こんにちは、よだかです。
「金融マーケット予測ハンドブック」の5章から8章までを読みました。
今回は、米国、ユーロ圏、英国、オセアニアの金融市場についての章でした。
クリプト市場から見るとかなり遠い内容ではありますが、各国の金融市場を読むうえで、制度・産業構造・通貨・中央銀行・対外依存を分けて見る必要があることを確認できました。
直接的な売買シグナルというより、各国市場を見るための補助線を作る読書だったと思います。
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🛠️開発記録#554(2026/6/15)「金融マーケット予測ハンドブック(4章)」をよんで考えた観測対象の選び方について
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1. 今回は、クリプトから遠い金融市場を読んだ
今回は「金融マーケット予測ハンドブック」の5章から8章までを読みました。
扱われていたのは、米国、ユーロ圏、英国、オセアニアの金融市場です。
いずれも、クリプト市場を直接分析するための章ではありません。BTCのオンチェーンデータ、取引所の板、ステーブルコインの流動性、デリバティブの資金調達率といった、普段クリプト市場を見るときに使う情報とは距離があります。
その意味では、今回読んだ内容はかなり上位レイヤーの話です。
ただし、金融市場を予測するうえでは、このような遠い情報を無視してよいわけではありません。むしろ重要なのは、遠い情報を近い情報として誤認しないことです。
米国の短期金融市場。
ユーロ圏の単一通貨制度。
英国の中央銀行と国債市場。
オセアニアの一次産品依存と対外需要。
これらは、クリプト市場の短期売買シグナルとしてそのまま使えるものではありません。
しかし、各国の金融市場がどのような制度の上に成り立っているのか、どの産業や対外需要に強く依存しているのか、どの中央銀行がどの金利を操作しているのかを確認することは、金融市場全体の見取り図を作るうえで重要です。
たとえば、同じ「政策金利」と呼ばれるものでも、米国のFF金利、日本の無担保コール翌日物、英国のBank Rate、ユーロ圏の預金ファシリティ金利では、制度上の位置づけが異なります。
同じ「国債市場」でも、米国債、ドイツ国債、英国ギルト、イタリア国債では、市場の厚み、政治リスク、中央銀行との関係、通貨圏内での意味が異なります。
同じ「外需依存」と言っても、ドイツの製造業輸出、オーストラリアの資源輸出、ニュージーランドの乳製品・観光依存では、見るべき相手国や価格指標が変わります。
今回の読書で確認したかったのは、こうした違いです。
金融市場を読むときには、指標だけを並べても意味がありません。その指標が、どの国の、どの制度の、どの産業構造の中で、何を代表しているのかを確認する必要があります。
今回の5章から8章は、そのための土台作りとして読むことができました。
正直、クリプト市場からは遠い内容です。
しかし、遠いからこそ、距離感を持って整理する必要があります。
今回の読書は、直接的な売買判断を作るというより、各国金融市場を見るための補助線を増やす作業だったと思います。
2. 米国市場は、既存金融とクリプトの接続点として見る
米国市場については、金融政策、短期金融市場、債券市場、証券市場を分けて見る必要があります。
特に重要なのは、FRB、FOMC、FF金利、公定歩合、短期金融市場、GSE、MMFといった要素です。
まず、FRBとFOMCは同じものではありません。
FRBは、厳密にはワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会を指します。一方、FOMCは金融政策を決定する委員会です。FOMCにはFRB理事と地区連銀総裁が参加し、政策金利の誘導目標や公開市場操作の方針を決めます。
市場で「FRBが利上げした」と言われる場合、多くはFOMCがFF金利の誘導目標レンジを変更した、という意味で使われています。
FF金利とは、フェデラル・ファンド市場で成立する短期金利です。
フェデラル・ファンド市場とは、銀行などがFRBに持つ準備預金を、主に翌日物で貸し借りする市場です。そこで成立する金利がFF金利です。
ただし、現在の米国金融政策では、FF金利だけを見ていればよいわけではありません。
