- ブロックチェーン界隈で聞く「L2・レイヤー2(セカンド)」って何?
- 何のための技術なの?
- 「L2・レイヤー2(セカンド)」の具体例を知りたい
こんな悩みを解決する記事を用意しました。
レイヤー2とは「ブロックチェーンが抱える問題を解決するための方法の一つ」です。
レイヤー1にあたるブロックチェーンの機能をサポートするのが「レイヤー2」の役目です。
しかし、これだけでは充分な理解とは言えません。
仮想通貨やDeFiやNFTに触れる人であれば、セキュリティ面や、リスク管理の面でレイヤー2の知識を身につけておくことは非常に重要です。
ブロックチェーンへの理解を深めることで、クリプト界隈で生き残る知恵を身につけることができます。
本記事を読んで、クリプト界隈の強者に一歩ずつ近づいていきましょう!
本記事を読むと分かること
- レイヤー2とは何か?
- レイヤー2が重要な理由
- レイヤー2のプロジェクト実例
レイヤー2とは何か
レイヤー2(L2)とは「ブロックチェーンのスケーリングソリューション」。
つまり
「ブロックチェーンをもっと便利に使えるようにする方法」
ということです。
ひとまず
「レイヤー1(L1)に当たる主要なブロックチェーンが抱える問題を解決するサポーターがレイヤー2(L2)」
というイメージをもつと分かりやすいです。
レイヤー2のイメージをざっくり掴んだ上で、細かい部分を見ていきましょう。
レイヤー1とレイヤー2
レイヤー1(L1)とレイヤー2(L2)は
「メインネットとそのサポーター」
という関係にあります。
レイヤー1が実行しようとしていることを、レイヤー2がサポートしているという図式です。
例えば、ビットコインとライトニングネットワークは、L1とL2の関係性にあります。
ビットコインの取引を2者間で複数回行う場合、その取引の全てに手数料が発生してしまいます。
ここでライトニングネットワークを用いることで、複数回の取引を一つにまとめ上げ、取引にかかる手数料を1回分として計上することができるようになります。
他にも、イーサリアムとArbitrum(アービトラム)も、L1とL2の関係性にあります。
イーサリアムは、取引が集中すると手数料であるガス代が非常に高くなってしまうという問題があります。
そこで、本来イーサリアムネットワーク上で行う手続きをArbirrum(アービトラム)で代行します。
すると、イーサリアムネットワークの負荷が軽減され、ガス代を低く抑えることができるのです。
補足
ここでは簡単に説明しましたが、実際に起こっていることはもう少し複雑ですので、後半で詳しく説明します。
まずは
「L1の機能をサポートするのがL2」
という理解でOKです。
ブロックチェーンのトリレンマ
レイヤー2が解決しようとしているのは、ブロックチェーンのトリレンマです。
トリレンマとは
3つの要素が存在し、そのうち2つを成立させようとすると、残りの一つが犠牲になってしまう
ことです。
これをブロックチェーンに当てはめると、3つの要素とは以下の通り。
- 分散性:参加者のリソースを最低限のレベルで維持できるように広範囲に分散させる
- セキュリティ(安全性):ネットワークを攻撃できる者が存在していても、安全性が保たれる
- スケーラビリティ(処理速度):いついかなる状況でも素早い処理が行われる
例えば、「分散性」と「セキュリティ」を重視すると「スケーラビリティ」が失われてしまいます。
具体的に説明してみましょう。
多くのPC(ノード)にチェーンの管理権限や取引の承認作業を分散化させると、複数のPCで確認作業が行われるため、ネットワークの安全性を高めることができます。しかし、承認作業に時間的なコストがかかることになり、処理速度は低下します。
同じように「分散性」と「スケーラビリティ(処理速度)」を重視すると「セキュリティ(安全性)」が犠牲になり、「セキュリティ(安全性)」と「スケーラビリティ(処理速度)」を重視すると「分散性」が犠牲になってしまいます。
ブロックチェーンが本質的に抱える問題を解決するために「L2」というアプローチが提案されるようになったのです。
オフチェーンorオンチェーン
L2は、オフチェーン型とオンチェーン型という区別があります。
それぞれに特徴やリスクがあります。
オフチェーン型
L1のブロックチェーンと完全に切り離して、独立したネットワーク上で稼働させるのが「オンチェーン型」。
L1と切り離して外部で計算や取引を行い、その結果だけをL1に戻します。
L1とは別にL2の管理者を設けることで、監視の分散性を保証することができます。
