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🛠️開発記録#516(2026/4/16)DeFi研究ログ ― 利回り付きステーブルコイン周辺の仮説を監査し、残す枝と切る線を分けた話

こんにちは、ぼっちbotterよだかです。

今回はDeFi研究のサブテーマとして追っていた「利回り付きステーブルコイン周辺の流れはperpに先行するのか」という仮説を、分析と監査を通して整理しました。何かを見つけたというより、主線から外すもの、背景観測に落とすもの、未確定枝として保留するものを分けた回です。

前回の話
🛠️開発記録#514(2026/4/15)DeFi研究メモ ― "利回り付きステーブルコイン"から金の流れを追い、エッジ候補を絞る

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1. 今回サブテーマとして置いていた仮説

今回サブテーマとして追っていたのは、利回り付きステーブルコイン周辺の変化が、DeFi の perp 市場に対して何らかの先行性を持つのではないか、という仮説です。もう少し具体的に言えば、Ethena 系の需要変化、Pendle における将来利回りの織り込み、Sky 系の基準レートとの差分といったものを観測することで、Hyperliquid 側の funding や volume、ひいては市場の地合いに先回りできるのではないか、という見立てでした。これは単に「利回りが高い商品を探す」という話ではなく、利回り付きステーブルコインを資本需要のセンサーとして使えないかを見る試みでもありました。前提として置いていた大きな問いは、「どこで資本コストが発生し、その変化がどの順番で他市場へ波及するのか」を観測可能な形にできるかどうか、です。

この仮説は、最初から一枚岩ではありませんでした。実際には三本、あるいは途中から四本に分けて見ていました。ひとつ目は、Ethena 系の需要変化が perp activity に先行するのではないかというもの。ふたつ目は、Pendle の spread や implied 側の情報が Hyperliquid の funding や volume に先に出るのではないかというもの。三つ目は、Sky 系を DeFi 内の基準金利として置くことで、他の需要の異常値や歪みを比較的きれいに測れるのではないかというものです。その後の分析では、これに加えて「価格そのものへの影響はどうか」という論点も切り出しました。つまり今回見に行っていたのは、単一の仮説ではなく、「全体先行優位」「funding の近接同期」「特定市場枝」「価格影響」という複数の地位を持つ仮説群だった、ということです。

ここで大事だったのは、利回り付きステーブルコインそのものを投資対象として見るのではなく、その背後にある資本需要や担保需要、あるいは perp 市場との接続を読むための観測対象として扱うことでした。Ethena は暗号市場の内部にある funding や basis にかなり近い場所を触っていますし、Pendle は市場が将来の利回りや需要をどう織り込んでいるかを比較的露骨に価格へ落とす場です。Sky はそれ自体が勝ち筋というより、他を測るための比較軸になりうる。そう考えると、このサブテーマは「どれが伸びるか」を当てにいくものではなく、「どこに需要の色が出るか」を見に行くものだったと言えます。だからこそ、今回の検証でも単なる相関の有無ではなく、先行性があるのか、同時に動いているだけなのか、そもそも見かけの相関なのか、をかなり厳しく切り分ける必要がありました。

もっとも、現時点で振り返ると、この時点の自分の仮説には少し強すぎる置き方もありました。特に「利回り付きステーブルコイン周辺の flow が HL perp に先行優位を持つはずだ」という主語は、研究の入口としては良かった一方で、実データの監査を通したあとに見ると、そのままでは広すぎました。実際には、全体仮説は切り、funding 側の背景軸としてだけ残し、さらに sUSDe 個別市場の枝だけを未確定として保留する、というところまで地位を下げる必要が出てきました。つまり今回の1章で置いておきたいのは、「こういう有望な仮説があった」という話よりも、「自分は最初、このサブテーマに対してどんな期待を置いていたのか」、そしてその期待を後の章でどこまで削ることになったのか、という出発点です。次章では、その仮説を本当に検証対象として扱えるかどうかを確かめるために、分析に入る前に何を確認し、どこで前提のズレを疑ったのかを書いていきます。

注釈

本記事でいう H1〜H3 の定義

今回の Day1 分析では、利回り付きステーブルコイン周辺の動きを3本の仮説に分けて見ていた。ここでの H1〜H3 は、ざっくりした問題意識ではなく、次のような意味で置いていた。

