こんにちは、よだかです。
DeFiの清算をbot開発の研究対象として扱い始めてから、しばらく経ちました。
最初の頃は、「どの市場で清算が起きているのか」「どの程度の規模があるのか」「清算条件は何によって決まるのか」といったところを中心に見ていました。
もちろん、今でもこの確認は必要です。
ただ、最近の清算研究では、もう少し問いが具体的になってきています。
清算が起きるかどうかを見るのではなく、まだ清算できない状態が、いつ・何によって「清算可能な状態」に変わるのかを見る。
さらに、その変化が分かったとして、
自分のbotは、その瞬間を他の実行者より先に取れるのか。
現在は、ここまでを一つの研究対象として見るようになっています。
今回は、最近進めていた清算エッジ探索を通して、この見方がどう変わってきたのかを整理しておきます。
1. 清算研究は「事象を見る」段階から一段進んだ
以前の記事では、DeFi清算を単なる事後ニュースとして見るのではなく、bot開発の研究対象として分解しました。
価格が変わる。
その価格がオラクルへ反映される。
借入ポジションの健全性が変わる。
清算ラインを下回る。
清算が発生する。
その後、取得した担保をどう処理するか。
清算という一つの出来事も、分解すると複数の状態と処理の連鎖として見ることができます。
この見方自体は、今も変わっていません。
ただ、最近はその中でも特に、
「清算ラインを下回る」から「実際に清算される」までに何が起きているのか
を見るようになりました。
清算条件を理解できたとしても、それだけではbotのエッジにはなりません。
実際に取るためには、
- いつ清算可能になるのか
- その変化を事前に観測できるのか
- 第三者でも実行できるのか
- 他の実行者より先に取引を通せるのか
まで確認する必要があります。
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🛠️開発記録#560(2026/9/3) DeFi清算をbot開発の研究テーマに変えるまで
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2. もともとの構造は「価格形成から担保処理まで」だった
清算研究を始めた頃から、基本的には次のような流れで考えていました。
価格形成・評価
↓
オラクル
↓
借入ポジション
↓
清算ライン
↓
清算
↓
担保処理
今回、この構造そのものを作り替えたわけではありません。
むしろ、この中の
清算ライン → 清算
の間を、以前より細かく見るようになった、という方が近いです。
「清算ラインを割った」という一言だけでは足りません。
誰から見ても、いつ、実行可能な状態になったのか。
ここを分けて見ることで、清算競争の性質もかなり違って見えるようになりました。

3. 「見えるか」と「取れるか」は別の問題
これは清算研究に限った話ではありません。
これまでのアルゴ研究でも、
市場で何かを観測できること
と
それを実際の利益へ変換できること
は分けて考えてきました。
観測できる現象が面白くても、それだけで取引エッジとは限りません。
清算でも同じです。
たとえば、
清算条件が分かる
≠
清算を取れる
です。
最近は、さらに一段細かく、
清算可能になる瞬間が分かる
≠
その瞬間に自分が先に実行できる
と分けて考えるようになりました。
この二つを混ぜると、「仕組みは面白いけれど、自分には取れない」という市場へ長く時間を使ってしまいます。
逆に、この二つを分けておけば、
どこまで理解できれば次へ進むのか
どこで研究を止めるのか
も決めやすくなります。
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🛠️開発記録#554(2026/8/27)AIと進めていたアルゴ研究を一度止めて、研究そのものを監査した話
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4. 勝者ブロックの一つ前を見ると競争の種類が分かる
今回の清算研究で、かなり有効だった確認方法があります。
実際に清算を取った取引が入ったブロックを「N」とします。
その一つ前のブロック、「N-1」の終了時点で、そのポジションがすでに清算可能だったのかを確認します。
すると、競争の種類を大きく二つに分けられます。
N-1ですでに清算可能だった場合
これは、
以前から存在していた清算機会を、誰が早く発見して取るか
という競争です。
ある程度の時間的余裕が残っている可能性があります。
N-1ではまだ清算不能だった場合
こちらは、
勝者が入ったブロックの中で何かが変わり、そこで初めて清算可能になった
という構造です。
この場合、競争はかなり違います。
単純に「清算可能なポジションを探す」だけでは足りません。
何が状態を変え、その変化をどこまで事前に予測できるのかが重要になります。
今回深掘りした一定規模以上の複数事例では、いずれも一つ前のブロックではまだ清算不能でした。
この時点で、研究対象がかなり絞られました。
5. 清算の本体を「状態遷移」として見る
さらに調べていくと、複数の重要事例で、
まだ清算不能
↓
ある状態変化
↓
清算可能
という同種の構造が繰り返し確認できました。
ここで大事なのは、具体的な市場や時間条件ではありません。
理解の置き場所が少し変わったことです。
以前は、
どこで清算が起きているか
を見ることが中心でした。
現在は、
まだ実行不能な状態が、どの条件で実行可能な状態へ変わるか
を見る方が重要になっています。
清算イベントそのものは、その状態遷移の結果にすぎません。
もし、その状態遷移が公開情報から事前に計算できるのであれば、botは「清算が発生したこと」を見てから動く必要がありません。
まだ清算不能な段階から、
「次の状態変化で清算可能になる」
と予測して準備できます。
ここまで来ると、清算botというより、
将来の実行可能状態を予測して待ち構えるbot
に近くなります。

