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🛠️開発記録#548(2026/8/5)有用でない戦略は作らない|BTC積立botを実装するまでの判断

こんにちは、よだかです。

BTCを定期的に購入する積立botを実装しました。

今回作ったのは、価格を予測して注文量を変えたり、下落率に応じて買い増したりするbotではありません。国内の暗号資産取引所を利用し、あらかじめ設定した予算の範囲で、一定額のBTCを定期購入するシンプルなものです。

なお、この記事ではセキュリティと運用上の理由から、具体的な条件は公開しません。

※本記事は個人の開発・運用記録であり、特定の暗号資産や投資手法を推奨するものではありません。過去の検証結果は将来の運用成績を保証しません。

作れる戦略と、作る価値がある戦略は違う

私が新しいbotや投資戦略を検討するときの前提は、かなり単純です。

有用でない戦略は作らない。

技術的に実装できることと、資金や時間を投じて実行する価値があることは別です。

新しい戦略へ資金を配分すれば、その資金を既存の戦略へ回すことはできません。開発に時間を使えば、その時間を別のbotの研究や改善に使うこともできません。

そのため、新しい戦略は少なくとも次の条件を満たす必要があります。

判断項目確認すること
既存戦略との比較既に実行している投資より追加する価値があるか
現金との比較リスクを取らずに資金を残すより合理的か
リスク容量大幅な下落が起きても継続できる金額か
執行容量注文サイズを大きく滑らせずに執行できるか
運用コスト開発・監視・税務記録を含めても割に合うか
継続可能性一時的な感情ではなく、ルールとして続けられるか

まず優位性を確認し、その後に資金上限と執行可能額を決めます。

「滑らずに買えるから上限まで買う」のではありません。

先に決めたリスク予算を、無理なく執行できるなら上限まで使う。

この順番を意識しています。

BTC積立の比較対象をどう設定したか

今回、主な比較対象にしたのは、既に実行しているNISA口座での株式積立です。

厳密にはNISAは投資商品ではなく、運用益が非課税になる制度上の枠です。2024年以降のNISAは非課税保有期間が無期限となり、つみたて投資枠は年間120万円です。長期の資産形成を一人で継続する手段として、運用負荷と税制面の両方に強みがあります。

したがって、BTC積立を追加するなら、

既に実行している低負荷かつ非課税の積立投資と比較しても、追加する意味があるか

を確認する必要があります。

今回置いた主なベンチマークは次のとおりです。

ベンチマーク比較する理由
NISA口座での株式積立BTCを買わない場合の現実的な代替投資先
円現金リスクを取らない場合との比較
単純なBTC定額積立複雑な購入ロジックを評価する基準
株式積立+BTC積立ポートフォリオ全体への追加効果

BTC単体と株式単体の勝敗だけではなく、既存の積立投資へBTCを追加したとき、総資産の期待リターンと変動がどう変わるかを見る必要があります。

過去データでBTC積立と株式積立を比較した

BTC積立を採用する前に、BTCとS&P500への積立を簡易的に比較しました。

比較条件は、双方に同額の資金を投入することです。

BTC側は年間の投資予算を週単位で分散して購入し、S&P500側は毎月初めに一定額を購入したものとして計算しました。日本国内で投資する前提を崩さないため、どちらも円換算しています。

BTC価格にはBTC/USDの日足とUSD/JPYを組み合わせた円建て近似値を使い、S&P500側は配当再投資を含むデータを用いました。S&P500のトータルリターンは、指数の値動きに加えて配当を再投資した結果を表します。為替には米連邦準備制度の公表系列を使用しています。

国内取引所固有のスプレッド、実際の購入時刻、投資信託の信託報酬などは完全には再現していないため、あくまで戦略の性質を比較するための概算です。

検証条件

  • 検証期間:2017年1月〜2025年12月
  • 評価通貨:日本円
  • BTC価格:BTC/USDの日足をUSD/JPYで円換算
  • 株式側:S&P500連動資産の価格変動と配当再投資を円換算
  • 投入額:BTC積立と株式積立で同額に統一
  • BTC側:年間予算を週単位で分散して購入
  • 株式側:毎月初めに定額購入
  • 為替の休日データ:直前営業日の値で補完
  • 税金:双方とも考慮しない
  • 取引コスト:国内取引所固有のスプレッド、投資信託の信託報酬などは含めない

今回の検証は、実際の約定結果を完全に再現するものではなく、購入方法と開始時期による傾向を比較するための概算です。また、開始月をずらした検証期間には重複があり、それぞれが独立した相場を表すわけではありません。

開始時期をずらした比較

2017年以降について、積立開始月を1か月ずつずらして比較した結果は次のようになりました。

積立期間比較した期間数BTC積立が上回った割合成績差の中央値
1年間97期間約72%BTCが約20ポイント上回る
2年間85期間約73%BTCが約51ポイント上回る
3年間73期間約93%BTCが約83ポイント上回る