H1
Ethena 系の需要変化は、perp activity に先行するか。
ここでいう Ethena 系の需要変化とは、主に USDe / sUSDe の供給や staking ratio などの変化を指す。被説明側として見ていたのは Hyperliquid の funding や volume であり、仮説の中身は「Ethena 系の需要変化が、perp 市場側の activity より先に動くかどうか」である。つまり、商品人気を見る仮説ではなく、需要の変化が取引需要に波及する順序があるか を見る仮説だった。

H2
Pendle の spread / implied が、Hyperliquid 指標に先行するか。
ここでいう Pendle 側の情報とは、主に implied APY と underlying APY の差、つまり spread を中心にしたものである。被説明側は Hyperliquid の funding / volume で、仮説の中身は「Pendle が織り込んでいる将来利回りや期待のズレが、perp 側の地合い変化に先行するかどうか」である。言い換えると、利回り市場の期待形成が、perp の funding や activity に先に出るか を見る仮説だった。

H3
Sky-Ethena APY spread は、Pendle implied APY を見るための安定した比較軸になるか。
ここでいう Sky-Ethena APY spread とは、Sky の savings rate APY から Ethena の sUSDe yield APY を引いた差分である。この仮説は、H1/H2 のように「何かに先行するか」を直接見るものではなく、DeFi 内の相対金利差を、Pendle 側の期待形成を読むための比較軸として使えるか を見る仮説だった。つまり、Sky 自体を勝ち筋として見るのではなく、他の利回り系需要の異常値を測るための物差しになりうるか、という位置づけだった。

要するに、
H1 は 需要→perp activity
H2 は 利回り期待→perp activity
H3 は DeFi 内の相対金利差→比較軸
を見に行っていた仮説である。
今回の研究では、この3本をいったん同格に置いた上で、その後の分析と監査を通じて、それぞれの地位を下げたり切ったりしていった。

2. まずやったこと ― 前提と分析対象の確認

今回、分析そのものに入る前にまずやったのは、「何を見ているつもりなのか」を固定することでした。これは単なる丁寧さではなく、かなり実務的な理由があります。DeFi のように系列が多く、しかも似たような概念が並ぶ領域では、計算結果よりも前提のズレの方が簡単に人を騙すからです。実際、今回も途中で一度、参照していたリポジトリの取り違えを疑って確認し直しています。そこでかなりはっきり分かったのは、分析処理が普通に走ってもっともらしい結果が出ることと、その分析が正しい前提に立っていることは全く別だ、ということでした。似た構造のデータがあれば、ズレた入力でもそれっぽい図や相関は出てしまいます。だからこそ今回の研究では、「何か面白い数字が出たか」より先に、「この数字は本当に今回見たい仮説の数字なのか」を確認する必要がありました。

そのために、分析の入口ではかなり機械的に条件を固定しました。使うデータは既存DBのみ、新規取得なし、新規系列追加なし、定義変更なし、補完なし。この制約を置いた上で、比較窓も明示的に切っています。日次ユニバースは 2026-01-08 から 2026-04-08 UTC、1時間足の補助分析は 2026-02-14 12:00 から 2026-04-15 12:00 UTC までです。ここが短く見えるのは、180日分の収集ができていないからではなく、Pendle の市場寿命不足や Ethena APY 系列の末端欠損を反映し、補完なしで比較可能な範囲だけを固定した結果です。言い換えると、今回は「180日データを全部使う」のではなく、「比較可能な範囲だけで白黒をつける」という態度を最初に決めた、ということです。この線を引いておかないと、後で都合よく窓を動かしたり、欠損を実質的に無視したりして、いくらでもテーマを延命できてしまいます。

その上で、系列の定義も lock しました。たとえば H2 の中心だった pendle_spread は、Pendle の日次 historical data から取った各市場の implied_apy - underlying_apy を、利用可能市場について TVL-weighted mean で集約したものです。対象市場は sUSDe、USDe、srUSDe の3つで、TVL weights が取れないバケットでは available な市場の simple mean に落とす、という fallback まで含めて固定しました。Hyperliquid 側は、funding を BTC/ETH の1時間 fundingHistory の平均から作った日次平均、volume は BTC/ETH の1時間 candleSnapshot 由来の出来高を日次合計したものとして定義しています。つまり、今回の主分析で見ていたのは「perp価格」ではなく、まずは funding と volume です。ここを曖昧にしたままだと、あとで「perp に効いている」という雑な言い方になってしまうので、説明変数と被説明変数を何で置いているのかは最初に固定しておく必要がありました。

