こんにちは、yodakaです。
- 仮想通貨の「ブリッジ」って何?
- 「ブリッジ」と「ハッキング」についてのニュースを時々聞くけど、危ないものなの?
- 「ブリッジ」について詳しく知りたい!
こんな悩みを解決する記事を用意しました。
仮想通貨の「ブリッジ」とは、「仮想通貨をより広い範囲で使えるようにする技術」のこと。
仮想通貨のDeFi運用において、絶対に避けては通れない用語です。ブリッジを理解することで、仮想通貨運用の防御力を高めることができます!
本記事を読むと分かること
- ブリッジは、何のために行われるのか?
- 「仮想通貨のブリッジ」の仕組み
- ブリッジの種別
- ブリッジに伴うリスクと注意点
- ブリッジの方法
- 有名なブリッジアプリ
何故、ブリッジが必要なのか?
ブリッジというのは、「異なる規格のブロックチェーン同士でのやりとりを可能にする技術」です。
通常、ブロックチェーンには「チェーン特有のやり取りの決まり・約束事」があるため、チェーンをまたいだ仮想通貨(トークン)のやり取りはできません。
例えば、ビットコインとイーサリアムは、同じチェーン上で交換することはできません。
それぞれを動かすチェーンの規格が異なるからです。
あなたが、ビットコインを持っていたとしましょう。
そして、イーサリアムチェーン上に作られたアプリを使いたくなったとします。
何とかしてビットコインをイーサリアムチェーン上で使えるようにしたい!
あなたならどうしますか?
ここで役立つのが「ブリッジ」という技術です。
ビットコインのブリッジを行うと、なんとイーサリアムチェーン上でビットコインを使うことできるようになるのです。
実際に起こり得る可能性としては、所有するビットコイン(BTC)をWBTCに変えて、Instadap liteに預け入れて複利で稼いだり、MakerDAOのOasisを使ってWBTCを担保にDAIを発行したりするケースなどが考えられます。
【参考1】 【徹底解説!】Instadapp Lite(インスタダップ ライト)で始めるDeFiステーキング【ローリスク&ミドルリターン】
また、単純にチェーン規格の異なる仮想通貨を個人でブリッジすることで、取引所を介した手続きよりも高速で手数料も少なく交換できるという利点もあります。
しかし、仮想通貨を移し替えているという理解は、正確ではありません。
知識として知っておくだけであれば、それでも充分かもしれません。
しかし、あなたが仮想通貨のDeFi運用を考えていたり、もう行っていたりする場合は、システム面での正確な理解の不足が思いがけない損を生む可能性があるのです。
ポイント
「仮想通貨のブリッジ」の目的は、主に2つ
①持っている仮想通貨を別のチェーン上で運用したい
②持っている仮想通貨の交換を個人で安く素早く行いたい
続けて、ブリッジの仕組みについて、もう少し詳しく掘り下げて説明していきます。
ブリッジの仕組み
ブリッジの手順に伴って、システムの内部で起こることは以下の通り。
- ブリッジしたいネットワークを選択
- ブリッジしたいトークン(仮想通貨)と金額を入力
- 元々のチェーンA上で、トークンをブリッジ契約システムに預け入れる
- ブリッジ契約システムは、トークンをロックする←この時点で、元々のチェーン上でトークンが使えなくなる
- 移動先チェーンB上のブリッジ契約システムに、トークンの使用を通知する
- チェーンB上で、トークンの代替使用権限トークンを発行する
- チェーンB上のブリッジ契約システムから、チェーンB上のウォレットアドレスにトークンが送られる
具体例を挙げながら、解説していきましょう。
今回は、Rainbow Bridgeでイーサリアムネットワーク上のDAIトークンをオーロラネットワーク上にブリッジします。
Rainbow BridgeにMetaMaskを接続し、Go to transfersをクリック。
ここで実行されたのが、「手順①ブリッジしたいネットワークを選択」です。
続いて、手順②「トークンの選択し、金額を入力」→継続するをクリック。
「トークンの使用許可&預け入れ」を承認。
手続き実行中、、、
イーサリアムネットワーク上にあるDAIトークンをRainbow Bridgeに預け入れて、DAIトークンをロック。(手順④)
そして、Rainbow Bridge内のAuroraネットワーク上に、同額のDAIトークンの使用許可が送られます。(手順⑤)
Auroraネットワーク上で利用できるラップドトークン(Wrapped DAI)が発行されます。
「転送(手順⑦)」が完了。
この時、MetaMaskに転送されたのは「Auroraネットワーク用にラップされたDAI」です。
2種類のブリッジ
実は、ブリッジには2種類の考え方があります。
使用するチェーンのタイプによって、分類できるのです。
ペアレントチェーン・ブリッジ
規格が大きく異なるチェーン間のブリッジを「ペアレントチェーン・ブリッジ」と呼びます。
例えば、ビットコインとイーサリアムのブリッジなどです。
記事後半で紹介する Ren Bridgeなどは、ペアレントチェーン・ブリッジを行うアプリです。
ペアレント(親)という呼び名は、サイド(チャイルド=子ども)チェーンという呼び名に対応して付けられたものと思われます。
明確に「ペアレントチェーン」というものが単体で存在するわけではなく、あくまで関係性を示すための言葉なのです。
サイドチェーン・ブリッジ
上の例で紹介した、DAIのブリッジは「サイドチェーン・ブリッジ」の一例です。
特定のペアレントチェーンに接続する目的で構築されたブロックチェーンをサイドチェーン(チャイルドチェーン)と呼びます。
サイドチェーンは、あらかじめペアレントチェーンを利用することを目的として設計されていて、その利用によって、ペアレントチェーンの機能や利用範囲を拡大させています。