銀行はFRBに準備預金を置くことで、準備預金への付利を受け取ることができます。一方で、GSEやMMFのような銀行以外の大口資金保有主体は、銀行と同じ形では準備預金への付利を受け取れません。
そのため、現代の短期金利誘導では、IORB、ON RRP、FF金利、レポ市場などをまとめて見る必要があります。
ここで出てくるGSEとは、政府支援機関のことです。代表的にはFannie Mae、Freddie Mac、Federal Home Loan Banksなどがあります。GSEはもともと住宅金融を支えるために作られた制度的プレイヤーですが、現在では短期金融市場でも重要な資金供給主体になっています。
MMFは、Money Market Fundの略です。こちらは政府が作った機関ではなく、民間が作った短期資金運用商品です。銀行預金より高い利回りを求める資金の受け皿として発展し、現在では短期金融市場における大きな資金プールになっています。
つまり、現在の米国短期金融市場は、単純な銀行間市場ではありません。
銀行、GSE、MMF、レポ市場、FRBの各種ファシリティが重なった市場です。
この点を踏まえると、米国金融市場を見るときには、政策金利だけでなく、その金利がどの市場参加者を通じて形成されているのかを見る必要があります。
また、クリプト市場との接続を考える場合も、米国市場は重要です。
BTC ETFやETH ETFは、クリプト資産を既存金融の証券市場に接続する入口になりました。これはBTCやETHそのものが既存金融商品と同じ性質を持つようになったという意味ではありません。
むしろ、既存金融の器であるETFを通じて、クリプト資産が証券口座、カストディアン、マーケットメーカー、規制当局、機関投資家のポートフォリオに接続されたということです。
したがって、クリプトを見る場合でも、米国市場は無視できません。
ただし、ここで注意したいのは、米国市場のすべてがクリプト市場に近いわけではないということです。
FF金利、GSE、MMF、レポ市場、米国債市場は、クリプト市場の短期価格を直接説明するものではありません。それらは、ドル流動性やリスク資産全体の環境を通じて、間接的に影響する上位レイヤーです。
今回の読書では、米国市場を「クリプトと直接つながる市場」として見るよりも、既存金融の中核として整理しました。
そのうえで、BTC ETFのようにクリプトが既存金融へ接続された部分だけを、接続点として確認する程度でよいと感じました。
米国市場は、現在の金融市場の中心です。
しかし、中心だからといって、すべての指標がクリプト市場に直接効くわけではありません。
重要なのは、近いものと遠いものを分けることです。
米国の短期金融市場は、ドル流動性の土台です。
米国債市場は、世界の金利体系の土台です。
ETF市場は、クリプトと既存金融をつなぐ入口です。
それぞれの距離感を分けて扱うことが、今回の米国市場の章から得た一番の整理でした。
3. ユーロ圏は、単一通貨と複数国家のズレを見る
ユーロ圏を見るときには、まずEUとユーロ圏を分ける必要があります。
EUは、欧州連合という政治・経済の共同体です。加盟国は共通市場やEU法、欧州委員会、欧州議会などの枠組みに参加します。
一方で、ユーロ圏は、EU加盟国のうち共通通貨ユーロを採用している国々の集合です。
つまり、EUに加盟していることと、ユーロを使っていることは同じではありません。
EU加盟国の中には、ユーロを採用していない国もあります。たとえば、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、スウェーデン、デンマークなどはEU加盟国ですが、自国通貨を維持しています。
ここを混同すると、ユーロ圏の金融市場を見るときに読み違えます。
ECBが金融政策を行う対象は、EU全体ではなくユーロ圏です。ECBの政策金利、ユーロ圏CPI、€STR、Euribor、ユーロ圏PMIなどを見るときには、EU全体ではなく、ユーロを共有している通貨圏として見る必要があります。
今回の読書では、ユーロ圏を見るうえで、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの4カ国が重要だという点を確認しました。
この4カ国は、現在のEUにおける経済規模上位4カ国です。ただし、4カ国だけでEU全体のGDPの75%を占めるわけではありません。