さらに、この段階でやっておいて良かったのが、inventory を先に作ったことです。つまり、各系列について first/last timestamp、欠損理由、比較可能 window、粒度、構造欠損かどうかを一覧化し、「何が比較できて、何が比較できないのか」を先に決めました。今回の分析で繰り返し問題になったのは、Pendle 側の市場寿命差と市場構成比です。後から見ると、全体集約と言いつつかなり sUSDe 主導になっていたり、短い寿命の市場が一部の見え方を歪めたりしていました。こうした歪みは、分析を回してから気づくとかなり厄介です。だから今回は、集計に入る前に「この市場はいつからいつまで存在しているのか」「全体という言い方をしてよいのか」を確認し、少なくともあとから“知らなかった”とは言えない状態にしておきました。次章では、この前提確認の上で、実際にどんな監査条件で見かけの相関を潰していったのかを書いていきます。

3. 見かけの相関をどう潰したか

今回いちばん大きかったのは、何かを見つけに行くというより、見かけの相関をどこまで潰せるか をかなり執拗に確認したことです。ここは自分にとっても重要でした。というのも、今回のテーマは、表面的にはかなり「ありそう」に見えるからです。利回り付きステーブルコイン、Pendle の織り込み、Hyperliquid の funding や volume。単語を並べるだけでも、いかにも資本需要や市場の熱と繋がっていそうに見えます。けれど、そこに乗って雑に「何かある」と言い始めると、かなり危ない。だから今回は、まず仮説を育てるのではなく、false positive を切るための条件を先に置きました。具体的には、raw だけで相関が出ていないか、diff や detrended でも残るか、前半と後半で崩れないか、rolling corr が安定しているか、低分散系列が混ざっていないか、TVL-weighted 集約が単一市場に支配されていないか、そして正ラグ優位が本当にあるのか、といった点をかなり機械的に通しています。

実際、最初にそれっぽく見えたものはありました。H3 では Sky-Ethena APY spread と Pendle implied APY の間に raw lag7 でそこそこの相関が見えましたし、H2 でも Pendle spread と Hyperliquid funding の間に raw の lag1 相関が出ていました。ただ、そこから先が大事でした。H3 は diff や pct_change、detrended に落とすとかなり弱くなり、さらに split すると後半でほぼ崩れました。しかも、Sky 単体はほぼ横ばいで、spread が実質的に Ethena 側の逆符号表現に近づいていた。ここまで見ると、最初に見えていたものは「比較軸として優秀」だったのではなく、低分散系列を含む spread が raw level の見かけ相関を作っていただけだ、とかなりはっきり読めます。H2 も同じで、raw では lag1 が見えても、負ラグ側の方が強い箇所があり、しかも volume 側は符号も安定性も弱い。つまり「先に動いて後からついてくる」ではなく、「近いところで一緒に動いているだけではないか」という読みの方が強くなっていきました。

もう一つ大きかったのは、全体仮説と特定市場依存を分けたこと です。最初の段階では、Pendle 全体の spread や implied を見ているつもりでいました。けれど市場別に分解すると、実質的には sUSDe がかなり支配的で、全体仮説と言いながら単一市場の影響を強く受けていました。これはかなり重要です。全体として効いているのか、それとも「たまたま支配的な市場の癖」を見ているだけなのかでは、仮説の地位が全く変わるからです。今回の監査では、この点をかなり強く見ました。単一市場依存を除くと全体主張が持たないなら、その仮説は「全体仮説」としては切るべきです。逆に、それでも特定市場枝としては保留できるなら、そこは mainline ではなく specific branch として別管理する。今回かなり時間を使ったのは、まさにこの整理でした。結果として、「利回り付きステーブルコイン全体 → HL perp」という太い主語は切り、「sUSDe 個別市場なら未確定枝としてだけ残す」というところまで地位を下げることになりました。