例えば、Roninというチェーンは、イーサリアムのサイドチェーンです。
Roninとイーサリアム
Roninは、ブロックチェーンゲーム・Axie Infinityの開発者達によって構築されました。イーサリアムとは別のチェーンでありながらも、イーサリアムと巨大なネットワークの一部として稼働します。イーサリアムに接続することで、Axie Infinityは、イーサリアムメインネットよりも大きな規模で機能拡大することが可能になるのです。
Roninに限らず、イーサリアムメインネットには、数多くのサイドチェーンが存在し、それぞれが結びつきながら巨大な経済圏を作っています。
ブロックチェーン界隈で使われる「トークンエコノミクス」という言葉は、トークンを作るチェーンが構築する経済圏の範囲やトークンの循環などを意味します。経済圏の中でトークンが頻繁にやりとりされている(流動性が高い)ほど、そのチェーンの主要トークンの価格は高まります。
2022年7月現在、イーサリアムが時価総額2位の仮想通貨であるのは、このような理由があるのです。
「トークンエコノミクスが活性化しているかどうか」という指標は、仮想通貨の価値を長期的に判断する指標の一つになります。トークンエコノミクスが成長しそうな仮想通貨は、投資家達の投資対象になることもあります。
リスクと注意点
ここからは、ブリッジのリスクをまとめていきます。
リスク対策として、以下の2点を守ることをお勧めします。
- 盗難・消失が起こる可能性があると考え、全資産をブリッジするのは避ける
- 新しいブリッジを触るときは、試験的にテスト用のウォレットを作成して少額で操作する
中央集権化
「ブリッジ」という技術そのものの課題です。
仮想通貨のブリッジは、「一箇所にトークン(仮想通貨)を預ける」ことになります。
これは、ユーザーが自分のトークン(仮想通貨)の管理権限を放棄して、他人に預けることを意味します。
そのため、トークンが集まっている部分が悪意あるハッカーの攻撃ポイントとなってしまうのです。
トラストレスなブリッジ
ユーザーが安心してブリッジを利用するために、そのブリッジが「トラストレス」かどうかを見極めることもリスクを下げることにつながります。信頼性を担保するものが、そのプロトコルの動き自体であれば、そのシステムはトラストレスであると考えられます。
ユーザーの使用目的自体を達成することで開発者が報酬を得るようなシステムになっていれば、システム運営者側が不正を働くインセンティブが無いため、安全にブリッジを利用できる可能性が高まるよね、という発想です。
また、これとは別に、イーサリアムの創設者Vitalik Buterinは「クロスチェーンへの悲観的な視点」を述べています。ブリッジ以外の手段で仮想通貨の経済圏を回したり、そのチェーンのネイティブトークンを所持するようにしようという発想です。
My argument for why the future will be *multi-chain*, but it will not be *cross-chain*: there are fundamental limits to the security of bridges that hop across multiple "zones of sovereignty". From https://t.co/3g1GUvuA3A: pic.twitter.com/tEYz8vb59b
— vitalik.eth (@VitalikButerin) January 7, 2022
仮想通貨の盗難
ブリッジの穴をついた盗難は、過去に何度も起きています。2022年に起こった事件を3つ挙げていきます。
Wormeholeを狙った攻撃
2022年2月、Wormeholeへのハッキングで、3億2400万ドル相当の被害が発生しました。
合計で12万WETH(Wrapped ETH)が被害に遭いました。
DeFiプロトコルを狙った被害額ランキングでは、第3位に入るほどの大きさの被害額です。
Wormholeは、複数のブロックチェーンをつなぐブリッジアプリで、今回狙われたのはイーサリアムとSolanaをつなぐ部分のブリッジでした。
【参考】「Wormhole」で340億円規模のハッキング事件が発生|internet.watch
Axie InfinityのRonin Bridgeを狙った攻撃
2022年3月、Axie InfinityのRoninブリッジを狙った攻撃では、総額6億2400万ドル相当の仮想通貨が盗まれました。
盗まれた仮想通貨の内訳は、17万3600ETHと2550万ドル相当のUSDC。
ハッキングの後に、運営元のSky Mavisは、プレイヤーへの資金払い戻しを発表しています。
これは、DeFiプロトコルを狙った事件の中では、第1位の被害額です。
参考記事
HarmonyネットワークのHorizon Bridgeを狙った攻撃
2022年6月、HarmonyネットワークのHorizon Bridgeを狙った攻撃では、1億ドル相当の被害が発生しました。
こちらもRekt発表の被害額ランキングでは、Top10に入るレベルです。
Harmony運営陣は、法執行機関を利用しながら攻撃者の特定に乗り出しました。
1/ Harmony has begun a global manhunt for the criminal(s) who stole $100M from the Horizon bridge. All exchanges have been notified. Law enforcement, @Chainalysis, and @AnChainAI have active investigations to identify the responsible actors and recover the stolen assets.
