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🛠️開発記録#588(2026/10/11)清算を探すのではなく、「清算可能になる瞬間」を追う|清算研究が「見えるか」から「取れるか」へ進んだ話

こんにちは、よだかです。

DeFiの清算をbot開発の研究対象として扱い始めてから、しばらく経ちました。

最初の頃は、「どの市場で清算が起きているのか」「どの程度の規模があるのか」「清算条件は何によって決まるのか」といったところを中心に見ていました。

もちろん、今でもこの確認は必要です。

ただ、最近の清算研究では、もう少し問いが具体的になってきています。

清算が起きるかどうかを見るのではなく、まだ清算できない状態が、いつ・何によって「清算可能な状態」に変わるのかを見る。

さらに、その変化が分かったとして、

自分のbotは、その瞬間を他の実行者より先に取れるのか。

現在は、ここまでを一つの研究対象として見るようになっています。

今回は、最近進めていた清算エッジ探索を通して、この見方がどう変わってきたのかを整理しておきます。


1. 清算研究は「事象を見る」段階から一段進んだ

以前の記事では、DeFi清算を単なる事後ニュースとして見るのではなく、bot開発の研究対象として分解しました。

価格が変わる。

その価格がオラクルへ反映される。

借入ポジションの健全性が変わる。

清算ラインを下回る。

清算が発生する。

その後、取得した担保をどう処理するか。

清算という一つの出来事も、分解すると複数の状態と処理の連鎖として見ることができます。

この見方自体は、今も変わっていません。

ただ、最近はその中でも特に、

「清算ラインを下回る」から「実際に清算される」までに何が起きているのか

を見るようになりました。

清算条件を理解できたとしても、それだけではbotのエッジにはなりません。

実際に取るためには、

  • いつ清算可能になるのか
  • その変化を事前に観測できるのか
  • 第三者でも実行できるのか
  • 他の実行者より先に取引を通せるのか

まで確認する必要があります。

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2. もともとの構造は「価格形成から担保処理まで」だった

清算研究を始めた頃から、基本的には次のような流れで考えていました。

価格形成・評価
↓
オラクル
↓
借入ポジション
↓
清算ライン
↓
清算
↓
担保処理

今回、この構造そのものを作り替えたわけではありません。

むしろ、この中の

清算ライン → 清算

の間を、以前より細かく見るようになった、という方が近いです。

「清算ラインを割った」という一言だけでは足りません。

誰から見ても、いつ、実行可能な状態になったのか。

ここを分けて見ることで、清算競争の性質もかなり違って見えるようになりました。


3. 「見えるか」と「取れるか」は別の問題

これは清算研究に限った話ではありません。

これまでのアルゴ研究でも、

市場で何かを観測できること
と
それを実際の利益へ変換できること

は分けて考えてきました。

観測できる現象が面白くても、それだけで取引エッジとは限りません。

清算でも同じです。

たとえば、

清算条件が分かる
≠
清算を取れる

です。

最近は、さらに一段細かく、

清算可能になる瞬間が分かる
≠
その瞬間に自分が先に実行できる

と分けて考えるようになりました。

この二つを混ぜると、「仕組みは面白いけれど、自分には取れない」という市場へ長く時間を使ってしまいます。

逆に、この二つを分けておけば、

どこまで理解できれば次へ進むのか
どこで研究を止めるのか

も決めやすくなります。

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4. 勝者ブロックの一つ前を見ると競争の種類が分かる

今回の清算研究で、かなり有効だった確認方法があります。

実際に清算を取った取引が入ったブロックを「N」とします。

その一つ前のブロック、「N-1」の終了時点で、そのポジションがすでに清算可能だったのかを確認します。

すると、競争の種類を大きく二つに分けられます。

N-1ですでに清算可能だった場合

これは、

以前から存在していた清算機会を、誰が早く発見して取るか

という競争です。

ある程度の時間的余裕が残っている可能性があります。

N-1ではまだ清算不能だった場合

こちらは、

勝者が入ったブロックの中で何かが変わり、そこで初めて清算可能になった

という構造です。

この場合、競争はかなり違います。

単純に「清算可能なポジションを探す」だけでは足りません。

何が状態を変え、その変化をどこまで事前に予測できるのかが重要になります。

今回深掘りした一定規模以上の複数事例では、いずれも一つ前のブロックではまだ清算不能でした。

この時点で、研究対象がかなり絞られました。


5. 清算の本体を「状態遷移」として見る

さらに調べていくと、複数の重要事例で、

まだ清算不能
↓
ある状態変化
↓
清算可能

という同種の構造が繰り返し確認できました。

ここで大事なのは、具体的な市場や時間条件ではありません。

理解の置き場所が少し変わったことです。

以前は、

どこで清算が起きているか

を見ることが中心でした。

現在は、

まだ実行不能な状態が、どの条件で実行可能な状態へ変わるか

を見る方が重要になっています。

清算イベントそのものは、その状態遷移の結果にすぎません。

もし、その状態遷移が公開情報から事前に計算できるのであれば、botは「清算が発生したこと」を見てから動く必要がありません。

まだ清算不能な段階から、

「次の状態変化で清算可能になる」

と予測して準備できます。

ここまで来ると、清算botというより、

将来の実行可能状態を予測して待ち構えるbot

に近くなります。


6. 少数の重要事例を掘ってから母集団へ戻る

今回の研究では、最初からすべての清算事例を精密に再現したわけではありません。

まず、一定規模以上の重要事例を少数選びました。

そこで、

  • 一つ前のブロックではどうだったか
  • 何が状態遷移を作ったか
  • 同じ仕組みが複数事例で繰り返されるか

を深掘りしました。

その結果、同じ種類の構造が繰り返し確認できたので、今度は母集団へ戻りました。

そこで、

  • そもそも一定規模以上の清算がどの程度あるのか
  • 複数の借り手に分散しているのか
  • 特定の日だけの特殊事例ではないか
  • 同じ市場を追跡するだけの供給量があるか