現在のデータで見ると、4カ国のシェアはEU全体ではおよそ6割です。一方で、ユーロ圏GDPに対する比率で見ると、およそ7割強になります。
したがって、「主要4カ国で75%程度」という理解は、EU全体ではなく、ユーロ圏に対する比率として読む方が正確です。
この違いは重要です。
EU全体を見るなら、ポーランド、オランダ、スウェーデンなども無視できません。しかし、ユーロ圏の金融政策やユーロ金利を読むなら、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの比重はかなり大きくなります。
また、この4カ国は、単に経済規模が大きいだけではありません。それぞれ経済構造が異なります。
ドイツは、製造業の中核です。自動車、機械、化学、産業設備などに強く、外需や中国需要、エネルギー価格の影響を受けやすい国です。
フランスは、航空宇宙、防衛、原子力、農業、ラグジュアリー、観光などに強みがあります。ドイツのような製造業輸出一本ではなく、国家戦略産業とブランド・文化資本を併せ持つ国として見る方が近いです。
イタリアは、中小企業の産業集積や高品質なニッチ製造に強みがあります。機械、ファッション、食品、医薬品、自動車部品、家具など、細かい製品群で競争力を持っています。一方で、財政や国債スプレッド、銀行システムの不安とも結びつきやすい国です。
スペインは、観光、サービス、農食品、自動車、再生可能エネルギー、銀行などが重要です。主要4カ国の中では、観光・サービス・内需成長の影響が見えやすい国だと整理できます。
つまり、ユーロ圏を「ひとつの経済」として見るだけでは不十分です。
通貨はひとつです。
金融政策もECBが一元的に行います。
しかし、経済実態は国ごとに違います。
ドイツの製造業が弱いのか。
フランスの財政や政治が不安定なのか。
イタリアの国債スプレッドが拡大しているのか。
スペインの観光や雇用が強いのか。
同じユーロ圏でも、どの国のどの経路が動いているのかによって、意味は変わります。
ユーロ圏の難しさは、ここにあります。
単一通貨でありながら、複数国家の経済実態を抱えていること。
共通の金融政策でありながら、各国への効き方が同じではないこと。
国債市場も、同じユーロ建てでありながら、ドイツ国債とイタリア国債では市場が織り込むリスクが違うこと。
今回の読書では、この構造を改めて確認できました。
ユーロ圏を見るときには、ECBだけを見るのでは足りません。
主要国の産業構造、財政、国債スプレッド、政治リスク、外需依存を合わせて見る必要があります。
特にドイツ、フランス、イタリア、スペインは、ユーロ圏全体を見るうえで最初に確認するべき国だと思います。
ユーロ圏は、ひとつの通貨圏です。
しかし、その内側には複数の経済構造があります。
このズレを見落とさないことが、ユーロ圏の金融市場を読むうえで重要だと感じました。
4. 英国市場は、中央銀行だけでなく国家構造まで見る
英国市場を見るときには、BOEだけを見ても不十分です。
BOEは、Bank of Englandの略で、日本語ではイングランド銀行と呼ばれます。英国の中央銀行です。
BOEは、金融政策を通じてインフレ率を目標に近づける役割を持っています。政策金利として中心になるのは、Bank Rateです。米国でいえばFF金利、日本でいえば無担保コール翌日物に近い位置づけの短期政策金利です。
ただし、英国市場を見る場合、Bank Rateの上げ下げだけを見ても十分ではありません。
英国では、金融政策が住宅ローン、家計消費、ポンド、ギルト市場、年金基金、財政信認に波及しやすいからです。
まず、英国では住宅ローン経由の金融政策伝播が重要です。
Bank Rateが上がると、住宅ローン金利や借り換えコストに影響します。すると家計の可処分所得や消費にも影響します。米国のように長期固定住宅ローンが支配的な市場とは異なり、英国では固定期間や借り換えのタイミングによって、政策金利の影響が家計に伝わる速度や強さが変わります。
そのため、英国市場を見るときには、CPIや賃金だけでなく、住宅ローン金利、住宅価格、家賃、家計消費も確認する必要があります。
次に、ギルト市場も重要です。
ギルトとは英国国債のことです。英国の国債市場は、単なる財政資金調達の場ではありません。年金基金、保険会社、金融機関、海外投資家、ポンドの信認と深くつながっています。
