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🛠️開発記録#582(2026/10/2)清算研究の現在地――『利益がある』から『自分が取れる』へ

こんにちは、よだかです。

ここしばらく、DeFiの清算について調べ続けています。

清算研究を始めた理由は、単純に「儲かる清算市場を探したかった」からではありません。

DeFiの清算メカニズムについて、まだ自分の中で分かっていないことがかなりありました。今でも分からないことは多いのですが、まずは自分なりに、

  • どういう状態変化によって清算機会が生まれるのか
  • 第三者はどの時点でその機会を認識できるのか
  • 清算した担保をどう換金するのか
  • どこに個人botterが入り込める余地があるのか

といった構造を整理し、そこからエッジ仮説を立てました。

そのうえで複数のレンディング市場を「戦場」として並べ、活動量、清算方式、利益余地、第三者参加、実際の勝者の動きなどを順番に調べてきました。

以前の記事では、このあたりをまだ清算研究の探索フェーズとして書いていました。

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🛠️開発記録#572(2026/9/17)清算エッジ探索をどうフェーズシフトするか?

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今回は、その後いくつかの候補を実際に深掘りした結果、何が見えてきたのかを整理します。


1.複数の戦場を見て、4つまで絞りました

最初から特定のプロトコルだけを狙ったわけではありません。

Aave、Venus、Kamino、Morpho、Compound、Euler、Fluid、Gearbox、SparkLendなど、複数のレンディング市場を候補として並べました。

そこで、

  • 現在も清算が起きているか
  • 清算経路は第三者に開かれているか
  • 利益余地がありそうか
  • 取得した担保を現実的に換金できるか
  • 実際の勝者はどのような取引をしているか

といった点を、小さな検証から順番に見ていきました。

その結果、最終的に重点的に掘ったのが次の4つです。

  • BF-003:Aave V4 / Ethereum
  • BF-006:Venus / BNB Chain
  • BF-008:Kamino Lend / Solana
  • BF-010:Aave V3 / Base

ここで面白かったのは、4つとも同じ理由で止まったわけではなかったことです。


2.4つの候補は、それぞれ違う場所で止まった

Aave V3 / Base――見えても、利益が小さすぎた

Aave V3 / Baseでは、清算前の状態からすでに清算可能だと判断できるケースがかなり見つかりました。

つまり、「事前に見えるか」という点では比較的条件が良かったわけです。

ところが、実際の取引サイズや手数料を入れていくと、利益の絶対額がかなり小さくなりました。

見えている機会の中には利益が残るものもありましたが、代表的な事前観測可能ケースをまとめても、個人botとして積極的に取りに行くほどの金額ではありませんでした。

ここでは、

見えることと、取る価値があることは別である

ということが分かりました。


Aave V4 / Ethereum――利益候補はあるが、多くが同じブロック内で発生する

Aave V4では30日間の16件を詳しく見ました。

そのうち、前のブロック時点ですでに清算可能だったのは2件だけでした。

残り14件は、勝者が清算したブロックの中で価格情報などが更新され、その結果として清算可能になっていました。

つまり、

前のブロックを見てからゆっくり判断する

という方式では、主要な機会の大部分を取れません。

さらに残った2件もサイズがかなり小さく、初期調査で見えた大きな利益幅をそのまま当てはめることはできませんでした。

ここでは、

利益があることと、その利益を事前に認識できることは別である

という壁に当たりました。


Venus / BNB Chain――仕組みも利益も見えたが、間に合わなかった

Venusは今回かなり面白かったケースです。

詳しく再生していくと、前のブロックではまだ健全だったポジションに対して、第三者が公開された処理を実行することで状態を更新し、そのまま清算できるケースが見つかりました。