さらに今回は、以前の自分が逃げ道として残しがちな部分もかなり潰しました。特に大きかったのは、価格影響仮説 D を「まだ見ていないから保留」にしなかったことです。これは正直、自分の中でもやっておいて良かったです。funding や volume を見て lead が弱いなら、「でも価格の方にはあるかも」と言いたくなる。実際、その逃げ道はいくらでも作れます。ただ今回は、既存データ内の Hyperliquid 1h close から forward return を作り、6h/12h/24h と 1d/3d/7d の horizon で、spread_agg や spread_sUSDe に対する lag 非対称を明示的に見ました。その結果、一部に候補はあるものの、lag 優位・符号安定・transform 後の持続が弱く、研究地位としては主線に置けないと判断しています。ここはかなり大きいです。単に「価格はまだ見ていない」ではなく、「既存データで見た上で、少なくとも現時点では主線ではない」と言える状態にしたからです。だから今回の章で言いたいのは、分析をたくさん回した、ということではありません。むしろ、それっぽく見えるものを、そのまま研究の主線に昇格させないための監査を通した ということです。次章では、その監査の結果、何を切り、何を背景観測に落とし、何を未確定枝としてだけ残したのかを整理していきます。

4. 現時点で切ったものと、残したもの

ここまで分析と監査を通した結果、今回のサブテーマは「何かありそう」でまとめるより、仮説ごとに研究上の地位を下げて整理する 方がはるかに正確だと分かりました。今回やったのは、単に H1〜H3 の当否を見ることではありません。最終的には、仮説を「残すか切るか」だけでなく、主線から外すのか、背景観測に落とすのか、未確定枝として保留するのか まで決めています。ここを曖昧にすると、いくらでも「まだ何かあるかも」で延命できてしまうからです。今回の収穫は、まさにその延命余地を狭めたことにあります。

まず、全体先行優位仮説は切りました。ここで切ったのは、「利回り付きステーブルコイン周辺の flow が、Hyperliquid の perp に対して安定した先行優位を持つ」という太い主語です。理由ははっきりしています。正ラグ優位がきれいに成立せず、volume 側の一貫性も弱く、さらに Pendle 集約値は実質的に sUSDe 依存が強かったからです。つまり、「利回り付きステーブルコイン全体 → HL perp」という大きな物語は、現時点の既存データでは維持できません。ここはかなり重要です。今回切ったのは「一部の数字が弱かったから」ではなく、主線として置くための必要条件を満たさなかったから です。研究として見れば、これはかなり健全な切り方だと思っています。

その一方で、全部をゼロにしたわけでもありません。全体仮説を切ったあとに残ったのは、Pendle spread と Hyperliquid funding の間にある、lead ではないが近接して同期していそうな関係です。これは「勝ち筋」として残したのではなく、funding 側の地合いを読むための背景観測 としてだけ残しています。ここで大事なのは、言い方をかなり弱めたことです。以前の自分なら、「Pendle 側の期待が何かを先に映している」と言いたくなっていたと思います。けれど今回の監査を通した結果、そこまで強くは言えない。言えるのはせいぜい、「funding 側には near-synchronous な同期性が少し残るので、背景情報としては低コストで置いておける」くらいです。つまり、主線に置くのではなく、背景軸に格下げしたうえで監視対象としてだけ残す、という形です。ここはかなり大きな修正でした。

さらにもう一段細く残したのが、sUSDe 個別市場の枝 です。これも「残った」と言ってしまうと少し強すぎます。正確には、全体仮説を切ったあとに、なお観測価値が完全には消えていない細い枝が見つかった、という方が近いです。Pendle 全体としては主張できないけれど、sUSDe 個別市場に限れば funding 側に一定の関係が残る。とはいえ、これは volume 側まで含めてきれいに再現しているわけでもなく、全体仮説へ一般化してよいものでもありません。だから研究上の地位としては、これを mainline に戻すのではなく、未確定枝として 90 日後に同一監査を1回だけ許可する ところまで下げています。つまり「期待して残す」のではなく、「まだ殺し切る証拠が足りないので、保留箱に入れて凍結する」という扱いです。ここを曖昧にせず、specific branch として隔離できたのは今回かなり良かった点です。

そして、今回もう一つちゃんと片付けておいて良かったのが、価格影響仮説を未検証のまま残さなかったこと です。funding や volume が弱いと、「でも価格の方には何かあるかも」という逃げ道は簡単に作れます。実際、自分もそこは少し気になっていました。ただ今回は、既存の Hyperliquid 1時間足 close を使って forward return を作り、日次・時間足の複数 horizon で spread との関係を明示的に見ています。その結果、候補は一部にあるものの、lag 優位や符号安定、transform 後の持続は弱く、研究としての地位は主線に置けないという判断になりました。ここはかなり大事です。価格仮説が「まだ見ていないから保留」なのではなく、今あるデータでは見た上で mainline から外した。この差は大きいです。曖昧な余白を一つ潰せたので、少なくともこのテーマに対して、後から都合よく期待を戻しにくくなりました。