特に印象的なのは、2022年のギルト市場の混乱です。
当時、英国の財政政策への不信や長期金利の急騰をきっかけに、年金基金のLDI戦略が強い圧力を受けました。金利上昇によって担保や追証の問題が発生し、年金基金がギルトを売らざるを得なくなることで、さらに金利が上がるという悪循環が生じました。
このときBOEは、インフレ抑制のために金融引き締めを進める必要がある一方で、金融安定のためにギルト市場を支える必要もありました。
ここに英国市場の難しさがあります。
金融政策としては引き締めたい。
しかし金融安定のためには、市場に流動性を供給しなければならない。
このように、BOEは単に政策金利を決める中央銀行ではありません。英国の金融市場においては、ギルト市場や年金基金、ポンド、財政信認が不安定化したときに、それを処理する役割も担っています。
さらに、英国市場を見るうえでは、英国という国の成り立ちも無視できません。
日本語では「イギリス」と一括りにされることが多いですが、正式にはUnited Kingdom、つまり連合王国です。現在の英国は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドから成り立っています。
これは、単一の民族国家が自然に成立したものではありません。
ウェールズは、イングランドに征服され、法制度上も吸収されました。
スコットランドは、独立王国としての歴史を持ちながら、王朝統合や財政・貿易・安全保障上の理由を背景にイングランドと合同しました。
アイルランドは、植民地支配、宗教対立、反乱、独立運動を経て、大部分が英国から離脱しました。
現在の北アイルランドは、アイルランド独立時に英国側へ残った地域です。
このように、英国は歴史的に結合された連合国家です。
そのため、政策判断には経済合理性だけでなく、主権意識、地域アイデンティティ、宗教、歴史的記憶、欧州との距離感が影響します。
Brexitも、その延長線上にあります。
Brexitとは、Britainとexitを組み合わせた言葉で、実際には英国、つまりUKのEU離脱を指します。
英国はEUに加盟していましたが、最初から欧州統合に全面的に同化していたわけではありません。単一市場へのアクセスは欲しい。一方で、通貨、移民、司法、規制、議会主権については、できるだけ自国で決めたい。この距離感が長く残っていました。
Brexitは、単なる経済判断ではありません。
EUとの市場接続を維持したいロンドン金融。
欧州政治統合に距離を置きたいイングランドの主権意識。
EU残留を望む傾向が強かったスコットランド。
アイルランド共和国との国境問題を抱える北アイルランド。
こうした要素が重なった結果です。
つまり、英国市場を見るときには、BOE、Bank Rate、ギルト、住宅ローン、ポンドだけでなく、英国という国家の成り立ちも背景として見ておく必要があります。
これは、他国の中央銀行を見るときにも通じる考え方です。
同じ政策金利でも、その背後にある国家構造が違えば、市場への伝わり方も変わります。
英国の場合、BOEの政策は、住宅市場、ギルト市場、年金基金、ポンド、財政信認、そして連合国家としての政治不安と接続しています。
その意味で、英国市場は単なる「米国市場の小型版」ではありません。
英国市場は、中央銀行政策と金融安定、住宅、国債市場、国家構造が近い距離で結びついている市場として見る必要があります。
5. オセアニアは、一次産品と中国需要の接続を見る
オセアニア市場を見るときには、オーストラリアとニュージーランドを分けて考える必要があります。
どちらも小さな開放経済としての性格を持っていますが、経済構造や輸出品目、金融市場の厚みは同じではありません。
まず、オーストラリアは資源輸出の存在感が大きい国です。
鉄鉱石、石炭、LNGなどの資源輸出が重要であり、中国向け輸出の影響も大きくなります。そのため、オーストラリアを見るときには、国内指標だけでなく、中国の景気、鉄鋼需要、不動産投資、インフラ投資、資源価格を合わせて見る必要があります。
ただし、オーストラリアを単に「資源国」とだけ見るのは粗いと思います。
国内経済では、サービス、住宅、家計債務、雇用、消費も重要です。資源価格や中国需要は対外部門に強く効きますが、RBAの金融政策や豪ドル、国内景気を見る場合には、住宅市場や家計の金利負担も外せません。
