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🛠️開発記録#551(2026/8/24)DeFiチェーンの終了イベントにエッジはあるか? 仮説を作って捨てるまでの話

こんにちは、よだかです。

今回は、久しぶりに「ニュースを見ていて思いついた仮説」をそのまま掘ってみました。

結論から書くと、今回見つけた対象については、当初期待していたエッジ候補にはなりませんでした。

ただし、調査の過程で、

「DeFiにおける強制的な資金移動をどう探すか」

という、もう少し一般化できそうな視点が得られました。

今回は、仮説を作ってから捨てるまでの記録です。


「チェーンの閉店セール」を拾えるのではないか

きっかけは、DeFi関連のニュースを眺めていたことでした。

最近は、古くなったチェーンや利用者の減ったチェーンについて、

  • 開発主体が撤退する
  • 別チェーンへ移行する
  • ブリッジのサポートを終了する
  • L1そのものを停止する

といった話をちらほら見かけます。

BounceBitがL1を恒久終了しBNB Chainへ移行
Shimmer L1/ShimmerEVM終了、8/29 bridge停止、9/30 block production停止
minimal activityのchainからLayerZero/Stargate supportを終了

そこで思ったのが、

「チェーンが閉じるとき、資産の投げ売りが発生するのではないか?」

ということでした。

例えば、あるチェーンが終了するとします。

利用者は期限までに、

  • LPを解除する
  • レンディングポジションを閉じる
  • ラップされたトークンを元に戻す
  • IBCやブリッジを使って外へ資産を出す
  • 別チェーン用のトークンへ移行する

といった作業をしなければなりません。

しかし、保有額が小さかったり、手続きが面倒だったりすれば、

「もう多少安くてもいいから売ってしまおう」

という人も出てくるはずです。

つまり、

閉店期限

退出需要の集中

流動性の低下

投げ売り

一時的な価格乖離

という構造があり得ます。

イメージとしては、文字通り「閉店セール」です。

そして、安くなった資産を買ったあとに別チェーンへの移行や償還によって本来価値へ戻せるのであれば、イベントドリブン型のアービトラージとして成立する可能性があります。

これはちょっと面白そうだなと思いました。


Secret Networkを調べてみる

今回、候補として調べたのがSecret Networkでした。

当初の情報では、Secret NetworkのSCRTについて、既存のCosmos系L1からArbitrumへ経済圏を移す計画が出ていました。

しかも単純にチェーンをコピーするわけではありません。

想定されていた移行では、native SCRTなどをスナップショットし、Arbitrum側のSCRTを受け取る一方、

  • LP内のSCRT
  • コントラクト内のSCRT
  • ラップされたSCRT
  • IBC資産

などは事前に自分でポジションを解消する必要がありました。

これはかなり条件が良さそうに見えました。

仮に移行期限が迫る中でSCRTが安く売られ、

Secret上でSCRTを安く取得

スナップショット

Arbitrum側でSCRTを受け取る

という経路が成立するなら、価格差を拾える可能性があります。

そこで、ひとまず小さな研究用リポジトリを作成しました。

最初にやったのは売買ロジックの実装ではありません。

まず、

  • 移行仕様
  • 対象となる資産
  • Secret上のDEX
  • IBCの状態
  • 外部CEXの価格
  • DEXから取得可能なデータ

などを整理しました。

この段階では、まだ実際にエッジがあるとは判断していません。


調べている途中で前提そのものが怪しくなる

ここで問題が出てきました。

資料を読み直していると、Arbitrumへの移行は確定事項ではなく、ガバナンス投票を前提にした提案だったことが分かりました。

つまり、

「9月1日に移行する」

という前提そのものを確認し直す必要があります。

そこで、ニュース記事や過去の告知ではなく、現在動いているSecret Networkのオンチェーンガバナンスを直接確認することにしました。

CODEXにSecret mainnetを直接読ませて、

  • Arbitrum移行提案
  • コミュニティによるL1継続案
  • 現在のチェーンバージョン
  • アップグレード状況

を確認します。

結果はかなり明確でした。

Arbitrum移行を提案したProposal #360は、

REJECTED

でした。(参考情報:Proposal #360のexplorerページ)

一方、Secret L1をコミュニティ主体で継続するProposal #365は可決され、実際にv1.26.0-community-continuanceへのアップグレードも完了していました。