この仕組みは再現できました。

30日間で該当する仕組みが12回発生し、そのうち11件では、後知恵を使わずケースごとに検出できることも確認しました。

利益モデルでも11件すべてがプラスになりました。

ここまではかなり良さそうに見えます。

ところが、現在使っている遠隔RPC環境で実際の検出処理速度を測ると、10回試して10回とも次のブロックまでに判断を終えられませんでした。

要するに、

仕組みは分かる
利益もありそう
事前に検出もできる
でも今の構成では間に合わない

という状態です。

さらに、現在の利益計算には換金処理の追加手数料など、まだ完全に閉じていない部分があります。

ここでは、

利益があり、見えることと、期限内に実行できることは別である

という壁に当たりました。


Kamino Lend / Solana――市場はあるが、ここから先はSolana botterの領域

Kaminoは、4候補の中でもかなり活発な清算市場でした。

30日間で690件の通常清算があり、27日で清算が発生していました。

さらに代表的な勝者12件を詳しく見ると、

  • 12件すべてで清算後に同じ取引内で換金
  • 12件すべてでJitoのtip口座への送金
  • 11件でKaminoのフラッシュ借入・返済
  • 7件はJupiter経由
  • 5件はDEXへ直接アクセス

という形でした。

つまり、実際の勝者は単純に清算関数を呼んでいるわけではありません。

資金調達、清算、担保取得、換金、ブロックスペース競争までを一つの取引として組んでいます。

かなり成熟したsearcher市場です。

一方で、「勝者より1 slot前に、すでに第三者から清算可能だと分かったのか」を検証しようとしたところ、現在使っているデータ環境では、その時点の正確な口座状態を取得できませんでした。

ここから先を調べるには、Solanaの状態を継続保存する仕組みや、過去の状態を再現できる別のデータ基盤が必要です。

さらに、本当に取りに行くならJitoを含む実行競争も避けて通れません。

つまり、

「Kaminoをもう少し調べる」

というより、

Solanaのsearcherとしての観測・実行基盤を作り始める

という判断に近くなってきました。


3.「清算利益があるか」だけでは全然足りない

清算研究を始めた頃は、自分の中でもう少し単純な地図を持っていました。

清算条件を理解して、清算ボーナスを確認し、換金後に利益が残るならエッジ候補になる。

もちろん、この考え自体が間違っているわけではありません。

ただ、実際に複数のケースを追っていくと、その途中にかなり多くの段階があることが分かってきました。

現在は、だいたい次のように考えています。

利益が生まれる仕組み
↓
いつ第三者から観測できるか
↓
その時点で取引を作れるか
↓
実行期限までどれくらいあるか
↓
自分の取引をどうブロックへ入れるか
↓
他のsearcherとの競争に勝てるか
↓
取得した資産をどう換金するか
↓
すべての費用を引いた後に利益が残るか
↓
最終的に自分がその利益を取れるか

以前の開発記録で「エッジはどこで消えるのか」という話を書きましたが、今回の清算研究は、その問いをかなり具体的に追う形になりました。

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🛠️開発記録#580(2026/9/29)エッジはどこで消えるのか|DeFi探索の見方を少し変えた話

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ある候補は経済性で消えました。

ある候補は観測可能性で消えました。

ある候補は処理速度で止まりました。

ある候補は、次へ進むために専用の観測基盤が必要になりました。

同じ「清算」という括りでも、エッジが消える場所はかなり違います。


4.自分のボトルネックも変わってきた

今回の研究を通して、自分側のボトルネックも少し見えてきました。

少なくとも現時点では、

  • 清算条件を読む
  • プロトコルの構造を整理する
  • 過去の勝者取引を分解する
  • 清算時の利益候補を計算する
  • 仮説を立てて、小さな検証で落とす