つまり、オーストラリアは、
対外的には資源と中国需要。
国内的には住宅、家計債務、雇用、消費。
金融市場としては金利、通貨、デリバティブ。
このように分けて見る必要があります。
今回気になったのは、オーストラリアのデリバティブ市場です。
本書では、オーストラリアでは金融派生商品市場が発達しているという記述がありました。最初は、一次産品への依存が大きいため、価格変動リスクを回避するために先物やオプションの需要が高まり、デリバティブ市場が発達したのではないかと考えました。
この見方は、部分的には正しいと思います。
一次産品やエネルギー、農産物は価格変動が大きく、生産者、輸出企業、需要家、商社、金融機関にはヘッジ需要があります。そのため、商品系デリバティブが発達する理由はあります。
しかし、オーストラリアのデリバティブ市場を一次産品だけで説明するのは不十分です。
実際には、金利デリバティブ、株価指数デリバティブ、穀物、エネルギー、環境商品など、扱われる商品は幅広いです。特に金利デリバティブは、銀行、機関投資家、債券市場、住宅ローン、RBAの金融政策と接続しています。
したがって、オーストラリアのデリバティブ市場が発達しているという場合、それは世界最大級という意味ではなく、地域金融市場として必要な商品ライン、流動性、取引インフラが整っているという意味で理解するのがよいと思います。
一次産品依存は、商品系デリバティブのヘッジ需要を生みます。
一方で、市場全体の中核には、金利リスク管理、機関投資家、銀行、債券市場、海外金融機関との接続があります。
この点は、かなり重要です。
「資源国だから商品先物が発達した」とだけ見ると、金融市場としてのオーストラリアを狭く見すぎることになります。
次に、ニュージーランドです。
ニュージーランドは、オーストラリアよりもさらに小さな開放経済として見る必要があります。輸出では、乳製品、肉、木材、果物、観光、教育などが重要になります。
特に乳製品は、ニュージーランドを見るうえで外せません。乳製品価格の変動は、輸出収入、企業収益、農家所得、通貨、景気認識に影響します。そのため、ニュージーランドでは乳製品デリバティブのように、実体経済の価格変動リスクに対応する市場も存在します。
ただし、ニュージーランドの輸出依存度を評価するときには注意が必要です。
財・サービス輸出がGDPに占める比率は、直近ではおおむね25%前後と見た方がよく、「30%くらい」という表現はやや高めです。また、小規模開放経済として見ると、輸出比率が極端に巨大というほどではありません。
重要なのは、輸出比率の大きさそのものよりも、輸出内容の偏りです。
ニュージーランドは、乳製品、農産品、観光、教育など、特定の外需に影響されやすい構造を持っています。したがって、GDPに占める輸出比率だけを見て「輸出依存が巨大」と判断するよりも、どの輸出品目が、どの相手国需要に接続しているのかを見る必要があります。
この点では、中国の影響も大きくなります。
オーストラリアにとって中国は、資源需要の大きな相手です。
ニュージーランドにとって中国は、乳製品、農産品、観光、教育などの需要先として重要です。
そのため、オセアニア市場を見るときには、国内指標だけでなく、中国の景気や需要動向をセットで見る必要があります。
これは、アルゴトレーダーとしても使いやすい視点だと思います。
通貨を見るにしても、金利を見るにしても、株価指数を見るにしても、その国が何に依存しているのかを知らないと、どの外部指標を見るべきかが決まりません。
豪ドルを見るなら、RBAだけでなく、中国景気、資源価格、鉄鉱石、住宅、家計債務を確認する必要があります。
ニュージーランドドルを見るなら、RBNZだけでなく、乳製品価格、観光、農産品、中国需要、住宅を確認する必要があります。
同じオセアニアでも、見るべき接続先は違います。
今回の読書では、オセアニア市場を「遠い市場」として見るだけでなく、一次産品、対外需要、金融派生商品、通貨、中央銀行をつなげて見る必要があると確認できました。
クリプト市場からはかなり遠い内容です。
しかし、各国市場を読むうえでは、こうした距離のある構造理解も重要です。
オセアニアを見るときには、国内金融政策だけではなく、一次産品と中国需要への接続を確認する。