つまり、

Arbitrumへの移行は行われない。

当然、前提にしていた9月1日のArbitrum移行用スナップショットも実施されません。

ここで最初の仮説は終了です。

その後、念のためコミュニティ継続に伴う約10.79億SCRTの追加発行についてもオンチェーンで資金移動を確認しました。潜在的な売り圧は大きいものの、確認できた主要フローは取引所への送金ではなくステーキングでした。少なくとも現時点では、新たなイベントドリブンの取引根拠として追い続けるほどの材料は確認できませんでした。

ということで、Secretに関する調査はここで終了します。


安く買えるだけではエッジにならない

今回、一番大事だったのはここだと思っています。

例えば、Secret上のSCRTが外部市場より10%安くなっていたとします。

それだけを見ると、

「10%のアービトラージがある」

ように見えます。

しかし実際には違います。

必要なのは、

安く買えること

だけではありません。

その資産を、

なぜ、いつ、どの経路で本来価値へ戻せるのか

まで必要です。

今回想定していたのは、

価格乖離

SCRT取得

スナップショット

Arbitrum側SCRT

価値収束

という経路でした。

ところが、そのスナップショット自体が存在しなくなりました。

つまり、途中の価格差がどれだけ大きくても、

収束経路がない。

そうなると、それはアービトラージではなく、

単に「小さくなった市場で安く取引されている資産」

でしかない可能性があります。

ここで深追いする理由はかなり薄くなりました。


実装前に仮説を切る

当初はShadeSwapから実際のスワップクオートを取得し、

  • 100ドル
  • 500ドル
  • 1,000ドル
  • 5,000ドル

といった取引サイズごとの実効価格を計算する予定でした。

しかし、そこまで作る前に止めました。

そもそもの収束経路がなくなった以上、Secret専用のデータ取得基盤を作り込む期待値がかなり下がったからです。

これは個人的には悪い結果ではありません。

研究では、

「作ったものが使えなかった」

より、

「作る価値がないと分かったので作らなかった」

方が安いです。

特にbot開発では、実装を始めると、

データ取得

保存

監視

バックテスト

シミュレーション

と、どんどんコストが積み上がります。

だから最近は、

仮説の成立条件を先に潰す

ことをかなり意識しています。

今回も、その段階で止めることができました。


ただし「閉店セール」という考え方自体は捨てない

Secret固有の仮説は捨てました。

ただし、今回考えたフレームワーク自体はまだ面白いと思っています。

整理すると、

イベント発生

Forced / Urgent Flow

流動性低下

価格乖離

実行可能な退出経路

価値収束

です。

重要なのは、全部揃うことです。

例えば、

「チェーンが終了する」

だけでは足りません。

資産が安くなっても、外へ出せなければ意味がありません。

逆にブリッジが使えても、十分な価格差がなければ意味がありません。

価格差があっても、スリッページで全部消えるなら意味がありません。

したがって今後は、

Forced Flow × Price Dislocation × Executable Exit × Convergence

くらいの条件で候補を探した方が良さそうです。


「強制されるフロー」は引き続き面白い

最近の研究では、こういうものにかなり興味があります。

例えば清算も同じです。

清算される人は、

「今この価格で売りたい」

から売っているわけではありません。

ルールによって強制的にポジションを閉じられます。

チェーン終了やブリッジ停止も似ています。

利用者は本来ならそのまま持っていたくても、

期限までに移動しなければならない。

つまり市場参加者が、価格以外の理由で売買・移動を迫られます。

こういう非価格最適化主体が大量に発生する場所には、botで拾える歪みが発生する余地があるのではないか。

今回のSecretでは条件が揃いませんでしたが、この考え方まで捨てる必要はなさそうです。


今回の研究はここで終了

Secretについては、最後にコミュニティ継続に伴う大量mintの配分と資金移動だけ確認して、この研究は一旦終了します。

明確な売り圧や市場イベントが確認できなければ、ケーススタディとして保存するだけにします。

今回の件を収穫として位置付けるのであれば、

ニュースから仮説を作る

成立条件を分解する

一次情報とオンチェーンデータまで確認する

重要な条件が崩れたら実装前に切る

再利用できる構造だけ持ち帰る

という流れを一回きれいに踏めたことかな、と思います。

これは今後の探索にも使えそうです。

というわけで、今回の「チェーン閉店セール作戦」は一旦ボツ。

ただし、閉店・移行・ブリッジ停止・プロトコル終了などによって発生する強制的な資金移動そのものは、引き続き調べてみます。

別の戦場なら、もう少し綺麗な形で条件が揃っているかもしれません。

次の候補を探してきます。

また何か拾えたら書きます。

それでは、また。

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