数字だけを見ると、BTC積立がかなり強く見えます。

ただし、この結果には注意が必要です。

開始月を1か月ずつずらしているため、それぞれの検証期間は重複しています。97回の独立した相場が存在したわけではありません。また、BTCの市場規模が現在より小さかった2017年から2020年ごろの大幅上昇が、全体の結果を強く押し上げています。

比較的市場が成熟した2021年以降の1年間積立だけを見ると、BTC積立が株式積立を上回った割合は約65%まで低下しました。

それでも、BTC積立が既存の株式積立を上回る期間が存在すること自体は確認できました。

一方で、BTCの価格変動はS&P500よりはるかに大きく、下回る局面では差も大きくなります。BTCは上振れの大きさと引き換えに、重い下落を引き受ける資産です。BTCのリターン分布はS&P500より裾が厚く、大きな上下動が起こりやすいという分析とも整合します。

積立期間別・BTCがS&P500を上回った割合:1年、2年、3年の比較】

開始年別のBTC積立とS&P500積立の成績比較

大幅調整後に始めた場合はどうだったか

今回の判断で特に重視したのは、BTCが過去最高値から大きく下落した後に積立を開始した場合です。

簡易検証では、開始時点のBTC/JPYが、それ以前の最高値から40〜55%程度下落していた期間を抽出しました。

該当した1年間積立では、BTCがS&P500を上回った割合は約75%でした。

指標概算結果
BTCがS&P500を上回った割合約75%
BTC積立の損益率中央値約+40%
S&P500積立の損益率中央値約+14%
両者の成績差中央値BTCが約26ポイント上回る

これは「半値になったBTCを買えば必ず利益が出る」という意味ではありません。

過去には、大きく下がった後に積立を開始しても、さらに下落し、1年間で株式積立を大きく下回った例があります。

それでも、

BTC積立が既存戦略に対して優位性を発揮しやすいのは、過熱した高値圏より、大幅な調整を経た後である

という仮説を置く根拠にはなります。

現在は「底」ではなく「積立を始められる価格帯」

BTCは2025年10月に12万5,000ドルを超える過去最高値を記録しました。その後は大きく下落し、2026年8月時点では6万4,000ドル前後と、最高値からおよそ半値の水準にあります。

2026年はETFからの資金流出や、投資家の関心がAI関連株などへ移ったこともあり、BTCには弱い資金フローが続きました。2026年7月にはCitiがBTCの12か月予想を引き下げ、弱気シナリオとして5万3,000ドルを示しています。

したがって、現在が確定した底だとは考えていません。

私自身のベースケースは、

ここから一直線に回復するのではなく、安値を試す動きや大きな下落が、あと1〜2回程度残っている可能性がある

というものです。

これは観測可能な事実ではなく、現在の市況から置いている私自身の予測です。

ただし、積立は底を正確に当てるための戦略ではありません。

底を完全には特定できないことを前提に、現在の価格帯から将来の安値までを時間分散して拾うための手段です。

今回の判断は、

今が底だから一括で買う

ではなく、

さらに下がる可能性を許容しても、積立を開始できる価格帯に入った

というものです。

現在の市場認識のイメージ

積立頻度を複雑にする意味は小さかった

BTC積立をすると決めた後は、どの程度細かく購入を分散するかも比較しました。

検証したのは、週1回、週複数回、毎日購入などです。

結果として、購入頻度を細かくするほど明確に有利になる傾向は確認できませんでした。

比較週複数回購入との差
週1回購入平均で約0.1ポイント程度
毎日購入平均でほぼ差なし

購入頻度を細かくすれば、特定の日に購入価格が偏るリスクは少しずつ減ります。

しかし、一定以上に細分化すると効果は飽和します。特に1回の注文サイズが小さく、市場への影響が無視できる場合、購入回数を増やしても大きな優位性にはなりません。

そのため、初号機では、

  • 定額購入
  • 週単位の時間分散
  • 月間予算上限
  • 価格予測なし
  • 下落時買い増しなし

というシンプルな構成を採用しました。

複雑なロジックを実装しなかったのは、簡単に作りたかったからではありません。

単純な積立を上回る根拠が確認できなかったからです。

税制変更も出口の条件を改善する可能性がある

もう一つの判断材料が、日本の暗号資産税制です。

現行制度では、個人の暗号資産売買による利益は原則として雑所得に分類され、ほかの所得と合算される総合課税です。

一方、2026年の税制改正により、一定の「特定暗号資産」の取引による所得を、所得税15%・個人住民税5%の申告分離課税とする法律が成立しました。適用開始日は、暗号資産規制に関する改正金融商品取引法が施行された年の翌年1月1日とされています。改正金商法自体は2026年7月に成立・公布されましたが、暗号資産関係部分の具体的な施行日は政令で今後定められます。