そして、デリバティブ市場については、商品ヘッジだけでなく、金利リスク管理や金融市場の厚みも含めて見る。
この整理が、今回の章から得た大きな収穫でした。
6. 金融予測では、指標の意味を国ごとに読み替える
今回の読書で強く感じたのは、同じように見える金融指標でも、国によって意味が変わるということです。
政策金利。
国債利回り。
通貨。
インフレ率。
輸出。
住宅市場。
デリバティブ市場。
これらは、どの国でも出てくる指標です。
しかし、その指標が何を代表しているのかは、国ごとの制度、産業構造、金融市場、歴史的背景によって変わります。
たとえば政策金利です。
米国では、FOMCがFF金利の誘導目標レンジを決めます。ただし、現在の短期金融市場を見る場合には、FF金利だけでなく、IORB、ON RRP、レポ市場、GSE、MMFなども合わせて見る必要があります。
英国では、BOEのBank Rateが中心になります。ただし、Bank Rateは住宅ローン、家計消費、ポンド、ギルト市場、年金基金、財政信認に強く接続しています。
ユーロ圏では、ECBが共通の金融政策を行います。しかし、単一通貨の内側には、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなど、異なる経済構造を持つ国が存在します。したがって、ユーロ圏の政策金利を読む場合には、各国への波及の違いも意識する必要があります。
オーストラリアやニュージーランドでは、政策金利だけでなく、一次産品、対外需要、住宅、通貨、輸出構造を合わせて見る必要があります。特に中国需要との接続は重要です。
同じ「金利」でも、見ている市場が違います。
同じ「国債」でも、米国債、ドイツ国債、英国ギルト、イタリア国債では意味が違います。
米国債は、世界のリスクフリーレートの中心に近い存在です。
ドイツ国債は、ユーロ圏内の安全資産として使われます。
英国ギルトは、ポンド、財政信認、年金基金、金融安定と強く結びつきます。
イタリア国債は、ユーロ圏内の財政リスクやスプレッド拡大を見るうえで重要になります。
単に「10年金利が上がった」と言っても、その意味は国ごとに違います。
インフレ率も同じです。
米国のインフレは、FRBの政策、米国債利回り、ドル、株式市場、世界のリスク資産に広く影響します。
英国のインフレは、BOEの政策だけでなく、ポンド安、輸入物価、住宅ローン、賃金、ギルト市場にも接続します。
ユーロ圏のインフレは、ECBの政策判断に関わりますが、国ごとの差も大きくなります。ドイツとスペイン、フランスとイタリアでは、エネルギー、賃金、財政、産業構造が異なります。
オーストラリアやニュージーランドでは、国内インフレだけでなく、資源価格、農産品価格、為替、外需の影響も強くなります。
つまり、指標は単体では完結しません。
その指標が、どの市場参加者の行動に影響し、どの資産価格に波及し、どの制度の中で意味を持つのかを確認する必要があります。
これは、金融予測における基本的な姿勢だと思います。
指標をたくさん集めること自体は難しくありません。
しかし、指標の数を増やしても、それぞれの意味を取り違えると、判断はむしろ雑になります。
重要なのは、指標を国ごとの構造に戻して読むことです。
米国を見るなら、ドル、FRB、米国債、短期金融市場、証券市場、ETF、MMF、GSEを見る。
ユーロ圏を見るなら、ECBだけでなく、主要国の産業構造、国債スプレッド、財政、政治リスクを見る。
英国を見るなら、BOE、Bank Rate、ギルト、住宅ローン、ポンド、国家構造を見る。
オセアニアを見るなら、RBAやRBNZだけでなく、一次産品、中国需要、住宅、輸出品目を見る。
このように、国ごとに観測対象の意味を読み替える必要があります。
今回読んだ範囲は、クリプト市場から見るとかなり遠い内容でした。
しかし、金融市場全体を見るうえでは、かなり重要な土台でもありました。
なぜなら、クリプト市場も完全に独立して存在しているわけではないからです。
BTC ETFのように、既存金融と接続される部分もあります。
ドル流動性や米国金利のように、上位レイヤーから影響を受ける部分もあります。
一方で、オンチェーン流動性やステーブルコイン、取引所内の需給のように、クリプト内部で循環している部分もあります。
だからこそ、近いものと遠いものを分ける必要があります。