ここまでをまとめると、今回残ったのは「有望なエッジ候補」ではありません。残ったのは、背景観測としての funding 軸 と、sUSDe 個別市場の未確定枝 だけです。一方で、全体先行優位と価格影響の主線は外しました。つまり、結論は「何かが見つかった」ではなく、どの仮説を主戦場から降ろし、どこまでを低い地位で管理するかが決まった ということです。これは地味ですが、かなり大きな進展だと思っています。少なくとも、ここで “まだ何かあるかも” をそのまま研究の燃料にしないで済むようになりました。次章では、そうであるにもかかわらず、なぜ今日はここで分析を止めることにしたのか、そして自分の中で何が引っかかっていたのかを書いていきます。

5. なぜ今日はここで止めたのか

今回、分析と監査はかなり細かいところまで進めました。やろうと思えば、ここからさらに別の切り口を試すこともできたと思います。lag の切り方を増やすこともできるし、市場ごとの見方をもう一段細かくすることもできるし、「この条件ならまだ何かあるのではないか」と掘り続けることもできました。けれど、今日はそこで止めることにしました。理由ははっきりしています。ここから先に進むと、仮説を潰すための分析ではなく、「まだ何か残っていてほしい」という気持ちを支えるための作業に寄っていく感覚がかなり強くなったからです。

今回最初に置いていた大きな問いは、利回り付きステーブルコイン周辺の流れが、Hyperliquid の perp 市場に対して先行的な情報を持ちうるのか、というものでした。そこから、Ethena 系の需要変化を見る仮説、Pendle の spread や implied の変化を見る仮説、Sky 系を比較軸として使う仮説、さらに価格そのものへの影響を見る仮説へと分解してきました。整理としてはかなり進みましたし、最終的には「全体としての先行優位は切る」「funding 側の背景観測としてだけ残す」「sUSDe 個別市場だけは未確定枝として保留する」「価格仮説も見た上で主線から外す」というところまで落とせています。つまり、文書上の整理はかなりできています。

ただ、それでも今日はここで止めた方がいいと感じました。なぜかというと、自分の中ではまだ「自分の手で仮説を潰した」という感覚が薄かったからです。レポートや判定ラベルはかなり整っている。ファイルも揃っているし、見かけ上はかなりきれいに片付いています。でも、その整い方と、自分が本当に納得して「この線はもう主戦場じゃない」と判断できていることは別です。今回のテーマは、もともと「金の匂いがしそう」という感覚から入ったサブテーマでもありました。だからこそ、分析が増えれば増えるほど、「少なくとも何か一つくらい残したい」という気持ちが紛れ込みやすい。そこに乗ったまま進めると、判断ではなく作業の積み増しになりやすいと思いました。

特に今回、自分の中でかなり大きかったのは、「わからないことを、さらに複雑な分析に突っ込んで安心しようとしているのではないか」という違和感でした。これはかなり嫌な感覚でしたが、たぶん正しかったと思います。もちろん、今回やった分析や監査自体には意味があります。見かけの相関を潰す条件を決めたこと、repo の取り違えを疑って確認し直したこと、仮説の地位を主線・背景観測・未確定枝に分けたこと。こうした作業は、研究の質を上げる意味でちゃんと必要でした。ただ、そこからさらにもう一段分析を増やしても、今の手持ちデータから得られる新しい白黒はあまり増えなさそうだった。むしろ、「まだ別の見方なら何かあるかもしれない」という延命材料の方が増えやすい。今日はその空気をかなり強く感じました。

だから、今回の「止める」は、疲れたからやめたというより、ここから先は研究の質よりも作業感の方が前に出る、と判断した結果です。全体の先行優位仮説は主線から外した。Pendle spread と funding の関係は背景観測に落とした。sUSDe 個別市場だけは保留箱に入れて、90日後に一度だけ再監査することにした。価格への影響も、未検証のまま残したのではなく、今あるデータで見た上で主線ではないと置いた。ここまで決まっているなら、今日はもう十分です。むしろここから先は、「もっと分析した」という実感を得るために触ってしまう危険の方が大きい。