6. 少数の重要事例を掘ってから母集団へ戻る
今回の研究では、最初からすべての清算事例を精密に再現したわけではありません。
まず、一定規模以上の重要事例を少数選びました。
そこで、
- 一つ前のブロックではどうだったか
- 何が状態遷移を作ったか
- 同じ仕組みが複数事例で繰り返されるか
を深掘りしました。
その結果、同じ種類の構造が繰り返し確認できたので、今度は母集団へ戻りました。
そこで、
- そもそも一定規模以上の清算がどの程度あるのか
- 複数の借り手に分散しているのか
- 特定の日だけの特殊事例ではないか
- 同じ市場を追跡するだけの供給量があるか
を確認しました。
この順序はかなり使いやすいと感じています。
全件を高コストで調べる
のではなく
重要事例で仕組みを見つけ、その仕組みを掘る価値があるか母集団へ戻って確認する
という流れです。
興味深い事例を一つ見つけても、それだけではbotを作る理由にはなりません。
逆に、供給量だけ多くても、どう取るのか分からなければ意味がありません。
この二つを往復することで、研究対象をかなり絞りやすくなりました。
7. 研究の中心は「どう取るか」へ移った
今回の研究対象では、ここまでにかなり前段の確認が進みました。
おおまかには、
- 一定規模以上の清算が反復している
- 特定の借り手だけに極端に依存していない
- 複数の重要事例で同種の状態遷移が確認できた
- 少なくとも一部の事例では、公開情報からその遷移を事前計算できた
- 一般の第三者でも清算そのものは実行できた
ところまで確認しています。
そのため、現在残っている主な問いは、
実際の清算実行者より先に、どうやってその機会を取るのか
になっています。
ここでは、清算条件そのものより、
- 取引がどの順番で処理されるか
- どの時点で送信すれば間に合うか
- ブロックへどう包含されるか
- 既存の勝者がどのように機会を取っているか
といった部分が重要になります。
つまり、研究の中心が
「見えるか」から「取れるか」へ
移ってきました。
8. 歴史検証で閉じない問いはシャドー観測へ回す
ここまで進んだところで、歴史データだけを掘り続ける情報価値が少し下がってきました。
仕組みそのものはかなり分かっています。
供給量も確認しました。
事前予測できる可能性も確認しました。
第三者による実行も確認しました。
残った大きな不確実性は、
実際の市場で、予測した機会に対して自分がどれくらい早く準備でき、競合する実行者がどれくらい早く取っていくのか
です。
これは、過去のブロックをいくら細かく見るより、現在の市場を観測した方が直接的です。
そこで現在は、実際の取引を送らない「シャドー観測」へ進めています。
ここでいうシャドー観測は、
市場をリアルタイムで監視し、「自分ならここで実行する」という判断だけを先に記録しておき、その後の実際の清算結果と比較する
という模擬運用です。
資金は使いません。
取引も送りません。
ただし、判断だけは結果を見る前に固定します。
そうすることで、
後から結果を見て「これは取れたはず」と解釈する
ことを避けられます。
現在は24時間の観測を回しながら、予測した状態遷移と実際の清算実行者の動きを比較しています。
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🛠️開発記録#558(2026/9/1) 高頻度なら細かいほどいい?|個人botterの「必要十分な観測粒度」を具体例で考える話
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9. 清算エッジ探索の型を更新する
今回の研究を通して、清算エッジ探索の流れもかなり整理できました。
現在は、おおむね次の順番で考えています。
最近の清算活動
↓
一定規模があるか
↓
複数の借り手・複数時点で繰り返しているか
↓
現在も対象となる借入があるか
↓
勝者ブロックの一つ前ではどうだったか
↓
何が清算可能状態への遷移を作ったか
↓
その遷移を事前に予測できるか
↓
第三者でも実行できるか
↓
実際の取引順序・包含条件で勝てるか
↓
出口と全コスト後にも利益が残るか
↓
シャドー観測
↓
少額実運用
この中で、まだ最後まで通ったわけではありません。
現在は、シャドー観測の段階です。
実際の競争条件を見た結果、
個人botterでも十分に入り込める
となる可能性もありますし、
仕組みは予測できても、実際の取引順序では取れない
となる可能性もあります。
どちらでも構いません。
今までより重要なのは、
どこで落ちたのかを切り分けられるようになったことです。

まとめ
清算研究を始めた頃は、「清算をどう予測するか」が大きな問いでした。
現在は少し違います。
清算そのものより、
まだ実行不能な状態が、いつ実行可能な状態へ変わるのか
を見るようになりました。
さらに、
その変化を事前に予測し、自分が競合より先に取得できるか
までを一つの研究対象として扱っています。
これは、清算研究だけの話ではないのかもしれません。
DeFiでは、
- 期限を迎える
- オラクルの参照状態が変わる
- 金利や担保条件が変わる
- オークションの段階が変わる
- 回収可能な権利が実行可能になる
など、
「まだできないことが、ある状態遷移を境にできるようになる」
場面がいくつもあります。
今回の清算研究を通して、その「状態遷移」をエッジ探索の対象として見る解像度が少し上がりました。
現在は、実際の市場をシャドー観測しながら、
仕組みとして見えるものを、本当に個人botterが取れるところまで持っていけるのか
を確認しています。
ここから先は、理解だけではなく、実際の競争条件との照合です。
それでは、また。