デメリットとして指摘されるのは「情報の不透明性」と「サーバーの脆弱性」。
L2での取引や計算結果が外部に公開されないため、オフチェーン型のL2で不正が行われていた場合、それを確認することができません。
また、L2のサーバー自体が攻撃を受けて稼働がストップすると、L1での取引もストップすることになります。
代表的なものに「ライトニングネットワーク」や「ライデンネットワーク」があります。
オンチェーン型
L1のブロックチェーンから階層構造でL2のブロックチェーンをつないで稼働させるのが「オフチェーン型」。
必要に応じて機能を追加していくことで、L1の負担を減らします。
デメリットは「第3者からのハッキングの可能性」。
オフチェーン型と違い特定の管理者を設けることができないため、システム全体を監視しようとすると、全てのデータをダウンロードしなければなりません。
イーサリアムネットワークの「Plasma」や「Rollup」などが有名です。
サイドチェーンとの区別
L2とサイドチェーンの区別も重要です。
両者を分けるのは、「セキュリティの参照元」。
L2は、メインチェーン(L1)のエコシステム上に存在する固有のネットワークであるため、取引後の情報をL1に格納します。
つまり、L2のセキュリティはメインチェーンのセキュリティを使用していることになります。
一方、サイドチェーンは、メインチェーンとは別の独立したブロックチェーンであるため、情報自体はサイドチェーンの内部に格納されています。
要するに、サイドチェーンのセキュリティは、メインチェーン(L1)とは別の規格で稼働しているということです。
補足
サイドチェーンについては定義が曖昧な部分もあり、解釈が分かれることもあります。ここでは、メインチェーンをサポートする別のブロックチェーンという定義をします。
【参考】セカンドレイヤーとサイドチェーンは何が違うの?|HEDGE GUIDE
レイヤー2が解決する課題
レイヤー1ブロックチェーンの課題解決がレイヤー2の役割です。
レイヤー2が解決しようとしているのは、以下の3つ。
- 手数料の高さ
- 通信の遅延
- 扱えるデータ容量の制限
順番に解説していきます。
手数料の高さ
ブロックチェーンで行う様々な取引には、手数料が発生します。
この手数料は、ブロックチェーンを維持・管理するマイナー達の報酬として支払われる仕組みになっているので、プラットフォームの使用料・必要経費と捉えることもできます。
問題は、手数料がものすごく高くなってしまうことがあるということ。
これは、特にイーサリアムネットワークで問題となっています。
イーサリアムは、ユーザーが手数料の額を自分で設定できるようになっています。
マイナーは高い手数料を支払ったユーザーの注文を優先して処理したいと考えるため、手続きを早く通したいユーザーは、高い手数料を支払って優先的に処理してもらおうとします。
こうした環境下では、取引が集中する時間帯の手数料が跳ね上がることがよく起こります。
1回の取引を通すのに数千円相当の手数料がかかることもあるのです。
一般ユーザーにとっては、この手数料は決して安いものではありません。
【参考】【やさしく解説!】仮想通貨の「ガス代」とは?【イーサリアムの仕組みから理解する】
通信の遅延
ブロックチェーンのセキュリティが保たれているのは、それを支えるシステムが分散しているからです。
分散性が高いほど、セキュリティの堅牢性は高まります。
しかし、その反面、承認手続きやデータの生成に膨大な手間と時間が費やされることになります。
何らかの事情で取引が集中すると、通信速度が極端に遅くなったり、手続きが通らなくなったりすることもあるのです。
扱えるデータ容量の制限
ブロックチェーンは、まとまった量のデータを一つのブロックとして生成し、直前に生成したブロックデータの一部と暗号化したデータをつなぎ合わせることで、チェーンの様にブロック同士を連鎖させていきます。
重要なのは「一つのブロックに格納することのできるデータ容量の上限」の限界を超えてブロックを生成することはできないということ。
つまり、1ブロックに格納できるデータ容量の上限が大きいほど、そのチェーン上で扱えるデータは大きくなります。
ところが、ブロックチェーンは、このデータ容量の上限を大きくすることが、技術上、大変難しいのです。
もちろん、後から大規模なアップデートを行うこともできますが、その場合は「ハードフォーク」という方法を取ることが一般的で、そのリスクをとってまでメインチェーンのブロックデータ上限を引き上げるかどうかは、運営の判断が問われます。