— Harmony 💙 (@harmonyprotocol) June 30, 2022
事件の経過は、Harmony運営陣のブログにて公開されています。
【原文】Harmony、1億ドル盗難の犯人特定に国家当局や法律専門家の協力を発表|Coindesk
資産の補償がされない可能性
ハッキング被害に遭った場合、資産が補償されない可能性があります。
現状、ブリッジは非常に新しい技術なので、法整備が追いついていないのです。
しかし、Axie Infinityのケースの様に大企業がバックについている場合は、資産の盗難が起こってもユーザーに補償が行われることもあります。
自身が使うブリッジアプリの運営元の資産状況(資産が仮想通貨以外で潤沢にあるかなど)をきちんと確認しておくことは、非常に重要です。
運営母体の不正
ブリッジアプリの開発者・開発チームが悪意を持って行動すれば、ブリッジにロックされた資産を奪い去ることも可能です。
ですから、できたばかりのDeFiプロトコルを触る時には、慎重になりましょう。
具体的には、テスト運用のためのウォレットアカウントを作成し、少額の資金でお試し運用をしてみるのです。
基本的に、初めて触る出来立てのDeFiプロトコルに対しては、毎回ステアカウントを作って少額でのテスト利用をしてみることをお勧めします。
ブリッジ中のネットワーク切断
ブリッジ中に、絶対にネットワーク間の接続を切断してはいけません。
資産を失うことになります。
トランザクションが成立せず転送途中のデータは消え、資産が2度と取り戻せなくなります。
見出しテキスト
以前に、ネットワーク切断で、200ドル相当のDAIを失ってしまったことがあります。
原因は、ブリッジ中であることを忘れていて、MetaMaskのネットワーク接続を切断してしまったためです。
ブリッジには時間がかかることもあるので、ブリッジが完了したことを必ず確認するようにしましょう。
また、時間がない中で慌ててブリッジを実行しなくても済むように、時間に余裕を持って仮想通貨を触るようにしましょう。
ブリッジの方法&活用事例
以下の記事の中で、ブリッジを用いて仮想通貨DAIを運用して、複利報酬を得る流れを解説しています。
実際に、私は資産の一部をこの方法で運用していました。(現在は、使っていません)
DeFiに興味のある方は、チェックしてみて下さい。
有名なブリッジアプリ
ブリッジアプリを3つ紹介します。
他のブリッジアプリにも興味がある方は、こちらも参考にしてみて下さい。
Ren Bridge
ブリッジアプリの代表格。
例えば、ビットコイン(BTC)を「ラップされたビットコイン=WBTC(Wrapped BTC)」としてイーサリアムネットワークで利用可能にしてくれます。
様々なチェーン上の仮想通貨をブリッジすることで、DeFiの経済圏を押し広げる役割を担うブリッジアプリの一つです。
RenBridgeの使い方について知りたい方は、こちらから。
Binance Bridge
Binance取引所内部で用いられるブリッジ。
チェーンの異なる仮想通貨を個人がトレードする時に、その背後でブリッジが行われているのです。
チェーンの異なる仮想通貨をスムーズにやりとりするための手立てです。
自分が所持している仮想通貨がどのチェーン上にあるのかを認識していないと、送金時に資産を失う可能性もあるため、念入りな確認が必要です。
BInanceに限らず、さまざまな銘柄を扱う取引所では、通常、何らかの形でブリッジが行われています。
Celer cBridge
Binance Bridgeの代わりに、個人で使えるブリッジです。
このブリッジはトラストレスブリッジのように、プロトコルの動き自体に信頼性を置いているため、自身でリスク管理をしたい方向けの手段です。
利用にあたっては、自身でウォレットを接続させる必要があります。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
ブリッジについてさらに深く学びたい方は、こちらの記事も参考になります。
また、ブリッジの本質的な問題点については「ブリッジのトリレンマ解決」を学ぶことをお勧めします。
技術者向けの内容ではありますが、読んでおいて損はありません。
とは言え、本記事の内容だけでも、ブリッジに関する大まかな知識を得られて、DeFi運用の防御力は高まったはずです。
本記事があなたの仮想通貨運用の参考になれば幸いです。
本記事のおさらい
- ブリッジとは「異なる企画のブロックチェーン同士のやり取りを可能にする技術」
- 仮想通貨をブリッジすることで、異なる規格のブロックチェーン同士でも仮想通貨のやりとりができるようになる
- ブリッジは、仮想通貨自体を転送しているわけではない。
- ブリッジを行うと、元々の仮想通貨がロックされ、大体トークンが発行される
- 中央集権的になるというリスクを認識した上で利用する必要がある