今回の収穫は、何か新しい勝ち筋を見つけたことではありません。むしろ逆で、主線から外すものを外し、背景観測に落とすものを落とし、未確定として凍結するものを凍結できたことです。そしてそれと同じくらい大事だったのが、「作業で安心しようとしている自分」に途中で気づけたことでした。研究を進めていると、分析を増やせば増やすほど前に進んでいるように見えます。でも、実際にはそこで判断が薄まり、ただ研究している感覚だけが積み上がることもある。今日はその線を越えそうだったので、ここで止めることにしました。次章では、その上で今回のサブテーマから少し離れ、次にどこを見にいくべきかを整理して締めたいと思います。

6. 次に見にいくテーマ

ここまでで、このサブテーマに対する地位はかなりはっきりしました。
利回り付きステーブルコイン周辺の flow が、Hyperliquid の perp に対して安定した先行優位を持つ、という主線は切る。Pendle spread と funding の関係は、lead ではなく背景観測に落とす。sUSDe 個別市場だけは未確定枝として保留するが、これは全体仮説の延命ではなく、あくまで低コストの凍結管理に留める。ここまで整理できた以上、次にやるべきことは、このテーマを別角度で延命することではありません。必要なのは、今回の反省を踏まえて、次はどこならもっと短い距離で白黒をつけられるのか を選び直すことです。

今回、自分がこのサブテーマから受け取った一番大きな教訓は、利回りや期待形成そのものを起点にすると、どうしても間接性が高くなるということでした。Pendle の spread や Ethena 系の需要変化には、たしかに市場の空気が映っている感じはある。けれど、それがそのまま perp 側の価格や activity に先行するかというと、現時点のデータではかなり弱い。つまり、今回のテーマは「全く無意味」だったわけではないけれど、少なくとも自分が最初に期待していた形では勝ち筋に届かなかった、ということです。ならば次は、もっと資本需要の発生源か、あるいはその受け皿に近いところを見るべきです。期待や利回りのズレを遠くから読むのではなく、実際にどこで使われているのか、どこへ流れ込んでいるのか に主語を寄せた方が、今の自分には合っている気がします。

その意味で、次に見にいくテーマとしていちばん自然なのは、利回り付きステーブルコインそのものではなく、担保採用先や資本の受け皿側 です。たとえば、どのプロトコルでどの資産が担保として使われているのか、どこで借入需要が立っているのか、供給増加が単なる人気ではなく実際の利用に繋がっているのか。今回の研究では、「高利回りだから伸びているだけなら弱い」「利回りがそこまで高くなくても使われているなら面白い」という見方をかなり意識していました。ならば、次に直接見にいくべきなのは、その“使われている”の中身です。つまり、利回り付きステーブルコインを商品として眺め続けるのではなく、その資産がどこで便利だから必要とされているのか を見る方向へ主語をずらす。これは今回の失敗をそのまま次の設計に繋げる意味でも、かなり筋が良いと思っています。

もう一つ大きいのは、次のテーマでは最初から全体仮説を太くしすぎないことです。今回かなり反省したのは、「利回り付きステーブルコイン周辺」という広い主語で入り、そのあとで Pendle 全体、Ethena 系全体、perp 全体といった言い方をしてしまうと、見たいものが多すぎて、どこで何が効いているのかがぼやけやすいという点でした。なので次は、最初から戦場をもっと狭く切る必要があります。どの受け皿を見るのか、どの資産に絞るのか、どの用途に限定するのか。今回のログで言えば、「DeFi に金の匂いがあるか」ではなく、「この担保採用先に、この資産が増えたとき、本当に借入需要や activity が動くのか」といったレベルまで落としてから見に行く方がいい。そのくらい狭くしてようやく、自分が本当に白黒をつけたい問いになります。

もちろん、今回のテーマを完全に忘れるわけではありません。B の funding 背景軸は低コストで置いておけますし、C の sUSDe 個別枝も 90 日後に一度だけ再監査する余地は残しています。ただ、ここはあくまで「凍結した補助線」です。次の主戦場ではありません。今回の研究でやりたかったことは、何でもかんでも捨てることではなく、主線から降ろすものと、背景に回すものをきちんと分けること でした。その意味では、今回のサブテーマは十分に役割を果たしました。利回り付きステーブルコイン周辺に期待をかけたままダラダラ掘り続けるのではなく、主線としては一度線を引けた。だから次は、その整理の上に立って、もう少し実需に近く、比較可能で、短い時間で白黒をつけやすいテーマを見に行きます。今日の結論を一言でまとめるなら、たぶんこうです。今回切ったのは DeFi そのものではなく、この切り方だった。だから次は、もっと資本の受け皿に近い場所から見直す。

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