今回の読書では、直接的な売買シグナルを得たわけではありません。
ただし、各国の金融市場を読むときに、何を同じものとして扱い、何を国ごとに読み替えるべきかを整理できました。
これは、今後の金融予測やbot開発において、観測対象を選ぶときの土台になると思います。
7. 遠い情報を、遠いまま使えるようにする
今回の読書は、クリプト市場から見るとかなり遠い内容でした。
米国の短期金融市場。
ユーロ圏の主要国。
英国の中央銀行と国家構造。
オセアニアの一次産品と対外需要。
どれも、BTCの短期価格やオンチェーンデータ、CEX/DEXの執行に直接つながるものではありません。
その意味では、今回読んだ内容をそのまま売買シグナルに変換することは難しいです。
しかし、だからといって無意味だったわけではありません。
むしろ重要なのは、遠い情報を近い情報として誤認しないことです。
金融市場を見ていると、米国金利、中国景気、欧州指標、資源価格、為替、国債利回りなど、あらゆる情報が価格に関係しているように見えます。
実際、完全に無関係ではありません。
ただし、関係があることと、直接的に使えることは違います。
米国金利はクリプト市場にも影響します。
しかし、米国金利だけでBTC価格を説明できるわけではありません。
中国景気はオーストラリアやニュージーランドに影響します。
しかし、中国指標をそのままクリプトの短期売買に使えるわけではありません。
ユーロ圏の景気や英国のギルト市場も、グローバルなリスク環境には関係します。
しかし、それらはクリプト市場にとってはかなり上位レイヤーの情報です。
今回確認できたのは、この距離感です。
金融市場では、情報の近さを見誤ると、観測対象が増えすぎます。
そして、観測対象が増えすぎると、かえって判断が荒くなります。
何でも見る。
何でも関係があると思う。
何でもシグナル化しようとする。
この状態になると、情報量は増えても、判断の精度は上がりません。
必要なのは、情報を階層化することです。
クリプト内部の情報。
既存金融に接続された情報。
ドル流動性や金利のような上位レイヤーの情報。
各国の産業構造や歴史のような背景情報。
これらを同じ距離に置かないことが重要です。
今回の読書は、この階層を整理する作業でした。
米国市場については、短期金融市場と既存金融への接続点を確認しました。BTC ETFのように、クリプトが既存金融へ接続された部分もあります。ただし、米国金融市場のすべてがクリプトに近いわけではありません。
ユーロ圏については、EUとユーロ圏を分け、単一通貨の内側に複数の経済構造があることを確認しました。ドイツ、フランス、イタリア、スペインはユーロ圏を見るうえで重要ですが、それぞれの産業構造やリスクは異なります。
英国については、BOEだけでなく、ギルト、住宅ローン、ポンド、年金基金、Brexit、連合国家としての成り立ちまで見る必要があると整理しました。
オセアニアについては、一次産品、中国需要、住宅、通貨、金利デリバティブを分けて見る必要があると確認しました。特にオーストラリアやニュージーランドは、国内金融政策だけでなく、対外需要との接続が重要です。
これらはすべて、クリプトからは遠い情報です。
しかし、金融市場全体の地図を作るうえでは必要な情報です。
遠い情報は、遠いまま扱えばよい。
直接シグナルにする必要はありません。
無理にクリプトへ接続する必要もありません。
ただし、市場環境を読むための背景として持っておく価値はあります。
今回の読書で得た一番の収穫は、各国金融市場を見るための補助線が増えたことです。
同じ政策金利でも、国によって意味が違う。
同じ国債市場でも、背後にある制度やリスクが違う。
同じ輸出依存でも、接続している相手国や商品が違う。
同じ中央銀行でも、背負っている国家構造が違う。
この違いを押さえたうえで、必要な情報だけを観測対象に残す。
それが、今後の金融予測やbot開発において重要になると思います。
今回の読書は、近い武器を増やす作業ではありませんでした。
どちらかと言えば、遠くにある地形を確認する作業でした。
短期の執行にはすぐ使えない。
しかし、どの市場が何に接続していて、どの情報は背景にとどめるべきなのかを判断する土台にはなる。
その意味で、今回の読書は、金融予測の前提となる地図を一段広げる作業だったと思います。
それでは、また。