特に、既に広範囲に拡散されていて金融面とも深く関わっているチェーンほど、ハードフォークに慎重になる傾向があります。
【参考】【やさしく解説】仮想通貨のハードフォークとは?【仕組みの面から仮想通貨を理解しよう】
レイヤー2のプロジェクト実例
ここからは、「有力なL1であるビットコインとイーサリアム」に関係するL2を紹介します。
特に、イーサリアムのL2の歴史を知ることで、現在注目されている「Rollup」についても深く理解するきっかけになります。
ライトニングネットワーク(ビットコイン)
ライトニングネットワークは、ビットコインの取引を高速かつ手数料を抑えることを目的に設計されたオフチェーンのL2です。
すでに様々な場で使われています。
ビットコインのL1では、1秒間に10件未満の取引しかできませんでしたが、ライトニングネットワークでは、(理論上は)1秒間に数百万件の取引が可能です。
ライトニングネットワークを使うと、2人のユーザーの間にペイメントチャネルが確立されます。
このチャネル間で、即時の送金ができる仕組みです。
ペイメントチャネルでつながっていないユーザー同士でも、別の誰かと繋がってさえいれば、既存のチャネルを接続することでお互いの送金が可能です。
オフチェーンでユーザー同士のネットワーク形成ができる点が、ライトニングネットワークの特徴です。
具体例
例えば、ここにユーザーA、B、Cがいるとします。ユーザーAはユーザーBと、ユーザーBはユーザーCとそれぞれ繋がっています。この場合、直接繋がっていないAとC同士であっても送金ができるという仕組みです。
ライデンネットワーク(イーサリアム)
ライデンネットワークは、イーサリアムのトークンを高速かつ手数料を抑えることを目的に設計されたオフチェーンのL2です。
ライトニングネットワークがビットコインをサポートするのに対し、ライデンネットワークがサポートするのはイーサリアムです。
ペイメントチャネルの仕組みもライトニングネットワークとほぼ同じです。
しかし、現在のイーサリアムはライデンネットワークよりも別の解決策が有力であるため、ライトニングネットワークほどの拡散は実現していないようです。
Plasma(イーサリアム)
Plasmaは、イーサリアムをサポートするオンチェーンのL2です。
イーサリアムチェーンで行う手続きの一部をPlasmaチェーン上で行うことで、イーサリアムネットワークにかかる負担を減らします。
オンチェーンで稼働するため、イーサリアムのセキュリティをそのまま使用できる点が特徴です。
メリットの大きい技術として発表されましたが、積極的な実用段階には達しませんでした。
【参考1】PlasmaのOss実装を通してその仕組みを理解する|GMOインターネットグループ研究開発本部
【参考2】Plasmaのホワイトペーパー
Rollup(イーサリアム)
2022年8月現在、イーサリアムのL2の有力候補とされているのがRollupです。
「Rollup」には「Optimistic Rollup」と「Zk Rollup」という2種類の方法があります。
実は、イーサリアムネットワークの課題は「送金」だけではないのです。
イーサリアムは、そのネットワーク上に様々なアプリを構築できるため、送金以外の手続きも数多く必要になります。
【参考】【注目!仮想通貨解説】「ETH(イーサ)」・「Ethereum(イーサリアム)」とは?【将来性・価値・リスク】
そのため、イーサアリアムのL2に求められたのは「イーサリアムと同等レベルのセキュリティ」でした。
Rollupは、セキュリティの高さを保ったままトリレンマの解決に対する有効な手段として注目を集めています。
【参考】Rollup!!! 2022年のDeFi主戦場、Ethereum L2を学んで準備しておく会
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございます。
ブロックチェーンのトリレンマを解決する方法の一つがレイヤー2であることをお伝えしました。
ブロックチェーンの問題解決を試みる手段は、日々進歩しています。
「レイヤー2は数ある手段のうちの一つである」という認識を持つと、クリプト界隈を俯瞰して見ることができるようになります。
学習を続けて、クリプト界隈で生き残る知恵を身につけていきましょう!
本記事のおさらい
- L2はブロックチェーンのトリレンマを解決するためのアプローチ
- オンチェーン・オフチェーンで特徴が異なる
- 現在、イーサリアムのL2として「Rollup」が注目されている