
どの資産を裏付けにするのか。
どこで決済が完了するのか。
どの担保を、どの市場で使えるのか。
誰が本人確認をするのか。
誰が規制責任を負うのか。
危機時にも流動性は残るのか。
技術が変わっても、こうした問いは消えません。
むしろ、処理が速くなり、資産が細かく分割され、台帳が増え、国境をまたぎやすくなるほど、これらの問いは前に出てきます。
CBDCは中央銀行マネーです。
ステーブルコインは発行体と準備資産に依存します。
トークン化預金は銀行預金の延長です。
トークン化国債は、既存金融の中核資産である国債をデジタル台帳に乗せようとするものです。
どれも「デジタルなお金」や「トークン」としてまとめることはできます。
しかし、それだけでは足りません。
それは誰の信用なのか。
誰に対する請求権なのか。
償還できるのか。
担保として使えるのか。
規制上、誰が責任を持つのか。
既存金融のどの層と接続しているのか。
ここを見ないと、中身を見誤ります。
トークン化についても同じです。
トークン化すれば、移転は速くなるかもしれません。
事務処理は軽くなるかもしれません。
小口化もしやすくなるかもしれません。
ただ、それだけで原資産の質が変わるわけではありません。
低流動性の資産は、トークン化しても低流動性のままです。
買い手が限られる商品は、台帳を変えても買い手が限られます。
権利関係が曖昧な資産は、トークンにしても曖昧さが残ります。
危機時に売れない資産は、平時の画面上では流動的に見えても、いざというときに詰まる可能性があります。
これは、証券化を考えるときにも出てきた論点です。
金融技術は、資産の見せ方や移転方法を変えます。
しかし、原資産の質、キャッシュフロー、買い手の存在、法的権利、危機時の流動性まで自動的に改善するわけではありません。
だから、金融がデジタル化しても、見るべき問いはあまり変わらないのだと思います。
それは誰の債務なのか。
裏付け資産は何か。
キャッシュフローはどこから出ているのか。
誰が利回りを払っているのか。
リスクはどこに移っているのか。
流動性は本物なのか。
決済はどこで完了するのか。
法的な権利移転は成立しているのか。
危機時にも償還できるのか。
この問いは、仮想通貨市場だけに限られません。
株式市場でも、債券市場でも、為替市場でも、デリバティブ市場でも、DeFiでも、トークン化された金融市場でも、本質的には同じです。
どこに資金が集まり、どこで詰まり、誰がリスクを取り、誰が手数料を取り、どの仕組みが流動性を支えているのか。
ここを見る必要があります。
今回の記事では、仮想通貨や暗号技術を中心に扱いました。
自分自身、今すぐ仮想通貨市場を捨てるつもりはありません。
むしろ、ステーブルコイン、DeFi、RWA、トークン化資産、既存金融との接続は、今後も重要な観測対象になると思っています。
ただ、今回の調査を通じて、視野を仮想通貨市場だけに閉じすぎるのも違うと感じました。
仮想通貨市場は、独立した閉じた市場ではなくなりつつあります。
ステーブルコインは短期国債や銀行預金と接続しています。
RWAは既存金融の原資産や法制度と接続しています。
トークン化国債は担保市場と接続します。
トークン化預金は銀行制度と接続します。
CBDCやトークン化中央銀行準備は、中央銀行マネーやホールセール決済と接続します。
そう考えると、今後見るべきものは「仮想通貨だけ」ではありません。
むしろ、既存金融と暗号技術の境界。
オンチェーンとオフチェーンの境界。
パブリック市場と許可型市場の境界。
個人が触れる市場と機関投資家しか触れない市場の境界。
流動性があるように見える市場と、本当に流動性がある市場の境界。
こうした境界に注目した方がよさそうです。
戦場選定という意味でも、これは大きいです。
これまでは、仮想通貨botterとして、主に暗号資産市場の中で戦場を探してきました。
CEX。
DEX。
Funding Rate。
板。
約定。
ステーブルコイン。
チェーン間の資金移動。
DeFiのプール。
これらは引き続き見る価値があります。
ただ、今後はもう少し広く、金融市場全体の中でどこに摩擦が残るのかを見たいと思っています。
短期金利とステーブルコイン利回りの差。
国債市場とトークン化国債の接続。
銀行預金とステーブルコインの競合。
既存金融の営業時間と24時間動くオンチェーン市場のズレ。
規制されたデジタルマネーとパーミッションレスな資産の接続。
機関投資家向けの台帳と、個人が観測できる市場の情報差。
すぐに取引できるとは限りません。
むしろ、多くは直接触れない領域かもしれません。
それでも、戦場を選ぶための上位レイヤーとして見る意味はあります。
価格差は、いきなり生まれるわけではありません。
その前に、資金の流れがあります。
担保の流れがあります。
制度の制約があります。
台帳の違いがあります。
流動性の偏りがあります。
どの市場でそれが見えるのか。
どの市場なら個人でも観測できるのか。
どの市場なら実装可能な形に落とせるのか。
どの市場は、知っておくだけで十分なのか。
この切り分けが、今後かなり大事になりそうです。
今回の読書と調査で、何か明確な結論が出たわけではありません。
CBDCが本命だとも思っていません。
ステーブルコインだけを追えばいいとも思っていません。
トークン化預金がすべてを置き換えるとも思っていません。
RWAがすぐに個人botterの収益機会になるとも思っていません。
むしろ、結論は保留です。
ただ、観測対象は広がりました。
仮想通貨市場だけを見るのではなく、既存金融がどのように暗号技術を取り込むのかを見る。
ステーブルコインを、単なる取引所内の決済資産ではなく、短期金利や準備資産と接続して見る。
RWAを、オンチェーンに来た現実資産ではなく、担保、償還、流動性の問題として見る。
トークン化預金を、銀行がステーブルコインにどう対抗するかという文脈で見る。
CBDCを、中央銀行マネーをデジタル環境にどう残すかという話として見る。
そして、仮想通貨市場の外側にも目を向ける。
金融市場全体の中で、どこに構造的な摩擦が残るのか。
どこに個人でも観測できる歪みが出るのか。
どこは機関投資家や規制市場に閉じていて、自分が触れるべきではないのか。
どこは今すぐではなく、長期的に見ておくべき変化なのか。
このあたりを、今後の戦場選定の材料にしたいです。
金融がデジタル化しても、消えない問いがある。
誰が払っているのか。
誰の債務なのか。
何が裏付けなのか。
どこにリスクが移っているのか。
流動性は本物なのか。
どの台帳が正なのか。
どこで決済が完了するのか。
この問いを持ったまま、仮想通貨市場だけでなく、より広い金融市場の変化を観測していきたいと思います。
今すぐ答えを出す必要はありません。
ただ、どの市場で戦うのか。
どの市場は見るだけにするのか。
どの市場はまだ遠いのか。
どの市場には自分でも触れる摩擦が残っているのか。
その判断をするための地図は、少し広げておきたい。
今回の金融読本の読書は、そのきっかけになりました。
それでは、また。