を確認しました。

この順序はかなり使いやすいと感じています。

全件を高コストで調べる
のではなく
重要事例で仕組みを見つけ、その仕組みを掘る価値があるか母集団へ戻って確認する

という流れです。

興味深い事例を一つ見つけても、それだけではbotを作る理由にはなりません。

逆に、供給量だけ多くても、どう取るのか分からなければ意味がありません。

この二つを往復することで、研究対象をかなり絞りやすくなりました。


7. 研究の中心は「どう取るか」へ移った

今回の研究対象では、ここまでにかなり前段の確認が進みました。

おおまかには、

  • 一定規模以上の清算が反復している
  • 特定の借り手だけに極端に依存していない
  • 複数の重要事例で同種の状態遷移が確認できた
  • 少なくとも一部の事例では、公開情報からその遷移を事前計算できた
  • 一般の第三者でも清算そのものは実行できた

ところまで確認しています。

そのため、現在残っている主な問いは、

実際の清算実行者より先に、どうやってその機会を取るのか

になっています。

ここでは、清算条件そのものより、

  • 取引がどの順番で処理されるか
  • どの時点で送信すれば間に合うか
  • ブロックへどう包含されるか
  • 既存の勝者がどのように機会を取っているか

といった部分が重要になります。

つまり、研究の中心が

「見えるか」から「取れるか」へ

移ってきました。


8. 歴史検証で閉じない問いはシャドー観測へ回す

ここまで進んだところで、歴史データだけを掘り続ける情報価値が少し下がってきました。

仕組みそのものはかなり分かっています。

供給量も確認しました。

事前予測できる可能性も確認しました。

第三者による実行も確認しました。

残った大きな不確実性は、

実際の市場で、予測した機会に対して自分がどれくらい早く準備でき、競合する実行者がどれくらい早く取っていくのか

です。

これは、過去のブロックをいくら細かく見るより、現在の市場を観測した方が直接的です。

そこで現在は、実際の取引を送らない「シャドー観測」へ進めています。

ここでいうシャドー観測は、

市場をリアルタイムで監視し、「自分ならここで実行する」という判断だけを先に記録しておき、その後の実際の清算結果と比較する

という模擬運用です。

資金は使いません。

取引も送りません。

ただし、判断だけは結果を見る前に固定します。

そうすることで、

後から結果を見て「これは取れたはず」と解釈する

ことを避けられます。

現在は24時間の観測を回しながら、予測した状態遷移と実際の清算実行者の動きを比較しています。

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9. 清算エッジ探索の型を更新する

今回の研究を通して、清算エッジ探索の流れもかなり整理できました。

現在は、おおむね次の順番で考えています。

最近の清算活動
↓
一定規模があるか
↓
複数の借り手・複数時点で繰り返しているか
↓
現在も対象となる借入があるか
↓
勝者ブロックの一つ前ではどうだったか
↓
何が清算可能状態への遷移を作ったか
↓
その遷移を事前に予測できるか
↓
第三者でも実行できるか
↓
実際の取引順序・包含条件で勝てるか
↓
出口と全コスト後にも利益が残るか
↓
シャドー観測
↓
少額実運用

この中で、まだ最後まで通ったわけではありません。

現在は、シャドー観測の段階です。

実際の競争条件を見た結果、

個人botterでも十分に入り込める

となる可能性もありますし、

仕組みは予測できても、実際の取引順序では取れない

となる可能性もあります。

どちらでも構いません。

今までより重要なのは、

どこで落ちたのかを切り分けられるようになったことです。


まとめ

清算研究を始めた頃は、「清算をどう予測するか」が大きな問いでした。

現在は少し違います。

清算そのものより、

まだ実行不能な状態が、いつ実行可能な状態へ変わるのか

を見るようになりました。

さらに、

その変化を事前に予測し、自分が競合より先に取得できるか

までを一つの研究対象として扱っています。

これは、清算研究だけの話ではないのかもしれません。

DeFiでは、

  • 期限を迎える
  • オラクルの参照状態が変わる
  • 金利や担保条件が変わる
  • オークションの段階が変わる
  • 回収可能な権利が実行可能になる

など、

「まだできないことが、ある状態遷移を境にできるようになる」

場面がいくつもあります。

今回の清算研究を通して、その「状態遷移」をエッジ探索の対象として見る解像度が少し上がりました。

現在は、実際の市場をシャドー観測しながら、

仕組みとして見えるものを、本当に個人botterが取れるところまで持っていけるのか

を確認しています。

ここから先は、理解だけではなく、実際の競争条件との照合です。

それでは、また。

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