また、新制度の対象となるのは、登録簿に登録された一定の「特定暗号資産」を、制度上の暗号資産取引業者への売委託または同業者への譲渡によって売却した場合です。そのため、利用する業者の登録状況、BTCの対象登録、実際の売却方法については、利確前に改めて確認する必要があります。

今回の積立は、短期間で売買を繰り返す戦略ではありません。

一定期間をかけてBTCを集め、価格が回復した後に段階的な利確を検討します。そのため、実際の利確時期が税制変更後になる可能性があります。

税制変更だけを理由にBTCを買うわけではありませんが、

市場が大きく調整した時期から積み立てを始め、出口を迎えるころに税制上の条件が改善している可能性がある

ことは、今回の戦略にとって追い風です。

積立開始から利確までの時間軸

購入だけを実装し、利確は実装しなかった

今回のbotには、BTCを購入する機能だけを実装しました。

利確ロジックはまだ入れていません。

購入については、現在の価格帯、資金上限、執行可能性、既存戦略との比較から、実行条件をある程度固定できます。

しかし、利確に必要な条件は、今の段階では固定できません。

  • 実際の平均取得価格
  • 積立期間
  • BTCの回復速度
  • 過去最高値を更新するか
  • 市場の過熱度
  • 税制の施行時期
  • 利確する年の所得状況
  • 株式積立との相対成績

これらは、今後の市況と実際の運用結果によって変わります。

そのため、現時点で考えている段階利確の思想だけをリポジトリ内に文書として保存し、自動売却コードは実装しませんでした。

将来の利確判断に必要な、

  • 注文履歴
  • 約定価格
  • 取得BTC数量
  • 累計投入額
  • 平均取得価格
  • 資産評価額
  • 含み損益
  • 高値からの下落率

は、購入開始時点から記録します。

利確機能は、運用データ、市場環境、税制を再監査した後で追加します。

これは実装漏れではなく、意図的に残した開発バッファです。

初号機では収益性より壊れにくさを優先した

積立botの注文ロジック自体は単純です。

しかし、長期間動かすためには、購入判断よりも状態管理の方が重要です。

今回の実装では、主に次の点を重視しました。

優先事項目的
購入予定の永続化再起動後も当日の状態を失わない
二重注文防止同じ購入予定を複数回実行しない
注文・約定の照合通信断後も取引所側の事実を確認する
結果不明時の再送禁止注文が通ったか不明な状態で追加発注しない
bot資産と口座残高の分離手動取引をbotの成績へ混ぜない
取引原票の保存後から取得原価や税額を再計算する
月次・累計レポート積立状況と資産推移を継続監査する
API制限対策過剰なRESTアクセスを防ぐ
機密情報の分離APIキーをGitやログへ残さない

注文・約定・資産台帳はSQLiteへ保存し、口座全体のBTC残高と、botによって購入したBTCを分けて集計します。

注文送信後に通信が切れ、注文の成否が分からなくなった場合は、自動で再発注しません。取引履歴や約定履歴を取得して照合し、それでも判定できなければ手動確認へ回します。

積立が1回遅れることよりも、二重購入を防ぐことを優先しています。

現在は、Private APIへの接続、残高・未決済注文・取引履歴の取得、起動時照合、DBバックアップ、復元確認まで完了しています。実注文に必要な資金を入れ、初回注文経路を確認すれば本運用へ移れる段階です。

積立botの構成図

今回の判断をまとめる

今回のBTC積立botは、BTCが必ず上がると考えて作ったものではありません。

判断の流れは次のとおりです。

  1. 新しい戦略を追加する価値があるか、既存の積立投資と比較する
  2. BTC積立が優位になりやすい過去の条件を確認する
  3. 現在の市場が大幅調整後の条件に近いと判断する
  4. さらに安値を試す可能性は残っているため、一括ではなく積立を選ぶ
  5. 購入頻度の複雑化には明確な優位性が見られなかったため、定額購入を採用する
  6. 将来の税制変更が出口条件を改善する可能性も考慮する
  7. 購入機能と記録基盤だけを先に実装し、利確は後から再設計する

今回の戦略で重要なのは、底を当てることではありません。

現在の条件なら、既存戦略とは別にBTCへのエクスポージャーを構築する価値があると判断し、底を当てなくても継続できる方法を選んだ。

ということです。

作れる戦略をすべて作る必要はありません。

既存戦略や現金保有と比べて有用性が確認できないなら、実装しない方がよいです。

反対に、優位性が見込める条件があり、資金・リスク・執行容量の範囲内で実行できるなら、そこで初めて開発リソースを投入します。

今回のBTC積立botは、その審査を通過した新しい戦略であり、既存の株式積立を置き換えるものではなく、別のリスク枠として追加するものです。

今後は実際の購入データを蓄積し、株式積立との比較、市場の回復状況、税制の確定内容を確認しながら、利確機能を追加するかどうかを判断します。

※本記事は個人の開発・運用記録であり、特定の暗号資産や投資手法を推奨するものではありません。過去の検証結果は将来の運用成績を保証しません。

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