といった部分そのものが、最大のボトルネックではなさそうです。

今回重点的に見た4候補も、その部分をある程度通過した後で止まっています。

代わりに壁になっているのは、

現在進行中の市場で機会を見つけ、期限内に判断し、自分の取引を通して利益を取得する

という部分です。

つまり、自分のボトルネックが、

エッジを研究する能力

から、

searcherとして実際にエッジを取得する能力

へ移り始めています。


5.勝者の取引を後から説明できることと、勝者になることは違う

ここは今回かなり重要だった点です。

過去の清算取引を見れば、

  • どの口座が清算されたか
  • 何を返済したか
  • どの担保を受け取ったか
  • どのDEXで換金したか
  • どれくらい手数料を払ったか

といったことは、かなり分かります。

しかし、実際のbotに必要なのは逆方向です。

まだ勝者が存在していない時点で、

どの口座が危ないのか
どの状態変化を見ればよいのか
清算可能になった瞬間を検出できるか
そこから利益計算と取引構築を何秒、何ミリ秒で終えられるか
他のsearcherより先に自分の取引を通せるか

を判断しなければなりません。

ここには、過去取引の分析だけでは見えない部分がかなりあります。

特に今回、まだ十分に測れていないのが、

  • 対象口座全体から機会をリアルタイムで発見する能力
  • 状態変化から送信までの一連の処理時間
  • ブロックスペースやMEVインフラへのアクセス
  • 実際の競争で勝てる確率

です。

そして収益を考えるなら、

勝ったときにいくら儲かるか

だけでは足りません。

ざっくり言えば、

勝ったときの利益 × 勝てる確率 − 失敗費用 − 観測・実行基盤の費用

まで考える必要があります。

ここはまだ、かなり空白が残っています。


6.ここから先は「清算研究」なのか、「bot開発」なのか

このあたりまで来ると、次の判断も少し変わってきます。

たとえばKaminoをさらに掘るなら、Solanaの状態観測基盤を用意し、Jitoを含めた実行経路を調べ、その後にリアルタイム観測へ進むことになります。

Venusなら、現在の遠隔RPCより速い構成を用意して、期限内に検出・判断できるかを改めて確認する必要があります。

これは「もう一つデータを取ってみる」という程度の追加調査ではありません。

特定チェーンにおけるsearcherの実行基盤を作り始める、という投資に近いです。

もちろん、本当に勝って利益を取れる可能性が十分高いのであれば、その基盤を作ること自体は選択肢になります。

ただし順番としては、

基盤を作れば何か取れるかもしれない

ではなく、

基盤を作るだけの利益余地がある候補だから作る

にしたいと考えています。

その意味では、今後の清算研究では、利益が存在する市場であることに加えて、

その利益を自分でも取れる可能性があるか

を、より早い段階で見ることになりそうです。

Across Relayerを調べたときも、構造上の機会を確認した後、実際のシャドー観測まで進めるという判断まで、ほぼ自動化しています。

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清算も同じで、構造上のエッジと、自分が取得できるエッジは分けて考える必要があります。


7.現在地――「利益がある」に加えて、「自分が取れる」を見に行く

清算メカニズムについては、まだ分からないことがたくさんあります。

今回調べた範囲だけでDeFiの清算全体を理解したわけでもありませんし、今回止めた候補について「このプロトコルでは清算botが儲からない」と結論づけるつもりもありません。

対象にした市場、期間、清算経路の中で、現在の証拠からどこまで言えるかを区切っているだけです。

ただ、いくつかの戦場を自分なりの仮説から選び、実際の清算取引や状態変化を追ったことで、以前より地図はかなり細かくなりました。

今後も、まずは清算の構造そのものを理解しながら、利益が残っている市場を探します。

そのうえで、

  • 自分から事前に見えるのか
  • 期限に間に合うのか
  • 競争に参加できるのか
  • 必要な基盤のコストに見合うのか
  • 最終的に自分でも利益を取得できる可能性があるのか

まで掘っていきます。

「利益がある市場」を探すことをやめるわけではありません。

そこに、

「その利益は、自分でも取れるのか」

という問いが加わりました。

今の清算研究は、だいたいその地点にいます。

それでは、また。

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